攻撃的プレデター・スカジットでソルト再攻略の突破口を開く
右肩の調子が良くない私が2019年のアカメ・ボートフィッシングの際に直面した、「空気抵抗の大きなストリーマーをどうやって右肩に負担をかけずキャストし続けるか」という課題。その時はシングルハンド10番タックルをOPST 450GRスカジットヘッドを使ったスカジット・シューティングシステムにセットして、オーバーヘッド100%の即席システムを組んで対応しました。
これでフォルスキャストなしの「即シュート」することで右肩へ負担をかけずに距離は十分に届くようになりましたが、精度が高いとはお世辞にも言えません。また、いくら即シュートとはいえ高番手シングルハンドロッドを使ったオーバーヘッドキャストの連続は右肩への負担が大きいため、結局後半では右肩が痺れてしまったため、ロッドを両手で持ってツーハンド投げすることに・・・。この時、気の毒に思った根木船長からのコメントは「はじめからツーハンドでやる人もいますよ」。この言葉が脳裏にありつつも、その時そのポジションで使えるタックルはG.Loomisビーチロッド11フィート10番しか持っていなかったので、取り回すには長すぎて、とてもボートやランガンで使いやすいタックルとは言えず保留していました。
ソルトウォーターのプレデターフィッシングに求められるもの
シーバスであれ、アカメであれ、マグロであれ、マゴチであれ・・・「プレデター」と呼ばれるフィッシュイーターを狙う釣りの場合、ベイトのサイズが10cm以上なんてことはよくあります。と同時にトップウォーターへ追い込んで捕食するケース、ストラクチャーで待ち伏せしているケース、狙ったレンジまで沈めないと気が付かないケース、とにかく気づかせて急浮上させてバイトを誘うケース、丁寧にマッチザベイトさせるケースなど、相手の捕食スタイルにあわせないと釣りが成立しないのはトラウトやバスの釣りと同じ奥深さ。
またプレゼンテーションにおいても、水の流れが利用できる河口や磯・リーフの払い出しなどではスイングすることができますが、そうでない場合は自分でストリッピングしたり、間を読んだアクションを仕掛けて誘うケースも多く、プレゼンテーションを成功させるためには、タックルやラインシステム、フライ選びには対応力が求められます。
よくソルトっていうと、「どう食わせるフライ」「どうファイトする強度」ばかりがやたらと注目されますが、プレゼンテーションがちゃんと出来てなければフライが食われないので釣果もついてきません。魚の方もベイトを捕らえるためには安全な場所から自分の身を晒しながら貴重なエネルギーを消費するので、最も成功する方法に執着しますから、ただ投げて引っ張るだけではダメで、その個体へどうやって合わせていくか。マッチザフィッシュが大事です。
R.B. Meiser CX-909 「シューティングスイッチロッド」で組む
「関東道」というコンセプトでフライフィッシングのフィールドを拡大するプロジェクトに取り掛かっている中で、その中央に位置する前橋からも遠くない本所児玉の新進フライショップ「鱒夢」へ出入りするようになり、取り扱いの中古ロッドを物色することも増えましたが、その中に誰も手を出さないユニークなポジションのスイッチロッドがありました。
9フィート9インチで550-750グレイン指定なのでツーハンドでは10番に相当しますが、ロッドアクションがオーバーヘッド寄りに作られており、オーバーヘッド:スペイ=7:3というアクションなのですが、これのライン選びを進めてきました。
プランのベースには、2017年に中禅寺湖で大助かりした、オーバーヘッドもスカジットキャストもこなせるシングルハンド3番のシステム。そしてここ数年の間OPST Micro Skagitで体験した「スイッチハンド」があります。精度高くオーバーヘッドで釣る場合は無用なロッド負荷を無くすためにポリリーダー/バーサリーダー。スカジットキャストで釣る場合は、同じセッティングかつサステインド・アンカーでベルジャン気味にシュート。スカジっとキャストかつ狙ったレンジへスイングの釣りを行う場合はシンクティップへ交換してロッド負荷を大きくしてペリーポークしやすくする作戦です。
オーバーヘッドは問題ないが、スペイに対応するフライラインをどうするか?
OPST コマンドヘッドの450GRを乗せてみましたが、オーバーヘッドはすでにシングルハンド10番で実践したので狙い通りの快適さ。問題はスカジットキャスト。ガッツリと横方向のスイープでアンカーを回し込み続けるサステインドアンカーならば良いですが、ボートや岸壁のような足場が悪い場所では前方へ丁寧に畳むペリーポークや真横へ置いておくスナップTを多用します。ところが、これではロッドのロードが足りずロッドティップ寄りの部分しかシュートに使えません。これではとても重たいシンクティップは使えません・・・。
スペイ競技のチャンピオンである北林さんに試し投げしていただいたところ、「これは、硬すぎるから今くらいのウェイトならばゆっくりティップを曲げていくか、600グレインで軸をとらえていくしかないね」とアドバイスいただきました。
手持ちのRIO Skagit iFlight 700GRがあったので、これを後端を詰めて600GRにカットしましたが、リアテーパーがギリギリまで重要なデザインだったようで、先端のインタミ部分へのシンクティップの追従が性能ダウンしてしまいました・・・。また、これだとインタミ以上のシンクレートしか使えないので応用力に難があります。
その後、近畿出張した時に立ち寄った大阪のビギナーズマムがセールをやっており、幸運にもそこに残っていたRIO Skagit Max 550GRフローティングを発見したので即買いしました。試投したらカットしたヘッドとは大違い!オーバーヘッドもサステインドアンカーも楽にこなします。やはり最初からそのバランスに作られたスカジットヘッドはちゃんと性能を発揮してくれます。
シューティングラインをどうするか
ナイトフィッシングやカヤックやボートといった不安定なプラットフォームでシューティングシステムなんて「トラブルの元凶じゃない?」と必ず言われます
フライリールはツーハンド8/9用にリザーブしてあるフライリール:Hardy MTX-S 7000番をとりあえず流用。リールのドラグ力が2kg少ししか無いので、せいぜいシーバスやヒラスズキ用ですが、直近はその釣りの予定しかないので問題なし。
シューティングラインはトラブル回避のためにノンストレッチコアで、強度抜群のGSPシューティングラインをチョイス。
ティップ&リーダーシステム
手持ちのショートスペイ用に作ってあるシンクティップのセットを使って試し投げしたところ、小さめのストリーマーであれば10ftのシンクティップでも飛んでいきますが、ロッドが9フィート9インンチしかないので、空気抵抗や水噛みが強いエンリコミノーやビッグチューブフライはシュートでアンカーが抜けません・・・。8ftを使って安定してアンカーが使いやすくなりました。
質量に関しては550GRのスカジットボディなので、フライからティップ後端までの重量&抵抗の限界はボディの1/3である183GRに収めないとなりません。使う予定のフライの最大サイズは3g=46GR。最大7GRほどがリーダー及び抵抗だとして残り130GR。シングルハンドやトラウトスペイ用に作ってある8フィートのシンクティップを拡張することにしました。
オーバーヘッドがメインの釣り用としては、鱒夢に残存していたポリリーダー旧品を投入。
40lbコアの直径なのでパワー伝達もスムースかつ、クラスティペットは16lb-32lbが使えて汎用力もバッチリです。
ナイトゲーム開始!いきなりランカーサイズ!
このセッティングでコノシロ・パターンのポイントを攻められるボートシーバスへ行ってきました。ゲーム序盤のポイントでウォームアップが終わってからピックアップ&シュートのオーバーヘッドで9cmサイズのエンリコミノー改を打ち込んだ3投目!
目論見通りランカーサイズ78cmのシーバスが応えてくれました!2008年12月にキャッチした75cmの個体以来の自己記録更新でしたので、ありがたいことです。
スカジットキャストもオフショルダー側でしたが、サステインドアンカーでシュートすると15mくらいまでは安定して狙えます。大きなフライを結んだ状態でこれだけ出せれば問題なし!
ヘビーなラインシステムなので着水が強く、ナーバスな魚は反応しづらい中、フローティングボディを活用して手返しの数で勝負!フッコサイズはこれで十分狙えます。シーバスサイズは流石にアキュラシーが足りずオーバーヘッドでした。
釣果やシステムは一夜にして成らず:ご縁に感謝!
まずいつも良い魚へアプローチできる条件をセッティングして連れて行ってくれるガイドボート「パラスFGS」の鹿内キャプテンに感謝!
そして良いタックルやラインシステムをストックしてくださっているフライショップ「鱒夢」と「ビギナーズマム」に感謝!
右肩故障の保険となってくれたスカジットですが、そのエントリーを支えてくれたSANSUI佐藤さんへも感謝!今は横浜店の店長です。
良い道具を開発して送り出すだけでなく、スカジット野郎のしょうもないタックル&システム質問にも嫌がらず答えてくださる、FMLフィッシング代表の仲野さん、OPST、RIO、Hardy & Greysのご担当者さま達に感謝!
そしてこの素晴らしいフライフィッシングの世界を一緒に支えている釣り仲間たちへ感謝です。
まとめと続き
10フィート以下ロッドを使う「マイクロスカジット」で出来る、水面キャスト:オーバーヘッドキャスト50:50のメリットを、ライン番手としては500グレイン以上の「フルスペイ」を使うという変則セットアップですが、右肩を壊してから、かなり後退してしまった私のソルト・フライフィッシングの出口は見えたと思います。
とはいえスイッチハンド10番のアグレッシブさでは、おかっぱり&ウェーディングの釣りで使う場面は限られますし、このタックルでのシンクティップを使うスイングの釣りもやり込んでいないので、まずはキャスト&ターンオーバー性能を突き詰めてから、どうやって繊細なプレゼンテーションができるようにするかが今後の課題です。
フライ&タックルデータ
スイッチハンド10番
- フライ:エンリコミノー 3/0
- バイトティペット:Seaguar Ace フロロカーボン6号x1フィート
- ティペット:Seaguar Ace フロロカーボン4号x3フィート
- リーダー:Airflo ポリリーダー Salmon Extra Strong (40lb) 8ft Slow Sinking
- スカジットヘッド: RIO Skagit Max 550GR-F +
- シューティングライン: モニック GSPシューティングライン 0.030'' (70lb)
- リール: Hardy MTX-S 7000
- ロッド: R.B. Meiser CX 9’9″ 550-750GR
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