コンペティション・フライフィッシング – トーナメントについて

2023/09/18

国内・海外のフライフィッシャーたちから質問を受けることがあるので、ここにトーナメントの基本情報をまとめることにしました。今後追加して行きます。

フライフィッシング大会の概要

フライフィッシングには、悠久の時をスローに楽しむ「マッチザハッチ」の釣りや、テンポ良く釣り上がる「ショットガン」、魚を探して大移動しながらハンティングのような時間を過ごす「ラン&ガン」など色々なレクリエーション・フィッシングの世界があります。しかし究極の目的は「スポーツフィッシング」であって、その技術と結果を競うコンペティション・フィッシングも国内外で盛んに行われています。

FIPS-Mouche チャンピオンシップの止水セッション(写真提供:国見さん)

国内外で開催されているコンペティションを大きく区別すると、川で行う「リバーフィッシング」、湖岸で行われる「バンクフィッシング」、湖へボートを浮かべて行う「ボートフィッシング」の3つに分かれます。

国際大会と国内大会の違い

3種類が総合的に行われる世界選手権と日本で開催されている大会を比較すると分かりやすいのでまとめてみました。

FIPS-Mouche 国際大会
2022年改訂
ATFC エリアフライフィシング大会(東山湖を除く)
競技理念オリンピック憲章に基づく、対等な条件に基づくスポーツ大会としてのフライフィッシングトラウトキングから引き継いだ競技会
スコア方式レギュレーション下および制限時間内でのキャッチ&リリースされた魚のサイズ(cm)xキャッチ&リリース数をポイントとする

例) 40cmx1、30cm x 3、15cm x1の場合:
40 + 90 + 0 (20cm未満カウントせず)=130ポイント
レギュレーション下および制限時間内でのキャッチ(ネットイン)&リリース数

例) 40cmx1、30cm x 3、15cm x1の場合:
1+3+1=5ポイント
参加形式チーム参加およびチーム成績と個人成績
ナショナルチームへの参加はFIPS-Mouche日本担当理事の承認制
大会への個人参加および個人成績
参加カテゴリー①シニア・・・満18歳以上
②ユース・・・満14-18歳
③マスターズ・・・満50歳以上
④レディース・・・満18歳以上の女性
一般
公式戦①国内大会・・・ナショナルチーム選抜
②ユーロ・チャンピオンシップ
③ワールド・チャンピオンシップ・・・環境保全シンポジウムと同時開催
※スロバキアの例
エリアにおける個別大会
非公式戦①クラブ個人戦・・・月1回以上, 1-3位の個人にポイント付与、地区大会へのスクワッド選別
②クラブリーグ戦・・・月1回以上、1−3位のチームにポイント付与、リーグチャンピオン決定
②地区大会・・・州県単位で行われる個人戦
※イギリスの例
なし
競技方式:リバーフィッシング川において200m以上の5つのビートに区切り、担当コントローラーの管理の元で競技を行う
ウェーディング可能
なし
競技方式:バンクフィッシング止水において100m以上の5つのビートに区切り、担当コントローラーの管理の元で競技を行う
ウェーディング可能
止水の管理釣り場における、岸釣り
AB組み分け抽選、1回戦、2回戦、3回戦、決勝戦と3位決定戦
競技方式:ボートフィッシングA・B組み分けによる、ハーフセッション交代制
50m以上の間隔を空けたボートに2名で乗船、Aの競技中はBがコントローラーを務める
競技者がボートの操縦を行うこと
なし
セッション1セッション最短3時間、最長4時間
チャンピオンシップ: 1日1セッションx5日間
①A・B組み分け抽選
②一回戦: 同組の隣合う番号同士がペアとなって1:1対戦(20分)
③二回戦:A勝 vs B勝、A負 vs B負(40分)
④三回戦: 勝ち組の中で1〜3位の順位決め、負け組全員の中で1位決め(30分)
⑤決勝戦および3位決定戦 (30分)
プレゼンテーション規定なしなし
タックル本数制限同時使用は1セットまで
スペアタックル本数に制限なし
岸釣りの場合はスペアタックルを組んだ状態で持ち運びOK
ボート釣りの場合はスペアタックルをセットしてはいけない(リールも外しておくこと)
同時使用は1タックルまで
スペアタックルは4セットまで
使用タックルにはフライまでがセットされた状態にしておくこと
フライロッド12フィート以下11フィート以下
フライリール一般的にフライリールとして製造されているもの一般的にフライリールとして製造されているもの
フライライン全長22m以上、直径0.55mm以上の市販品のフローティングラインとシンキングライン両方を使うこと

シューティングヘッド禁止

フライラインへの浮力体やオモリの追加禁止
フルラインの場合:
規定なし

シューティングヘッドの場合:
ヘッド全長6m以上であること

フライラインへの浮力体やオモリの追加禁止
リーダー&ティペット全長はロッド2本分まで
全体が同じもしくは先端へ行くほど細い直径であること
接続部分に限り、直径3mm以内のマイクロリングを最大3個まで使っていい
インディケーターおよびシンカー禁止
制限なし
フライリアル・バーブレス(化学研磨)のシングルフックを3本まで、ドロッパーの間隔は50cm以上空けること

サイズ、ビーズ/ウェイト、ドレッシング規定あり
バーブレスのシングルフックを1本まで
サイズ・色に制限なし
ペンチでバーブを潰したものも可
ワーム素材、ジグ、トレーラー素材は禁止
空バリ禁止
ランディングギア全長122cm以下全長140cm以下
レギュレーション違反に対してペナルティ1つに対してマイナス1ポイント

FIPS-Mouche ワールドチャンピオンシップ

暦年の強豪、泣く子も黙る「Teamフランス」!(写真提供:国見さん)

1981年からヨーロッパを中心に開催されている世界選手権。5日間かけてリバー、バンク、ボートの全てを競う総合大会となっており、スポーツマンシップとフィッシュケアに重きを置くこの大会の中から、「ユーロニンフ」や「ロック・スタイル」など、新しいフライフィッシングのテクニックが生まれてきました。

世界大会は環境保全のシンポジウムが必ず開催されることになっていますので、スポーツの祭典としてだけでなく国際交流の場としても見逃せない機会を提供しています。

年度開催国チーム
2022スペイン金:スペイン
銀:フランス
銅:チェコ
2021フィンランド金:フィンランド
銀:フランス
銅:スペイン
2020新型コロナ・パンデミックのため中止
2019オーストラリア金:フランス
銀:チェコ
銅:スペイン
2018イタリア金:フランス
銀:チェコ
銅:スペイン
2017スロバキア金:フランス
銀:チェコ
銅:スペイン
2016アメリカ金:スペイン
銀:フランス
銅:アメリカ
2015ボスニア金:スペイン
銀:アメリカ
銅:ボスニア・ヘルツェゴビナ
2014チェコ金:チェコ
銀:フランス
銅:イングランド
2013ノルウェー金:チェコ
銀:イタリア
銅:フランス
2012スロベニア金:チェコ
銀:イタリア
銅:スペイン
2011イタリア金:イタリア
銀:チェコ
銅:ポーランド
2010ポーランド金:チェコ
銀:フランス
銅:スロバキア
2009スコットランド金:イングランド
銀:フランス
銅:スコットランド
2008ニュージーランド金:チェコ
銀:ニュージーランド
銅:フランス
2007フィンランド金:フランス
銀:チェコ
銅:フィンランド
2006ポルトガル金:チェコ
銀:フランス
銅:スペイン
2005スウェーデン金:フランス
銀:ベルギー
銅:スペイン
2004スロバキア金:スロバキア
銀:チェコ
銅:フランス
2003スペイン金:フランス
銀:ベルギー
銅:スペイン
2002フランス金:フランス
銀:ベルギー
銅:スペイン
2001スウェーデン金:フランス
銀:フィンランド
銅:チェコ
2000イングランド金:フランス
銀:ウェールズ
銅:オーストラリア

近代オリンピック精神に見られるスポーツマンシップや多様性への理解を通じて、グローバル関心事である環境問題を共有することで、国際的な友情を育む舞台ともなっています。

国籍や性別を超えて、地球規模で友達の輪が広がります!(写真提供:国見さん)

ATFC エリアフライフィッシングトーナメント (旧トラウトキング選手権大会 フライフィッシング部門)

止水の管理釣り場「エリア」をフィールドにした、フライフィッシングのトーナメント。ルアーの現行大会と同じく、バトル方式で優勝までを競います。1匹1ポイント方式をネットに入った状態=ネットインでカウントするので、世界中のどの大会と比べても圧倒的なハイペースでキャッチ&リリースが行われています。その速度、「毎分1匹じゃないと決勝進出ラインに届かない」と言われるほど!

タックルやネットの規定はありますが、エリアに応じたフライ制限さえクリアーしていればシステムは自由。ただ、インジケーター・ニンフィングと引っ張りフィッシングの間で開催ルールが固まらない状態があったようです。

トウキョウベイ シーバス フライフィッシングトーナメント

大都会の前に広がる東京湾をフィールドとするソルトウォーター・フライフィッシングのトーナメント。ボートフィッシングのみで行われています。

トウキョウベイ シーバスフライフィッシング トーナメント
競技理念TBSFT実行員会およびNPO法人 ジャパンゲームフィッシュ協会(JGFA)による、都会の海を舞台にキャッチ&リリース精神を啓蒙する大会
スコア方式レギュレーション下および制限時間内でのキャッチ&リリースされた対象魚(スズキ、ヒラスズキ、タイリクスズキ)のうち又長サイズ40cm以上の最大サイズ5匹の合計サイズ数をポイントとする

例) 64.8cmx1、40.2cm x 1、35cm x1の場合:
65 + 41 + 0 (40cm未満カウントせず)=106ポイント
参加形式チーム参加およびチーム成績と個人成績
参加申込制、定員30名
チームキャプテン、メンバー、ボートキャプテンのチーム
参加カテゴリー一般
公式戦個別大会のみ
非公式戦なし
競技方式:リバーフィッシングなし
競技方式:バンクフィッシングなし
競技方式:ボートフィッシング3名以下の競技者およびボートキャプテンのチームが各自ホームポートから出船
大師運河河口に集合してゲーム開始

セッション1セッションのみ、5時間
プレゼンテーション規定3名以下の競技者およびボートキャプテンのチームが各自ホームポートから出船
大師運河河口に集合してゲーム開始
タックル本数制限同時使用は1セットまで
スペアタックル本数に制限なし
スペアタックルを組んだ状態で持ち運びOK(トローリング、ハーリング禁止・・・東京都条例)
フライロッド規定なし
フライリール一般的にフライリールとして製造されているもの
フライライン規定なし
リーダー&ティペット全長は12フィート、6kgテスト以下
フライ規定なし
ランディング規定なし
レギュレーション違反に対してペナルティ規定なし

TFFCCがお世話になっている、「シークロ」と「パラスFGS」の名スキッパーたちも、このトーナメントを支えています。

その他の大会について

ここでは有名なトーナメントを取り上げましたが、メーカー協賛で行われる「Varivasカップ」や管理釣り場で個別に行われる大会のフライ部門まで様々な形で執り行われています。

「TFFCCフライスコアリング」が始動!

TFFCCではクラブのポリシーを体現化するため、海外での大会と日本国内で行われている大会との互換性を保ちつつ、「スポーツアングラーの成長」を促進するため、1cm サイズ x 1チェック = 1ポイントの「スコアリング」部分に着目して、「リバーフィッシング」「バンクフィッシング(岸釣り)」「ボートフィッシング」の3つの分野において行われる「フライスコアリング」を2022年シーズンより開始しました。

スコア目標を設定してフライフィッシングを行うことで、スキル・経験値・戦略の向上につながり、互換性のある大会へ出場することだけでなく、日常的にフライスコアリングを楽しみながら行うことで、「あのフィールドの難易度ってこれくらい」「いま、どれくらいフライフィッシングで結果が出せるレベルなんだろう」「スキルアップ、スピードアップの目標をコーチに数字で示したい」といったベンチマーキングを行いながら、さまざまなフィールドや魚種を相手にしたフライフィッシングの楽しみが広がっていきます。

さらに対象魚種もトラウトだけに留めず、フラデバやカーピング。フィールドもソルトウォーターまで含めて楽しめるような内容で競技開発を進めています。

この記事のアドバイザー

FIPS-Mouche 世界選手権のTeam Japan出場経験者のTFFCCメンバーと、全英ユース選手権経験者のメンバーのご協力をいただいています。

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