レイクトラウトのフライフィッシング

2023/05/14イワナ属,サケ科,フライフィッシング,レイクトラウト,中禅寺湖,対象魚

和名:レイクトラウト
英名:Lake Trout
学名:Salvelinus namaycush (Walbaum, 1792)

日焼けをほとんどしていない深場から回遊してきたタイプ(2023年)

レイクトラウトはサケ科イワナ属の中で最大の大きさに成長する魚で、1960年代にカナダのオンタリオ湖から中禅寺湖へ移入された後、その圧倒的な魚食性から懸念されつつ現在まで繁殖し続けています。中禅寺湖の生態系の頂点に君臨し、他の魚よりも直射日光を嫌い冷たい水を好むため、どんなに駆除しようとしても湖の深いところでは手も足も出ず、ほとんどが禁漁となる寒い季節には動きが鈍くなる他のトラウトたちを抑えて、湖の餌場はレイクトラウト一族の独壇場となっています。

生態

全般的に直射日光を嫌うので、表層で狙う場合は早朝または夕方、曇り空や天気の荒れた日がベストコンディションとなります。明るい時間帯には巣となる湖底の凹みや岩場の影に隠れていますが、ワカサギが接岸するシーズンは岩の間をすり抜けながら浅瀬まで捕食にやってきます。また光線量が過剰になり水温が高くなる夏場は40m以上の深場へ落ちていってしまいます。

一日中捕食活動を続けるため成長の早いことで知られるレイクトラウトですが、3つのタイプに別れて生息することが知られています。

1つ目のタイプ:回遊型マルチイーター

本来の生息地である北米で最も個体が多いのは、30-60cmサイズのユスリカなどのプランクトンからワカサギの死骸まで幅広くなんでも食べて育つタイプ。ベルト状になっているカケアガリ沿いに点在する窪みや隠れ根で休みながら、ゆっくりと回遊しています。

小型のものは中禅寺湖では沖合の表層に浮いてユスリカをとりつつ、朝夕や雨の日など暗い時間帯に水棲昆虫や弱ったワカサギを狙いに岸沿いまでやってきます。

遠浅の湖岸20-30mくらいの場所に寄ってきて、静かにユスリカを食べていたメスのレイクトラウト、顔も丸っぽく優しい顔つき(2017年)

遊泳力の弱いワカサギや稚マスを主に狙うサイズになっていくと口が長くなっていき、得に成熟したオスは先端が尖っていきます。

カケアガリ沿いに回遊しながらワカサギを待ち伏せる逞しい風貌になったオス個体 (2023年)

ホンマスやニジマスが回遊してきて表層のワカサギやイマージャーを食べるパターンと同じ流れで釣れますが、フローティングラインやインタミなどの水面や水面直下の釣りで狙うことができます。

2つ目のタイプ:岩場の居着き

岩場をすみかとするブラウントラウトと競合するタイプ。40-70cmサイズで中禅寺湖でも次に個体数が多くなっています。ほぼワカサギやトラウトの稚魚たち、ヨシノボリやエビなどを餌としていてユスリカパターンでは出会いません。成熟するのが速く40cmサイズ時点でも既に尖った口先は浅瀬や岩の隙間に逃げ込む小魚やエビを捉えるのに適しており、驚くほどの浅瀬でも果敢に小魚やエビを捕食するため、派手な水音で狙ってみると普通のサイズということはよくあります。

ガレ場のかけあがりを行き来して浅瀬のワカサギを襲っていて、シンキングライン&ワカサギパターンのストリーマーで釣れたレイクトラウト。餌の取りづらい岩場で生息している個体は口が尖り逞しい顔になる

大型の魚は深場へ潜みながら上を通過するワカサギを水面へ追い込むだけでなく、浅瀬まで尾行しながら長く追うことが多いので、最後までしっかりとシルエットをアピールできるストリーマーが適しています。この釣りの場合はカウントダウンが必要なのでタイプ2/3が適しています。

水面や水面直下を漂うワカサギを捕食している場合はフローティング・ワカサギやサスペンド・ワカサギをアピールしたあと放っておいてバイトさせる釣りも可能です。この場合はフローティングラインが必須です。

表層のワカサギへありつけない時はユスリカなどを捕食することもあって、1つ目のタイプより浅い層にこのタイプがいて混合の群れとなっている場合もあります。また、早期に浅瀬に入ってくる集団はこのタイプで、何でも捕食しますがアングラーの数やプレッシャーが高くなるので、フローティングラインを使って、ブラウントラウトを狙うようにフライを引っ張るのではなく、漂わせる釣り方も必要となります。

ほぼモンスターになりつつある78cmレイクトラウト、TFFCC記録最大 (手塚さん提供、2022年)

3つ目のタイプ:生態系頂点のモンスターサイズ

さらに大きい80cmオーバーのモンスターサイズの魚はヒメマスやホンマスの若魚の群れについて回遊しており滅多に接岸してきませんが、ヒメマスの状況によってはワカサギを捕食したり、ユスリカを追って浮いている他のトラウトを襲ったりします。共食いもするので、自分の体の半分サイズであれば同種を襲うことも珍しくありません。

普段は岬へ回遊してくることはあっても湾の中へ入ってくることはあまりませんが、天候が荒れてベイトフィッシュの群れが湾内に逃げてきている場合は別で2匹のつがいで回遊してくることが多いです。ソルトの魚と一緒でベイトフィッシュが大きいのでフライフィッシングで狙いづらいタイプですが、夢を追うフライフィッシャーは魚探とにらめっこで深場をスイングしたりツーハンドタックルで岬へ立ち続けます。

フライフィッシング レイクトラウト 中禅寺湖
(2008年に釣り上げられた103cm 16.5kg、8歳魚の日本記録のレイクトラウト – レイクオカジンにて)

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