フライフィッシング四方山話#3 – フィッシュイーターの偏食?

2020/11/25フライフィッシング

渓流でヤマメやアマゴ、ニジマスと行ったトラウトを狙っていると、明らかに特定の餌に偏食することが多いです。初めの頃は「ただの学習効果だろ」と思っていたのですが、同じような大きさの流下物の中からでも狙った餌だけをとっていく姿を見るにつれ、「美味しい物だけ選んで食べるのかな・・・?」と考えるようになりました。

レイクトラウトはヒメマスがお好き?

水が少なかった年の中禅寺湖で、夜も空け切らない薄闇の中でユスリカアダルトのスペントが大量に浮いていたワンドへヒメマスの群れが入るところに運良く遭遇したので、こんなこと滅多にないし釣ってやろうと思ってスタンバイしていたら、なんと80-90cmクラスのレイクトラウトの団体が沖から乱入してきて湾内は弱肉強食の修羅場に。その食いっぷりのすごさは、2匹の尻尾が口から見えている魚がそのまま追い回しているという光景でした。さらには空中へ飛び出たヒメマスが落ちたところをグワっ!と丸呑み。浅瀬の岩に追い詰めて弱らせて追いてから、戻ってきてパクリ。ちなみにこの朝のワンドの反対側の岬で釣っていたルアーアングラーが92cmを仕留めました。

日が登って明るくなってからは、逃げ惑ったヒメマスから剥がれた大量の鱗がキラキラしているところへ、30cmくらいのブラウントラウトの群れがのそのそ出てきて鱗をパクパクしていますが、まだ湾の中でヒメマスを追い回して回遊していた巨大なレイクトラウトたちは一回もこのブラウントラウトたちを追いませんでした。ヒメマス活魚は夢中になって食べるのに、ブラウントラウト活魚は興味なし。

ホワイトチップシャークはシマアジがお好き?

所変わって小笠原母島の漁港でバースの下へ隠れる様々な魚たちを狙うデイゲーム。ここの場所にはホワイトチップシャークの大群がいるので、釣った魚はすぐに抜かないとサメたちに食われてしまったり、サメから逃れるためにバースの奥へ逃げ込んで柱に巻かれてしまったりします。同じ場所にササヨと呼ばれるうまく捌ける人でないと臭くて食べられないくせにヒキが強くて面白い魚がいるのですが、この魚は釣られると「くっさい僕なんて食べないほうがいいよ!」と言わんばかりに必ずウンコします。まるで魚類界のカメムシ!

このササヨ、一般名はイスズミといい、メジナのように小さいシュリンプフライのルースニングで釣れるのですが、ササヨが釣れてもホワイトチップは一切興味を示さず素通り。ところが同じ仕掛けでシマアジがヒットした瞬間、そこら辺を回遊しているほぼ全てのホワイトチップが椅子取りゲームのようにこの魚へまっしぐら!あっという間に取られてしまいました。もう一度実験してササヨを釣って泳がしておいても知らんぷり。鼻先へ誘導しても無視。ところがシマアジをかけてみると、またもや全員集合!

ちなみにこんな魚です。

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マゴチはワタリガニが好き?

さらに場所は変わって西表島の湾内でデイゲームをしていた時のこと。岸から少し離れたところに、周期的に「ボフッ!」という大きな音を立てて捕食活動を行う魚がいるのですが、地元のおじさん曰く「マゴチだよ」とのこと。狙ってみようと小さいエビやハゼを真似したフライを何度もスイングさせるのですが、釣れてくるのはギンガメアジやバラクーダの子供ばかり。ふと気づくと1匹の薄い茶色のガザミ(ワタリガニ)がススーっと泳いでいく下に怪しい影が・・・。その直後「ボフッ!」という音と共にガザミは破片となっていました。

フライボックスの中にある一番大きいウォーターメロン色のクラブフライを試しましたが、全く無反応。ふと気づいて、さっきのワタリガニと同じ色だけどハサミ程度の大きさしかないフライをフォーリングさせたら、ゆらーっと浮いてきてあっさりパクリ。ちなみに同じフライにギンガメアジたちは反応してきません。もう一度やったら、別のマゴチがパクリ・・・。何これ、完全に狙って食べているんじゃん。

魚食性のヌシさんは味がわかるらしい

ヒメマスもシマアジもワタリガニも人間が食べてもめちゃくちゃ美味しい高級食材です。それも他にいくらでも簡単に捕まえられる食材が泳いでいるのに、高級食材だけを選んで捕食しています。他にも似たようなケースはいくつもありましたが、紙に書き出している中でふと気づいたのは、これらの魚はみんなその場所の食物連鎖の頂点にいる「ヌシ」ばかり。偉い魚さんなわけです。やっぱり偉いから良い物を食べたがるのか。良い物が食べたいから頑張って頂点を目指すのか・・・。人間も魚も似たような世界に住んでいるようです。

本当のところは、人間も魚も「美味」と感じる特定のアミノ酸から体にとってとても有用なものが含まれていると認識しているわけですが、人間が濡れた舌を通してしか味を感じられないのと違い、魚は餌の出す特定の波動を感じて近づいていき、姿を認知するだけで捕食することもあれば、鼻先まで接近してから水を通して味を感じることができます。複雑な脳をもつ人間が「まいうー!」と本能的な反射感覚だけでなく全身の刺激からも喜びを感じて脳内快感物質を出すレベルではありませんが、シンプルな脳をもつ魚も「&%@∈!」といっった脳内快感物質が出ていることは確実だと思います。

生態系の頂点にいるということは、結果として捕食機会に恵まれているわけなので、よりたくさんの快感を得られることから偏食というものが生まれるのでは無いでしょうか?

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