源流日帰り弾丸ツアー – 福島県南会津郡
「源流ってお好きですか?」そんな話がフライショップ鱒夢・飯島店長から突然飛び出てきたある日。一応、元山岳部で元ボーイスカウトの私ですが、「源流の釣り」という言葉は「磯釣り」という言葉と同じくらい、求められるレベルの幅が広いので危険です!一瞬躊躇しつつも、心の奥底に眠る「行ったことの無い僻地へ行きたい!」という冒険心に火がついて、相手にご迷惑がかからないレベルの目処だけつけてから、「行きます!」となりました。
「源流」のイメージ合わせ
いつもアウェーゲームが多い「出たとこ勝負」の私にしては、珍しく慎重に参加することになりましたが、これには理由があって、源流というと様々な意味合いがあって、一つは「湖へ流れ込む渓流」というもの。例えば丹沢湖の源流のようにトレッキングは必要だけど林道が川沿いに伸びていて入渓は楽なケースや、伊東松川湖の源流のように林道に車ごと入れる管理釣り場みたいなケースもあったりします。
しかし、渓流釣り的には「山地の合間のV字谷を流れる沢=源流」というもので、高低差がある川原へのルート取りや行手を阻む滝を高巻でクリアーしたり、沢登りしながら釣りをする世界です。今回は後者なのですが、山岳部&スカウトの現役時代もサボってばかりで、最後に本格的な源流釣行してからのブランクも長いので無理をせず自分のスキルレベルと現在の基礎体力の目安をお伝えします。
個人的な源流体験は?
ちなみに中学生の夏休みにいきなり長野蓼科の岩だらけの藪沢のテンカラ釣りに連れていかれた私は、強制的に汗だく源流デビュー。その後はアメリカの大学生の時に一時帰国の合間、知人や従兄とのフライフィッシングを通じて、蓼科の源流をロープ梯子で降りていって釣ったり、木曽の山奥のヤマトイワナを従兄と滝をよじ登りながら釣ったり、というものが原点だったりしますが、その後日本へ帰国してからの東北や関東の源流でもせいぜい2km程度を一気に釣る程度。
で、西表島でカヤックで移動して源流のオオクチユゴイを狙ったり、香港で貯水池の源流へ蚊の大群に襲われながらコイ科の魚を釣ったり・・・という変化球もあったりしますが、これらもやっぱり2km程度の流域なので「ゆるゆる」レベルです。
さらにフライフィッシングを覚えたアメリカ時代はマッチザハッチの釣りを叩き込まれたこともあって、どうしてもドライフライの釣りのペースが遅い私・・・。
というわけで、今回の源流ツアーでは、沢登り上級者の飯島店長の「最速踏破ペア」ではなく、名人・遠藤さんに「じっくり釣るペア」を組んでいただいて入渓することになりました。
店舗集合&早朝にスタート
当日前夜は21:00過ぎまで仕事が終わらなかったので、家の用事を片付けてからゆっくりとETC深夜割引を活用しながら本庄児玉のフライショップ鱒夢へ合流。タックルやウェーダー&ザックなどの装備を店長の車に載せ替えて、みんなで相乗りで出発です。全員マスクON&窓開け換気の怪しいルックスで南会津までおよそ3時間半の行程ですが、フライフィッシングの良いところは話すネタが尽きないこと・・・。それに普段はソロや現地合流が多い私にとって、まるで学生時代へ戻ったかのようなワクワク感が高まります!
仮眠を勧められましたが、そんなもったいない事できないので、目がぱっちりなままで現地へ到着です。
早めの展開で釣るプラン
まだ暗い中でセッティングを進めつつ、店長からブリーフィング。入渓地点までの移動時間が必要なこと。携帯の電波が入らない場所かつ、天気が不安定な季節なので、無理せず午前中に勝負をかけるため、すぐに入渓して可能であればお昼までに大方の釣り上がりを進める、というプランです。
さすがアウトドア慣れしたリーダー達だけあって、端的に必要な事をインプットいただけるので、そのペースについていくためのリーダーやフライ選びをざっくりと念頭に置いてスタートします。
ちなみにこんな川です。
山深く水量は豊富、ブナの森に囲まれていて命の濃い川筋。マイナスイオンの宝庫で命の洗濯にはぴったりのフィールドです!
遠藤さんタックル
入渓してタックルをセットしながら、場慣れされている遠藤さんのタックルを見せていただくと、最近売り出したプレミアム・フライフィッシングセットの「Dipper」7フィート3/4番ロッドへSA Air Cel DTライン4番。「セットぉ?」なんて思うなかれ!Dipperはトルクがありつつも正確な投射がしやすいティップを持つロッドで、手返し良くフライを打ち込んで行けるだけでなく、6ピースなので必要に応じてバラしてフットワーク軽く前進していける戦闘力の高いセッティングです。シーズンでフライラインが傷んだら、前後巻き替えるだけでなく、買い換えることに躊躇しないで良い価格帯のフライライン。
これらを狭い場所でのオーバーヘッドキャストはもちろん、ロールメンディングもビシッと決まるよう調整済み・・・。さすが、名人。現場主義のフライショップの道具はとても参考になります!
オール Tiemco タックル
私の方はすぐに出撃できる渓流タックルは、先日の白馬で久々に組んだTiemcoのシングルハンド3番「初代J-Stream 793-4」にOrvisのフライリールにSA スープラ J-Stream DT3番ラインを載せたもの。リーダーもTiemcoのLDLだし、バッキングラインまでもがSAなので、正真正銘「オールTiemco」!
ちなみにロングティペットを想定して作られたミドルアクション・ロッドなので、本来の「釣り上がりロッド」ではなく、「じっくりドリフトロッド」でマッチザハッチ向けですが、無理くりダブルホールでラインスピードを上げてカバーします。
水が多くてスタートは苦戦
ソルトフライやスペイの釣りがメインになってしまってからは、毎年東京の秋川をチマチマっと釣る程度でお茶を濁してきた私。川へ出た途端にあまりに贅沢なポイントだらけなので、鼻血と貧乏性が出そうになります・・・。ニッコリと遠藤さんから「こんなポイントがずっと続いていますんで、気にせずガンガンやっちゃってください!」と背中を押されます。
そうは言っても普段から染み付いた「もったいない」病は治らないもの。例えるならば、ブータン産の松茸が一切れしか入っていない茶碗蒸しを有り難く食べている人間の前に、日本産の松茸をドバッと皿に盛ったような状態です!バチが当たりそうなので、1匹釣るか3回空振りしたら先方・後方を入れ替わるルールでお願いしてから、パラシュート系フライを結んでスタート!
しかし、チャラ瀬にドリフトしようが、流れの緩い脇へ丁寧に落とそうが、生命反応なし・・・。気になったので水温を計ると14℃ですが、イワナなのでこれは問題が無いはず。白馬のイワナが流れの中に着いていたことを思い出して、目立つようにフライを落としますが、底から「ウニョ〜ン」とやる気なさそうにイワナが途中まで浮いてくるだけです・・・。とりあえず3回は魚の姿を見たので、遠藤さんへチェンジしますが、めちゃくちゃ良いところにエルクヘアカディスをビシッと決めているのに出ない・・・。うーん・・・おかしいぞ・・・。
フライをサイズアップして叩いてみる
遠藤さんによれば「今日は水が多い」とのことなので、これまた白馬の本流イワナが川底や岩の下にへばりついてやる気のなかったことがヒントとなり、思い切ってフライボックスの中に入っている中で最大サイズの「バッタくん」10番を結んでトライ。一発でスレるか、底から誘い出すか・・・答えは・・・。
3回ほどちゃんと水面まで出てきて、食いつくところまで行きませんでしたが、明らかに反応は改善!三振につき遠藤さんにチェンジすると・・・同じ場所の奥へ入ったフライを一発で食いました!着き方が深いだけでなく、少しナーバスなようです。
見立てもできて、ヒントもいただいたので、ここはというポイントではイワナがゆっくりと浮いてきてフライと一緒にドリフトしながらパクリ・・・。
とりあえずこの日1匹目のイワナであると共に、私にとって初の会津イワナ!サイズアップは正解だったようで、この後も2匹ほど連発します。
ちなみに「バッタくん」の完成形はこちら。
この後は、バラシも連発しますが、遠藤さんと交互にキャッチを重ねて、遠藤さんは最大が28.5cmの泣き尺。私はこれもがっぷりバッタくんを加えた27.5cm!いかつい顔つきになって、なかなか良い魚です。
ベストフライが終了して、魔の時間に・・・
4匹目のイワナをキャッチしてから、次の魚とのファイト中にフライがすっぽ抜けて大岩の下の渦へ根掛かり・・・。どう引っ張っても抜けず、角度が悪かったかティペットが擦り切れてここで本日のベストフライをロスト・・・。
仕方ないのでフライボックスに入れておいたカメムシフライをちぎって整形してバッタっぽく見せて続行しますが、ガッポリ出るのは良いのですが、バランス的にフッキングが甘いようで、5連続バラシ!そして続いたイワナはカメムシを咥えたまま、岩の下へ突っ込み・・・ティペット切れで再びロスト・・・。6連続バラシ!
驚異的連続バラシタイム
もはや使えそうなテレストリアルはフォームビートル14番のみ。これがさらなるバラシを呼ぶことに。
落とした所にドンピシャで出る!竿が曲がる!取り込もうと思ったらすっぽ抜ける!
ドリフトした所にゆっくりと浮いてフライを飲み込んだ!竿が曲がる!さあファイトだと思ったらすっぽ抜ける!!
流し切ったかと思ったら、横から飛びつく!フライが口の中へ消えた!しかしすっぽ抜ける!!!
すっぽ抜けるくせに、枝や苔にはしっかりと刺さる!
なぜだ!?なぜなんだー!
そんな事を繰り返していたら、なんと14連発でバラシ・・・。このままでは、カリフォルニアの湖で打ち立てた18連発バラシを抜く新記録が達成できるかと思いきや・・・。
とても勤勉な小さいイワナがちゃんと食べて連続バラシ地獄から救ってくれました。しかし、この魚もネットインしたらフライがちゃんとフッキングはしておらず口の中に引っかかっていた状態ですぐにポロリ・・・。まるでクロダイのごときフッキング失敗の数々・・・。
前向きに考えるとすごい結果?
せっかく良いポイントを譲ってくださる遠藤さんに申し訳なくて「バラシ連発」の部分だけお伝えしましたが、同日の累計では恐らく17回バラシ・・・。軽蔑されるかなーと思っていたら、「それって全部で20回以上食わせているじゃ無いですか!すごいです!」と、地獄の中に現れた天使のごときコメント力・・・。いやいや、常識的にこんなにバラす人は存在しないですって・・・。鱒夢スタッフって超・優しい〜・・・。
この他にちょっとだけマッチザハッチができるポイントもありましたが、手持ちの繊細なドライフライは全て白馬に忘れてきちゃったので、釣り上がりフライを打ち込んだら、大いにイワナに嫌われてしまいました・・・。
そんな事はお構いなしに、突き抜けるほど美しい会津の渓・・・。いつまでも見ていたい、そんな源流風景です!
行方が滝に阻まれたところまで十分に釣れたので一休みしながら、高巻きするかどうか相談していると、天候が急変して雷雨に・・・。V字谷なだけでなく、流れ込む枝沢の水量も豊富な場所なので、遠藤さんの英断で急いで退渓することに。
店長ペアと合流すると、これまた見事な尺イワナを仕留められたとのこと・・・。大成功の源流弾丸ツアーとなり、一同大満足で撤収。
帰りは只見川の有名な「川霧」を目で楽しみつつ、南会津から只見へ広がるこの一帯の素晴らしさに感動しながら帰途につきました。
で終わると思ったら、久々の源流で大した距離を歩いていないにも関わらずヘトヘトに・・・。タックル一式を店長車に置き忘れてきてしまったので、これは次の釣りへの予感?ということで関越道が私を呼び続けるのでした。
まとめ
超・久しぶりの源流でしたが、テレストリアルの基本的な使い分けに加えて、湖の釣り上がりから生まれた大型フォームフライの良いところが合わさって、バラシはともかくイワナが嘘みたいに出てくる結果となりました。
しかし、ロングドリフト向けタックルを使っていたので手返しは正直良いとは言えず、ちゃんと釣りのスタイルに合ったファーストアクション気味な釣り上がりロッドを組み直さないといけないなーと反省もありました。ベストはそれぞれ1本ずつをパックロッドとして持っておくことかと思います。
源流ツアーの詳細やタックルについての詳細は、フライショップ鱒夢へお問い合わせください。「バッタくん」のマテリアルも全て揃います!
タックルデータ
シングルハンド3番「ドリフト向け」タックル
- ロッド:Tiemco Euflex J-Stream 793-4
- リール:Orvis Battenkill II
- フライライン:Scientific Anglers スープラDT3F
- リーダー:Tiemco LDL 15' 5X を9'から先をカット(白馬で短くなっただけ)
- ティペット:シーガーエース1号
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