フライリールのライン容量を調整する

2025/05/24

JMCのラージアーバー・アンチリバース・ハイギア・フライリール「Equinox」

一般的にフライリールを購入する際にライン容量を気にする場合、指定番手のフライラインを巻き取った後にどれだけのバッキングラインの容量があるか、フライリールの仕様表に示される「20lbダクロン x 50m」などの情報を使うこととなります。

フライリールのバッキングラインの素材としてダクロンの8本網糸は締め込むことで体積を減らすこともできるだけでなく、摩擦にも強いので便利ですが、これをあえてストレッチ性の無いPEラインの8本網糸に置き換えることでバッキング容量を調節することで、バッキング全長を長くしたり、より太いフライラインを巻き取ったりすることができます。

更新メモ
  • 5/1・・・ ヘッド換算の補正、PEラインの種別を更新

バッキングラインの長さの目安

一般的な目安となります。

魚の種類必要バッキングライン
小さな川のトラウト20-25m
中規模の川のトラウト50m
大きな川のトラウト/湖のトラウト75m
大きな川のサーモン100-150m
フラットやインショアの普通の魚 (クロダイやシーバスなど)50m
フラットやインショアの走る魚(ボーンフィッシュなど)100-150m
オフショアの魚200m+

ケース1: WF3 + 20lbダクロンx 20mのフライリールの場合

20lbダクロンをシマノピットブル8本編み1号(20lb)に巻き替える場合:

項目数値
ダクロン20lb 直径0.46mm
20mの容量係数0.46 x 20 x 100 = 920
「シマノ ピットブル 8本編み」 1号(20lb)直径0.13mm
巻き量920/0.17/100 = 54m

バッキング全長を「20m」のままでフライラインの番手を上げる場合:

項目数値
フライライン体積係数30m x 100 x π x (0.65mm/2)^2 = 995
バッキングライン体積係数20m x 100 x π x (0.46mm/2)^2 = 332
スプール体積係数1,328
変更後のバッキング容量係数20m x 100 x π (0.13mm/2)^2 = 27
変更後のフライライン容量係数1,328-27=1,301
最大許容フライライン平均直径√(1,301/30/100/π)*2=0.74mm
許容フライラインWF4 (30m)

ケース2: WF5 + 20lbダクロンx 50mのフライリールの場合

20lbダクロンをシマノピットブル8本編み1.5号(30lb)に巻き替える場合:

項目数値
ダクロン20lb 直径0.46mm
50mの容量係数0.46 x 50 x 100 = 2,300
「シマノ ピットブル 8本編み」 1.5号(30lb)直径0.17mm
何m巻けるか?2,300/0.203/100 = 135m

ピットブル8本編み1.5号のままバッキング全長「50m」を変更せずにフライラインの番手を上げる場合:

項目数値
フライライン容量係数30m x 100 x π (0.85mm/2)^2 = 1,702
バッキングライン容量係数50m x 100 x π (0.46mm/2)^2 = 831
スプール全体容量係数2,533mm^3
変更後のバッキング体積係数50m x 100 x π x (0.17mm/2)^2 = 113
変更後のフライライン容量係数2,533-113=2,420
最大許容フライライン平均直径√(2,420/30/100/π)*2=1.01mm
許容フライラインWF7 (30m)

同じリールにシューティングライン + スカジットヘッドを収容する場合(フライラインのヘッド部分は全体平均の25%増しとして計算)

項目数値
フライライン容量係数2,420
シューティングライン種類モニック GSPシューティングライン 0.26'' (0.66mm) x 30.1m
シューティングライン体積係数30.1m x 100 x π (0.66mm/2)^2 = 1,030
変更後のフライライン容量係数2,420-1,030=1,390
最大許容フライライン平均直径(ティップ込みヘッド全長8mで換算)√(1,390/8/100/π)*2=1.49mm
許容シューティングヘッドスカジット150GR、スカンジ180GR

ケース3: WF5 + 20lbダクロンx 100mのフライリールの場合

20lbダクロンをシマノピットブル8本編み1.5号(30lb)に巻き替える場合:

項目数値
フライライン容量係数30m x 100 x π (0.85mm/2)^2 = 1,702
バッキングライン容量係数100m x 100 x π (0.46mm/2)^2 = 1,662
スプール全体容量係数3,364
変更後のバッキング体積係数100m x 100 x π x (0.17mm/2)^2 = 227
変更後のフライライン容量係数3,364-227=3,137
最大許容フライライン平均直径√(3,137/30/100/π)*2=1.15mm
許容フライラインWF8 (30m)

同じリールにシューティングライン + スカンジまたはスカジットヘッドを収容する場合(バッキングライン容量を減らして調整)

項目数値
スプール全体容量係数3,364
変更後のバッキング体積係数50m x 100 x π x (0.17mm/2)^2 = 114
シューティングライン体積係数1,030
変更後のフライライン容量係数3,364-1,030-114=2,220
最大許容フライライン平均直径(ティップ込みヘッド全長8mで換算)√(2,220/8/100/π)*2=1.88mm
許容シューティングヘッドスカンジ300GR、スカジット240GR

ヘッドをOPST Commando Head 225GR、バッキングラインをタナトル3号(50lb)に変更した場合、バッキングは何mまで巻けるか

項目数値
スプール全体容量係数3,364
シューティングライン体積係数1,030
フライライン体積係数(全長8mで換算)8m x 100 x π x (1.79mm/2)^2 = 2013
バッキングライン許容容積係数3364-1030-2013=321
バッキングライン最大全長L=321/(100 x ​π x (0.23mm/2)^2) =77m

ケース4: WF8 + 20lbダクロン x 100mのフライリールの場合

20lbダクロンをシマノタナトル8本編み3号(50lb)に巻き替えて、シューティングライン+スカジットヘッドに変更する場合:

項目数値
フライライン容量係数30m x 100 x π x (1.15mm/2)^2 = 2,851
バッキングライン容量係数100m x 100 x π x (0.46mm/2)^2 = 1,662
スプール全体容量係数4,513
変更後のバッキング体積係数100m x 100 x π x (0.23mm/2)^2 = 415
シューティングライン体積係数30.1m x 100 x π (0.66mm/2)^2 = 1,030
フライライン容量係数4,513-415-1,030=3.068
最大許容フライライン平均直径(ティップ込みヘッド全長8mで換算)√(3,068/8/100/π)*2=2.21mm
許容フライラインスカンジ420GR、スカジット360GR

バッキング向けライン一覧表

製品号数直径インチ直径mm強度ポンド
3M Scientific Anglers フライラインバッキング 30lbN/A.024インチ0.610mm30lb
〃絞り込んだ場合N/A.012インチ0.304mm30lb
3M Scientific Anglers フライラインバッキング 20lbN/A.018インチ0.457mm20lb
〃絞り込んだ場合N/A.010インチ0.254mm20lb
Shimano Pit Bull 8+ (8本組)1.0号.007インチ0.125mm20lb
1.5号.008インチ0.165mm30lb
Shimano Tanatoru 8 (8本組)3.0号.012インチ0.234mm50lb
4.0号.013インチ0.321mm65lb

ダクロンとPEラインのバッキングラインとしての性能の違い

ダクロン(ポリエステル)はスプールに対して平行方向に中程度のストレッチ性があり、垂直方向の収縮も大きくショック吸収性に優れています。反面、巻き太りしやすいので、スプールに巻き取る時にはリールのドラグをしっかりと閉めた状態で巻かないと不揃いになったりします。

さらにダクロンは8本編みとなっており、障害物に巻き付いた際には一点に力が集中しないため、擦れに強いのも特徴です。

対してPE(ポリエチレン、GSP)はスプールに対して平行方向に極めて低いストレッチ性しかないためダイレクト感が高く、リールのドラグを適度に閉めた状態でも不揃いになりづらく、また垂直方向への収縮度合いも少なく吸水性が無いため、海水や天候などでも性能が変化しづらく優秀なバッキングラインと言えます。

しかし障害物に巻き付いた際には伸びないために、一点に力が集中しやすく破断強度を超えやすくなったり、熱に弱い素材のため、4本編みでは摩擦熱で強度が落ちて切れてしまうことがあります。またパッケージ上の破断強度は同じでも4本編みよりも8本編み、12本編みの方が密に編まれただけ強度が上がり、摩擦耐性も上がります。

ショック&摩擦吸収性を取るか、ダイレクト感と直径の細さを取るかで判断してください。

ツール

バックライトが付くLED液晶を使っているので、暗い場所でも巻き取り量を計測するのに便利なラインメーター

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WFフライライン平均直径およびヘッド部グレイン数一覧(目安)

番手(#)平均直径(mm)ヘッド部グレイン数
WF30.65 mm100
WF40.75 mm120
WF50.85 mm140
WF60.95 mm160
WF71.05 mm185
WF81.15 mm210
WF91.25 mm240
WF101.35 mm280
WF111.45 mm330
WF121.55 mm380

WFフライライン平均直径およびヘッド部グレイン数一覧(目安)

ヘッド部グレイン数スカジット平均直径(mm)スカンジ平均直径(mm)
1501.58mm1.43mm
1801.67mm1.52mm
2101.81mm1.66mm
2401.90mm1.75mm
2702.01 mm1.81mm
3002.09 mm1.89mm
3302.19 mm1.99mm
3602.22 mm2.0mm
3902.31 mm2.06mm
4202.33 mm2.08mm
4502.41mm2.16mm
4802.42mm2.17mm
5102.43mm2.18mm
5402.5mm2.25mm

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