2021年釣り初め:「カンツリー」(管理釣り場)を徹底的に楽しむ
フライフィッシングには様々な楽しみ方がありますが、フィールド・スポーツとして成立し続けるためには「競技人口&環境」と「目的意識(もしくは嗜好性)」というものが非常に大事になります。また釣りである以上「良く釣る」ことが大事になりますが、これも「1匹1匹を楽しむ」という「質」を求める方向性と「数を釣る」という「量」を求める方向性があります。さらにここへ「自然を楽しむネイチャー経験」という側面も重要な部分を占めるため、これらの価値観の軸線と実際のフィールドの間にギャップがあると、えてしてアングラーには大きな不満が生まれてしまいます。
競技人たちの嗜好を理解しつつ安全を確保しながらフィールドを提供する運営側には並々ならない努力があるわけですが、その結実の一つとして都会からアクセスが良い管理釣り場というものがあります。本来はカントリーライフでしか楽しめないタイプの釣りをシティライフへ近づけてくれる素晴らしいサービスです。今回は釣り初めに朝霞ガーデンへ行ってきました。
とは言えスペースが限られたポンド型管理釣り場なので、「楽しいの?」と思われる方もいらっしゃると思いますが、どんなフィールドでも工夫して遊びを創り出すのが遊び人です。朝霞ガーデンは透明度が高いポンドで魚影が濃いので、魚がフライを見つけやすいので、いろんな釣り方で楽しめます。今回はいろんな「毛鉤技」で楽しむ方法について紹介しながらレポートです。珍しい魚やコンディションが良い魚だけがいるわけではないので写真は割愛。
今回使うタックル・・・マイクロスカジット
OPSTマイクロスカジットの10フィート4番に、スカンジショート(SA Atlantic SalmonショートF4/5)、ポリリーダー・インタミという、去年の夏の北海道で使ったまんまにしておいた汎用性の高いタックルです。「スイッチハンド」というコンセプトで基本的にはシングルハンドで操作するけど、投げたい時はツーハンドでも投げる、という釣り方で釣るために徹底的に余分な重量をカットして総重量290g。
ドライフライを使いたい場合はポリリーダー・フローティングかテーパードリーダーに変更しますが、この日はウェット尽しと考えていたのでこれで釣り通します。オーバーヘッドならば余裕で30mキャスト、水面キャストでも安定して20mキャストできるだけでなく、ポリリーダーの重さのおかげで近距離に必須なリーダーキャストもできます。空気抵抗が大きい・重たいフライを投げる時はスカジットにチェンジしてティップが使えるようにします。
遠投&引っ張り
スタート時は人数が少ないので思いっきり対岸までオーバーヘッドキャストするチャンス。朝霞ガーデンのフライ池は大体25〜30m幅なので、「フルライン」練習の目安にしやすい場所です。体を解すためのウォームアップにもなり、何も考えずに気楽にやれる遠投&引っ張りからスタート。
この釣りの場合はターンオーバーしたフライが着水する前から魚に見られている事を意識して、その時の空の色を考慮したカラーのフライを使う必要があります。今回はUV効果のあるマテリアルをボディに使ったソフトハックル「パートリッジ &UVオレンジ」とそれの色違いの「UVブルー」「UVイエロー」「UVグリーン」を投入。着水させたら水に馴染むまで待って(同時に魚にフライをしっかりと見させて)からストリッピングしていきます。
そんな初フィッシュはちょっと痛々しいニジマス。魚群で暮らす間に他の魚に虐められてあちこちのヒレを食いちぎられてしまっています・・・。「魚のコンディション」ということでは間違いなく残念な魚なのですが、朝一にフライに出る魚は訳ありや警戒心が強い子(ニジマスが多い池のヤマメやイワナもそう)が多いので丁寧にリリースします。
空が暗いうちはオレンジの反応が良く、明るくなってからはブルーまたはイエローですが、同じ事を続けると魚がスレるので適時交換します。引っ張りを楽しむ時には練習のためにあえてリアルなパターンを使いません。ルアー的な釣りを行います。オレンジ、ブルー、イエロー、グリーンそれぞれ一通り釣ったらパートリッジがボロボロになってしまったので一旦ストップ。続ける場合はピンク、レッドとつなげるのですが、今日は次の釣りへ移行します。
ミニスイングまたは「なんちゃって」スイング
ポンド型の管理釣り場には酸素を供給するための流れ込みが作られていますが、ここへ魚が並んでくれていますので弱い水流でもアクションする小型のフェザーウイング・ウェットを楽しまない手はありません。本物の流れと違って底波が存在しないのでティップ効果は出ませんのでほんの少しの粘土オモリをティペットへ塗りつけて沈降速度を調整します。水流といっても表層だけの動きで、魚も密集していますからどんなに大きく流しても半径3m未満。でも実際のフィールドでも広くない川であれば良くあるシチュエーションです。練習を兼ねるので水面キャストですが、ラインインパクトのある部分の魚たちが確実にスレるので緊張感を持ちながらやるのがコツです。
ロッドティップを低く下げてあらゆる動きを感知させるようにしつつ、オモリの重さを変化させて3匹釣ったら無反応になったのでフライチェンジ。大きい動きのフライほどスレるのが早いのは実戦フィールドでも同じです。これもフライを交換する事で釣り続けられますが、ウェットフライの代わりに小型のストリーマーやニンフでも動かし方を調整する事で楽しめます。
今回は魚の活性が上がってフライ交換した途端にスレがかりが増えたので(魚が少ないフィールドでは考えられませんが・・・)一旦ストップ。ちなみにアングラーたちのプレゼンテーションが単調化しやすいフライ専用ポンドではスイングさせる事で沈んだ魚の目先を変えて浮かすティーザー効果があります。ドロッパーが禁止されていなければ、下手すると永遠に釣れ続けるようなこともあります。
ルアー&フライ混合の釣り場の場合は誰かのルアーがティーザーの役割をやってくれているので、最初からフライが入れ食いになることもあります。
そうこうしてたら本格的にライズが始まったのでさらに次の釣りへ進みます。
ライズ取り:ユスリカウェット・パターン
管理釣り場でも成立する「マッチザハッチ」の釣りとしてユスリカのハッチがあります。季節と場所にもよりますが魚たちが散発ライズし始めたらいつでもスタート可能です。
この釣りはいくつかやり方がありますが、最初はリアルな18番サイズのユスリカ・ウェットでライズした場所へすかさずフライをキャストして「餌」として食いつかせます。キャストの距離&正確性の練習にもなるので、いろんな場所を想定してオーバーヘッドでも水面キャスト(狭いカンツリでは隣に邪魔にならないようタッチ&ゴー/シングルスペイだけで!)でもやります。きちんとターンオーバーしてフライだけが目立って水紋を作るのが正解です。これ以外だとリーダーの接合部分やフライラインに魚が気を取られてしまいます。これも全く同じことを湖や川の緩流帯で行うので丁寧かつ集中してやるのがコツです。
ちなみに同じことをドライフライやフローティングニンフでもできますが、脱皮したユスリカは非常に小さくなってしまうので、その場合はさらに小さい22番や26番、場所によっては30番まで必要になることもあります。魚の視界に余計な要素を見せないようにティペットも長くとることになります。
朝霞Gではあまり小さいとフッキングが悪くなって口以外にスレがかりするので、22番があれば十分です。
ライズ取り:餌フライ
ある程度活性が上がっってくると、沈んでいた魚たちにスイッチが入るので、浮上してくるこれらの個体へは本物よりも大きいフライの方が好反応が得られます。フライ選択は魚からの「映え」を意識し、空の色に合わせてホワイト、タン、オリーブ、ブラウン/ブラックが必要になりますが、鉄板の14番サイズ、釣り場によっては10番サイズにする事で良いサイズの魚(一般的に大きい魚ほど底へ着くので)を狙えるようになります。
この段取りに反応するのはアグレッシブな魚が多いので使うフライやティペットの強度は注意が必要です。
この日は10番サイズの餌フライで連発した後、最大サイズ45cm弱の個体がリールファイトを楽しみつつ釣れました。餌フライは1個目がこの魚に破壊されフックが折れてしまった他、交換した別の餌フライはフロロ1号のティペットを切られてしまいました・・・。これもライズのピークが過ぎるとピタッと反応が無くなるので次の釣りに進みます。
その日の餌フライは何だったかって?それは自分で作るのが釣りの面白さです。練り餌だって付け餌だってそうだし、ルアーのチューニングも「自分らしさ」を楽しまなくちゃ!
テンカラ的なリーダーフィッシング
ライズのピークが収まると反応が渋くなってきたので、これはテンカラでは当たり前の釣法なのですが、狭い山岳渓流でもやるリーダーフィッシングへ移行します。ロッドのトップガイドからフライラインは一切出さず、リーダーとティペットだけで釣ります。
綺麗なティペットへ交換して18番サイズのユスリカ系にフライを戻して沈み具合をチェックして、水面下を良い塩梅にステイするように調整します。準備ができたらスタート。
狙った魚がいる場所から30cm以内へフライだけが「ポチョン」と入るようにキャストしたら自然に沈めてからロッドで小刻みに誘いをかけます。これもいろんな誘い方がありますが、フライの場合は使うリーダーシステムが太いこともあって、テンカラでは「お釣り」と呼ばれるラインドラグが回避できないのを逆手にとってフライが水中へ収まったらわざとロッドを立てて自然に引っ張られるようにして動きを演出します。
魚から見ると水面直下でイマージャーの動きに見えるわけですが、他の釣り方でスレた個体だけが反応するので意外に大きな魚が出ることがあるので要注意です。この日は普通サイズの魚が連発する中、隣へ本物のてんから(朝霞のフライ池ってテンカラ良かったけ・・・?)アングラーが入ってきたのでストップ。
「レギューレーション」にはテンカラについて何も書いていないのですが、以前私がレベルラインテンカラで爆釣していたら、係の方から「テンカラ禁止です」と言われたことがありました。フライタックルでもテンカラ釣りができてしまうので・・・意味あるんでしょうか?個人的にはテンカラとフライは同じエリアで楽しんで全然OKだと思います!
叩き釣り(ポチョン釣り)
これは禁止されている釣り場もありますのでレギュレーションに注意が必要。
養殖池で育った魚の特性として、「巻き餌慣れ」しているので、渋い時にはあえてわざと水しぶきと一緒にフライがターンオーバーするように釣る「セコ技」をやることがあります。この釣りはそれだけを意図的に行います。やり方は至って簡単。狙った場所へフライがポチョンと水面を叩くように何度も叩きつけてから、最後はスッと水に馴染むように落として放置するだけ。スレてしまっていなければ、これで反応する競争心の強い個体が必ず何処かにいます。
水鳥の中には同じことに気づいているのがいて、わざと水面を横切る時に自分のフンや加えた小砂利を水面へ落として魚を浮かせてから、戻ってきて捕食することがあります。あくまでも「魚群」がいるから成立する釣り方ですが、ウグイの毛鉤釣りでは昔から行われてきた方法であり、理にかなった釣り方かもしれません。
先日行った湖でハコスチを底から呼び出すために、レギュレーションの中でできる「ポチョン」効果を使ったり、源流ではイワナを岩の底から呼び出す時にわざとやる、何回か強くフライを落下させて誘ってから、最後は丁寧に落として食わせるのも「ポチョン」の一種ですね・・・。ポチョンは偉大です!
マロンさん合流にてお昼休憩
そんなアホな世界にハマっていたので気付きませんでしたが、ハッと気づくとアングラーの増えた朝霞Gはやや「密」な状態に・・・。新メンバーのマロンさんが到着していたので、車のドアを全開にして換気を良くしておいてから「カップ麺初め」を。二人ともマスクでツーショット写真だと犯罪者っぽくなるのでこの一瞬だけマスクを外しましたが、それ以外は二人ともしっかりマスクガードです。
今年の釣りの展望や情報交換しつつ、楽しい時間はあっという間に過ぎていきます。会話時は常にマスク越しですが、ゆっくり大きめの声で(元々声が大きい私はゆっくりオンリー)「新しい日常」にも慣れてきたかもしれません。
その後・それ以外の楽しみ方
午前中に一通りの遊びローテーションをやってしまったのですが、マロンさんは王道の「水流狙いのアウトリガーニンフ」。私自身はこの後も「水面キャスト&ほっとけフォーリング」や「無理してイントルーダー」などしょうもない遊びを追加して楽しんでいました。他のアングラーの方を見るとシンキングラインで「遠投&引っ張り」と「ルースニング」が多い中で、なんと「水面でビッグ・ドライフライのスケーティング」をやられている太公望が!(多分ソルトの釣りのどこかでお会いしたことがあると思いますが・・・思い出せずすみません)
遊び心では一本取られてしまいましたが、季節が良い時には底にいる大物だけを狙って「ビッグ・ドライフライ」も楽しい釣り方です。今回ニンフの釣りはすっかり忘れてしまってましたが、ルースニングも面白い釣りです。でも対岸目掛けて「遠投し過ぎ」は私も昔やっていたこと(イトウが入ってた時はこれが一番大きい魚が釣れた)がありましたが、人が少ない時は良いけど、多い時は禁物だと思います。
まとめ
フライフィッシングの楽しみは様々なフライを使ったキャスト&プレゼンテーションに凝縮されていますから、近所のお手軽フィールドでも遊び方を考えればこれだけ色々な釣りができるということになります。自分の「目的意識/嗜好性」をプランしてから釣ることで、過密気味の人工フィールドでも遊び心は十分に満たすことができると思います。「自然を楽しむ」ことができない場合は「仲間との時間を楽しむ」に置き換えるのもありじゃないでしょうか?
もちろん都会生活者のご都合や利便性を優先している以上、「フードコートでファーストフード食べるような楽しみだろ?」と思われてしまうのも分かります。でも都会を無視しては競技人口は増えていきません。とはいえ管理釣り場にしか行かない過密人口だけが増えても仕方がないので、実戦フィールドにも役立つ釣り方と都会のフィールドの間の接点を増やすことが大事だと思いました。カントリーと管理釣り場の接点を見つけるから=カンツリー、なんちゃって。
そもそもこれだけの数のフライフィッシャーが装備ごと集まる場所って他には考えられません!似たようなイギリス発のフィールド・スポーツ「ゴルフ」と比較したら、「打ちっぱなし練習場」と「バーチャルゴルフ」を兼ねるようなものです。
この「集合力」をもっと活用できないか考えてみることにします。
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