イワナ・アメマスの仲間たち(エゾイワナ、ニッコウイワナ、ヤマトイワナ、ゴギ)
和名: イワナもしくはアメマス
英名: White-spotted Char
学名:Salvelinus leucomaenis (Pallas, 1814)
サケ科の魚の中で最も冷水を好むため、本州では標高の高い山奥にしか生息せず、そのため環境破壊が進んでいた戦中・高度成長時代には「幻の魚」とさえ呼ばれることがありました。その後、水産試験場や漁協、有志放流によって再び生息を拡げています。ヤマメと人気を二分する日本のフライフィッシングのターゲットです。
アメマスの生態
イワナの祖先は日本と大陸が繋がっていた氷河期に北極海からオショロコマの祖先と共に南下してきましたが、氷河期が終わり、本州以南では海水温が上昇するにつれ、海へ戻らずに適水温を求めて標高の高い川へ生息地を移しました。山岳渓流では餌となる虫が豊富なため、くるぶしほどしかない深さでもイワナは生息し、雨が多い季節に水の流れを利用して沢から沢へと泳いだり、這いながら移動します。
アメマスは孵化してから2冬を源流で過ごしてから、ゾーニングに負けたり栄養状態が悪い魚は銀化して4、5月の雪解け水と一緒に下流へ下っていきます。夏の間は海で過ごし、晩夏になるとこれから産卵を行うサケマスの卵を狙うため、また繁殖準備のために川へ登ってきます。冬に産卵してもサケやマスのように死んでしまうことはなく、そのまま翌年の雪解けまで川へ残ってこのサイクルを繰り返し大きくなっていきます。下流域に適温の海がある場合は大部分の魚が海へ降りますが、一部の魚はイワナとして河川へ残ります。
アメマス・イワナの産卵期
競合するサケマスの卵を狙って栄養を蓄えてから産卵行動に移る習性および冷水に強いことから、10月中旬ー1月中旬にスポーニングを行います。この時期の親魚はそっとしておいてあげてください。
アメマスもしくはエゾイワナ:イワナの本種
北海道や東北では降海型のアメマス本種が生息しており、餌の豊富な山岳渓流で生息しているものはエゾイワナとして川で過ごし、それ以外は海へ下ります。エゾイワナの特徴は全身に広がる白点で、ニッコウイワナのようなはっきりとしたオレンジ色の斑点はほとんど見られません。
さらに大きな規模の湖に育成に十分な源流がある場合は、海の代わりに湖を利用する湖沼型のアメマスが居着きます。内水面のアメマス・エゾイワナには金色を帯びているものがいますが、これは日焼けをしている状態で、浅瀬の餌を狙って回遊している個体が多いかどうかの判断になります。
アメマス種の魚たち
陸封型の魚がほとんどである本州東北以南のアメマス種のイワナたちは地域特性が強く現れ、人間による放流の影響もお大きく、同じ水系でも別々の特徴を持っていることが多くあります。
ニッコウイワナ: Salvelinus leucomaenis pluvius (Hilgendorf, 1876)
東京近辺を含む本州東部に生息している一般的なイワナ。稀に降海した個体が捕えられることがあり、放流により西日本へも生息を拡げています。東北地方へ行くにつれてエゾイワナのようにオレンジの点が少ない個体が増え、本州中央部へ近くにつれオレンジの点がくっきりするが白点が目立たなくなる個体が増えていきます。
ヤマトイワナ: Salvelinus leucomaenis japonicus (Oshima, 1938)
本州中部に生息する、環境レッドデータで「絶滅危惧種」に指定されているイワナ。放流されたニッコウイワナとの交配の影響と釣りによるプレッシャーが原因とされています。ニッコウイワナとの大きな違いは体の斑点。純粋なヤマトイワナにはオレンジの点はありますが、ほとんど白点がありません。このため黒っぽく見えます。
また紀伊半島には「キリクチ」と呼ばれる地域個体群がいます。
ゴギ: Salvelinus leucomaenis imbrius (Jordan and McGregor,1925)
中国山地特有のイワナで、環境レッドデータで「絶滅危惧種」に指定されています。ニッコウイワナによく似ていますが、鉄分を多く含む河川で進化したため、頭まで斑点が広がり、それもアメマス・イワナのような虫食い模様ではなく、円形・楕円形に変化しています。
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