シングルハンド・スカジットという選択肢 – パート2 | OPST Commando Head コマンドヘッド
去年のトラウトシーズンでは、OPSTのシングルハンド/ツーハンド向けのスカジットヘッド「Commando Head | コマンドヘッド」を8フィート3番ロッドに合わせて、湖のサイトフィッシングや岸側の釣り歩きで非常にいい結果が出せました。カゲロウ系やユスリカ系のフライを初め、空気抵抗の大きいハルゼミやワカサギパターンも問題なく扱えました。
しかし開けた場所での強い向かい風には厳しかったことやシンクティップが扱いづらいのでストリーマーの釣りには躊躇したのも事実です。本流やバス、ソルトの釣りも考えると、ストリーマーやシンクティップを使わない局面はありえないし、ソルトでは飛距離も大事です。ということで、シングルハンド9フィート6番のフライロッドにOPST Commando Headの225グレインを合わせて使ってみたレポートです。
シングルハンド6番の広い守備範囲
大きいフライを使う局面や風や潮で表層に動きがある時、沈めるタイプのフライを使う時はフライラインの水面へのプレッシャーをあまり考える必要はありません。しかし、不必要に重たいラインを使うのは、プレッシャーや1日の疲れを軽減する意味でも避けたいものです。
シングルハンド6番ロッドはフローティングラインからタイプ7まで様々なラインが用意されており、シンクティップを使う場合にも十分なパワーがあります。さらにバットが強いスティールヘッドやソルトウォーターを意識してデザインされたロッドであれば、8番ロッド級の戦闘力もあれば、合わせるリールもドラグ性能の高いものを選ぶことができます。性能の良いフライリールを合わせることで、これ1本でドライフライやウェットフライのトラウト全般はもちろん、障害物ギリギリにフライを入れていく必要のあるブラックバスやマングローブの釣り、5kgクラスのコイのオカッパリ、サーフで狙うトレバリーやボートシーバス、挙げ句の果てには管理釣り場のストライパーやナマズも行けるので、もし1本しかフライロッドを持たないとしたら、自信を持って「ソルト仕様のシングルハンド6番」をすすめます。
また、初めてフライフィッシングを覚える大人の方ならば、フライラインの重みをロッドからしっかりと感じられることもあり、キャストの上達を早めるためにも6番タックルを薦めています。(初めから渓流がメインと決まっている場合や腕力が弱い方・子供は4番が最適)
シングルハンド6番&スカジット
これだけ便利なシングルハンド6番タックルですが、オーバーヘッドで投げる限りバックスペースが無いとロクに使えないのは他の番手と同じ。ある程度の小ささのフライを使う時であればロールキャストで対応できますが、ウェイトをしっかり入れたニンフやシュリンプフライ、シンクティップでストリーマーを使う時では十分な距離が出せませんし、ロールキャストの最大の弱点は一度ラインを出した方向にもう一度打ち直すことになるので、臨機応変なシチュエーションでは使い勝手がよくありません。もっと便利なシステムが無いだろうか・・・。そう思っているだけでは行動を起こさないのが人間の性。私の場合は右肩の故障と言う切羽詰まった理由と、すでにシングルハンド3番ロッドで良い成果が出ていることもあり、再びOPSTのスカジットヘッドに頼ることにしました。
スカンジではなくスカジットで組むメリット
飛距離だけを重視するなら、大きいDループを後ろへ飛ばした反動でロッドをしっかりと曲げて、シュートするスカンジ(スカンジナビアンの略、以降スカンジ)で事は足ります。スカジットと比べてベリーが長いシューティングヘッドなので、綺麗に決まった時の飛距離は素晴らしいものがありますし、無駄なライン運びの少ないキャスティングの優雅さには有終の美があります。しかし、スカンジの場合はシューティングヘッド取り回し、それを投げるためのパワー、空気抵抗の大きいフライや重たいストリーマーをどうターンオーバーするかが課題となります。
ツーハンドなら長いラインシステムの取り回しもシュートやターンオーバーのためのパワーを作る事が楽ですが、シングルハンドの場合はホールを併用してラインスピードを上げる必要もあれば、アンカーを効かせるためにリーダー部分を延長したり、タイトなループを作るためのバックスペースもそれなりに必要になのである程度はウェーディングしないとなりません。また、深めにウェーディングしている時は、Dループの形がさらに狭まるので、より丁寧なアンカー調整やロッドコントロールが必要となります。これ全てを9フィートのシングルハンドロッドのタイトなスペースの中で行うには技術や慣れも求められます。
スカジットの場合はシューティングヘッドとティップの部分を畳んで水面へ置いておくキャストを使うので、長いリーダーを使わないでもヘッド+ティップの部分だけでもロッドティップを低くしてヘッドが水から剥がれないようにしておくことで、水面張力の抵抗でアンカー(サステインド・アンカーと呼びます)を効かせる事ができます。また、スカンジよりもコンパクトなラインシステムなので、バックスペースも少なくて済めば、低い番手へも対応できます。極端な事をいえば、全くウェーディングしないでも使うことができるどころか、足場が高い堤防のようなところから下の水面を使ってキャストすることもできてしまいます。
また必要であればティップやポリリーダーを連結していくことでライン全長を延長することで、スカンジに近い形にしたキャストを行うこともできます。重量のあるティップを使うことで空気抵抗が大きいフライや重たいフライを楽にターンオーバーさせることもできます。
アメリカ生まれなのになぜコンパクト?
コンパクトな上に拡張性がある、それがスカジットの最大の利点です。なぜそうなったのか。それはこのキャストが生まれたのがスカンジナビアのように大場所で浅瀬にウェーディングしながらロングキャストでかけあがりや深場を静かに打つ釣り場ではなく、深い森の中を縫うように流れるドン深の流れの強い川になんとか足が着く場所を見つけてウェーディグしながら素早く沈むヘビーなストリーマーを送り込む必要があるスカジット川だったことが大きいです。不自由でタイトなスペースの中で楽にキャスト出来るように始めから組み立て直されたコンパクトなシステムであったことが、シングルハンドロッドというよりコンパクトな世界に馴染みが良いのは当然なのかもしれません。
またスカジットでは水面へラインを置いてからワンテンポ待ってDループ&シュートするので方向転換ややり直しが楽です。総合すると現場がよく分からないアウェイゲームやランガンの釣りが主体になればなるほど、対応力ではスカジットが有利だと言えます。大場所でツーハンドを使いながら、静かに遠方へフライを置きにいく釣りであれば、スカンジを選ぶ方が良いと思います。
OPST Commando Headライン適合表
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管理釣り場でテスト
管理釣り場で「近距離を丁寧に」「中距離キャストでしっかりスイング」「遠投でざっくりスイング」「とにかく遠投」の4種類で試してみました。ティップの代わりにセットしたのは10フィートのポリリーダーです。(ビデオ内のキャプションが「ペリーポーク」となっていますが、編集カットのキャストは全て「スナップT」です)
実釣フィールド: 川
阿寒川でフロートティップをセットして、イントルーダー縛りで釣ってみました。コンパクトなスイングを行う際にウェイトの入った大きいフライが打ち直しやすく、決して広いわけではない川幅で取り回ししやすく良いニジマスを釣ることができました。
冬季ニジマス本流釣り場が設置された狩野川支流の黄瀬川でも使ってみました。手持ちのシンクティップがシングルハンド用ではない12フィートだったので苦戦しましたが、ちゃんと8フィートで作っておけばもっと手軽にスイングの釣りが楽しめます。
実釣フィールド:湖
中禅寺湖ではフローティングやホバーのポリリーダーをセットして釣ってみました。風の中でも空気抵抗の大きいフローティングワカサギやセミフライが簡単に打てるだけでなく、ニンフをセットしたNZリグを打ち込んだり、大きな局面での釣りに便利でした。
実釣フィールド:カヤックから
コンパクトに取り回せるだけでなくシンクティップを交換することで魚のタナへ対応することができます。湿原の河川でイトウを狙う時にも使いやすかったので、マングローブ河川やバスフィッシングにも活用できると思います。
実釣フィールド:ライト・ソルト
ソルトでは東京湾奥のシーバス狙い、四国南部のヒラスズキ狙いのオカッパリでインタミやスローシンキングのティップを使ってみたところ、足場が高い場所でも安全に必要な距離をキャスト出来るので、こちらも非常に便利でした。ボートから距離を取ったクロダイもフローティティップをセットすることで十分やれました。
実釣フィールド:強度はどうか
強度的なところでは、宮城アングラーズヴィレッジのストライパーやチャネルキャットフィッシュとも渡り合い、浜名湖フィッシングリゾートのアマゾン怪魚「コロソマ」ともやりあって耐え抜きました。
パワーのある魚の場合、障害物に巻き込まれたりするケースがあるので、ラインシステムのどこを弱くしていざとなったら切るかが大事です。OPSTの日本人R&Dの仲野さんに確認したところコマンドヘッドのコア強度は30lbあるとの事でした。問題なくシステムに取り入れられると思います。
浅瀬のサイトフィッシングにはイマイチ
調子に乗って中禅寺湖の浅瀬のブラウントラウト・サイトフィッシングや浜名湖のクロダイ・サイトフィッシングにも使えるかとやってみましたが、短く太いヘッドの速いラインスピードをコントロールしてワイドループに整えるのは至難の技で、ターンオーバーが強すぎてワカサギフライやクラブフライが水面を叩いてしまいます。また自分も魚も初めから浅瀬に出ている場合は釣る方向が180度以上と広いこともあり、わずかなラインインパクトで釣りが台無しになります。充分にスペースがあればペリーポークやサークルCを使うメリットもあまりないので、浅瀬へウェーディングしながら行うサイトフィッシングでは、フルラインで丁寧に釣るのがベストと言う結論です。
周囲が風に囲まれている場所や強い魚には8番タックル
横浜や高知のボート上のフライフィッシングでも使おうと思いましたが、360度から風が当たるシチュエーションではシュート時に直進性がイマイチです。こればかりはラインの重さ+ロッドのパワーが大事なので、このタックルではなくシングルハンド8番タックル以上がオススメです。また、横浜のボート・クロダイに使いましたが、キャストやプレゼンテーションは問題なくても、そもそも6番タックルの戦闘力は8番タックルには敵いません。適材適所でウェイトアップは躊躇しない方が良いと思います。
アイテム情報
シングルハンド3番のケース
シングルハンド8番、10番のケース
スイッチロッド4番、ツーハンド6番のケース
スイッチロッド10番のケース
タックル情報
シングルハンド・スカジット6番タックル:
- シューティングヘッド: OPST Commando Head – 225グレイン (13.5フィート)
- ティップ/リーダー: Airflo Polyleader 10フィート、OPST Commando Tip 10フィート
- ティペット: シーガーエース フロロカーボン2-4号 を4〜6フィート
- シューティングライン: Ken Cube EX シューティングライン – フローティング 0.022 (3番にも使うので半分でカット)
- フライロッド: R.L. Winston Boron II-MX 906-4:9フィート6番
- フライリール: Tibor Light Backcountry CL
参考ケース
まずは私の場合の条件を書き出しました:
- シューティングヘッド – どうしても水面にラインをつけたくない時以外はオーバーヘッドではなくアンダーハンドで快適に投げられるもの
- ショートベリー – 9フィートロッドでも無理なくアンカー調節やしっかりと水面をスイープできるもの、狭いスペースでも取り回しが楽な長さである事
- ティップ交換 – このセットアップでバスバグやダンベルアイフライをターンオーバーできる強めのインタミのポリリーダーからT14などの重たいシンクティップなどを使い分けたい
またもOPSTのBen Paulにメールで質問しました。今度はむしろ本来のスチールヘッドやサーモンと被る領域なので楽勝。すでに適合チャートも新しくなっていました:
- 9フィート6インチ未満の6番ロッドにはOPST Commando Headの225グレイン
- 10-12フィートのティップをシンクレート別に取り替えるのがベストシナリオ
- Airfloのポリリーダー(でもOPSTのティップも選んでね)
- その先へ好きな長さのティペットを結ぶ
商品は渋谷サンスイに全部揃っているので買ってきました。