ユーロニンフの基本とタックル選び

2024/11/28フライパターン,フライフィッシング,ユーロニンフ

フライフィッシングにおける釣り方を大きく分けると、川で行われる「リバーフィッシング」、湖岸や海岸で行われる「バンクフィッシング」、湖や海でボートから行われる「ボートフィッシング」の3つに分かれます。

この中で、リバーフィッシングで使われるニンフにジグの要素を融合させて、ニンフが得意な自然な食わせ方もできれば、ボトムに近い水中のピンポイントを狙う釣り方もでき、ジグフライならではの常にフックポイントが上を向いた根掛かりしづらい形状、リアルバーブレスならではの刺さりの良さ、刺されば上顎なのでファイト中もバレづらく、さらには深く飲まれづらくリリースしやすいといった総合的な利便性から使われるようになったのがジグニンフです。

ジグニンフで徹底的にポイントを探る

従来型ニンフとは違い底から狙えるニンフ

従来のドライフライを起点としたニンフィングでは、水面で起きている変化を捉えながら必要に応じてレンジを下げていく流れでニンフの釣りを組み立てますが、実際は8割の魚がボトムへ定位して餌が流れてくるのを待っています。

競技から発展したユーロニンフでは最初からボトム〜中層レンジの魚を狙います。また、ショットと同等かそれ以上の重量があるので水流の中でフライをコントロールしたりアクションさせることも得意です。これをフライ単体だけで使ったり、ポイントフライ(リードフライのこと)としてドロッパーと一緒にリグを組んで釣るために特化されたのがユーロニンフのシステムです。

フランス代表チームが考案したため「フレンチニンフ」とも呼ばれるジグニンフの一種

競技団体 FIPS-Moucheが主催するフライフィッシング世界選手権における強豪国のチェコ代表チームが初めて使い出したニンフのシステムなので、昔は「チェコニンフ」と呼ばれていました。その後ポーランドやフランス、スペインといった他のヨーロッパの国々の代表チームも独自のジグフライやテクニックを生み出して発展してきたために、英語圏から見て「ヨーロピアン・ニンフィング」略して「ユーロニンフ」と総括して呼ばれるようになりました。

一口メモ

大会選手たちは決して川におけるニンフの釣りだけをしているわけではなく、大会中は湖の岸釣りやボート釣りも行われていますので、「ユーロニンフィング」とは呼ばず、「コンペティション・フライフィッシング」と呼んで、その中一つの方法として「ニンフィング」をドライフライやウェットフライ、ストリーマーなど総合的な釣りの中で行っています。

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ユーロニンフのタックル&システム

大会ルールでは最大3つまで規定を満たしたフライをセットすることができるので、先端のポイントフライやドロッパーは、ニンフでもウェットフライでもドライフライでも構いませんが、川に限定すると全体を重たくしたほうが遠くまでキャストしやすいこと。水中を重点的に攻めるほうが一般的には釣果が出るのでジグニンフとビーズヘッドニンフだけで構成することも多くなっています。ヨーロッパも国や地域によっては最大2つまでしかフライを使ってはいけない場所もあったり、シングルフライ限定の場所もあります。

また普段のレクリエーションの釣りではあえてドロッパーを組む必要がないことも多く、日本国内の河川ではシングルフライの使用がルールとなっている(枝針禁止やサビキ禁止)ことが多いこともあり、これを不便と思わず、むしろ交換しやすく微妙な変化が分かりやすいシングルフライならではのゲーム性の高さが楽しまれています。

タイトライン・ニンフィングとも呼ばれる、ダイレクト感が魅力のフライフィッシング

ユーロニンフィングでは低番手のティップ感度の良いロッドを使い、水流に対する抵抗を減らすためにテーパーのついていないラインシステムを通じて、魚のレンジを直撃する中でコントロールや感度の邪魔となる「後付け」インジケーターやショットを一切使いません。そのためティペット、カラーリーダー、フライラインが全てレベルラインかつ魚からのストライクを伝えるアンカーポイントが水中にあるため、テンションを維持しやすく「タイトライン・ニンフィング」や「コンタクト・ニンフィング」とも呼ばれます。

ドライフライのようにドラグを回避するためにわざとスラックを作ったり、ウェットフライのようにラインシステムごと沈めていく必要がないため、素早くフライ先行の状態を作り出してから、魚の前アタリから本アタリ、フッキングからファイト中の全てをダイレクトに手元に感じながらやり取りができるため、スピーディーかつエキサイティングな釣りが楽しめるのが最大の魅力です。

従来型のフライフィッシングでは狙いづらい「点」を狙える

また、フライラインを置くスペースに悩まないことやインジケーターやショットによる動きの制約がないため、驚くほど手前側や狭い場所にフライを打てたり、ドライフライやウェットフライでは狙えない複雑な流れの中や、障害物に囲まれた水中の「点」さえも立体的に狙えるため、従来型のフライフィッシングでは考えられないほどの正確さと手数を釣ることが可能です。

岩盤や倒木など複雑な地形が面白い奥日光の湯川では、立体的に狙える「点」はドライフライと比較して30倍以上になることも!

ショートライン・ニンフィング

狙う場所の真横に立って、45度上流へジグニンフを円を描く動作のタックキャスト(フリップキャスト)で振り込んでから、レンジを決めてロッドティップ直下を流して行く釣り方です。強めのテンションを保ったまま底へ沈めたジグニンフをロッドティップ先行で45度の角度を保ちながらリードしていくドリフトが基本ですが、中層でフライを気づかせたい時や川底の変化へ対応するために、ラインハンドを使ってラインテンションを張ったり・緩めたり、ロッドハンドを使ってロッドティップ位置を平行にずらして流れと異なる速度へ加速・減速させて流し方をコントロールします。この時カラーリーダーを見ながら流し方を調整しやすくするためにロッドハンドを水面より高く掲げることから「ハイ・スティック」とも呼ばれます。

テンションの維持とフライのコントロールが重要なので、余計なラインをフライリールやロッドティップから一切出さず(=ショートライン)、リーダーまでをティップから出した状態で手前のレーンから奥のレーンまで手返し良く正確にプレゼンテーションしていきます。

熟練のショートラインでcm刻みを流す、小松澤選手

また、ポイントフライはポイントや状況に応じて異なる大きさ(=重さ)のビーズヘッドを使ったジグニンフを使い分けます。ピンポイントに狙えるので障害物の下へ隠れた魚を誘い出したり、透き通った浅瀬で見えている魚をサイト・ニンフィングすることも得意なプレゼンテーションです。

トーナメントや釣り上がりのように、制限時間内に手返し良く正確にポイントを狙いながら釣り進める場合はショートラインが釣果を伸ばしやすくなります。

源流のショートライン・ニンフィングで釣った反転流の中に潜んでいた良型ニッコウイワナ

ロングライン・ニンフィング

狙う場所が流れの中央より反対側の離れた場所だったり、強い流れの中で十分に沈めるために45度よりもさらに上流へフライを入れる必要がある時、あらかじめリーダー全てとフライラインの一部を引き出しておいて、大きく円を描くロブキャスト(ベルジャンキャストの応用)を使って継続的にロッドに負荷をかけて反発力を作り、そのまま円運動から狙った方向へシュートして釣ります。

フライラインまでロッドティップから長く出す(=ロングライン)ので、ラインハンドでシステム全長をコントロールしながらテンションを維持したプレゼンテーションをしていきます。使うフライラインの直径が太すぎると「サグ」と呼ばれる、ラインの重みでリーダーが手前へ寄ってきてしまう現象が起きやすいので、テーパーのついていないレベルラインのニンフィング用フライラインを使うことが一般的です。

セットしたティペットよりも深い場所を探る時はカラーラインとなっているリーダー部分も水中へ入れて、テンションを確認しながらショートラインと同じく川底や水流の変化を捉えるようにプレゼンテーションしていきます。また、横方向の動きも使って対岸から手前へ誘いをかけたり、ジグフライを大きく底から浮き上がらせるスイングのような動きも演じやすいので、「点」にピッタリと潜む魚よりも流れの中に「線」として定位している魚を狙う時にはとても有効です。

ただし一回ごとにキャストしてプレゼンテーションする段取りなので、ショートラインでは警戒してしまう個体を狙う時や、手返しよりもじっくりと釣りたい・誘い出したい時に向いています。

ロングライン・ニンフィングで釣った、対岸よりのレーンの中で定位していたホンマス

ステップ1:フィールドに合わせてロッドの長さを選ぶ

公式ルールでは全長12フィート以下のフライロッドを使うこと、と定められています。

渓流を釣る場合は正確性と流れに対する素早い追従が最も重要なので、ショートラインがやり易い10フィートのロッドが基本となります。また、どのインストラクターや経験者に聞いても、学びの上達が最も早くなるのは10フィートと口を揃えて言います。

渓流で対岸をしっかりと狙ったり、本流・止水を釣る場合は10フィート6インチまたは11フィートが必要となります。10フィートと比較してロッドのトルクも大きくなるので、レベルライン・フライラインを遠くへキャストしやすくなります。ヨーロッパの大会選手や北米でレクリエーションのニンフィングを行うアングラーたちは探る距離を少しでも伸ばすために11フィートを選ぶことが多くなっています。

ステップ2:感度とフライのキャストしやすさ、ファイト性能でロッドの番手を選ぶ

3番はバランスが良く基準の番手となっています。さらに繊細さを求める場合は2番を選び、手返しの良さとファイト性能を求める場合は4番を選びます。

プレゼンテーション中に底と魚のストライクの違いを明確に察知したい場合、できる限り繊細なティップのロッドを使う方が有利なので、その場合は2番を選ぶのが最高の選択肢となりますが、ロッドのバットセクションも細くなるので、大きな魚をかけた場合や狭いフィールドで魚とやりとりする際にはテクニックやファイトタイムを要求されます。また、あまりにも重たいニンフは投げづらくなるので、ドロッパー・システムを組む場合は、一つあたり3mm以下のタングステンビーズをつけた0.3グラムくらいのフライが最大サイズとなります。

4番は目安として50cmの魚までを想定しており、大型の個体がストックされている管理釣り場や北海道、トラウト以外の魚種などを釣る場合に安心な番手となります。また、公式ルールで許される最大直径4mmのタングステンビーズを使った、一個当たり0.5グラム以上のジグフライでドロッパー・システムを組んでも楽にキャストできるので、手返し良く釣り進めたい場合や、本流や深場も釣りたい場合はこの番手を使うことになります。

さらに5番や6番という番手も止水向けのロングロッドとして用意はされていますので、より大きな魚を狙うこともできます。

繊細さの10フィート2番から、リーチしやすい11フィート3番まで展開されている、Echoの「Shadow X」
一口メモ

日本の渓流釣り場のほとんどは、連針=ドロッパーを使った仕掛けを禁止していますので、シングルフライで釣る場合は、2番のユーロタックルでも0.3〜0.5グラムのジグフライ一つを投げるのにはそこまで苦労しないと思います。

ステップ3:性能と予算、好みのブランドからロッドを選ぶ

ユーロニンフィング用のロッドに求められる、「ティップセクションの感度の良さ」「先端1/3の柔らかさ」「ミドルセクションのキャスト性能」「バットセクションのファイト性能」を完璧に備えた超軽量ロッドというのはなかなか作ることは難しいようですが、高価格帯にも関わらず最軽量で人気のSage ESNシリーズから、TFFCCメンバーと縁のあるScottやEcho、PrimalやR.L. Winston。あまり聞かないブランドまで、さまざまなメーカーからユーロニンフ専用ロッドが作られています。

フライロッド長さと番手重量
Sage ESN (第二世代)2100-4: 10フィート2番
3100-4: 10フィート3番
3106-4: 10フィート6インチ3番
4100-4: 10フィート4番
70-80gクラス
Sage Sense3100-4: 10フィート3番
3106-4: 10フィート6インチ3番
4100-4: 10フィート4番
80-90gクラス
Redington Strike Euro Nymph3100-4: 10フィート3番
3106-4: 10フィート6インチ3番
4100-4: 10フィート4番
3110-4: 11フィート3番
4110-4: 11フィート4番
90-100g クラス
Echo Shadow X10フィート2番
10フィート3番
10フィート6インチ3番
11フィート3番
70-90gクラス
Echo Shadow II10フィート2番
10フィート3番
10フィート6インチ4番
80-90gクラス
Echo Carbon XL Euro Nymph10フィート3番
10フィート4番
90-100gクラス
G. Loomis IMX-PROe Euro10フィート2番
10フィート3番
カタログ表示なし
Scott Centric (Radian 後継)C1004/4: 10フィート4番
C1005/4: 10フィート5番
C1006/4: 10フィート6番
70-80g クラス
R.L. Winston Boron III Super 1010フィート3番
10フィート4番
10フィート5番
カタログ表示なし
Thomas & Thomas Contact II10フィート2番
10フィート9インチ2番
10フィート3番
10フィート9インチ3番
11フィート2インチ3番
10フィート9インチ4番
10フィート8インチ6番
80-90g クラス
Primal Zone10フィート2番
10フィート6インチ3番
10フィート4番
カタログ表示なし
Primal Contact10フィート3番
10フィート4番
カタログ表示なし
Syndicate P2 Pipeline Pro Series※更新中
River Peak10フィート2/3番
10フィート3/4番
80-90g クラス

ステップ4: フライリールを選ぶ

一般的にグリップ位置でフライロッドとフライリールがバランスを取れるようにしますが、ロングロッドですので5/6番ラインを巻くことを想定しているフライリールでラージアーバーかつ軽量のものが、ロッドティップから伝わるダイレクトな感触を殺さずベストバランスとなります。2番ロッドと合わせる場合などで、ロングライン・ニンフィングの時のティップ感度を高めたい場合はあえてより小さいフライリールを使うという手もあります。

ユーロニンフィングでは細いラインシステムを使いますので、アウトスプール仕様のフライリールの場合、スプールとボディの隙間にラインが入り込んでしまうトラブルが多発します。できればインスプール仕様のフライリールが好ましいですが、専用リールとされているものでは、セットするロッドの重さ・長さやロッド保持するポジションに合わせてリール自体のウェイトを可変できるものもあります。

また繊細なフライ操作が要求されるロッドに全てのファイト性能を要求するよりも、リールファイトでカバーする方が効率的であると考えると、ドラグがしっかりしているディスクドラグリールが最も適していると言えます。

フライリール大きさ・重さ説明
Sage ESN直径98mm、140グラムインスプール、ウェイト調整機能あり(1/2、1, 1 1/2オンス)
Redington TILT101mm、160グラムインスプール、ウェイト調整機能あり(1オンスx3)
Bauer RVR Euro Nymph95mm、139グラムインスプール
Hardy Ultradisc UDLA4000: 94mm、113グラム
5000: 99mm、120グラム
インスプール
Waterworks-Lamson Speedster HD -7+101mm、140グラムインスプール
Galvan Euro Nymph 3.5140グラムインスプール

ステップ5: フライラインを選ぶ

公式ルールでは、「最低22mの長さ」かつ「一番細い部分の直径が0.55mm以上」と決められています。ショートラインの場合はフライラインの重さを使ったキャストではなく、ロッド操作で振り込むのであまり意識しませんが、ロングラインの時はフライラインの負荷も使ってロッドを曲げるベルジャンキャストを行いますので、許される限り細いラインがシュートの時に抵抗にならず有利となります。

また、流れをまたぐプレゼンテーションを行うことになるので、テーパーが付いていない「ニンフィング用」とされているレベル・フライラインの方がダイレクト感を維持できるので主流になっています。

フライライン説明FIPS対応
RIO FIPS Euro Nymph2-5番ロッドにフィット、全長24m、両端にループ。FIPS-Mouche公認のニンフィング・ライン。公式
Airflo Nymph2-4番ロッドにフィット、全長25m、両端にループ。先端1.2mが蛍光オレンジカラーで低ストレッチコアとモノコアのクリアーラインの2種類。FIPS-Mouche認定のニンフィング・ライン。認定
Dohiku Level Racing Line2-4番ロッドにフィット、全長24mのうち先端2mが見やすい蛍光カラーで両端にループあり。FIPS-Mouche 会長認定の本格的なロングライン・ニンフィング・ライン。ブレイデッドコアのローストレッチで感度抜群。認定
Scientific Anglers Competition Nymph2-5番ロッドにフィット、全長24m、両端にループなし。モノコア。FIPS-Mouche準拠のニンフィング・ライン。準拠
RIO Technical Euro Nymph2-5番ロッドにフィット、全長24mのモノコアラインに14フィートのレベルリーダーがシームレスに合体したライン。準拠
RIO Technical Euro Nymph Shorty2-5番ロッドにフィット、全長6mのモノコアラインに14フィートのレベルリーダーがシームレスに合体したライン。競技用ではなく通常のフライラインがセットされたタックルにアタッチメントとして接続して楽しむためのライン。×
RIO Euro Nymph Shorty2-5番ロッドにフィット、全長6m、両端にループ。競技用ではなく通常のフライラインがセットされたタックルにアタッチメントとして接続して楽しむためのライン。×

ステップ6:リーダー&ティペットを選ぶ

公式ルールでは、リーダーの末端からポイントフライに結ばれたティペットの先端までの全長はロッド2本分まで、末端から先端までの太さは均一もしくは先端へ行くほど細くなってなければならない、と定められています。フライを結ぶティペットは沈みやすいようにフロロカーボンを使いティペット部分は全長を川の深さの1.5倍にする、というのが定番になっています。

ドロッパーを結ぶ場合もティペットよりも太いティペットは禁止、というよりも同じ太さにしておいた方がシンプルかつシステムを組むのが素早くなるので理にかなっています。

また、水面で目印の役割を果たすリーダーの部分は目印となるカラーラインを使うことが許されていて、かつ、ストライクを弾かないようにストレッチ性のあるナイロンであるのが良いとされています。これらはユーロニンフ専用のものでなくても、クロダイ落とし込みや磯のフカセ釣りなど繊細なアタリを感知するように作られたものから選ぶのもアリです。

フランスやスペインの選手が使っている有名なシステムでは、好みの色のカラーリーダー同士をブラッドノットやサージョンズノットで結び合わせてマルチカラーのリーダーとして作ります。日本ではシングルフライしか許可されていないフィールドが多いので、ダブルエイトノットまたはエイトノットで結ぶのが素早くできておすすめです。

リーダー同士やリーダーとティペットの結び目はわざとカラーリーダー側を長く余らせることで、インジケーターとして機能させます。

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ただしハイプレッシャー河川ではリーダーの色が影響することもありますので、その場合はリーダー部分も魚から警戒されないものを使いますが、魚から目立たない程度にリーダーワックスを塗ることで(ルール上セーフ)インジケーター機能を持たせます。

ステップ7:ポイントフライ単体にするかドロッパーを組むか

初めからポイントフライ単体で釣ると決めた場合は余計なものがついていないのでティペットを直結します。

ドロッパーを組む場合は、大会ルールではティペットリングを最大3つまで使えますので、リードフライ(最も末端のフライ)やドロッパーを結ぶ前の部分にティペットリングをつけることでフライ交換を迅速に行うことができます。

ミニマリストで出来るおすすめのやり方は、ティペットリングを使わず、あらかじめフライを結んであるドロッパーのティペットをダブルエイトノットでメインラインへ結束する方法です。

ステップ8:フライ選び

システムを決めたら、いよいよフライ選びです!一般的にはポイントフライを最も重たいフライにして、ドロッパーは小さめのサイズを選ぶことが多いと言われていますが、シングルフライ規定が多い日本の場合は、好きなフライをどんどん試していくのが楽しいところです。

その時の魚の食性に寄せたマッチザハッチを意識してもいいですが、「これが釣れるのだ」という自分本位のフライを交換せずにプレゼンテーションのテクニックで釣っていくこともできます。手返しの良さに影響がなく、底を取る必要も無ければ、必ずしもジグフライである必要もありません。

また場面に応じてソフトハックルやウェットフライで表層を釣ったり、ポイントフライをアトラクタードライで浮かせておいてドロッパーにマイクロニンフを結んだり、ストリーマーを下流45°へキャストしてスイングさせたりもできます。

大会ルールに準じる場合は、使うフライフックは製造された時点で100%のバーブレスである必要があります。化学研磨されたバーブレスフック、とも呼ばれますがバーブを潰したとしても審査のための絹のハンカチにフックを刺して引っ掛かると釣果が無効とされるため、普段からリアルバーブレスに慣れておく方がいいでしょう。また、リアルバーブレスで製造されたフライフックの方がポイントの鋭利さや長さに制約が少ないのでパフォーマンスの高いものを選ぶことができます。

フライを一つだけ使う場合は、フライに許される最大の長さや幅は、その大会が定めるルールに従います。

実際の大会でフライやフライラインのチェックに使われる「FIPS-Moucheゲージ」

ドロッパー・システムに組む場合は、共通ルールが適用されます。それぞれのフライにおいて露出したビーズは一つだけ使えますが、それ以外のウェイトはフックのベンドよりも長さがはみ出してはならず、ウェイト部分の上からマテリアルがドレッシングされている必要があります。ビーズは最大直径4mmまでと決められておりゲージの穴を潜らない場合は使えなくなります。

また、フック全長はそれ自体がウェイトとして機能してしまうために、40mmまでとも規定されていますが、全長20mm以下のフックを使う場合は5mm幅のゲージをフライ全体がくぐり抜けられれば問題なしとなります。全長20mmより長く40mm以内のフックを使う場合は、3mm幅のゲージをフライ全体がくぐり抜けられる必要があります。

またドロッパーを使う場合、フライ同士の間隔は50cm以上空けないとなりません。

止水でもできるユーロニンフィング

さらに止水でも同様なシステムでニンフィングを行うことができます。川の流れとは異なり、フォールアクションを使い分けるプレゼンテーションとなりますが、このシステムは国内のエリア大会やバスフィッシング、クロダイ相手のソルトフライでも通用しました。今後、湖の釣りに応用していく予定です。

まとめと続き

これだけ書くと利点だらけのように思えるユーロニンフですが、こちらから「点」を見抜いて攻めていく釣り方なので、魚の着き場所を見つけるスキルが要求されたり、狙う「点」の数に対する魚の数が多くないと手返しは悪くなります。回遊している魚を狙ったり、遠い距離にいる魚を誘うことはとても苦手。シビアなフィールドや魚の生息が貧弱なフィールドではダイレクトな動きが災いしてスレさせてしまうだけのことも!

反面、条件がぴったりのフィールドでは、厳しいコンディションの中から魚を引き出したり、数を釣ることでしか引き出せない最大サイズの個体を誘い出せたり、そのフィールドの中ではどんな着き場所が好まれるのか、など水中環境の手がかりや学びがたくさんインプットできます。条件に対して合わせていくマッチザハッチの釣りとはいい意味で対極にある、こちらからアクティブに仕掛けていくフライフィッシングと言えるでしょう。

また、最先端のロッドは技術が進歩していて、レベルラインでもある程度の距離をキャストできてしまいますので、同じタックルでニンフだけではなく、ソフトハックルをキャストして操ればテンカラと同じ釣りができますし、ウェットフライをスイングさせることもドライフライをドリフトさせることもできるので近距離に特化して立体的な釣りができるポテンシャルはかなりのものだと思います。

条件に応じて、ドライフライやインジケーター・ニンフの釣りやウェットフライの釣りを別々に楽しむように、さらにフライフィッシングの幅を広げるニッチとして楽しんでいくのはいかがでしょうか?腕が上がれば、その先には世界選手権??未だフライで釣られていないトロフィーフィッシュ?

FIPS-Mouche関連

最新のルールについては、こちらを参照してください。

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