北海道ツアー5日目:十勝 – 豊似川サーフ「海サクラ」

2021/01/23キャンピングカー,サクラマス,フライフィッシング,ヤマメ,ユーロバン,北海道,十勝

有名な海サクラのポイントなので、日が昇る前から入浜するアングラーたちの車の音で目が覚めます。今日は月曜日で午前中だけリモートサポート業務に入るので、4G通信が入る確認をしつつ、簡単な朝食を済ませます。

一番初めに大事な事ですが、サーフや磯ではいつ沖からの大きな波がやってくるか分かりません。またアプローチする地形の中に水没のリスクが無いとも限らないので、安全のためにウェーディングのためのフローティングベストを着込みます。フライボックスやアクセサリーを換装し、ウェーダーを履いて身の回りのセットが終わってからツーハンド8/9タックルをかついで私も崖上から砂浜までの下り坂を徒歩で降りて釣り場へ急ぎます。

サーフの全体像、アプローチするルートを正確に確認するために、後になってからドローンを飛ばしました。停泊した場所は国有林と海岸に挟まれた草地のベルトの上にあって、まるで「大草原の小さな家」のようです。豊似川の河口の東側の海岸は崖になっていました。

十勝のノルマンディー?

河口までの遠景をカメラに納めようとドローンをUターンさせていると不思議な構造物が写りました。海岸線の崖沿いに陣地のような物があります。

釣りに行く時に確認してみたら、海岸防御のためのトーチカ群が築かれていたようです。後で調べてみると、北海道防衛の陸軍第七師団が太平洋戦争末期にアメリカ軍の上陸を阻止するために十勝・釧路・根室へ構築した長大な防御陣地の遺跡です。波の侵食で崖ごと次々と崩れていく中で所々に原型を留めた物が残っています。

これ以上の侵食を食い止めるために設置されたテトラポッドも砂に埋まっていて、まるでフランスのノルマンディー古戦場の縮小版のような風景でした。

サーフと河口の関係とアプローチ

この後も海サクラ狙いで入った十勝-釧路の三つのサーフの作りはどれも似ていて、河口は川が氾濫した時に海へ流れ出す場所が移り変わっていくために、過去に川にえぐられた場所の痕が小さな池になっています。これらの池や河口近くの最下流には海から上がってきたサクラマスとの繁殖に参加するためでしょう、大小いろんなサイズのヤマメの群れが降りてきていました。サクラマスが遡上しているかどうかのバロメーターになると思います。

ノーマル仕様の自動車のアングラーたちはサーフへ出るダート道にギリギリ最後の場所へ駐車して、4WDで来ているアングラーたちは臆する事なく、そのままサーフへ車ごと入っていきます。私の車はここまでのオフロードには不向きなのと、じっくりと地形や海サクラアングラーたちの釣り方を確認するため、徒歩でサクラマスが集まりやすい河口に近いポイントまで移動します。

途中次々と砂利浜を4WD車が走り抜けていきますが、なんか懐かしい光景でした。その昔、ニューヨーク在住時代の私はサーフジギングにハマっていて、レンタカーで恐々とサーフの端っこまでアプローチする横では、クレイジーなアングラーたちがセットしたままのロッドを突き刺した大型の4WD車へ乗り、車載無線機でお互いに連絡を取りながら、回遊する群れを追ってサーフからサーフへと車列で移動していました。それと比べると紳士的な風景ですが、日本のサーフルアーのシーンもかなりアグレッシブになったものです。

朝霧の中でルアーが横へ流される分の幅だけ間を空けて並び、黙々とキャストをし続ける海サクラアングラーたち。特徴的なのはみんなサーフの地面へ差しておくロッドスタンドもしくは二股に先が分かれている流木を持っていて、まるでアイヌ資料館でみた山杖「エキムネクワ」のようです。やってくるナンバーも帯広や釧路は当たり前、北見や旭川もいます!これが北の海のソーシャルディスタンス・・・見せてもらおうか!その実力とやらを。

海サクラマスのゲームと成立条件

私以外はルアーアングラーで、ロングキャストで波打ち際から50-75m距離へルアーを入れて岸側まで一定のペースで巻いてくるブラインドの釣りを展開しています。反面、河口に最も近い場所のアングラーはロングキャストをせず、手前の波の奥へルアーを入れてしっかりと沈めて、波がブレイクする中も深めに引いています。みんな決めた立ち位置から動かないので、回遊してくる相手を待ち伏せする段取りで釣っています。

海サクラマスゲームの舞台となる河口サーフの条件は、その川が「サケマス育成河川」に指定されておらず、「河口規制」と呼ばれる河口から何km以内のサケマス採捕禁止が適用されない河口があること。ここ豊似川も規制がありません。近くの広尾町を流れる楽古川や広尾川、猿留川は規制ありなので、必ず地域ごとに確認するようにしましょう。

サケ調査フィッシングの体験を元にした私の理解と見立では、川でやっているゲームと似たことを海岸でやっていて、口を使わせる釣りを狙うアングラーは沖よりの海のサクラマスを狙い、手前を引いているアングラーは川へ上がる前に体を慣らそうとしているベタ底の遡上中サクラマスを狙っているようです。テクニカルに徹するアングラーと釣るためには手段を選ばないアングラーが同じ場所に立っていると読みました。

波は平均して1.5m以上ありますが、場所によっては低めのポイントがあるので、その中から沖へ向かって弱い離岸流ができているところが所々あります。私の場合はフライフィッシングなので、ルアーのようにフィールドを制するために自分からいろんな手を使ってコントロールを仕掛けていくことができません。反対に波や潮を読みながら、その動きを利用しつつフライを魚へプレゼンテーションしていく必要があります。

サーフのフライフィッシングはかなりブランクがあったので、初めに波の性格と潮の強さを確認するために空キャスト&空プレゼンテーションします。河口からの流れ出しが砂や砂利を運んできていて、波の出来かたを見ると海底はどん深のゴロタ浜ではなく、普通の砂浜で波打ち際から潮目が出来ている場所までは2つか3つのウネが出来ています。さらに引き潮の最中なので右から左へ強い潮が効いています。魚の頭がどちら向きでどの辺を回遊するかは大体読めました。セット済みのスカンジS1/2で水の動きに馴染ませつつ、フライ&プレゼンテーションを合わせていく作戦です。

続いて本戦に入りますが、じっと波間を観察していてもベイトを狙ったボイルや水面直下の捕食によるナーバスウォーターがあるわけでもなく、10−15分に一回くらいサクラマスと思しき魚が河口がある方向へドルフィンスイムしていきます。これは手がかりがきびしい・・・。実際やってみるまではサーフ・シーバスやサーフ青物の延長でやれると安易な考えでいましたが、捕食アクションが一切見えない中でフライ選択は決め手がありません・・・。濁りはひどくないので、5cmくらいのスイングリーチ式ゾンカーをセットします。

ここで一つ失敗があり、ポリリーダーのワレットを車へ置き忘れてしまっていました。波気のあるサーフではフライのターンオーバー確保と乱れる水流の中でもしっかりとフライを泳がせ続けるために、できる限りフライに近い位置にオモリとなるアンカーポイントが必要です。ポリリーダーは両方を兼ねるので必須なのですが、仕方ないのであずき大にちぎった粘土式のタングステン・パテをティペットとコントロールバットの間に練りつけます。

沖からのうねりが入った波なので、向かい風と陸からの風がぶつかっています。波の大きさも不揃いで、完全に安全な立ち位置では飛距離が十分に安定しないので、オーバーヘッドでフォルスキャストをしながら波が引くタイミングに前進してシュート、速やかに立ち位置へ戻るを繰り返します。引っ張り切ったら波の状態を見てロールキャストしてフライまでを一直線に直してからピックアップして再び同じことの繰り返しです。

しかし、目印となるドルフィンスイムのサクラマスの通過は間隔が長く不定期。こちらの段取りは素早くできないので予めブラインドキャストしておかないとなりません。この2つの交差点があるか無いかが判断の分かれ目になります。1時間、2時間・・・時間だけが過ぎていきます。右肩も辛くなり制限時間が迫ってきたので、一旦離脱して河口の左岸の様子を見にいきます。

上流では日高山脈を削っていく大岩まじりの渓流だった豊似川は、ここでは砂利運搬ベルトコンベアーのように囂々と流れて行っています。右岸側にも一人のアングラーが入っています。そちら側の様子が見たかったので、渡れる場所を見つけるために少し上流から回り込むことにしました。

何本の筋にも分かれた浅瀬を歩いていくと私にスプークされたヤマメたちが次々に逃げていきますが、珍しくかなり大きいヤマメが混じっています。深めの筋も覗いてみましたが、サクラマスはこの辺には留まっていないようです。豊似川のマップを確認すると上流までは川沿いに山まで森や茂みが広がっていて、ヒグマがその気になれば川沿いにおやつを食べながら簡単にやってこれる環境になっています。うーん・・・念のため手を叩いて音を響かせてから、霧に包まれた河原を横切って右岸へ出ました。

写真は撮り忘れましたが、右岸には海中へテトラポッドが設置されているブロック帯が連続していて、アメマスのシーズンには魚が付きそうな場所が連続しています。サクラマスの気配は全く無いので再び左岸のサーフへ戻ったらば、河口脇のアングラーにヒット!でもよく見るとスレかかりで小ぶりのサクラマスでした。

念のため繰り返しますが、ここ豊似川には河口規制がないので、海岸であればサケマスの採捕は問題ありません。釣られた方に見せていただきました。型は小さいけど美味しそうなサクラマスです!活け〆されているので食べ方を聞いたら、新鮮な状態で持って帰って三枚におろしてから身につくアニサキスなどの寄生虫を殺すために冷凍させる「ルイベ」で食べるそうです。

ルイベに対する詳細はこちらを参照ください。

リモートワーク&広尾でお買い物

さてタイムリミットの朝9:00が迫ってきたので、急いで車へ戻って美味しいコーヒーを入れてから仕事用PCで黙々とリモート。あっという間にランチタイムになります。せっかく十勝へ出てきたのにワインは無いしミルクも残りわずか、サラダやチーズも食べたいので近くにあるお洒落な町「広尾」でお買い物!

現地へ着くとあれ・・・?「渋谷区広尾」のメインストリートと違って、「十勝管区広尾」のメインストリートはカントリー感たっぷり・・・。商店街へ貢献したいので調味料と野菜を商店で買ってからスーパーへ。品揃えは豊富で大助かりでした。

午後2時にリモートワークが終わったので、洗濯しながらMacで映像編集するためにコインランドリーへ移動。最新式ランドリーマシンが並び、待っている間にカタカタ編集を進めます。十勝の海岸なのに伊豆の編集・・・。2時間くらい集中してやれたので大方はできました。洗濯物もフワフワで最高!

ちなみに編集が澄んだ伊豆の映像はこちら:

YouTube player

次のフィールドへ移動中、あのロケットが!

さて、肝心の海サクラマスは初戦から撃沈。成立させる条件の難しさに心が折れそうだったので、ソルトフライのお約束ですが、辛い釣りの次は楽な釣り、ということでサクラマスの実績がある港を探すと「厚内漁港」という情報が。食糧は調達したので一気に移動します。

農地や森が美しい十勝の風景を走っていると、段々と霧が深くなるので、安全のためにゆっくりと走ることにしました。7時前で暗くなり始めた頃、何やら不思議な看板が・・・。車をバックさせて確認すると、スペースシャトル???「大樹町」ってなんか聞いたことあるな?JETRO違う、JAXAの関係施設だろうか?見にいくことにします。

農場が続く風景の中でキツネを間違って轢かないように気をつけつつ道標を辿っていくと、謎の巨大ハンガーが霧の中からデーンと登場!なんだここは?極秘に宇宙人と共同開発している謎の施設「ハンガー18」?窓を開けて写真を撮っていると「ピコーン・・・ピコーン・・・」という怪しい電子音が霧の中で響きます。

真相究明するために、「Xファイル」のテーマを口笛で吹きながらエイリアンに誘拐されないよう気をつけながら駐車場に車を入れていくと・・・正体があっけなく判明。

そう、あの「ホリエモンロケット」の打ち上がらない打ち上げ場として有名な大樹町の「宇宙交流センターSORA」だったのです。

一般公開はされていないようですが、泥棒のように周囲をぐるりと偵察してみると、なかなか小洒落た建物で、快適に宿泊できそうな部屋やリビングルームやオフィスもあります。自販機があったので眠気覚ましのブラックアイスコーヒーは有難いです。相変わらずピコーンピコーンというビーコン音が広い草原に響いていますが、全体像を記したマップがあるので見てみます。

うーん・・・小洒落た施設とは正反対の手作り感溢れるマップには手書きで「打ち上げ射点」と書かれています。のどかな風景だし、快適すぎる環境で気球とか飛行船とかサケが跳ねていたり、他に楽しいことが多すぎてロケットなんか打ち上げなくてもやる事いっぱりありそう・・・。7月中に再度予定されているらしいですが、無事に打ち上がって欲しいものです(結果は打ち上げ前の燃料点火に問題があってまた中止)。

厚内漁港をチェック&停泊

寄り道していたせいで、厚内漁港についた時は9時前でした。港の水面はシーンと静まりかえったまま、一切の生命感なし・・・。神は「サボらずにサーフで釣れ!」と言っているようです・・・。車を邪魔にならない端っこへ駐車して停泊の晩ご飯。

広尾では十勝ビンテージ赤ワインの「セイオロサム」が買えましたが、チーズは例の「十勝チーズ」などの東京でも買える大手メーカー品ばかり・・・。この先に訪れる釧路の白糠町に気になるチーズ工房があるのでワインはそれまでお預けとして、コニャックと十勝カマンベールチーズの手抜き夕食を進めながらオレンジの暖かい光の中でうとうとするのでした。

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