東京発のフライ フィッシング – 野生の魚たちとの出会い
「東京」という言葉を聞いた時に頭に浮かぶことは何でしょうか?人混みの多い街や急ぎ足で歩き去るサラリーマン?高層ビルの上から眺めたことがあれば、見渡す限り延々とコンクリートジャングルが広がっている光景かもしれません。とても野生動物の存在なんて意識することはないかもしれませんが、この写真の魚たち、実は全て東京都で釣ることができる野生の魚たちです。
今回は大都会「東京」に隠された、野生の魚たちとのフライフィッシングの世界を紹介してみようと思います。
南北2,000kmに長く伸びる「大東京」
首都圏のイメージが強い東京都ですが、実は3つの地区から成り立っています。北から南へ、陸続きの「多摩地区」と「東京都区部(23区)」、さらに海を隔てた「東京都島嶼部」が遥か南へ長く伸びています。
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多摩地区最北端の檜原村と奥多摩町は関東山地の一部である「秩父多摩甲斐国立公園」になっており、山地から集まった水が渓流を経て多摩川となり多摩地区を抜けて南東の東京都区部が隣接する東京湾へ向かって流れ出しています。その東京湾は浦賀水道を経て相模湾へとつながり、さらにその先は太平洋へと広がって伊豆諸島、小笠原諸島、沖ノ鳥島や南鳥島へ。この広大な地域には日本列島に3,800種いる魚のうち、2,000種が生息しています。こんな行政区は世界広しと行ってもここにしか無いでしょう。まさに大東京です。
多摩地区のフライフィッシング
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東京都区部(23区)の西側に隣接する多摩地区。その北西部は山岳地帯となっており、埼玉・東京・山梨をまたぐ秩父多摩甲斐国立公園の一部です。その山々を水源とする多摩川水系の奥多摩川や秋川などの渓流や山村を流れる里川では、ヤマメやイワナなどのトラウトを中心としたフライフィッシングをシーズン期間中に楽しむことができます。
東京都で唯一釣りができる湖である奥多摩湖(埼玉との県境の多摩湖と狭山湖は釣り禁止)には、流れ込む丹波川や小菅川などから落ちてきたトラウトだけでなく、琵琶湖産の鮎及び混入するオイカワやハス、ラージマウスバスやブルーギル、コイ・フナ、ワカサギまで幅広い魚種が生息しています。
多摩地区の中央には荒川と多摩川に挟まれた武蔵野台地が広がり、玉川上水などの中世からの水路もあれば、段差となった場所からの湧水が小川となって大きな川へ注ぎ込んでいます。多摩川本流にはスモールマウスバスやナマズ、ライギョやコイの仲間が生息していて、大小のターゲットを相手にウォームウォーター・フライフィッシングを楽しむことができます。また埼玉県との県境には荒川水系の河川の柳瀬川や黒目川。神奈川県へ向かって出っ張った町田市の県境には境川が流れ、これらも同様なフライフィッシングを楽しむことができます。
またシーズンオフでも楽しめる管理釣り場も渓流、里川、ポンドタイプと様々に点在しています。
- 多摩川水系
- 小菅川、丹波川、峰谷川
- 奥多摩湖
- 奥多摩川水系(日原川、大丹波川など)
- 秋川水系および平井川水系
- 浅川水系
- 多摩川本流及び支流
- 荒川水系
- 入間川水系(成木川、直竹川)
- 新河岸川(隅田川の上流)
- 柳瀬川、黒目川、白子川
- 境川(片瀬川上流)
- 管理釣り場
東京都区部のフライフィッシング
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多摩川や荒川の中流部では多摩地区と同じくウォームウォーター・フライフィッシングが楽しめますが、調布堰(多摩川)より下流側、秋ヶ瀬取水堰(荒川)より下流側は感潮帯となっているので、通年シーバスやマルタウグイを狙うことができます。
東京湾奥には多摩川と荒川だけでなく、荒川分流の新河岸川(下流では隅田川)、利根川の分流である江戸川を経由して旧江戸川が流れこんでいることや、江戸時代から造成され続けている埋立地が作り出す運河が網の目のように広がっており、豊富な餌に支えられて日本最大のシーバスの生息地となっているだけでなく、利根川から降りてきたサクラマスも少ないながら生息しています。
また、クロダイも人気なことから歴年稚魚放流が行われてきており、キビレも含め相当数が生息しています。その他、江戸前のコノシロやサッパ、ボラといった汽水域の魚たちもたくさんいれば、ハゼやメバル・カサゴといった沿岸に居つく魚もいれば、夏にはアジやサバも回遊してきます。
羽田空港近くは汽水域と干潟になっていてキビレやクロダイを狙うことも出来ます。
この広大な湾奥エリア。残念ながら2002年に定められたSOLAS条約により、テロ防止のために立入禁止地域だらけになってしまいました。しかし限られたポイントでも辛抱強くタイミングを狙って魚を待ち伏せするか、ガイドボートを使って手返し良くポイントを数多く廻るスタイルのフライフィッシングで数々のストーリーが生まれています。
都内の公園は全て「投げ釣り禁止」が通例ですが、テンカラ竿を使うことでブルーギルやハゼなどを狙うことができます。また港区赤坂には世界でも珍しい城の外堀を利用した常設釣り場があります。その他、季節限定で遊園地のプールを流用した釣り場でフライフィッシングを楽しむことができます。
- 多摩川水系
- 多摩川本流
- 荒川水系
- 荒川本流
- 隅田川と支流
- 新河岸川、石神井川、神田川、日本橋川、亀島川
- 利根川分流(江戸川経由)
- 旧江戸川、中川、新中川
- 東京湾への流入河川(神田川や目黒川など)
- 親水公園や釣りOKの公園・・・投げ釣り禁止の場合はテンカラを使ってください
- 運河や埋め立て地の海岸
- 羽田と葛西の干潟
- ガイドボート
- プレジャーボート(レンタル艇)
- 管理釣り場
東京湾〜太平洋までの通り道でフライフィッシング
東京湾は房総半島と三浦半島に挟まれた浦賀水道につながっており、さらに相模湾へ出た後に太平洋へと流れでています。これらの沿岸では春や秋にはイナダやカンパチといった青物、夏にはシイラやカツオも回遊してきます。
湾奥や横浜から出船してストラクチャーを狙ったインショア・フライフィッシングや、三浦半島や房総半島から出船してオフショア・フライフィッシングを楽しむことができます。また外洋からの潮が当たる磯にはヒラスズキも生息しており、岩場と隣接した房総半島のサーフではヒラメも狙えます。
東京都島嶼部のフライフィッシング
相模湾を超えた先は、いよいよ島嶼部に所属する大小219の島々が太平洋の中で待っています。島嶼部の主要な島へは東京港・竹芝桟橋から出航する東海汽船と小笠原海運のフェリーが結んでいて、伊豆諸島へは大島〜神津島への航路と、三宅島〜八丈島への航路、さらに小笠原諸島の父島へのフェリー航路が運用されています。伊豆諸島へは2〜12時間の船旅。小笠原諸島へは25時間の船旅となります。
伊豆諸島
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黒潮本流が流れ抜けるこの海域は黒潮の北側が温帯、南側が亜熱帯気候になっています。伊豆諸島北部の島々では、沿岸にはアジやサバ、南部の島々では沿岸にはカンパチやヒラマサといった青物、沖合にはバショウカジキやキハダマグロが回遊します。黒潮によって運ばれてきた稚魚たちが居着くことが多いので、全域でギンガメアジなどのヒラアジ類の子供が見られ、また島によってはヒラスズキの磯もあれば、ヒラメのサーフもあります。
ちなみに三宅島の大路池は東京都最南端のラージマウスバス生息地です。
小笠原諸島
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さらにはるか南の小笠原諸島の島々にはイソマグロやロウニンアジといった沿岸性の大型魚を始め、ハタやフエフキダイの仲間たち、メカジキやイタチザメといった南洋の回遊魚、さらには珊瑚礁にボーンフィッシュまで生息しています。
8番タックルをシマアジが曲げている間にサメに横取りされたり、10番タックルを飛び跳ねるクイーンフィッシュに振り回されたり、12番タックルに30lbリーダーがイソマグロに瞬時に切られたり・・・。釣りをしなくても、気がつくとイルカの群れやクジラの親子と遭遇する世界・・・。でも、そのすぐ後ろを品川ナンバーの車が通過するれっきとした東京都です。
ちなみに父島の八ツ瀬川にはティラピアが繁殖していますので、小さいニンフもあると楽しめます。
高速道路で近隣諸県へアクセス
東京は大きな山地に囲まれた関東地方のごく一部であり、32,420 km²の広大な地域には最大河川の利根川を中心に様々な一級河川が海へ流れ込み、様々なフライフィッシングのフィールドを作り出しています。
また、首都機能が集まる都心からは高速道路が東西南北へ伸びています。北へ伸びる東北道を進めば日本のフライフィッシング創世記を作った栃木県の奥日光まで2時間圏内となっていて、歴史的なトラウトやここでしか釣れないトラウトなどが狙えます。
トラウトを狙えるフィールドは埼玉県の荒川水系・群馬県の利根川水系にも広がっていますが、千葉県と茨城県には国内屈指のバスフィッシングのフィールドとなっていて、霞ヶ浦はもちろんバスが生息する湖沼や河川が広がっています。
- 神奈川県:丹沢の渓流や芦ノ湖
- 埼玉県:荒川水系の本流や渓流
- 群馬県:利根川水系の本流や支流、尾瀬の湖水
- 栃木県:奥日光の中禅寺湖や湯川など
- 千葉県:手賀沼や印旛沼、利根川水系の河川、房総半島の海岸
- 茨城県:霞ヶ浦や利根川水系の河川、涸沼や那珂川本流
- 静岡県:富士山麓の湧水系河川や富士五湖、伊豆半島の渓流・海岸など
フェリーや空港から先へ!
有明にあるフェリー港からは四国や九州へのアクセスがあり、バイクや乗用車ごと大きく移動することができます。
羽田にある東京国際空港からは、北は北海道、南は沖縄の日本列島各地はもちろん、世界へのアクセスも広がっています。4ピースが主流のフライロッドならば大型スーツケースに入れておくことも!現地の空港からレンタカーして移動すればいいし、海外ガイドツアーもあります。
TFFCCメンバーの祖国の釣りもそのうち紹介できればと思います。
まとめと続き
東京の意外な姿はいかがだったでしょうか?この壮大な大東京の水辺でフライフィッシングを楽しんでみようというきっかけとなれれば幸いです。
写真の魚達
左上から時計周りに: