コンペティション・フライフィッシング – トーナメントについて
国内・海外のフライフィッシャーたちから質問を受けることがあるので、ここにトーナメントの基本情報をまとめることにしました。今後追加して行きます。
フライフィッシング大会の概要
フライフィッシングには、悠久の時をスローに楽しむ「マッチザハッチ」の釣りや、テンポ良く釣り上がる「ショットガン」、魚を探して大移動しながらハンティングのような時間を過ごす「ラン&ガン」など色々なレクリエーション・フィッシングの世界があります。しかし究極の目的は「スポーツフィッシング」であって、その技術と結果を競うコンペティション・フィッシングも国内外で盛んに行われています。
国内外で開催されているコンペティションを大きく区別すると、川で行う「リバーフィッシング」、湖岸で行われる「バンクフィッシング」、湖へボートを浮かべて行う「ボートフィッシング」の3つに分かれます。
国際大会と国内大会の違い
3種類が総合的に行われる世界選手権と日本で開催されている大会を比較すると分かりやすいのでまとめてみました。
FIPS-Mouche 国際大会 2022年改訂 | ATFC エリアフライフィシング大会(東山湖を除く) | |
競技理念 | オリンピック憲章に基づく、対等な条件に基づくスポーツ大会としてのフライフィッシング | トラウトキングから引き継いだ競技会 |
スコア方式 | レギュレーション下および制限時間内でのキャッチ&リリースされた魚のサイズ(cm)xキャッチ&リリース数をポイントとする 例) 40cmx1、30cm x 3、15cm x1の場合: 40 + 90 + 0 (20cm未満カウントせず)=130ポイント | レギュレーション下および制限時間内でのキャッチ(ネットイン)&リリース数 例) 40cmx1、30cm x 3、15cm x1の場合: 1+3+1=5ポイント |
参加形式 | チーム参加およびチーム成績と個人成績 ナショナルチームへの参加はFIPS-Mouche日本担当理事の承認制 | 大会への個人参加および個人成績 |
参加カテゴリー | ①シニア・・・満18歳以上 ②ユース・・・満14-18歳 ③マスターズ・・・満50歳以上 ④レディース・・・満18歳以上の女性 | 一般 |
公式戦 | ①国内大会・・・ナショナルチーム選抜 ②ユーロ・チャンピオンシップ ③ワールド・チャンピオンシップ・・・環境保全シンポジウムと同時開催 ※スロバキアの例 | エリアにおける個別大会 |
非公式戦 | ①クラブ個人戦・・・月1回以上, 1-3位の個人にポイント付与、地区大会へのスクワッド選別 ②クラブリーグ戦・・・月1回以上、1−3位のチームにポイント付与、リーグチャンピオン決定 ②地区大会・・・州県単位で行われる個人戦 ※イギリスの例 | なし |
競技方式:リバーフィッシング | 川において200m以上の5つのビートに区切り、担当コントローラーの管理の元で競技を行う ウェーディング可能 | なし |
競技方式:バンクフィッシング | 止水において100m以上の5つのビートに区切り、担当コントローラーの管理の元で競技を行う ウェーディング可能 | 止水の管理釣り場における、岸釣り AB組み分け抽選、1回戦、2回戦、3回戦、決勝戦と3位決定戦 |
競技方式:ボートフィッシング | A・B組み分けによる、ハーフセッション交代制 50m以上の間隔を空けたボートに2名で乗船、Aの競技中はBがコントローラーを務める 競技者がボートの操縦を行うこと | なし |
セッション | 1セッション最短3時間、最長4時間 チャンピオンシップ: 1日1セッションx5日間 | ①A・B組み分け抽選 ②一回戦: 同組の隣合う番号同士がペアとなって1:1対戦(20分) ③二回戦:A勝 vs B勝、A負 vs B負(40分) ④三回戦: 勝ち組の中で1〜3位の順位決め、負け組全員の中で1位決め(30分) ⑤決勝戦および3位決定戦 (30分) |
プレゼンテーション規定 | なし | なし |
タックル本数制限 | 同時使用は1セットまで スペアタックル本数に制限なし 岸釣りの場合はスペアタックルを組んだ状態で持ち運びOK ボート釣りの場合はスペアタックルをセットしてはいけない(リールも外しておくこと) | 同時使用は1タックルまで スペアタックルは4セットまで 使用タックルにはフライまでがセットされた状態にしておくこと |
フライロッド | 12フィート以下 | 11フィート以下 |
フライリール | 一般的にフライリールとして製造されているもの | 一般的にフライリールとして製造されているもの |
フライライン | 全長22m以上、直径0.55mm以上の市販品のフローティングラインとシンキングライン両方を使うこと シューティングヘッド禁止 フライラインへの浮力体やオモリの追加禁止 | フルラインの場合: 規定なし シューティングヘッドの場合: ヘッド全長6m以上であること フライラインへの浮力体やオモリの追加禁止 |
リーダー&ティペット | 全長はロッド2本分まで 全体が同じもしくは先端へ行くほど細い直径であること 接続部分に限り、直径3mm以内のマイクロリングを最大3個まで使っていい インディケーターおよびシンカー禁止 | 制限なし |
フライ | リアル・バーブレス(化学研磨)のシングルフックを3本まで、ドロッパーの間隔は50cm以上空けること サイズ、ビーズ/ウェイト、ドレッシング規定あり | バーブレスのシングルフックを1本まで サイズ・色に制限なし ペンチでバーブを潰したものも可 ワーム素材、ジグ、トレーラー素材は禁止 空バリ禁止 |
ランディングギア | 全長122cm以下 | 全長140cm以下 |
レギュレーション違反に対して | ペナルティ1つに対してマイナス1ポイント |
FIPS-Mouche ワールドチャンピオンシップ
1981年からヨーロッパを中心に開催されている世界選手権。5日間かけてリバー、バンク、ボートの全てを競う総合大会となっており、スポーツマンシップとフィッシュケアに重きを置くこの大会の中から、「ユーロニンフ」や「ロック・スタイル」など、新しいフライフィッシングのテクニックが生まれてきました。
世界大会は環境保全のシンポジウムが必ず開催されることになっていますので、スポーツの祭典としてだけでなく国際交流の場としても見逃せない機会を提供しています。
年度 | 開催国 | チーム |
2022 | スペイン | 金:スペイン 銀:フランス 銅:チェコ |
2021 | フィンランド | 金:フィンランド 銀:フランス 銅:スペイン |
2020 | 新型コロナ・パンデミックのため中止 | |
2019 | オーストラリア | 金:フランス 銀:チェコ 銅:スペイン |
2018 | イタリア | 金:フランス 銀:チェコ 銅:スペイン |
2017 | スロバキア | 金:フランス 銀:チェコ 銅:スペイン |
2016 | アメリカ | 金:スペイン 銀:フランス 銅:アメリカ |
2015 | ボスニア | 金:スペイン 銀:アメリカ 銅:ボスニア・ヘルツェゴビナ |
2014 | チェコ | 金:チェコ 銀:フランス 銅:イングランド |
2013 | ノルウェー | 金:チェコ 銀:イタリア 銅:フランス |
2012 | スロベニア | 金:チェコ 銀:イタリア 銅:スペイン |
2011 | イタリア | 金:イタリア 銀:チェコ 銅:ポーランド |
2010 | ポーランド | 金:チェコ 銀:フランス 銅:スロバキア |
2009 | スコットランド | 金:イングランド 銀:フランス 銅:スコットランド |
2008 | ニュージーランド | 金:チェコ 銀:ニュージーランド 銅:フランス |
2007 | フィンランド | 金:フランス 銀:チェコ 銅:フィンランド |
2006 | ポルトガル | 金:チェコ 銀:フランス 銅:スペイン |
2005 | スウェーデン | 金:フランス 銀:ベルギー 銅:スペイン |
2004 | スロバキア | 金:スロバキア 銀:チェコ 銅:フランス |
2003 | スペイン | 金:フランス 銀:ベルギー 銅:スペイン |
2002 | フランス | 金:フランス 銀:ベルギー 銅:スペイン |
2001 | スウェーデン | 金:フランス 銀:フィンランド 銅:チェコ |
2000 | イングランド | 金:フランス 銀:ウェールズ 銅:オーストラリア |
近代オリンピック精神に見られるスポーツマンシップや多様性への理解を通じて、グローバル関心事である環境問題を共有することで、国際的な友情を育む舞台ともなっています。
ATFC エリアフライフィッシングトーナメント (旧トラウトキング選手権大会 フライフィッシング部門)
止水の管理釣り場「エリア」をフィールドにした、フライフィッシングのトーナメント。ルアーの現行大会と同じく、バトル方式で優勝までを競います。1匹1ポイント方式をネットに入った状態=ネットインでカウントするので、世界中のどの大会と比べても圧倒的なハイペースでキャッチ&リリースが行われています。その速度、「毎分1匹じゃないと決勝進出ラインに届かない」と言われるほど!
タックルやネットの規定はありますが、エリアに応じたフライ制限さえクリアーしていればシステムは自由。ただ、インジケーター・ニンフィングと引っ張りフィッシングの間で開催ルールが固まらない状態があったようです。
トウキョウベイ シーバス フライフィッシングトーナメント
大都会の前に広がる東京湾をフィールドとするソルトウォーター・フライフィッシングのトーナメント。ボートフィッシングのみで行われています。
トウキョウベイ シーバスフライフィッシング トーナメント | |
競技理念 | TBSFT実行員会およびNPO法人 ジャパンゲームフィッシュ協会(JGFA)による、都会の海を舞台にキャッチ&リリース精神を啓蒙する大会 |
スコア方式 | レギュレーション下および制限時間内でのキャッチ&リリースされた対象魚(スズキ、ヒラスズキ、タイリクスズキ)のうち又長サイズ40cm以上の最大サイズ5匹の合計サイズ数をポイントとする 例) 64.8cmx1、40.2cm x 1、35cm x1の場合: 65 + 41 + 0 (40cm未満カウントせず)=106ポイント |
参加形式 | チーム参加およびチーム成績と個人成績 参加申込制、定員30名 チームキャプテン、メンバー、ボートキャプテンのチーム |
参加カテゴリー | 一般 |
公式戦 | 個別大会のみ |
非公式戦 | なし |
競技方式:リバーフィッシング | なし |
競技方式:バンクフィッシング | なし |
競技方式:ボートフィッシング | 3名以下の競技者およびボートキャプテンのチームが各自ホームポートから出船 大師運河河口に集合してゲーム開始 |
セッション | 1セッションのみ、5時間 |
プレゼンテーション規定 | 3名以下の競技者およびボートキャプテンのチームが各自ホームポートから出船 大師運河河口に集合してゲーム開始 |
タックル本数制限 | 同時使用は1セットまで スペアタックル本数に制限なし スペアタックルを組んだ状態で持ち運びOK(トローリング、ハーリング禁止・・・東京都条例) |
フライロッド | 規定なし |
フライリール | 一般的にフライリールとして製造されているもの |
フライライン | 規定なし |
リーダー&ティペット | 全長は12フィート、6kgテスト以下 |
フライ | 規定なし |
ランディング | 規定なし |
レギュレーション違反に対して | ペナルティ規定なし |
TFFCCがお世話になっている、「シークロ」と「パラスFGS」の名スキッパーたちも、このトーナメントを支えています。
その他の大会について
ここでは有名なトーナメントを取り上げましたが、メーカー協賛で行われる「Varivasカップ」や管理釣り場で個別に行われる大会のフライ部門まで様々な形で執り行われています。
「TFFCCフライスコアリング」が始動!
TFFCCではクラブのポリシーを体現化するため、海外での大会と日本国内で行われている大会との互換性を保ちつつ、「スポーツアングラーの成長」を促進するため、1cm サイズ x 1チェック = 1ポイントの「スコアリング」部分に着目して、「リバーフィッシング」「バンクフィッシング(岸釣り)」「ボートフィッシング」の3つの分野において行われる「フライスコアリング」を2022年シーズンより開始しました。
スコア目標を設定してフライフィッシングを行うことで、スキル・経験値・戦略の向上につながり、互換性のある大会へ出場することだけでなく、日常的にフライスコアリングを楽しみながら行うことで、「あのフィールドの難易度ってこれくらい」「いま、どれくらいフライフィッシングで結果が出せるレベルなんだろう」「スキルアップ、スピードアップの目標をコーチに数字で示したい」といったベンチマーキングを行いながら、さまざまなフィールドや魚種を相手にしたフライフィッシングの楽しみが広がっていきます。
さらに対象魚種もトラウトだけに留めず、フラデバやカーピング。フィールドもソルトウォーターまで含めて楽しめるような内容で競技開発を進めています。
この記事のアドバイザー
FIPS-Mouche 世界選手権のTeam Japan出場経験者のTFFCCメンバーと、全英ユース選手権経験者のメンバーのご協力をいただいています。