グランピングの原点? テントいろいろ

2020/11/25グランピング,テント,フライフィッシング

グランピング=グラム(Glam) + キャンピング(Camping)の造語。お洒落に快適にキャンプを楽しむことをそう呼びます。

私の場合は家族や友人と眺めの良い景色の中で、音楽を聴いたり、お酒や料理を楽しんだりとマイペースにのんびりしたいので、バランス良く快適さが提供されるロッジテントを使ったグランピングを始めました。それからいろいろと調べを進めていくと、これは一例でしかなく、室内を快適にアレンジする、という事において、世の中にはいろいろなグランピングがあるようです。「大人の隠れ家」的な、カップル向けに大型サファリテントで作ったベッドスペースもグランピングだし、音楽フェス会場でドームテントの中にカーペットや布団を持ってきて超・快適な寝っ転がりスペースを作るのもグランピング。

反面、私が学生時代にやっていた登山キャンプや森林縦断キャンプ、下山せずに渓流で釣り続けるためにタープと寝袋だけで行う沢キャンプは「野営」であって、とても優雅さや快適さとは縁の無い世界です。式布一枚だけで焚き火を囲んで寝るカウボーイキャンプのイメージです。

つまり、野外にいる状態を、野暮な「屋根があればいい野営」だけで終わらせる事なく、「文化」という名の「食う寝る遊ぶ」をどれだけ充実させるか、という点がグランピング共通なのかもしれません。そのどこにどれだけ重点を置くかは、各自が自由にクリエーティビティを発揮する、ということなのではないでしょうか。

という勝手な解釈のもとに、「テント」という仮設空間で何ができるのか、それを少し模索してみました。

山小屋

いきなり前提を裏切るようですが、快適さを求める人たちはなぜロッジテントを求めるのか。それは好きな景色の場所へ移動できる小屋(=ロッジ)が欲しいからではないでしょうか。私のアウトドアの原点は、小さい頃に住んでいた読売ランド近くの家の裏山に、祖父が丸太で作った山小屋でした。中は12畳くらいの広さで、囲炉裏を囲むスペースと座敷のスペースに分かれていて、布団を敷いて泊まることもできました。寒い雨の日は、ここで焚火をしながらぬくぬくと過ごすのが楽しみで、森の中と小屋の中の行き来が楽しく、屋根のある快適なアウトドアだったと思います。入口と中には灯油ランプが吊ってあり、ストーブも置いてありました。

囲炉裏を囲んでの料理や会話が楽しかった記憶が鮮明なので、我が家の場合は、これがグランピングの根幹にあるのだと思います。

サーカスの会場テント

その後、家族と長距離ドライブで車中泊をしたり、カブスカウトや山岳部でテント泊をしたり、いつしか「キャンプ=野営手段」という感覚に刷り込まれていったためか、色々と訪れたサーカスや音楽などのイベント会場も、ほとんどは「テント」だったという事実にはあまり気を払いませんでした。それでも、90年代にLAのサンタモニカで始めてシルク・ド・ソレイユの「Nouvelle Expérience」を見た時に、「うわー、すごい!」と巨大なイベントテントそのものに圧倒されたのは覚えています。同時に開演までの間、「これが強風で崩れてきたらどうしよう・・・」という不安が頭をよぎっていた記憶が鮮明なので、テントで作られた危なっかしい会場であるという認識は強かったに違いないです。

チケットオフィスのテント、ショップのテント、メイン会場のテント、機材用テント、スタッフ用テントと全てが黄色と青のストライプで統一されていて、あちこちに空調や配電のための機械が置いてあるのが印象に残っています。ここまで来ると、「建造物」のレベルですが、大衆へ娯楽を提供するというのは、究極のテントの使い方だと思います。

ファッションショーの会場テント

その後、学生としてニューヨークに住んでいた時に、たまたまファッション関係の知人からの紹介で、ニューヨーク・コレクションの会場へ潜入したり、会場アルバイトとして体験する機会が2回ほどありました。42丁目のパブリックライブラリーの横の公園に「これでもか!」という数の白いテントがひしめいていて、全てが連結されていたのを覚えています。

ここで目を疑ったのは、エントランスの先はラウンジスペースになっており、着飾ったファッション関係者やモデルがシャンペンを飲みながら会話を楽しみ、時間になると複数設置された専用テントの中の「キャットウォーク」に記者やバイヤーが集まり、音楽や演出盛りだくさんのファッションショーが開催されていたことです。

ファッションモデルたちが登場する舞台のすぐ裏のスペースに入ることができた私は、パンティー一丁&トップレスでうろつくモデル達の中をすり抜けながら、彼女たちのパウダールームや業界人の控室となっているテントへシャンペンを持っていったりしていたわけで、、、、キャンプ場とは対極の、ラグジュアリーかつ幻想的なテント空間というものがこの世の中には存在することを知りました。大都市の中にテントを設営すれ場合、そこには必然的に都市空間が生まれます。

野外音楽祭の会場

音楽フェスの会場といえば、グラストンバリー音楽祭に代表されますが、まさにテントの大集団、いや見世物市といってもいいくらいの規模です。会場はほぼ全てがテントで構成されており、ステージも売店もテント。寝る場所は早い者勝ちで会場にテントを持ち込むか、少し高台には業者が設置したテント村があり、ちょっとしたホテル並の料金でグランピングもできます。

音楽祭会場は、テント村とグランピングが混在している空間ですが、参加者と出演者のどちらもが仮設空間の中で出会うというのは、他に例を見ないと思います。

バザーやフリーマーケットの会場

ポップアップテントを使った普遍的な風景ですが、夜番をするために周りを幕体で囲って中に寝泊まりする人もいるので、これも立派なテント村です。パリだったと思いますが、ポップアップテント2つを連結させて中にペルシア絨毯やクッションを敷き詰め、リラックス空間の中で占いをやっているのに参加した事があります。そのままそこで暮らせるなーと思ったので、ポップアップテントでも幕体を使って空間を作ればグランピングは可能じゃないでしょうか。

子供たちの視点

と、理屈っぽくグランピングの手がかりになるものをあたっていきましたが、我が家のチビたちにいわせると、ステーションワゴンの荷台をお座敷にして家から持ってきた布団やクッションを敷いて寝るだけで「充分に楽しいキャンプ」なのだそうです。自分たちのおもちゃを満載にしたミニ・トランクを持ち込んで、それをテーブル代わりに使っておやつを食べたりして、どこへ行っても子供部屋をそのまま持ち込んでいます。これも究極のグランピングでは?いや、グランピングを思いついた人たちは、きっとこういう環境で育って、そのまま大人になってしまったのだと思います。

場所によっては、テントというものに束縛される必要もありません。アウトドアの中にいかに快適な「食う寝る遊ぶ」をつくるか。それがグランピングの原点なのではないでしょうか。今後はその視点でいろいろと試してみようと思います。

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