ユーロニンフ「最強」:フレンチニンフ – 基本編
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2025年6月時点、WFFC (World Fly Fishing Championship = 世界フライフィッシング選手権)2025年大会の結果をもって、世界ランキング1位のフランスチーム。最多優勝12回で、歴代メダル獲得数はチームが29個、選手個人が26個。そして2025年チェコ大会ではWエースの一人が出場できない苦戦を強いられる中で、中盤から一気に追い上げて優勝。2024年フランス大会では「リバーセッション時速18.5匹」という驚異的なスコアを叩き出したのが、フレンチニンフ(フレンチニンフィング)です。
平たくユーロニンフと言われている中でも、西欧諸国のトップを突っ走るフランス。ライバルであるチェコを筆頭に畏敬の念を集めつつ最大限のマークを受けるレベルで釣れる秘訣およびシステムを解説します。
- 6/10: WFFC2025結果を反映
- 5/19: チェコニンフとの差を補足
- 4/26: フライロッドとセミオート・フライリール要件を追記
- 4/7: フレンチリーダーやサイター、フライリール、フライロッドにについて加筆・更新
- 1. 日本の在来トラウトで検証
- 2. プレゼンテーションの基本
- 3. Nymphe au fil 「細い糸のニンフ」=ショートライン
- 4. ロングライン
- 5. ストライク・フックセット・ファイト・ランディング
- 6. フライ
- 7. タックル&システム
- 8. フレンチリーダー(フレンチニンフリーダー)
- 9. フライリール
- 10. フライロッド
- 11. ウルトラライトかつタイトなギア&ウェア
- 12. フランスと「ニンフ革命1.0」の関係:シャルル・リッツと「元祖ヘビーニンフ」フランク・ソーヤ
- 13. ニンフ革命2.0 – ポーランドチームによるショートラインの誕生
- 14. ニンフ革命2.5 – フランスチームによるビーズヘッド、チェコによるジグヘッド
- 15. ニンフ革命3.0 – フランスチームによるフレンチニンフィングの確立
- 16. まとめと続き
- 17. この記事のメンバー
- 18. この記事のディスカッションに参加する | Join the Discussion
日本の在来トラウトで検証
細かい検証の前に、TFFCCエドが試しにフランスチームと同じタックル・システム・フライで、日本のトラウトの中では連続して釣るのが難しいとされる「ヤマメ」に挑戦してみましたが、魚を見つけてから1時間で7ヒット3チェック。その後、場を休ませたり、仲間へ交代したり、お昼休憩を挟んだりしながら、正味5時間弱で17ヒット10チェックでした。同じ魚を2度釣っている可能性も否定できず、大陸と海を隔てた日本でも通用することは実証できました。
魚が点在するハイプレッシャー渓流における探り釣りにも対応するのかも検証。小菅川源流や富士川系早川本流という人気河川でも問題なく効率的に釣れることが分かりました。
また「源流」という非常に狭い空間でも水面ありきのドライフライやルースニングでは攻めきれないポイントやコンディションは多く、その中から最大サイズの魚を引き出せることも確認。
シングルフライまたはダブルフライを使ったプレゼンテーションを駆使して、もはや「ニンフィング」という従来の概念では表現しきれないスーパー釣法、それがフレンチニンフです。
プレゼンテーションの基本
フレンチニンフの特徴である繊細で長いラインシステムの要はサイターリーダーであり、これを目印に使ったコントロールドリフトが最もベーシックなプレゼンテーションとなります。「コンタクトニンフ」とも呼ばれる所以ですが、魚がフライを探す前段階の「発見・必要が無く、初めからコンタクトさせることで即ストライクを狙い、手返しを最大化させます。
Nymphe au fil 「細い糸のニンフ」=ショートライン
ショートライン・ロングラインともに、自分より45度より少し上流にキャストして、狙うレンジまでフライを沈めたら速やかにサイターが水面から立つように馴染ませます。
サイターが馴染んだ状態から自分の真横までが最高のキルゾーン。流し忘れや狙うレンジよりも上の層の魚も狙いたい場合は自分の下流45度まで流し切ります。
ロングライン
流心の向こう側や反対側の岸を流す場合は、フライラインによるミドルキャストを使ったロングラインが必要となります。フライラインへのドラグが発生するため、メンディングを繰り返し入れながらショートラインと同様に流したり、届きづらい場合は、あえて横向きのテンションが発生しても誘いへつながるフライを使ってプレゼンテーションを成立させます。
詳細については別途「フレンチニンフ:プレゼンテーション編」でカバーします。
ストライク・フックセット・ファイト・ランディング
サイターだけではなくその周囲の水中に注意して見続けます。使うフライの重さや水深にもよりますが、魚のフライへのストライクは必ずしもサイターで拾い切れないこともあるので、水中の魚の動き→サイター→ロッドティップ感度の順に感覚を駆使してストライクを読み取ります。
原則、魚のストライク位置に対して下流側へロッドを倒してラインスラックをなくして確実にフッキングさせるまでロッドは立てず、「載せ」状態になってからファイトおよびランディングへ移行します。ショートバイトが多い場合などは積極的な「掛け」も行います。
リリースする魚の確実な蘇生のため、競技の場合は最短時間でランディングまで持っていく必要があるため、ファイトからランディングにかけても最短時間を意識します。
詳細については別途「フレンチニンフ:ストライク〜ランディング編」でカバーします。
フライ
EUのリーダーとして大陸ヨーロッパの情報も広く集まるのがフランスの強み。独自のフランス語圏のフライ文化だけでなく、イギリスとの近さやカナダを通じて英語圏からの情報も速いのが特長です。ベースにあるものは、ユーロニンフ以前からよく釣れるニンフやスパイダーを原型に、伝統的なフランス-スイス・ドライフライで使われるCDCを流用したりなど、革新的な要素を融合させたフライを生み出すのがフレンチニンフで使われるフライの特徴です。
またチェコニンフのように2−3個使って一気に低層レンジへフライを入れる方法ではなく、フレンチニンフは通常1−2個のフライを使うことでキャスト性とコントロール性、ストライク探知性能を徹底的に追求して同じポイントから最大限の反応を得ることを目的としています。
またストライクが大きく出せる相手には質量が大きいフライで最大限アピールを狙い、ショートバイトが連発するような時はストライクを大きく出すためにフライの質量を下げる=サイズダウンします。
タックル&システム
一般的なユーロニンフと比較して、フレンチニンフを特徴づけるのは、ルールが許すギリギリまで「細く長い」ラインシステムとセミオート・フライリール。
フライラインを使わずにレベルラインを使ったショートラインを多用することで、ユーロニンフの始祖と言われる「ポーリッシュニンフ」(ポーランドチームのニンフィング)、さらにそこから発展した「チェコニンフ」との最大の違いは、ショートラインの性能を徹底的に追求して科学的にストライクを増やし、必要に応じてロングラインも駆使することで、「手前から奥をムラなく、セクション全体を最大限攻める」性能を引き出しています。
また細いシステムの利点としてダブルフライを使えない浅いポイントやレギュレーションが課されたエリアやフィールドでもシングルフライでプレゼンテーションを十分に成立させられます。このラインシステムの出し入れを迅速かつトラブル無く行えるのがセミオート・フライリールとなります。
フレンチリーダー(フレンチニンフリーダー)
フレンチニンフ最大の特徴である、ハンドノットされた長いリーダーシステム。朝から日中にかけて見やすいトーンのバイカラー(2色)のサイターリーダーを使うことで水中の変化をとらえ、アタリの出るレンジを覚えてプレゼンテーションを調整します。
また、ハンドノットの利点として所定の長さごとに結び目を作ることができるので、異なる水深を釣り分ける時の目印として、さらに着色されたサイターグリースを塗ることでよりはっきりと見やすくすることもできます。
フランスチームに実証された完成品を使うと正確かつ時短で便利ですが、自分で好みの長さに組みたい方は自作フレンチリーダーを使うこともおすすめです。
ティペット
水深に応じて長さを変えます。サイターとの接続部分にはコネクターセクションかつ結び目をつけることで、サイターグリースをつきやすくします。しなやかなフロロカーボンを使うのが一般的ですが、細い糸で勝負する時は同じ直径でフロロカーボンよりも破断強度が高いステルス系ナイロンを使います。
サイター(サイターリーダー)
フレンチリーダーで最も特徴的な部分です。ティペット以上、テーパーセクション未満の直径のものを選びます。
色が切り替わる部分の上下1-2フィートを切って使うのが一般的にはテンションを殺さず・水中からの動きが分かりやすく、選手によってはロッドに近い部分のサイターリーダーを長めに作り深いレンジに対応させつつ、間を開けて短いサイターを組んで浅いレンジに対応させます。
テーパーセクション
ターンオーバーさせやすくするためにハリがあって、ロングラインする時に浮力があって魚から見えづらいナイロン系のステルスカラーのリーダーを使ってテーパーセクションを作ります。
国際競技ルールでフライラインから先のセクションは「先端まで同じまたは細くなっていかなければならない」と定められていますので、テーパーエンドはフライラインの直径未満、サイターリーダーの直径以上に設定します。
キャスト慣れしたエキスパートはあえてテーパーセクションをサイター&レベルラインセクションに置き換えたりもします。
ニンフ用フライライン
国際競技ルールが許すギリギリの0.55mmのレベル・フローティングフライラインを使うことで、ショートラインの時にリーダーシステムが手前へ寄ってしまうことを回避し、できる限り水面への影を減らし、ロングラインで最も頻繁なロッド2本分のキャスト性能を担保します。
フレンチニンフは原則として「手前から奥までムラなく攻める」ため、ショートラインとロングラインをシームレスに運用するために、トップガイドへ引っかかりづらいネイルノットでリーダーとフライラインを接続します。
フライリール
これもフランスチームの代名詞といってもいいレバー式のセミオート・フライリール。徹底的に手返しの速度を追求した結果、ロッドを持つ手にリール操作も集中させることで、反対のラインハンドはライン操作及びランディング時にネットを操作させる「完全分業」を実現しています。一回のレバー操作で2m以上巻き取れるため、プレゼンテーションが連続するニンフィングやドライフライ・ドライドロッパーの釣りでは非常に便利です。
フライロッド
競技レベルのユーロニンフィング用のロッドに求められる、「ティップセクションの感度の良さ」「先端1/3の柔らかい追従性」「ミドルセクションのキャスト性能」「バットセクションのファイト性能」を完璧に備えた超軽量ロッドというのはなかなか作ることは難しいと言われており、フランスチームのためのタックル開発を行うJMCが10年の年月とテストを重ねてエキスパート・モデルを実現しました。
シングルで使う18番サイズのジグニンフ(2.5mmビーズ)でもキャストしやすく、ヤマメサイズの魚の食い込みやショートバイトを「掛け」やすく、慎重な魚のアタリを「載せ」るのも得意なアクションです。また、強い魚を相手でも積極的にロッドのパワーを活用して「攻める」ロッドファイトを行い、スラックはすかさずセミオート・フライリールで回収することで、相手へ主導権を渡さずネットインまで持ち込みます。
標準:10フィート6-9インチ 2-4番
マイクロサイズから中型サイズのニンフを使うドロッパーリグも投げやすく、小〜中規模の川でもカバーしやすい、10フィート6インチ 2/3番が最も選手たちから支持されています。20-30cmの標準サイズの魚には手返しベスト。
プラス:11フィート 2-4番
11フィートの長さはよりワイドなアークのショートライン、よりワイドなループを使って、より重たいニンフを安全に扱えます。さらに不意の大物にも対処しやすく、岩が多い川でのコントロール性能も発揮してくれます
ロッドデザインによる性能差の例
フランスチーム制式ロッドを送り出しているJMCの提供する、競技レベルのニンフィングロッドでもモデルによって、コンセプトと機能性がかなり違います。
「JMC | Performer Infinity」のニンフ用モデル。40トンIMX10最新ブランクで、ドライフライロッドと同時開発だったこともあり、パフォーマーより少しファースト寄りのレスポンスの速さで精度を高めつつ着水直後からテンションを掴まえるのが得意です
ドライフライロッドからニンフロッドへ入る方にはピンと来やすいアクションで、またカーボンロッドの上に直接カーボン繊維編み込みグリップを組んであるので、ロッドティップからのフィードバックが感じやすく、通常フレンチニンフは「目で見て、サイターを見て、ロッドで感じろ」と云いますが、慣れないうちはロッドで感じる部分が大きいので上達が速くなるように設計されていますが、これはフランスチームが選手育成に求める理想を、ニンフ・ドライの2本だけに絞り込んだためでもあります
さらなるエース選手向けのハイスペックモデルはこちら。最先端グラフィンIM8複合ブランクによってティップ感度が最大限高めてあり、さらに番手幅を狭めることでティップセクションの弾性を高めているため、精度と感度が最大化されています
水中やサイターが怪しい動きをしたらティップのわずかな動きで「掛ける」タイプのロッドになります繊細な場面からファイトまでオールラウンドにこなすので、実はビギナーにも使い易い機能性を備えています。2024年世界大会中に「時速18.5匹」を叩き出したロッドなので、現在のところ世界最高パフォーマンスのニンフロッドと呼んでも問題ないでしょう。
エントリー向けロッドの場合に行う調整
コストパフォーマンスを優先すると、エントリーモデルを選ぶこととなりますが、マスターモデルやエキスパートモデルと比較してしまうとロッド性能が劣るとしても、ラインシステムやフライの質量を工夫することで、水中アクションやストライク感度を担保することで十分に普段の釣りを楽しむことができます。3.3mmビーズを使うシーンで3.8mm/4.0mmビーズを使う、2.0mm ビーズのフライを使いたい時はWニンフに組む、ナイロン部分を減らしてフロロカーボンの細い糸に置き換える、など、ロッド感度を補完する調整を行います。
ウルトラライトかつタイトなギア&ウェア
フィッシング・セッションの効率を最大化するためには、タックル&システムやプレゼンテーションの効率化に限らず、足回りやランディング処理後の次の行動など、手返しの速度を徹底的に追求していきます。これは同時に動きやすさとなり、疲れづらく怪我の発生も軽減されるので、各自が工夫するポイントです。
チェストパック
1箇所に長くステイすることを想定して設計されたフライベストと違い、チェストパックは必要なものだけを収納して体の動きに干渉しづらく設計されています。サイドをロックするストラップを素早く外すことで、前後回転させて背中側に収納したアイテムを取り出しやすいのもメリット。ラインシステムが引っかかりやすいDリングは最小限となっているので、自分の体型や動きに合わせた取り付けを工夫します。
アルミフレーム・超軽量ランディングネット
高性能ロッド・セミオオート・フライリールを使った積極的なロッドファイトで魚を疲れさせたら、即時「ネット受け」するのがフランスチーム流のファイティング・スタイル。片手で取り扱える200g級のアルミフレームのランディングネットは「右手・左手完全分業」に欠かせません。
フランスと「ニンフ革命1.0」の関係:シャルル・リッツと「元祖ヘビーニンフ」フランク・ソーヤ
徹底的にスピード効率を考え抜いたフレンチニンフですが、決して突発的に新しい創意工夫ではなく、フランスが関わるフライフィッシング全般及びニンフとの歴史から生まれてきました。
スイス生まれアメリカ育ちのフランス人フライフィッシャー、シャルル・リッツ(1891-1970)。リッツホテル創業者2代目の身分やフライフィッシングを芸術や哲学として世界へ広めたイメージが先行しているせいか、日本ではリッツを「伝統的偶像」として担ぐことが多いですが、どちらかというと彼は二重国籍を持つアメリカの影響を強く受け、トーナメントキャストからの学びから、体に楽で良く飛ぶフライキャストをエンジニア思考で作り上げて広めた「革新的」なスポーツマンです。
トップキャスターたちの凄技を分析して、当時のバンブーロッドの技術が許す範疇で効率よくロングキャストできるよう、速いラインスピードと槍のようなループを高い弾道で撃ち出すための「ハイスピード・ハイライン」を生み出した彼のフライキャスティング運動理論と実践のおかげで、一般アングラーも15m以上先を楽にキャストして釣れるようになり、その影響は彼が交流していた世界のトップキャスターを通じて、現在もフライキャスティング学習理論に息づいています。
そして当時イングランドのエイヴォン川のほとりの家を拠点とてリバーキーパー(水質から資源まで総合管理)を務めながら、マッチ・ザ・ハッチの釣りをサポートするための水中観察の結果から「多くの魚は水中で捕食している」事実に着眼して、ドライフライ全盛期だった当時のイングランドで、あえて実用的なニンフのサイトフィッシングを提案したイギリス人フライフィッシャー、フランク・ソーヤ(1906-1980)。
当時はドライフライ・ピューリタンたちから、「ニンフなんか餌だ」「ソーヤの釣り方をするものはクラブへの入会や釣り場の利用お断り」といった嫌われようでした。同じくニンフの代表と目されていたGEMスキューズらとまとめて雑誌での対立や陰口だけではなく、彼のホームであるエイヴォン川でさえドライフライ・ピューリタンと対立することもしばしば・・・。
文字通り、毛虫のように嫌われていた「ニンフの父」フランク・ソーヤですが、リッツはそんな彼を否定せず、彼のニンフをつかったサイトフィッシングをフライフィッシング進化の「必然」として正しく評価して取り入れたことで、イギリスでも実践派のオリバー・エドワーズを中心に評価を見直すことになり、ニンフの釣りは一般的に認められるようになりました。彼の生み出した「フェザントテールニンフ」や「キラーバグ」といった、銅線を使って重たく巻いた小型のニンフは世界中のフライアングラーに愛されています。
ニンフ革命2.0 - ポーランドチームによるショートラインの誕生
リッツのもう一つの功績は断絶されていた、ヨーロッパ非英語圏のフライフィッシングと英語圏、特に北アメリカのフライフィッシングとの間の橋渡しをしたこと。この交流はイギリス4カ国だけで行われていたIFFA Matchや、欧州だけで行われていたフライフィッシングのトーナメント EFFC (European Fly Fishing Championship = 欧州フライフィッシング選手権)を、新大陸やオセアニアなど世界へも拡大することへ繋がり、WFFCが開催される道筋となりました。
そして1989年のWFFC フィンランド大会において、事故なのか故意なのかは未だに判明しませんが、ポーランドチームの選手全員がフライラインの代わりにモノフィラメントラインをメインラインとして使い、1.5-3mくらいのシステム全部を水中へ入れた状態でロッドティップだけでアタリ感知して圧倒的な成績で優勝しました。ここで「ヴラディ・ワーム」のフライパターン(レッドワイヤーの下巻きの上にコンドームでドレッシング・・・)で有名なヴラディ・シェブニア選手らが使い出した、リアルな外観のワームフライやカディスニンフを多用するスタイルが「ポーリッシュニンフ」と呼ばれています。
当時「ミミズフライじゃないか!」と非難の声が上がった、この画期的な手法の登場に各国チームは対応を迫られることとなります。
ニンフ革命2.5 - フランスチームによるビーズヘッド、チェコによるジグヘッド
同じ頃、装飾品文化の中心でビーズが安易に入手できたフランスおよびスイスを中心にカラフルなビーズヘッドのニンフが多用されるようになり、英語圏ではシックなカラーの「プリンスニンフ」などが生まれるきっかけとなりましたが、「cm刻みのレンジコントロール」を追求するWFFC参加チームは、当時はブラス製だったビーズヘッドを工夫することになります。
ポーリッシュをいち早く取り入れたチェコチームですが、各国が同じスタイルでニンフィングを行う中で、どこで勝てるかを懸命に探した結果が細かいレンジよりも「ボトム直撃」。レッドワイヤーやブラスビーズよりもボトムへステイさせやすい、自作したジグヘッドを使ってニンフを表現する方法。これが当たり、チェコチームは優勝国となり、最強豪国として君臨することになります。
このジグヘッド・ニンフ、ヘッドがボール状のため、ぱっと見は普通のビーズヘッドニンフと見分けがつかないために長年秘密とされていましたが、2004年 WFFCスロバキア大会でチェコチームが開発中だったタングステン製のジグヘッドにニンフを表現したフライをスロバキアの審判が検査して引っかかるものが出たことで明るみに出ることとなり、各国がニンフのスタイルに「ジグニンフ」を取り入れるきっかけとなりました。
ヨーロッパ各国で使われるようになった2010年代に入るとタングステンビーズはスロットビーズ化されて、異なる大きさのジグフックと組み合わせて「ジグニンフ」または「タングステンジグ」として使われるようになりました。
ニンフ革命3.0 - フランスチームによるフレンチニンフィングの確立
ヘビーニンフ、ショートライン、ジグニンフが出揃ったことで、これらの運用に長けているチェコ、フランス、スペイン、イタリアにポーランドを追い抜いたイングランド(止水で強い)を加えて5大強豪国となりました。
中でもビーズヘッドニンフの運用とウェットフライの歴史に長けているフランスが本気で戦略を「アキュラシー&スピード」に振り切ったことで、ショートライン・ロングラインのシステムが徹底的に改良され、そのための専用アクションのフライロッドの設計など、競技フライフィッシングに関わる「ワークフロー」すべての改善に取り組む中で改めて注目されたのは「セミオート・フライリール」。
元々フランスの山岳渓流の釣りのために発明されたセミオート・フライリールですが、イタリア系フランス人ムリネ・ヴィヴァレッリが立ち上げたブランド「ヴィヴァレッリ」が、フランス、イタリア、スイス、スペインなど、山岳渓流をフィールドとするフライアングラーたちに愛用されてきましたが、人口比で最もセミオートリールを使うフランスがJMCのセミオート・フライリールを競技に投入したことで、フランスチームが筆頭レースで一歩先んじることになっています。
まとめと続き
フランスという切り口でフランスチームの強さおよびフレンチニンフの基本的なことをカバーしましたが、フランスと同じく流れが速い渓流や本流で釣りをすることが多い日本のフィールドやエリアに使ってみて気づいたキャストやプレゼンテーション、ファイトやランディングの工夫などがありますので、続編にて紹介したいと思います。
この記事のメンバー
フランスチームを支えるフランス発フライフィッシング・カンパニー「JMC」とコンタクトを取って、最新のタックルやシステムを検証中。
チームジャパンのメンバーとしてWFFCオセアニア大会へ出場し、フランスチームからインスパイアされた独自のユーロニンフをエドへ伝えたフライフィッシング師匠。
脈釣りで鍛え上げたスキルと経験をフライフィッシングへ融合させ、チームジャパンで活躍した、TFFCCのユーロニンフ伝道師。
元、全英ユース選抜メンバーとして活躍し、現在はファーリングミルのプロタイヤー。
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