スモールマウスバスのフライフィッシング
英名:スモールマウスバス / 和名:コクチバス/学名: Micropterus dolomiu (Lacepede, 1802)
警戒心強く、物陰や深みに隠れている半面、非常に好奇心が旺盛なスモールマウスバス。フライをひったくった後、一気に底へ突っ込むため、スリリングなファイトが楽しめる魚です。
スポーツフィッシング振興の目的で1925年に神奈川県・芦ノ湖で行われたラージマウスバス・スモールマウスバス混合の移植においては、全て絶滅してしまったようです。その後、1990年代に入り、長野県・野尻湖および福島県の檜原湖、木崎湖における繁殖が確認されたました。現在では本州各地の冷水域で生息が広がっています。ちなみにNY在住時代の筆者が一番最初にフライで釣った魚がこの魚でした。
特長
同じ科のラージマウスバスとは異なり、流れの強い場所に好んで定位します。ラージマウスバスのように1箇所に定位したままじっくりと捕食することは稀で、回遊しながら攻撃的に捕食を行います。その性格はシーバスとよく似ており、スーッと移動するものやフォーリングに非常に良く反応します。ヒットした後、ジャンプをせずまっすぐに水底へ突っ込むので、サイズに見合わないファイトの強さには定評があります。
生息域
東京近郊では多摩川水系と荒川水系で確認されています。離れたところでは利根川水系や天竜川水系などにも生息していますが、本格的に美しい環境でじっくりとスモールマウスバスを狙うなら、本場である野尻湖や檜原湖がおすすめです。
フライタックル
虫パターンだけの場合、シングルハンド4番タックルでも問題ありませんが、ある程度のサイズを狙いベイトフィッシュにマッチさせる場合はシングルハンド6番タックルまたはショートスペイ4番タックル、シンキングラインを使って流れの中の大きい魚を狙う場合はシングルハンド8番タックルまたはトラウトスペイ6番タックルを使わないとパワー不足になります。
フライパターン
虫パターン
トラウトと同じくマルチイーターなので、水生昆虫全般および夏から秋はテレストリアルが使えます。ドライフライへの反応が悪いときはニンフで好反応となります。
小型のスモールマウスの場合、ユスリカパターンも効果的です。
ベイトフィッシュパターン
イワイミノーに代表されるトップウォーターを誘うペンシル系のパターンが主流となりますが、水中にサスペンドするタイプへも反応が良く、流れのある場所ではスイング用ストリーマーも使えます。ラージマウスバスと違い、泳ぎに自身があるスモールマウスにはベイトフィッシュが弱っていることをアピールする必要よりも見切られるリスクの方が高いので、すーっと泳ぐタイプのものを選んでください。
甲殻類・ベントスパターン
ザリガニやハゼ・ヨシノボリなど泳ぎが遅いベントスも積極的に捕食するので、クラウザーディープミノーやスカルピン系ストリーマー、さらにはそれらの稚エビ・稚魚を模したカラーのアトラクターニンフも有効です。
現在の規則:外来生物法と条例
外来生物法の対象種となっており、生きたまま運搬したり自宅で飼育することは各都道府県により固く禁じられていますが、全ての都道府県でリリース禁止されているわけではないので、釣り禁止でなければ対象魚として問題ありません。
東京都ではリリースが許可されていますが、神奈川県と埼玉県では禁止されていますので注意してください。
北米の魚がなぜここまで繁殖しているのか
1970年、80年代において、バスフィッシングはタックルやアクセサリーをセットで販売できる魅力的な新ビジネスとして、日本のスポーツフィッシング人気の先導役となりました。特に80年代に入り、ペット産業や釣具産業の企業による積極的な活魚の輸入が行われており、本州全域へ北米産のサンフィッシュ科の魚が生息を急速に拡大していった時期と重なります。魚食文化が根強い日本には古来から釣り人による「有志放流」という文化があり、かなり険しい山奥の沢までイワナを放流してきた実績がありますし、サンフィッシュ科の魚の養殖場が国内にできていたこの時期、罰する法律もなかった時代に全国へ移植させるのはむしろ好んで行われたといってもいいでしょう。 今日みたいに生物多様性に対する理解が無かった時代ですので、現在の本州におけるニジマスが占める位置にバスがいたと想像していただくのが分かりやすいと思います。
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