キャロジット | Carosit:スカジットを活用してボトムレンジを攻め切るストリーマーシステム

2023/09/19レイクトラウト,中禅寺湖

バスフィッシングやソルトウォーターでも、フィッシュイーターを相手にするフライフィッシングの場合、「プレデター(肉食魚」の習性に合わせてストリーマーを使い、プレゼンテーションしやすいラインシステムを組んで釣るのが当たり前になっています。ところがトラウトフィッシングにおけるフィッシュイーターの釣りの場合は、意外にも限定的なストリーマーフィッシングしか行われておらず、まだまだ未開拓の領域があるということが分かりました。

ほとんどのストリーマーフィッシングはフィッシュイーターが自分より浅いレンジを泳ぐ獲物を水面方向へ追い込む習性を狙って使われていますが、「キャロジット」(スカジットに組むキャロライナリグ)はその反対に底へ追い込んで捕食する魚が意識するボトムレンジを攻めるためのストリーマーシステムです。

トラウトフィッシングの観点でも分かりやすいよう、ストリーマーフィッシング全体の中でどう使うシステムなのか、スカジットで組む場合の留意点は何かについてまとめていこうと思います。

ストリーマーフィッシング

小魚や甲殻類・多毛類を捕食するプレデターを狙うフライ全般をストリーマーと呼んで差し支えないと思いますが、虫がハッチしないソルトウォーターに棲む、原則フィッシュイーターでありつつも甲殻類や多毛類も捕食するプレデターのシーバスを例にすると分かりやすく:

  • シェード・・・日陰や灯りの影に隠れて定位・移動しながらベイトフィッシュを襲撃
  • ストラクチャー・・・障害物に隠れて定位・移動しながらベイトフィッシュを襲撃
  • ドリフト&スイング・・・遊泳力の弱いベイトフィッシュの下流側に定位・回り込んで襲撃
  • ボイル・・・ベイトフィッシュの群れの下や周囲に定位・回遊しながら襲撃

この4つのシチュエーションに対応するプレゼンテーションをトップ・表層・中層で行います。

ここへバスフィッシングとも通じるロックフィッシュ(メバルやカサゴ、ハタの仲間)のような根魚を引き合いに出すと:

  • フォール(リフト&フォール)・・・弱って沈んでくるベイトフィッシュ、水中を上下運動する甲殻類を狙う
  • シェイク&ポーズ・・・水中で弱って痙攣しているベイトフィッシュを狙う
  • ボトムバンピング・・・底のストラクチャーが飛び出てしまった無防備なベイトフィッシュや甲殻類を狙う

これら3つの中層・低層のシチュエーションが加わります。

さらにこれを岸そばまでベイトフィッシュや甲殻類を捕食しにくるロウニンアジやマングローブジャックのようなプレデターや、沖合で船上という高さが確保できるケースでは、ボイル準備状態のプレデターを視認しながらストリーマーを追わせてヒットさせるサイトフィッシングまで入ってきます。

ストリーマーを使ったフライフィッシングでは、対象とするプレデターがどのシチュエーションでストライクしてくるのかを見極めつつ、フィールドの特性やフライラインのシステムの許容する範囲でプレゼンテーションを行うことになります。

最先端のボトム・ストリーマーシステム:キャロジット

ビッグトラウトを求めてエリア・山上湖はおろか、遙かアラスカまで飛び出しているケン山本。


そんな彼の飽くなき探究心から生まれたリグ「キャロジット」は、中禅寺湖のフィッシュイーターであるレイクトラウトとブラウントラウトをシェードができる時間帯に狙い、スカジットヘッドの遠心力パワーを最大限活用してシンクティップ&キャロライナリグをキャストしてからボトムタッチするまで沈めて、ストリーマーフィッシングを行うことができる最先端のシステムです。シングルハンド・スイッチハンド・ツーハンドタックルのどれでも行うことができます。

スカジットのシステムではジェリー・フレンチが提唱する「3の法則」というものがあって、シンクティップは釣りを行う部分であるリーダーからフライまでの全体の質量の3倍、スカジットボディはシンクティップを含む部分の質量の3倍の質量があれば苦労せずにターンオーバーできる、というものです。最近はパワーヘッドが主流になっていて2.5倍程度でも機能するものも増えているのであくまでも目安ですが、ここではツーハンド8番ロッドで使える450グレインのスカジットヘッドを前提に組んだ例で進めていきます。お使いの番手の許容パワーに応じて、調整してください。

フライ

上:キャロジットで使うキールマドラー、下:通常の回遊狙いのグレーオリーブ

根掛かりを避けるためにキール状態を保ちつつボトムから浮いた状態にするために、ウィードが少ない地形では「キールマドラミノー」のようなバックフロートのストリーマー、ウィードが多い地形やカバーではウィードガードをつけたストリーマーを使います。ストリッピングやリフト&フォールで気づかせる・追わせるだけでなく、ポーズの間で食わせることが多いので、水中でサスペンドできる機能と同時に動きが止まった時のプロフィールや生命感も重要になります。

ティペット

底質と魚のレンジに合わせて3-6フィートで調整します。底が柔らかい場合、キャロライナリグの部分が潜ってしまうので延長。底が硬い場合は無用に長くすると動きが不自然になるので詰めます。底にいるエビやスカルピン・ハゼを狙うプレデター狙いのボトムバンピングを行う場合は、不自然な動きにならないよう底質に合わせてシビアに長さを調整します。

キャロライナリグ

シンクティップやシンキングラインでは得られないボトムタッチ性能とストラクチャーの存在やアタリを感知するための支点の役割を中通しシンカーに持たせるためのキャロライナリグ。タックル・ウェイトによってタングステンシンカーを使い分けます。

フライラインを介してのアタリ感知の不利を補うため、プレデターがフライを咥えた時の違和感をなくすために誘導式に作ります。中通し式のキャロライナ用シンカーがボトムを捉えることでシステム全体のアンカーとなるだけでなく、ボトムの感触やフライへのストライクを感知しやすくなります。

最もライトな1/32ozシンカーを使うケースではフライラインの重さの影響が少ないので誘導式セクションを省き、ドロップショットシンカーを使うことでシンカーをティペットへ固定して使います。

シンカーの色は重要でフライへの注意の邪魔をせず警戒心を解くためにマットカラーやブラックを使います。

シンカー種類質量シンクティップスカジットヘッド番手
1/16oz タングステンバレルシンカー1.8グラム=28グレイン120グレイン400-480グレインツーハンド8-10番、シングルハンド10-12番
3/64oz タングステンラウンドショットシンカーまたは5.5mm タングステンビーズ1.3グラム= 18グレイン90グレイン300-360グレインツーハンド5-7番、シングルハンド8-9番
1/32oz タングステンラウンドショットシンカーまたはタングステンドロップショットシンカー0.8グラム=12グレイン60グレイン200-240グレインツーハンド3-4番、シングルハンド5-7番

コントロールリーダー

ターンオーバーしやすくするために、強度のあるリーダーを使いダブルラインに編み込みながらバット側にループ、ティップ側にスイベルをセットしたファールドリーダーを作ります。こちらの7号ー10号を使います。※ファールドリーダーの作り方は別途更新します。

1.8グラムのバレルシンカー=28グレイン、フライなどを含む全体は40グレインと想定

シンクティップ

リーダーからフライまで質量の3倍以上のウェイトのシンクティップを使います。水深に応じてS3、S5、さらにはT-14やT-20を使ったエキストラファーストシンキングを使い分けます。

40 x 3 = 120グレインでシンクティップを製作

スカジットヘッド

シンクティップからフライまでの質量の3倍以上のウェイトのスカジットヘッドを使いますが、OPSTのコマンドヘッドなどパワーヘッドとして作れられているものは2.5倍程度でも機能します。

(120 + 40) x 2.5 = 400グレイン、または(120 +40) x 3 = 480グレイン
間をとって450グレインを使用

ランニングライン

水切れが良く根ズレに強いモノフィラメントのランニングラインを使います。現在のところ試してベストな選択はこちらの10号。

ボトムタッチさせつつスカジットヘッドで持ち上げておく

キャロジットじゃない普通のシンキングシステムでよく釣れる「各社スプーン」・・・

中禅寺のレイクトラウト=暗い時間に回遊するのを狙う、と決まっているように見えますが、貪欲な彼らは日中も湖底の岩やカケアガリなどでできた日陰=シェードに定位&回遊しながらベイトフィッシュや甲殻類を捕食しています。そこをエクストラファーストシンキングのラインシステムで狙えば十分なプレゼンテーションができると思いがちですが、水中の状況を考慮しないままフライラインをフォールさせることで影や波動で警戒させてしまったり、ボトムの地形の中の不利な位置にフライラインをセットしてしまうことで、フライの根掛かりが連発したり、ロストルアーやPEラインの塊を釣ってしまったり、ひどい時はラインごとロストしてしまいます。

また、それなりの質量を持った長いラインシステムが水中で余計な動きをしたり、トラブルを起こしたりすることで、不自然な波動が出てしまい、ポイントへのプレッシャーが高まってしまいます。

ボトムから水中へ水草のようにゆらめく「PEラインの巣」もボトムの大敵!

キャロジットのシステムではスカジットヘッドがフロートの役割を果たすので、完全に底ベタの状態であってもシンクティップより手前の部分を持ち上げておくことができるので、根掛かりしづらくなります。

実際の段取りでは、一番先に沈んでいくシンカーをアンカーとしてテンションを保ったままフォールさせておいてから、シンカーが着底するタイミングをとり、ここから活性が高い場合はそのままプレゼンテーション開始、活性が低い・警戒心が強い場合はラインシステムの波動を消すためにシンクティップが着底するのを待ってからプレゼンテーション開始します。

キャロジットの便利グッズ

水深があるポイントを狙う場合はボトムタッチまで3分以上かかることも当たり前!テンションを保ちながらフォールさせていくのでストラップ付きのキッチンタイマーが便利です。カウントダウンの間どうすればいいか?美しい景色を見て癒される、スマホで友達とチャット、YouTube動画を見るなどなど・・・「退屈を食う」ことを学ぶのも一興です。

シンカー用のケースで便利なのがこちら。

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メイホウ(MEIHO)

まとめと続き

まだまだ開発途中のシステムですが、キャロジットではレイクトラウトだけでなくブラウントラウトやニジマスなど実績が上がってきています。

またズル引きだけでなくカバー打ちにも使えることが分かったので、システムの改良やフィールド別のプレゼンテーションのコツなど、試しながら更新していきます。

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