西表島どうでしょう!2022:カヤック検証

2023/09/19

とりあえず初めの二日間をシャローフラットとマングローブリバーで楽しみ、餌フライも完成すれば、今年学んだメソッドを応用して釣果を大きく伸ばしたり、渋い局面で1匹を引きずり出すことも上手くいきました。

しかし!そんなことは大きな懐の西表島からすれば、とってもちっぽけなこと。プロガイドのサトシさんは嵐をものともせず、西表島を東奔西走しながらカナディアンカヌーを駆使して私たちのために楽しいスポーツフィッシングの時間を提供してくれているわけです。私も頑張らなくっちゃ!ということで、DIYタイムを充実させる模索のお話。

インフレータブルカヤック

今回の旅が前回と違うのは、出発場所を選ばないインフレータブルカヤックを準備してあること。私が使っているのはAqua MarinaのBETTA VT 312というシットアップで、全長312cmなので小回りが効くサイズでありつつも、キールとスタイビライザーフィンが2箇所に取り付けられて操縦しやすいカヤックです。スイッチロッドくらいまでのフライロッドなら寝かせて乗せておけるスペースがあるので、ウェーディングできない場所での移動手段としては申し分ありません。北海道の湿原河川や浜名湖では観察および移動手段として利用したことがあります。

北海道厚岸の湿原にて

ただ、積載キャパが少ないので、かなりウルトラライトな装備に絞り込まないとツーリングは難しく、釣りの場合はあくまでも短時間の利用のみ。こいつをどう南国フィールドに使っていけるかの目論見を立てるのも今回の目的の一つです。

ちなみに Aqua Marinaのインフレータブルカヤックは人気もあって、モデルチェンジが行われますが、BETTAシリーズには412cmモデルも出ています。

インフレータブルカヤックの利点と欠点

インフレータブルカヤックの利点は、「浮きの軽さのおかげで狭い場所での操作性が高く静かである」点、「空気を抜いて携行することができる」点と「ある程度の艤装は施せる」点。水に浮かべてセットしたら、とても静かにクイックに出発できます。湿原河川を漕いでいても、波が小さいために水鳥もあまり驚かず、岸にいる野生動物や野鳥たちも気にしません。ポイントへのアプローチも非常に丁寧に行えます。

普段はエアを抜いた状態で空気入れやパドルと一緒にカヤックバッグに収納してありますので、行きたい時に車のラゲッジスペースへ放り込んだり、コンビニから現地へ発送してしまえます。

艤装はカヤック用に脱着できるものがシステムになっています。アダプター部分の形状別にScottyやRailBlaza、もしくはそれらに互換性のあるサードパーティーのブラケットをカヤック本体に接着・溶着しておけば、使いたい時にプスッと指すだけ。私の場合はScottyのグルーオンマウントとデッキマウントを左右に1個ずつ取り付けてあって、そこへ使いたいホルダーを差しています。

とはいえ、ロッドのホルダー(マウント付属でお得)と魚探のためのトランスデューサーマウントだけ。

しかし悲しいかな、数々の欠点もあります。

  • 船体の浮きが高く軽い・・・波の影響や流れの影響をモロに受けやすい
  • 座る姿勢がシットアップとなる・・・体に風を受けやすく、人間が座るアンカーポイントが喫水線に対して浅いので回転しやすくなる(利点でもあり)
  • 積載バランスが難しい・・・回転性を重視された設計であるので、積載するものが大きくなるほど、座る位置から離れるほどバランスを崩す原因となります
  • 船体の耐久性・・・鋭く尖ったものは船体を破損し、浮力をロストする原因となります

よほど流れの無いフィールドでない限り、操縦しながらフライフィッシングはほぼ不可能。岸よせしてしまうか、移動は移動と割り切って上陸してからフライフィッシングを行うことになります。

また移動距離が大きくなればなるほど、操縦とは関係のない装備を減らす必要があります。一般的に「沈」(カヤックがひっくり返ったり投げ出されて落水すること)するリスクは乗船時間の長さと比例するので、ここもコントロールする必要があります。これはインフレータブルに限らず、小さいカヤック共通の悩みです。

検証の目的と安全基準

あえて嵐の日にフィールドの下見をしながら検証することで、最悪のコンディションを想定しながら事故のリスクを考えやすくなります。厳しい基準の中でさえも安全に成立させられればパス、ダメならNGです。事故を起こしてしまえばアウトドアツアーが中止になるだけではなく、家族や友人、海上保安庁や警察消防の方達へも迷惑がかかります。

荷物を積まない小型カヤックで、最初から「沈」する準備ができていればまだしも、装備品がある状態での操縦性は低くなり、パニック・トラブルの発生率も高くなります。

臆病すぎるくらいが丁度いいです。ちなみに私はかなりビビリーです。フローティングベストを着るのは当然、岩場近くを漕ぐような時は落石や野鳥からの攻撃に備えてヘルメットも被ります。

リーフは・・・NG!

シャローフラット、マングローブリバーと並んで西表島で面白いのはリーフのフライフィッシング。そこでいくつかある候補のうちとあるビーチへ行ってみました。大海原からの風を遮るものがないリーフは暴風が吹き荒れ、リーフエッジから入り込む波で流れも強く雨でメタメタの状態。

完全に嵐の状態で水中が見えづらくなると足運びも危なくなるので、カヤックと関係のない通常のフライフィッシングでも中止。でも海の中は濁りや流れを除けば穏やかな状態なので、ウェットスーツでシュノーケリングを楽しむ強者がいました・・・。根性あるぅ。

ちなみにリーフと一言で云っても、コーラルリーフ=サンゴ礁の一部であるインナーリーフのことで、波が打ち寄せるリーフエッジと岸の間に形成された、一種の塩水湖がフィールドとなります。沖縄ではこれを「イノー」と呼びますが、アウターリーフと違って穏やかな水中は命のゆりかごとなっていて、小さい擬似針であるフライを扱うフライフィッシングには格好のフィールドです。

私自身は小学生時代からグアムやフィリピンと行ったところで馴染みの深いフィールドタイプなのですが、ウェーディングどころか泳ぎながら「泳ぎ釣り」もやったことがある中でカヤックは使ったことがありません。

インナーリーフ自体は穏やかな場所とはいえ、潮の満ち引きでインナーリーフからアウターリーフへ払い出す際に強い流れが生まれやすく、ひどい時には狭い場所に水流が集中して渦が発生することさえあります。過去にフィリピンでは、岸からリーフエッジまでをエンジンボートで移動したことはありますが、装備を積んだ人力のカヤックでは満足な操縦はできません。

シットオン状態の体と船体に風が直撃する場所ですので、風に舵を取られることも多発するでしょう。
また、サンゴに船体を擦った時に穴が空いてしまうリスクも高いです。

そして、インナーリーフはカヤックなんて使わなくても、「ワタンジ」と呼ばれるリーフエッジまで飛石状になって歩いて行ける天然の沈み橋があるので、そこから十分に釣ることができます。

アイランドホッピングは?・・・NG!

島へ行くと絶対に興味をそそられるのが、さらなる小島への探検。しかし、そのためにはある程度大きな移動が伴います。これができる・できないがカヤックとしてのツーリング性能だと思いますが、結局はエンジンボートではなく人力です。

これは分かりやすいですが、エンジンボートでさえ欠航している状況が起きる海域を、装備を積んだちっさいインフレータブルカヤックで進むのは、NGったらNG!

超NG

そもそも完全に閉鎖されていない水域では、天気が良い日でさえ、何かあったら、即・漂流です!

こういうフィールドではフェリーで移動するか、素直にタクシー代わりじゃありませんが、初めからガイドボートでフィッシングツアーを組んでもらう方がいいでしょう。

マングローブ&シャローフラットは?・・・条件つき出船OK

続いて、シャローフラットとマングローブリバーの交差点と云ってもいい、マングローブ河川の河口に存在するシャローフラットで検証です。ほとんどの場合内湾やインナーリーフの内側にある場所で、突風や大波の影響は受けづらい場所ですが、マングローブの茂みを利用することで、暴風も避けることができます。上陸して悪天候をやり過ごすこともできます。

滝のように降る雨ばかりは如何ともし難いですが、水深が浅いのも大きな利点。いざとなったらカヤックを降りて水中を歩いて行くこともできます。浜名湖でカヤックを使う条件とかなり近いです。

判定は条件付きでOK。近距離移動の連続かつトラブル発生時に簡単にリカバリーができる浅い場所でなら、フライフィッシングと同時に行う余裕も持てます。ただし、マングローブリバーの奥へ入っていくような場合は、プロでさえ迷うことがあるので、ルート探索がとても重要です。もしもの時は歩いて戻ることも考慮してハンディGPS必須。できればソロは避けて経験者とペアを組んでアタックした方が良いと思います。

そして天候が悪い場合にはすぐに引き返すことも条件に入れましょう。100%のOKなんてこの世の中にはありません。

ちなみにインフレータブルじゃないけど、カヤックでマングローブリバーでフライフィッシングするシーンはこちらをご参照ください。

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まとめと続き

え?小さいカヤックなんて池とか川でしか使わないし、大場所では岸と並行に移動するのが当たり前じゃん。と思う方も多いと思いますが、釣り欲が絡むと人間は想定外の無茶をするものですし、フライフィッシングは持ち運ぶアイテムがやたらと多い釣りなので、絶対に無用なリスクは避けなければいけません。カヤックの話も出てくるので、あえて記事にしてみました。

ちなみにカヌー・カヤック歴が長い人間でもトラブル発生は避けられないので、登山のように出艇前に仲間に居場所を伝えておいて、戻り次第連絡入れたり、できる限り2名以上でパーティーを組んでやることを推奨します。

集中力が落ちてきた時に事故は起きるもの。カヤックもフライフィッシングも安全に十分気をつけて、安心できる中で楽しみましょう。

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