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フラットのフライフィッシング

2024/09/21

水の音を聴きながら、開放的で美しいターコイズとエメラルドグリーンの世界に溶け込んで、自然が育んだ賢い魚と知恵比べを楽しむ。フラットのフライフィッシングは、カリブ海が発祥の紳士の釣り。スタイルにこだわり、楽しさを追求する大人の遊びです。

フラットのフライフィッシングの頂点の一つ:ボーンフィッシュ

他の釣りと異なる部分が多く、難しいと思われているフライフィッシングの中でも、魚探し・アプローチ・キャスト・プレゼンテーション全てを総動員するだけでなく、安全管理にも気を使う必要があるフラットのフライフィッシングですが、実際にやってみれば、難しいことすら忘れるほどに夢中になってしまいます。

対象魚: ボトムフィーダー

国内のフラットFFでは欠かせない好敵手:クロダイ

トラウトが水面という「面」へ餌を追い込んで捕食するトップフィーダーであるように、ボーンフィッシュやモンガラカワハギ、クロダイといった魚たちはボトムという面へ餌を追い込んだり、ほじくり出して捕食するため、ボトムフィーダーと呼ばれます。これらの魚たちは水位などお構いなしで捕食するわけですが、アングラーから魚が見つけやすく、フライフィッシングが成立しやすい水深のフィールドがフラットであるため、最も人気のあるフィールドとなっています。

対象魚: プレデター

水深が浅いフラットは小魚や甲殻類を追い込んで捕食しやすいため、マゴチやヒラアジ、フエフキやコトヒキといったプレデターも入り込んできます。これらはボトムフィーダーよりもアグレッシブに狙うことができます。

また、マングローブや岩場など、ストラクチャーに隠れながら小魚へ気づかれずに接近することができるフラットの場合は、バラクーダやダツといった歯が鋭いプレデターたち、さらには危険な棘を持つエイなども入ってくるのでターゲットばかりに気を取られず、必ずウォッチすることが必要です。

フラットの種類

一般的に干潮前後の4時間が膝下〜股下の水深となる場所を総じてフラットと呼んでおり、もっとも魚を見つけやすく、警戒心も上がりすぎないタイミングとして、膝下の水深になる場所・時間帯を狙います。

国内でも自然豊かな沖縄の離島の珊瑚礁や北海道の干潟だけでなく、都市近郊の汽水湖や河口の干潟、さらには淡水の湖にもフラットは存在します。

底質も死んだサンゴが砕けてできたサンゴ砂や岩が砕けてできた「砂フラット」のような理想的な場所もあれば、粘土や泥が砂と混ざるミックスボトムの場所もあります。これらは比較的安全にウェーディングできますが、完全に泥底の「泥フラット」は体が埋まってしまう危険があったり、貝殻だけで出来た「殻フラット」は転倒すると怪我をするような場所もあります。それぞれ対象魚やタックル・服装も変わってきます。

地形として大きく分けると、「地フラット」と「沖フラット」に分かれます。

地フラット

ハワイ・オアフ島の有名な地フラット「ハワイカイ前フラット」

陸続きで行きも帰りも取り残される心配が無い地フラット。その分、鳥も多くなり、アングラーや漁師・干潟遊びする人間からのプレッシャーも大きく、さらに一方は常に陸地のため魚が出入りするルートも決まっており、入れ替わりもセッション中あまり多くなく、ナーバスな個体も多くなります。その分ゲーム性も高くなり、単独で研鑽を積むのに向いています。

沖フラット

ハワイ・オアフ島のボーンフィッシュの登竜門「トライアングルフラット」は、巨大な沖フラット

陸地から離れた場所にあり、ボートやカヤックなどを使って上陸する必要があるものが沖フラットです。距離的な手間も100m程度で上陸できる手軽な沖フラットもあれば、フラット全体が一つの島を構成していて、ボートで時間をかけて行かないとならない沖フラットもあります。

360度どこからでも常にフレッシュな魚が上がってくるチャンスがあり、鳥や人間のプレッシャーが地フラットと比較して少ないため、魚影の濃さはも比較にならず、フィッシング・プレッシャーにも強くなります。ガイドフィッシングや仲間と一緒に楽しむのにも向いています。

タクティクス①: サイトフィッシング

狙う対象魚によって攻撃心が強かったり、フィールドの環境やコンディションによっては警戒心のレベルが違ったりするため、主に3種類のフィッシング・タクティクスを使い分けます。

晴れて明るく水中が良く見える状態ではサイトフィッシングが成立します。フラットへすでに入っている魚を追いかけるサイトフィッシングは超絶な難易度なので、通常はフラットの外縁部にポジションを取り、すでにフラットで食事している魚たちが射程圏内に入るのを待つか、反対にフラットへ上がってくるフレッシュランを狙います。

タクティクス②: テイリング撃ち

また空が暗い日や風や濁りが強い時は水中の魚を視認することが難しくなるため、水面に見えるサインを手がかりに捕食モードの魚だけを狙う「テイリング撃ち」を行います。テイリングには段階があり、低速移動しながら捕食に入る寸前の「ナーバスウォーター」から、完全に捕食に夢中になって水面から尾ビレをパタパタさせている「フル・テイリング」までの状態から読みを働かせて、テイリングしていない周囲の魚をスプークさせないように気をつけながら、狙った魚の目の前にフライをセットします。

タクティクス③: ショットガン

魚の活性が高かったり、魚影が濃かったり、アグレッシブな魚種の場合は数釣りを狙うことさえできるので、その場合はサイトまたはテイリング撃ちできる群れの行動を予測して先手先手を打っていくショットガンを行います。ピックアップしたら正確に狙って即シュートの繰り返しとなるので、場慣れとタックルのチューニングと使い慣れが非常に大事となります。

タクティクス④:ストラクチャー撃ち

本来は①〜③のタクティクスで釣りたいところですが、どうしてもタイミングが合わない場合はブラインドフィッシングとしてストラクチャー撃ちを行います。これもあらかじめ①〜③で経験を積まないと、そのフィールドのどこが魚が着くストラクチャーかイメージできないため、あくまでも補足で行います。

タクティクス⑤: ボトムスイング

完全なブラインドフィッシングかつフィールドによっては根掛かりトラブルも多いため、これをタクティクスと呼ぶかは微妙ですが、潮流に対してクロスにキャストしてフライを着底させてから、フライラインを水流に引っ張らせて、ボトムクローリングをスイングさせながら行います。水位が落ち切って無いタイミングや澪筋や川筋のフラットで水深がある場所などで行います。

マゴチなどのフィッシュイーターを狙う場合は、初めからタクティクスとして使います。

フラットの段取り

フラットへ流れ込む・流れ出す水は潮の動きが大きい時ほど川の流れのようになるため、安全のために浅いところ・深いところの区別や、流れの強さが見極めやすい干潮前後2時間強を1セッションとしてスケジュールするのが一般的になっています。あまり水位が高いと対象魚の姿はもちろんテイリングも見づらくなったり、明け方や夕方のフラットの水深のある場所はエイやサメなどが回遊することもあるため、安全対策を十分にしているガイドが同行していたり、DIY経験者のみ前後3時間強を1セッションとします。

流れとしては「エントリー」、「下潮セッション」、「ハーフタイム」、「上潮セッション」、「エグジット」が1ラウンドとなります。

日に応じて1日1ラウンドしかできないことが多いですが、早朝と夕方の2ラウンドできる場合もあります。

エントリー

陸続きの地フラットの場合はエントリーする場所にスタンバイしておきます。カヤックやボートでアプローチする必要がある沖フラットの場合は、エントリーする場所に早めに接岸してスタンバイします。

地フラットの場合は直前まで様子が見れるメリットがある反面、背後は陸地で一方からしかチャンスが無いので、エントリーポイントで現状を見ながらベストなコースを決めて入ります。

ハワイ・オアフ島で有名な「トライアングル・フラット」は、巨大な沖フラットで桟橋からガイドボートと一緒に行ってエントリーするのが効率が良い

沖フラットの場合は乗ってきたウォータクラフトをアンカリングする必要があることと、360°チャンスがあるため、フラットへプレッシャーをかけない端っこへ早めに到着しておき、時計回り・反時計回りを決めます。

下潮セッション

すでにフラットへ魚たちが展開した状態からスタートするセッションです。捕食モードになっている魚が多いので狙いやすいと共に、捕食を終えている魚と一緒にいる場合はスプークしやすいので、どこから順番に狙っていくかプランニングが重要となります。

カヤックで下潮セッションへエントリーする例:フラットですでに食事をしている群にプレッシャーをかけないように、海側の出口の端へエントリー

潮止まりハーフタイム

干潮いっぱいで潮止まりの状態。フラットの上の水流が無くなる場合は、ここで15分ほどハーフタイム休憩。風や地形の関係で流れが動き続ける場合は魚は食い続けるので休まず続行します。

上潮セッション

フラットの水位が上昇するのを待って、捕食のためにフラットへ入ってくるフレッシュランを狙うセッションです。群れ単位でやってくるナーバスウォーターを見つけることが最重要で、その中から捕食を始める個体を狙って各個撃破していきます。

徒歩で上潮セッションへエントリーする例: エントリー前にコースを決めておいて、小さな河口筋からスタート

エグジット

あらかじめ時刻を設定しておくか、魚たちの反応が無くなるラウンド終了を見極めて撤収します。

疲れていることが多いので、忘れ物や遭難事故を避けるためにも早めの撤収を心がけましょう。

必要な装備

偏光グラスとひさしの付いた帽子

風が吹いているフラットでフライフックから目を保護する目的と、いち早く魚を見つけるために使います。

日中や明るい空の場合は「アンバー」系のようなイエロー系の濃いカラーが見やすく、早朝・夕方や暗い曇り空の場合は「ペールイエロー」などイエロー系の薄いカラーが見やすくなります。

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服装

フラットには棘のある生物や尖ったエッジをもつ貝殻などさまざまなものが落ちています。安全のために足全体を包むウェーディングシューズを履きます。砂や泥がメインのところはソールはあまり気を使いませんが、岩礁の場合は岩の上で滑らないようにスパイクフェルトシューズがベストです。

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身を隠す場所がない空間では、直射日光および360°からの照り返しMAXの状態です。日焼け防止用の服装は、ミスキャストやフライがすっぽ抜けた際に身体にフックが刺さる予防にもなります。

通気性と速乾性を兼ねたフーディー付きのロングTシャツは強い日差しから肌を守ってくれます。

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隙間から差し込む日差しから顔面をガードするにはBUFFバフ。

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水分補給と食料

日差しの下で4時間以上のセッションを行うため、十分な量の水分と行動食が必要になります。汗をかくので塩分が取れる行動食、ナッツ類や塩味のポテトチップなどがおすすめです。

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最近の源流やフラットでオススメはこれ。嵩張らず持ち運べて満足感が得られます。

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安全装備

沖フラットへカヤックなどで移動する時はもちろん、地続きのフラットとはいえ、潮や波の影響を受けることがよくあります。いざというときのためにライフジャケットの着用をお勧めします。カヤックフィッシング用のものやウェーディング用のPDFは収納場所も多いのでおすすめです。

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棘や貝殻で指を切ったり、ラインの摩擦で切ったりするので、ファーストエイドキットは必須となります。

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疲れてくると転倒したりすることも増えるので、テーピングテープもあると安心。

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タックルに求められる要素

ティペット

フライをボトムに置いておくために重要なパート。比重が高く摩耗に強いフロロカーボン一択となります。ドラグがかかりづらく、魚の群れの中に置いても違和感が無いよう、5-8フィートの長さ、張りすぎると波動が出てしまうのでフライへの追従性が高いしなやかなものがベストです。

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リーダー

フライをターンオーバーさせるだけでなく、狙った魚の周囲の魚を警戒させないために、ターンオーバーの速度をスローダウンできるテーパー設計が求められます。魚の周辺では、フロロカーボンでリーダーごと水中へ沈めてしまうか、ステレス性の高いリーダーを浮かせて使うかの二択となります。

フロロカーボンかつフロント側に重さを与えたバリバスのレコードマスターSW FHTは重たいフライも投げやすく、慣れていない方やアグレッシブなスタイルを好む方におすすめです。

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ある程度の経験を積んだ方がステルス性を求めるならマキシマがおすすめです。丁寧なターンオーバーでフライの突入速度をコントロールし、水面で太陽光線を乱反射させず、特に紫外線を吸収するため、魚を警戒させません。

フライライン

ウェイトのついたフライを結んだ全長15-18フィートのラインシステムを、ワイド気味のループを飛ばし、必要な距離を出しつつもしっかりとターンオーバーさせるフロントテーパーのパワーが求められるだけでなく、着水時に勢いを鎮めてくれる長さのあるリアテーパーという、「前方アグレッシブ後方フィネス」というデザインが求められます。

サイトフィッシングではピックアップしてシュートし直すことも多いため、サイトフィッシング用とされているフライラインは水面から剥がしやすく、そのままバックキャストへ持っていける設計がされています。

フラットは遮るものがないオープンスペース。シュート中のループが横風で乱されることも増えるため、直進性とコントロール性を兼ねる太めで重量のあるシューティング部分が主流ですが、細いほど飛距離を出しやすくなるため、テイリング撃ち重視の場合は細めのシューティングに設計されているフライラインもあります。細いほどハンドリングで滑りやすくなるため、スタイルに応じて選択することになります。

フライロッド

シュート時のコントロール性及びフライラインの特性を活かすための十分なパワーを持ちつつも、ピックアップ&シュートを繰り返しやすいファースト〜ファーストミドルアクションのフライロッドが適しています。9フィートを基本に、風に強くアキュラシーを高めるために寸をつめた8フィート後半のロッド、または9フィート6インチでピックアップ性能を高める3つの選択肢となります。

タックル: サイトフィッシング

サイトフィッシングの場合、クリアーな水の中の魚を探しやすい日を選ぶことになるため、太陽光線が強めの晴れ、もしくは晴れ時々曇りの状況がベストとなります。魚の前に置いたフライにドラグがかかるとすぐ離してしまうので、潮の動きが弱い方が好条件ですが、魚の活性も下がるのでケースバイケースとなります。

フライ: 0.4g程度のウェイトのフライ
ティペット: フロロカーボン 2-2.5号を5-8ft
リーダー: スロー気味のテーパーでステルス性が高いものがベスト
フライライン: キャスト中のフライラインの影が魚にプレッシャーを与えるため、透明フライラインがベスト
フライロッド: 風が強い環境ではシングルハンド8番、風が弱い状況ではシングルハンド6番

タックル: テイリング撃ち

テイリング撃ちの場合、発見することができる限りは太陽光線の条件は気にしないでも良いですが、あまりに水位が高いと苦労するため、南国でも冬シーズンは難しくなります。魚のスプーク耐性と遠投性能のバランスがありますが、

フライ: 0.4g程度のウェイトのフライ
ティペット: フロロカーボン 2-2.5号を5-8ft
リーダー: スロー気味のテーパーでステルス性が高いものがベスト
フライライン: 着水直前のフライラインの影が魚にプレッシャーを与えるため、クリアーティップのフライラインがベスト
フライロッド: 風が強い環境ではシングルハンド8番、風が弱い状況ではシングルハンド6番

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タックル: ショットガン

マスターレベルの人間が行う、手返し優先の究極のフラットゲーム。ナーバスな魚相手のショットガン用タックルについては詳細が分かり次第更新します。

アグレッシブ

アグレッシブな魚相手の場合はコントロール精度が求められないため、スカジットでやることができます。

フライ: 0.4g程度のウェイトのフライ
ティペット: フロロカーボン 2-2.5号を5-8ft
リーダー: ポリリーダー 8-10ft
フライライン: 番手に適合するスカジットヘッド
フライロッド: 風が強い環境ではシングルハンド8番、風が弱い状況ではシングルハンド6番

ラインバスケット

通常のフラットでフローティングラインを使う釣りではラインバスケットは必要ありません。サンゴや岩・牡蠣殻などフライラインを傷つけてしまうものが多いボトムのフィールドへ行く時や、スローシンキングラインを使う場合のみラインバスケットを携行します。

波を受ける心配がある場所が多く、水が抜けないバスケットは体がいざという時に危険ですので、必ず穴のあいたタイプを使います。

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淡水でもできるフラットフィッシング

湖でもマゴイはボトムフィーダーとして、フラットのフライフィッシングと全く同じタクティクスが通用します。流れが緩やかな川でも同様です。

まとめと続き

フラットではボトムフィーダーだけでなく、反対に満潮前後にやってくるフィッシュイーターたちを狙うストリーマーフィッシングも行えますが、水深が深い時間帯かつデイゲームだけでなくナイトゲームも関わってくるため、安全面を考慮してここでは取り扱いません。

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