ユーロニンフィング用フライロッド: 10フィートと11フィート釣り比べ
TFFCCメンバーが7月下旬に行ってきた釣果レポートです。比較チャートは「まとめ」をご覧ください。
ニンフィング/レベルライン・フライロッドを新調
知人の方に頼まれて、海外からキャスティング競技用フライロッドの調達に関わる中で、某キャスティング世界チャンピオンご兄弟とやり取りをすることがありました。ご兄弟ともフライキャスティングの世界チャンピオンとしてご高名ですが、特に弟さんは非常に研究熱心かつEchoのロッドは製品版もプロトタイプも常に振っている方なので、「全く新しいダイレクト感、レベルラインが嘘のように操れる」フライロッドがあるとのことで、Echo Shadow Xを強く薦められました。
ティップの繊細さでベストな10フィート2番とリーチの長さの11フィート3番の間で悩み、後者をチョイスしたのですが、早く試してみたくてウズウズしつつも遠出するほど時間の余裕が無いので、東京都内の釣り場ということで、休みの日にあきるの市の養沢毛鉤専用釣り場で入魂してくることにしました。
午前ハーフセッション(2時間)・・・SAGE 10フィート4番
諸用を片付けて養沢へ到着したのはすでに10時半を回ってました。私で8人目ですが、今日はニンフィング限定でやると決めたので、まずはこれまで使い慣れたSAGE10フィート4番タックルへ、今や私のパイロットフライトなった14番/3.3mmビーズのフレンチニンフを結んでから、ゆっくりと支度して事務所下プールからスタートします。ちなみに養沢はトレーラー&ドロッパー禁止。シングルフライで釣り上がります。
まずは瀬尻
ざっとプールを見ると、すでに叩かれた魚たちでライズする気配はありませんが、ベタ底に沈んでいるわけでもないしニンフィングでは問題なくターゲットにできます。群全体へプレッシャーをかけないように、瀬尻にいるニジマスへピッチングでニンフを送り込んでショートラインで流速ギリギリに合わせて流すと無視・・・。結構スレています。
2投目を間違うとそこらへんの魚全体へプレッシャーがかかるので、流速より速くするか遅くするか悩みつつ、先行しているフライフィッシャーとテンカラフィッシャーの動きを見ると、ドライフライ、インジケーターニンフ、ソフトハックルの動きです。ナチュラルドリフト寄りのプレゼンテーションしか見てないだろう、と推理して流速より速くリードして流したら一発で食いました。
プールど真ん中
瀬尻で2匹釣れたので、続けて真ん中の緩い部分の魚たちの先頭から狙います。しかし、ニンフが着水しただけで奥へ逃げてしまいます・・・。フライを変える前に奥の岸ギリギリ&少し上流へリードをつけてロブキャストしてすぐにラインを上流へメンディングしてから、緩いテンションで手前にゆっくりツツーとフライが寄ってくるように誘います。
これでニジマスが追ってくるようになりましたが、川のど真ん中に居座るヤマメたちが近寄ってくるニジマスを次から次へと威嚇して追い払ってしまいます・・・。これでは釣りにならないので、まずはヤマメ部隊へ強めにキャストして下流側へ追い払います。これでフライは見られてしまっているので、カラーチェンジ&1サイズダウン。奥の岸で影が強くなっているところへ入れてから、手前へ誘って2匹追加しました。
奥のニジマスがスレてしまって、フライがフリー状態で流れの真ん中へ来た瞬間、先ほどのヤマメの1匹が物凄い速さで泳いできてパクリ!この後は続きません。
流れ込み
10フィートロッドに慣れてきたとはいえ、少し長さが足りないせいか、着水させた後のフォーリングから誘いへ切り替える時にロッドティップからフライへの角度がキツくなってしまい加速してします。
流れが速いところならバレないだろうと思って、続けて流れ込みへ。これまでの渓流管理釣り場や湯川での経験を振り返ると、酸素量が多くて活性が高いポイントのトラウトたちはフォーリングだけであっさり食ってくれたので油断した状態でスタート。
ところがどっこい、ニジマスが1匹釣れてくれただけで、完全に無反応。まじめにフライを操作して底波へ入れようとしますが、ちょっと距離があることもあってロングラインで操作してもうまく流せている実感がありません・・・。立ち位置からフライを流すところまでの角度が悪いのかもしれないので、次のポケットは間を飛ばして流れ込みへ直行。
流れ込み2
ところがショートラインするか距離を空けてロングラインするか決めきれず、ロッドを張り出したまま不用意に近づきすぎたところ、ニジマスが流れ込みへ逃げ込んでしまいました。太陽の位置に気を使ってなかったので、ロッドの影が落ちていたようです。ドライフライなら気を使うのに、ユーロニンフで調子に乗っていたようです。
色々と試行錯誤して影が落ちない位置から、フライが着水すぐに手前へ引っ張られないように落とそうとしていたら、YouTubeで見たヨーロッパの選手の動き方を思い出して、アップストリームへのロブキャストでドライフライのような落とし方で流し入れるとあっさりとヒット!少し調子が戻ってきてニジマス4匹とヤマメ1匹を追加した後、フライを引っ掛けてしまったので交換休憩。
昼休み前のボーナスタイム
ふと気づくと早めに休憩をとっている人たちが道路脇から川を覗き込んで何やら魚を見ています。受付で「今日は尺ヤマメ入れますから!」とおっしゃっていたことを思い出し、そろそろ正午前なので狙うことにしました。
もう一度一番下のプールへ入り直してから水中を見ると、確かにいいサイズのヤマメが数匹群れています!
しかしここの尺ヤマメはナワバリ争いに忙しくてフライを見るどころじゃないようなので、一つ上のポケットへさっさと移動。
すると、先ほどのヤマメたちよりも一回り大きなヤマメが「ドーン」と瀬尻のカケアガリど真ん中に定位しています。
まるで午前中に積み重ねてきたプレゼンテーション全てを試すような場面・・・。
フライをしっかりと見せつけてから流速より速く引いていくか、フライを奥の影に隠し入れてから手前へ引いていくか、アップストリームへリードをつけて底波へ流し込んでいくか・・・。
もう一度ヤマメを観察すると、わずかに上下に浮き沈みしながら同じ場所に定位しています。「なんだ、ドライフライと同じでレーンきっちりじゃないか」と気づき、バブルレーンから繋がる延長線上のレーンにアップストリーム&ロブキャストで流し込むと一発でパクリ!!
重量あるファイトを楽しみつつ、ちょっと強面な尺ヤマメをキャッチできました。
とりあえず午前はヤマメ3、ニジマス9、きっちりポリシー通りに12キャッチ&リリースで休憩しました。
午後ハーフセッション (2.5時間)・・・Echo 11フィート3番
一旦車まで戻ってランチタイム。暑さがキツイし、食欲も出ないし、とりあえず12匹リミットメイクしたことだし、さっさと温泉へ引き上げるのもありだと思ってカーゴルームを見たら、Echo Shadow Xが「待てや!」と語りかけてきます。
「世界チャンピオンが薦める俺様を試しに来たのに、一回も投げないで帰るなんて、お前はそれでもフライフィッシャーか!?」
バットセクションに描かれたニンフたちも語りかけます。
「ふーん、やっぱりあんたは伝統主義・権威主義の塊だから僕達ニンフに熱くなれないんだ?見損なったぜ!」
ちょっと待ってよ!私は西表島のウミヘビや道東のヒグマにもめげずフライフィッシングを続ける冒険心ある人間なんだよ?
やったろうじゃないの!
午後の瀬尻でピッチング
かなり暑さで頭クラクラ状態でしたが、車の冷蔵庫に入れっぱなしにしてあるOS-1をガブっと飲み、さらにリポビタンDを1本流し込んで気合いスイッチON。
「たかが1フィート長いだけで何かが変わるもんかね?」と懐疑的な気持ちで、同じく14番/3.3mmビーズのフレンチニンフをセットして瀬尻のトラウトをピッチングで狙います。どうせ10フィートよりもったりしているんだろう?
シュプーン
え?スムースにスイングしたフライは静かに着水してスッと流れに馴染みます。そこへすかさずヤマメがヒット!
あまりの自然な流れに驚いてしまって、ネットの中でぴちぴち動くヤマメを見ながら、この魚がアホなんだと思ってもう一度同じ要領でピッチングします。ちょっと力みすぎてしまいましたが、
シュプ〜〜〜〜〜ン
ピッチングなのに対岸のキワへフライがスムースに入ってしまいました。今度はフォーリングにニジマスがストライク!
何これ?さっきの釣りと全然違うじゃん!
シュプーンだけでさらにニジマス3匹追加。ポイントを変えて他のプレゼンテーションも試します。
午後の流れ込みをショートライン・ニンフィング
11フィートの長さなのに、だるいアクションどころか、まるで手の延長のようなスムースなアクションでフライが面白いように狙ったところに入ります。とはいえ足場が整備された管理釣り場なんだから当たり前だろう。
そこでロッドのコントロール性を確かめるために、流れ込みへ移動してショートライン・ニンフィングを試します。
ストン・・・・・
うはっ・・・、めちゃくちゃ素直に決まります。1フィート長いだけだと思いましたが、手前の1フィートは竿から離れるほど効果が大きく感じます。微塵もロッドティップから手前へツーッとなってしまう気配がないので流れへの馴染みが良くて、流速よりも速めにリードを取りやすいです。そのまま素直にニジマス6匹たちが1キャスト1匹で答えてくれました。
午後の日陰へロングライン・ニンフィング
流れ込みのニジマスはサイズが小さい魚ばかりなので、ジャスト6匹カウントでキリがいいので流れ込みの奥が日陰になっているポイントへ移動します。ここなら、流れ込みも奥から手前も瀬尻も移動せずにできてしまいます。
まずは瀬尻を狙いますが、対岸から張り出した木の枝の隙間を狙ってフライを入れる必要があるプチ難所。
もっと奥へフライを入れようとすると14番だとオーバーターンしてしまいます。張り出した木の枝にフライをロストすること2連発。深呼吸してからフライを18番/2.8mmビーズのフレンチニンフへ交換。ターンが穏やかになってコントロールが良くなりました。
奥にフライを入れて手前へ誘うのですが、11フィートのリーチのおかげでロッドティップから着水点の角度がかなり緩和されます。おかげで着水からきつい加速せずに
ス〜〜〜
と動くフライ。やっている自分も気持ちいいのですが、この動きが恐ろしほどにハマり、入れ食い状態!
やはり威嚇ヤマメがいる状態なのですが、それにもめげずにニジマスが6連発!!これは気持ち良すぎです。
最後はやはりニジマスがおとなしくなった瞬間に矢のような速さですっ飛んできたヤマメがヒット。
流れ込みへペルディゴン
先に瀬尻をやってから、日陰ポイントの流れ込みへ切り替えます。ところがフライ交換を3回やっても反応が悪くショートバイトでバラシだけ。
一旦ポイントを休めるためにフライ選択に時間をかけますが、先日入手した「世界最小サイズのジグフック」に試しに巻いておいたペルディゴンニンフの#22を結びます。最小限のマテリアルで沈みが速いため、見切られるリスクが少なく、深く定位した魚を直撃するためにデザインされています。
岩に引っ掛けると外す時にスレてしまうので、反応を見ながら深いレンジやリスキーな場所を流すことにしますが、意図せず一投目から落ち込みへシュッと入っていってしまいました。フライが底に着く前にガツン!と当たり、普通にニジマスが釣れてくれました。日中の厳しい時間帯もこれならいい感じです。
続けて流れの脇に入れたらどうなるか試したら、フライが入った直後にリーダーが止まってしまったので、根掛かりだと思って外そうとした瞬間、いきなり突っ込まれてびっくり!警戒されないのは良いですが、魚も私も気付くのが遅かったので、飲まれてしまって貴重なお試しサイズをいきなりロスト・・・。
控えのペルディゴンは#18しかないのでそれで頑張ります。#22よりもフォーリングが速いせいか、この動きが見切られたのか、無反応に・・・。
ロングラインでペルディゴン
仕方ないので流れの奥へフライを入れて誘う作戦に変更。結構な距離があるポイントなので、ロッド2本分の長さにしてあるティペット&リーダーだけでなくレベル・フライラインも引き出して色々工夫してみて、テンカラキャストのようなロブキャストにダブルホールっぽい動作でラインスピードを上げてみたら具体良くロッド3本弱くらいの距離までフライが届くようになりました。
なんとも表現しにくい動きですが、奥に入れたフライをそのまま流すと流れの脇に定位していたニジマスが2連発してくれました。
試しにソフトハックルをテンカラキャスト
ふと気づいたのですが、これだけレベルラインで十分に飛ぶのであれば、フライの重量関係ないかも・・・。
ものは試しにジグフライをソフトハックルに交換。流れの際でライズしている魚がいるので、少しだけ上流にフライを落として水面直下を流してあげると、一発でヒット!
普通にヤマメが釣れてしまいました・・・。なんとユーロニンフのロッドなのにテンカラも出来てしまいます!
この釣り方を本格的に試そうかと思いましたが、午後3時半を回っていて、暑さで頭がオーバーヒートしてきました・・・。これ以上続けると熱中症になってしまうので納竿。さっさと近くの温泉へ移動して夜までぐったりなのでした。
午後はヤマメ3、ニジマス19、合計22キャッチ&リリース。
まとめ
北海道的な感覚で「50」狙いを念頭に管理釣り場を釣ってみましたが、午前の出だしが遅かったこともあって合計34キャッチ&リリースで終了でした。しかし、これは夏場に食気の落ちているヤマメとニジマス相手のことで、ドライフライとテンカラで同時に叩かれている中での結果です。なぜ良く釣れるのかとして、ドライフライ、インジケーターニンフ、ウェットフライ、テンカラをやっているユーザーが多い中で、大多数の魚たちはジグニンフを使ったニンフィングの狙うレンジで釣られていないことが大きいと思います。同じ釣り場にニンフィング同士が競えば当然釣果は下がると思いますが、今のところはニッチなので揺るぎない優位性があるのは間違いありません。
また、10フィートロッドと比較して11フィートロッドは、多少狭い場所での取り回しやループが広くなるデメリットはあるものの、リーチの長さはもちろん、長さを活かしたワイルドループの直進性はロングライン・ニンフィングではキャスト性能・操作性ともに10フィートを上回りました。
「飛距離」「着水させる正確さ」「着水後の操作性」および、釣果を1時間あたりの「匹数」と「フライスコア」で採点してみると:
項目 | 10フィート4番 SAGE ESN (第一世代) 1.5時間セッション | 11フィート3番 Echo Shadow-X 2.5時間セッション |
ピッチング:飛距離 | ☆☆☆ | ☆☆☆☆ |
ピッチング:正確さ | ☆☆☆☆☆ | ☆☆☆☆☆ |
ピッチング:操作性 | ☆☆☆ | ☆☆☆☆☆ |
ショートライン:飛距離 | ☆☆☆☆ | ☆☆☆☆☆ |
ショートライン:正確さ | ☆☆☆☆☆ | ☆☆☆☆ |
ショートライン:操作性 | ☆☆☆☆☆ | ☆☆☆☆☆ |
ロングライン:飛距離 | ☆☆☆ | ☆☆☆☆☆ |
ロングライン:正確さ | ☆☆☆ | ☆☆☆☆☆ |
ロングライン:操作性 | ☆☆☆ | ☆☆☆☆☆ |
匹数/時:ヤマメ | 2 | 1 |
匹数/時:ニジマス | 7 | 8 |
匹数/時:合計 | 9 | 9 |
フライスコア/時 | 225pt ヤマメ:35 + 25 = 50pt ニジマス: 25 x 7 = 175pt | 225pt ヤマメ: 25pt ニジマス:25 x 8 =200pt |
私的には34 vs 43で11フィート3番の方が使いやすいという結果になりましたが、1時間あたりの釣果は匹数もフライスコアも全くの互角という結果が出ました。
釣りやすいから、ということは必ずしも釣果には関係ないということでしょう。10フィートロッドで手前を上手に手返し良く釣る方が、同じ時間内での釣果は上になるという例だと思います。コンペティションを意識される方たちが10フィートの釣りは必須という理由に納得しました。
今回から使い始めたレベル・フライライン「ドヒーク Level Racing Line」はFIPS-Mouche 競技用として開発されているだけあって、ガイドの滑りの良さはもちろん、ロブキャストが投げやすく、ライン操作もやりやすく、釣りの時間が日本人よりも長いヨーロッパの選手が満足して使うだけのことがあります。
また、試しにテンカラキャストしてみたら普通にウェットフライも投げられるので、ドライフライも扱えるのは間違いなく、次回試してみたいと思います。
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タックルデータ
シングルハンド10フィート4番(ユーロニンフ)
- 総重量:270g
- フライ:フレンチニンフ#14
- ティペット:シーガーエース 1.5号
- リーダー:サンヨーナイロン落とし込みチヌ2号
- フライライン:Dohiku Level Racing Line AFTMA L3F
- リール:Hardy Ultralite 6000D (195g)
- ロッド:Sage ESN 10’0″ 4番 (74g)
シングルハンド11フィート3番(ユーロニンフ)
- 総重量:g
- フライ:スパニッシュニンフ #18、#22、フレンチニンフ#14
- ティペット:シーガーエース 1.5号
- リーダー:サンヨーナイロン落とし込みチヌ2号
- フライライン:Dohiku Level Racing Line AFTMA L3F
- リール:Hardy Ultralite 6000D (195g)
- ロッド:Echo Shadow X 11’0″ 3番 (g)