長男のフライフィッシング・デビュー

2021/01/18イージーフライ,テンカラ、フライフィッシング,ニジマス,フィッシュオン鹿留,初心者,子供

(英語版2009年の記事からの翻訳・補足版です)
長男の夏休みもいよいよ最後の日!何かチャレンジしよう、ということで一緒にテーマを考えました。「算数」「英語文法」「国語」「体育」などなど・・・。長男の結論は「釣りに行きたい!」だったのですぐに決行することに。

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正午前に都心を出発してフィッシュオン!鹿留に到着したのは午後1:15ジャスト。長男とはいえ新しいフライフィッシング仲間を迎え入れるために、「今日の私はパパじゃない」と自分に言い聞かせます。これは長男というクライアントのための特別な一日であって私はあくまでもサポータースタッフ。不必要に難しさを感じさせたり私の期待値を相手に要求したらアウト!説教やベテラン面は絶対にダメ!

セッション1:フライ=毛鉤を使った釣りに慣れる

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「イージーフライ、イージーフィッシュ」という言葉は、私がかつてアメリカに住んでた時にメル・クリーガー先生のスクールに参加した時に、挨拶だけで帰っていったジョアン・ウルフ先生が短いセミナーの最後にジョークでいっていた言葉。その名前の通りの「イージーフライ」という製品がスカジットデザインズから発売されていて、テンカラ竿をフライロッドぽくアレンジした手竿です。

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トップガイドだけがついていて、コルクグリップになっていて、このまま標準的なフライタックルへ移行しても違和感がありません。セットには初心者でも投げやすい、重みのある編んだラインが投げ糸としてついてきて、先端はヨリモドシになっていてティペット=ハリスをつけられるようになっています。5Xティペットを継ぎ足してニンフを結んで準備OK。

早速、ロッドの反発力でラインを飛ばす感覚を覚えてもらうために「後ろに跳ね上げたらちょっと待って、前にピュッて投げて見て」とお願いしたら、そのままロッドとラインとフライが一直線でできました。そのまま釣ってしまおうと思いましたが、魚はフライに興味なし。長男のためにセレクトしたフライだけが入ったフライボックスを見せて、どのフライで釣ってみたいか選んでもらい、ピンクのエッグフライを結び直します。

次は最初と同じことをやってもらいます。さっきと同じく綺麗に一直線にフライが入りましたがニジマスは反応せず。ピンクのフライは長男からも見易いので自分で判断して3回目の投げ直しをしたら・・・・最初のヒット!

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本人よりも私がびっくりしてパニック状態に・・・。「さ、さ、魚食ってる!」と言葉にならない叫びを発したら、長男が驚いて竿を持ったまま後退したので、具合よく魚とロッドの間の糸がピンと張ってフックセットされました。突然始まったファイトにたじろぐ長男へ「竿は斜めに立てたままにして」「両手で竿持って」「少しずつ後ろへ下がって魚を浅いところへ入れちゃって」と指示しながらも頭の中は真っ白。魚が浅瀬へ入ったタイミングでリーダーを掴んでしまおうとしたら、長男の方が落ち着いていて「僕が抑えているから網ですくってね」と逆指示・・・。長男の指示に従いネットインしたところで彼の人生初のフライフィッシングの1匹目となりました。

セッション2:「食べる分だけ持って帰る」バッグリミットとキャッチ&リリースの説明

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ネットの横幅がぴったり35cmなのでニジマスを合わせてみたら、なんといきなり40cm!身長110cmの長男がキャッチした40cmのニジマスなので、身長178cmの私なら65cm相当になります。「はっ」と気づき「逃す」段取りへ。

決して私はキャッチ&リリース信者ではないのですが、「必要な魚だけ持って帰る」というルールを覚えてもらいたいので、記念写真を撮ってから長男へ「お魚どうしようか?」と聞いたら即答で「ママに見せたいから持って帰る!」・・・そうだよね、パパも昔そうだったよ・・・。いかん、パパ心に負けないように戦いながらコーチに戻ります。

  • ここは養魚場から魚を持ってこれるから、持って帰ることは何の問題もないよ
  • 二人で食べられる分の魚だけキープしようよ
  • いったんこの魚は戻してあげよう
  • 次はもっと美味しそうなニジマスを狙って釣ってみよう

というトークの最中も息子は微動だにせず「僕が釣った魚は僕のもの」という自己ルールとの折り合いがつきません。そこで

  • 一旦ネットから出して浅瀬で休ませてあげよう
  • 泳いで行っちゃったら、そのままリリースしよう
  • 泳いで行かなかったら、キープして食べちゃおう

長男は言葉通りに行動しますが全くもって納得いっていません・・・。とその時!

空気を読んだお利口なニジマスは流れに乗って下流のプールへ脱走!

不可抗力でリリースとなって、息子に笑顔が戻りました

セッション3:やる気のコントロール

自分が釣った大きい魚が逃げていったことがショックだった長男はしばらく逃げた先のプールの魚をネットで狙っていましたが諦めがついた途端に「もっと釣るよ!」とすごいやる気です。

ここで釣りでありがちな宿命ですが、釣り続けるためにはやる気が大事なのですが、やる気が全開になっているとそれが動きの大きさや物音、フライの動きや竿先や糸を通じて水中の魚に悟られてしまいます。ピシピシとキャストを繰り返す長男を恐れる魚たちはプールの奥へ奥へと逃げていくので、今度はフライフィッシングのお約束「距離を投げたい」が始まってしまいました。

大きい動作=大きな力=もっと遠くに投げられる、というが人間の本能的な考えですから、当然のごとく息子のロッド操作は大きくなってしまい、ロッドは無理のない平行移動ではなく力まかせの扇型の動きへ・・・。無用に強いパワーで水面を叩くことにもなるので魚は完全にスレてしまいました。こうなると焦れば焦るほど下手になる悪循環になるので、「ジュース飲みにいこう!」と15分ドリンク休憩を挟みます。

休憩後のロッドの動きを見ると腕が疲れた様子なので、ティペットを交換して長くしてから両手持ちへ変更。こうすることでグリップが戻るだけでなく、片手ほど自由にロッドが振れないのでキャストのフォームも直ります。十分なパワーが作り出せるので息子の期待通り遠くまでラインが飛んでいきます。

すかさずニジマスがフライに食いついて釣れましたが、30cm未満サイズ。私が針だけつまんで魚に触らないようにクイックリリースをやって見せたら、長男が怒ってしまいました・・・。石を蹴っ飛ばす息子へ「もっと大きいの釣れるから次いこう」と説得します。

セッション4:キープと昇天の儀式

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プール中の魚をじっくりと吟味し始めた長男。野生の勘が働き始めたようで、教えていないのにも関わらず流れ込みの脇へ両手投げでフライをビシッと決めます。食いついたニジマスは強いファイトの35cm。初めの1匹と同じくらい大きいし食べる部分も十分にあるので、「この魚キープしようか?キープしたらどうしたい?」と聞いたら「ママに見せて、弟に食べさせる!」との答え。男の子の本能なんですね。

ここからが大事なので小さいナイフを取り出してから「じゃあ夕飯になってもらうための昇天の儀式です」と伝えて、長男がリアクションする隙を与えず、エラからナイフを入れて脊髄をカットして即死させます。「え?それだけ??」と驚いた長男。「早く楽にしてあげた方が味も美味しいんだよ」と余計な迷いを挟ませないようにして「生き物→食べ物」のコンバージョンを手際良く進めます。

セッション5:キッチンタイム

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続いて魚の処理をするために流しコーナーへ移動。お魚工場の時間です。長男が興味深く見るのを確認しながら、エラごと頭を切り離して内臓を外したら、滑り止めに塩をふって皮を剥がします。3枚におろして血合を綺麗にしたらトラウトフィレの出来上がり。

「お肉になるのって面白いね!」と長男のコメントを聞いて、なるほどここがベジタリアンになるかどうかの瀬戸際かと思いました。フィレは用意しておいたジップロック容器へ入れておいて、帰り道が混まないうちに帰宅してからオリーブオイル、ペッパー、ガーリックで美味しいソテーとして家族で少しずつ楽しみました。

まとめ

というわけで非常にミニマルにてきぱきと長男のデビューは終わりました。「パパと息子」という気持ちにならないように自分に言い聞かせつつ「釣り仲間が増えるんだ」という気持ちで取り組んだらうまく行きました。

クリーガー流の「最初は直感的に分かり易いキャストで楽に真っ直ぐフライを入れることが大事」の教えを忠実に、「ピックアップ&レイダウン」の動きをテンカラの手軽さへ応用してみたところ、何とわずか3投目にはニジマスが釣れていました。

また、ウルフさんが言っていた「子供は腕の力が弱いから両手持ちでいい」という教えの通りに、子供が疲れを感じたらすぐに両手持ちへ切り替えてみたのも非常に効果的でした。

これは子供に限らず、初心者みんながそうだと思いますが、道具が上手く使えないとストレスに感じるし、魚の反応が悪いと遠くへ投げようと力むようになり、魚が釣れないと集中力が続きません。片手持ちのままだと腕の疲れも出てきます。ここをカバーしてあげることで諦めずにフライフィッシングを楽しむことができると思いますので良い勉強になりました。

ニジマス・・・24cm-40cmを3匹

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