GoToマテリアル!EP4「24/0時間」= 究極の24/0スレッドで何か巻いてみる
2022/01/2924/0スレッド,センパーフライ,フライフィッシング,ミッジ
昨年の暮れに「センパーフライ 24/0 プロフェッショナルGSPスレッド」が先行発売されて、早くも12月20日に開催された上州屋八王子店の年末のタイングイベントのデモで使われていました。
楽しいトークやマテリアルワークの素晴らしい手際の良さに気を取られる中で、ミッジで有名な「すれ鱒屋」の高橋章さんのスレッドワークをじーっと観察していたら、なんと24/0スレッドはウェットだろうがドライだろうがハックルの隙間に「スッ」と幽霊のように入っていくような気がしました。「!」と思い、これはスゴ技の一つだと思っていたら、若手の方の手元でも「スッ」と入っていきます・・・。
高橋さんはイベント後のSNSで「米ミッジ」なる驚異の30番サイズを巻かれていて、実際にどういう具合なんだろうと、「実弾サバイバルタイヤー」の自分が試してみました。
センパーフライ 24/0 プロフェッショナルGSPスレッド
「産業革命」を起こして、繊維産業で世界を制覇したイギリス。製糸の機械化だけでなくカーボンファイバーを発明した母国でもあります。その威信を示すがのごとく、繊維から開発されている「ナノシルク 」は同じ太さだとケブラー(防弾チョッキとかに使われているあれ)よりも強度が高く、NASAのプロジェクトに採用されたりしていますが、そんな最先端素材を惜しげもなくフライを巻くためのスレッド製品にしたのが「ナノシルク GSPスレッド」シリーズです。
素材が違う
GSPスレッドというのは普通のスレッドが釣り糸に例えると「ナイロン糸」だとしたら、「PEライン」に相当するスレッドで、すごい強度と細さを両立させているだけでなく、ノン・ストレッチなので力がダイレクトにフライフックへ伝わります。その中でもナノシルクは「ナノ」ってつくくらい微細な繊維から作られているので、薄さまで兼ね備えている次第です。これもルアーで使うPEラインに例えると「Power Pro」みたいなものかもしれません。
スレッドの特長
スレッドとしてはどうなの?というと、ゆるめの縒りが入っているのでそのまま巻いても良いですが、時計回りに回転させて「絞り込む」とより細くなり、繊維も絡み合うので強度もUPします。その強さフライフックが曲がるどころか折れるレベル!
反時計周りに「開放」するとより薄くなり、厚みが出なくなります。
質感は「すべすべのツルツル」なのですが、繊維が微細なのでしっかりテンションをかけて巻きつけるとしっかりとフライフック に止まります。このスレッドに究極の細さの「ナノシルク24/0」が出たということです。ちなみに測定器で計測したら直径「0.011mm」と出ました。
スレッド | 直径 | 特性 |
ナノシルク24/0 | 0.011mm | 破断強度750g、ノンストレッチ |
ナノシルク18/0 | 0.025mm | 破断強度1,140g、ノンストレッチ |
スパイダー18/0 | 0.034mm | 破断強度750g、10-15%程度のストレッチ |
縒りの状態にもよると思いますが18/0と比較するとおよそ半分の細さです。
ボビンホルダー選び
スレッドの性能の確かさとは別に、使う時には相性の良いボビンホルダーが大事です。
このスレッドを使い慣れた方からアドバイスをいただき、「テンションMAXで使えるボビンホルダーのファインがいいですよ」とのことなので、「TMC アジャスタブルマグネット ボビン ファイン」か使い慣れた「C&F デザイン ミッジボビンホルダー」のどちらか迷いましたが、初めてのスレッドなので安全牌でC&Fにセット。すでにセットしてある他のスレッドと並べてみました。
膨張色であるホワイトのナノシルク24/0を同じセンパーフライの「スパイダー18/0」や「ナノシルク 18/0」と並べてみると一目瞭然の細さ・・・。これで破断強度750グラムもあるんだから、さすが繊維産業で世界を制したイギリス人の創意工夫スピリッツのすごさ・・・。日本人も負けていられません。
がまかつC12-BM 30番フックに試してみる
製品同士を対決させる「ほこたて」って番組がありましたが、最強スレッドには究極のフライフック を対決させてみたいと思い、日本が世界に誇る播州釣り針であり手持ちの中で最も小さい「がまかつC12-BM #30」をチョイス。全長わずか3mmのフライフックは18/0スレッドでも巻きスペースが狭くて手を焼きます。
2年前に右手の指先を骨折して曲がりづらくなった私はあまり小さいものがつまめないので道具に頼ります。ICテストフックを使ってフックのアイ付近をつかんだら・・・
バイスのジョーにセット。こんな感じになります。
続けてボビンハンドとスレッドの端をつかんだフリーハンドのテンションをMAXで24/0スレッドを巻きつけます。
テンションをしっかりかければ微細な繊維が噛み合うので滑ったりしませんが、握力が弱い方や倹約家の方はワックスをつける方が無難だと思います。ちなみに専用のワックスもセンパーフライから出ています。
パーツの取り付け
あまりに小さいフックなので慣れないパターンなんか見辛くて無理。今回は#18や#22では巻き慣れた「CDCスペントミッジ」に巻いてみます。後でCDCファイバーをハックリングする時にスレッドを割かないとならないのですが、24/0を割く自信は0%なので、2本縒りだから回していれば絶対に割くことのできる「スパイダー18/0スレッド」をボディ材兼セカンドボビンのスレッドとして使います。
簡単に割く方法が見つかったので、こちらを参照ください。
ワイヤーで補強するので、「0.1mmワイヤー アイスブルー」を取り付けたらスパイダー18/0でテーパーボディを作ります。
ここで改めてナノシルク24/0の細さをチェック。あり得ない細さです・・・。
ちなみにセカンドボビンを使う場合は、ボビンハンガー付きのバイスを使いながら、マテリアルクリップで左側へひっかけておくと作業が楽です。
CDCファイバーの茂みの中へ・・・
ボディが出来たらCDCファイバーを毟り取っておいてから、スレッドを割いてそこへ挟む「スレッドループ」を使いますが・・・。ナノシルク24/0を割けたのは1回目だけ・・・。保険でスパイダー18/0(2本縒り)を使っているので反時計回りに解けばスキルの足りない私でも楽勝。CDCファイバーでハックリングしてから再び24/0の出番です。
そしていよいよ運命の時が・・・。「スッ!」
なんとモジャモジャのCDCファイバーの「茂み」をナノシルク24/0スレッドは楽に通り抜けていきます!マジかよ!
CDCウイングを上へ引っ張り上げてスレッドで整形してからスペントウイングの形にしていきますが、ファイバーの隙間へスッと入っていくのでスレッドワークが快適!何これ?
CDCファイバーをスレッドワークで好きなようにコントロールできる快適さ・・・。ヤバイ・・・。
ヘッド処理もさっさと終わります。
ワックスを切らしていたので今回はウィップフィニッシュではなくハーフヒッチャーでフィニッシュ。
人生初の「24/0時間」の結果は・・・?
視力0.1なんて余裕で切っている私の眼力とイマイチ動かない指先のムダ毛処理と私のスレッドワークのレベルでは仕上がりは美しいとは言えませんが、はい、出来ました!
調子に乗ってエアロドライウイングでインジケーター兼ウイングケースを付けた方はウイングがだらしなくてイケていませんが、実弾としては問題ないでしょう!え?ダメ・・・? 修行します。
まとめ
丁寧に美しいフライを巻くアートタイヤーや量産巻きできるプロタイヤーの方達と違い、3本巻くと寝てしまう「実弾サバイバルタイヤー」の私が無謀にも24/0時間に挑戦してみましたがいかがだったでしょうか?
一言でいうと・・・ヤバイ!!
このスレッド持ってないと・・・アカン!
今年の早春のミッジングには必須じゃないでしょうか。
後輩には絶対に教えたくない(ここで書いたから手遅れだ!)。
買って巻いてみた人はハッシュタグ「#センパーフライ24」で教えてください。
活用シナリオ
30番ミッジは極端だとして、私が使ってみたいものを並べてみると:
- 26-18番サイズのユスリカパターン
- 22-18番サイズの早春の小型カゲロウ、ヒメカゲロウなど
- 26-22番サイズのオイカワ用のCDCミッジ
- とにかくCDCの処理が必要なフライ全般
- ソルトミッジ(ナノシュリンプ)へのハックリング(前からやりたかった)
- 一旦巻いておいたフライの細かい補修・・・隙間にスッと巻けるから直したのがバレない
製品情報
GSPスレッドについて
センパーフライのナノシルクはGSPスレッドの一つですが、VeevusやラガータンなどさまざまなブランドからGSPスレッドが製造されて販売されていますので、こちらを参考にしてみてください。
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