チューブフライのすすめ:基本編
通常のフライはフックへ直接ドレッシングを行いますが、フックの形状に制限を受けるため、捕食バイトおよびリアクションバイトにおいて必ずしも理想的なフッキングやホールド力を発揮することができません。またフライを大きく・長く作るためにフック自体のサイズアップをすると、フック重量が嵩むだけでなく、魚の口に対するフックが大きくなってしまいフッキング率が落ちてしまいます。これは大型ウェットフライやドライフライ、サーモンフライやストリーマーにおいて特に顕著な問題となります。
これを解決しようと、ヨーロッパのアングラーたちが生み出したのがフライ本体とフックを分離するチューブフライになり、国内でも狙ったターゲットを仕留めたいDIYアングラーやシビアな状況でも結果を出さないとならないプロガイドたちに愛用されています。

- 2025.9.16・・・初回アップ
チューブフライの特長
チューブにドレッシングしたフライ本体とフックを分離することで、チューブフライには様々なメリットがあります。
フッキングの調整や傷んだ時にフックだけ交換できる
大きい魚に対してフックが小さすぎる時は大きなフックへ交換。反対に小さい魚を弾いてしまう時は小さなフックへ交換することもできます。岩や障害物が多いポイントで根掛かりを外すためにフックを伸ばして外した場合も、新しいフックに交換して釣り続けることができます。
フライのボディを大きく・長くしても、軽量かつ小さなフックを使うことができる
ストリーマーのサイズを大きくする場合、通常のフックでは同時にフックベンドも大きくなりシャンクも長くなるために重量も増加してしまいますが、チューブフライの場合はボディーを延長してもフックサイズを大きくせずに使うことができます。
無用にフックサイズを大きくしないことで、口だけにフッキングしている状態にして魚体へのダメージも減らせます。

ファイト中にフックした魚とチューブが分離してくれる
チューブフライはフライ本体のアイではなく、中通し状態になった先にあるフックのアイにティペットが結ばれています。ファイト中にフックがチューブから外れてフリー状態となることでバラしづらくなります。特にサーモンフックやストリーマーフックのようにフック全体のシャンクの長さが占める割合が大きいフックの場合、負荷がかかって「バネる」ことでバラすようなことが多くなりますが、チューブフライを使うことが回避できます。
魚をリリースするときにフックを外しやすい
フックとチューブが分離することで、魚の口にはフックだけがかかっている状態になります。フライのマテリアルが邪魔することがないので素早くフックを外すこともできれば、せっかく巻いたフライのドレッシングが破壊されることもありません。
チューブフライで無ければ機能しない・表現できないフライがある
細長いイカナゴ科の魚を表現した「サンレイシャドウ」や15cmを超える全長のストリーマーの場合、チューブフライにすることで初めてフライタックルで扱うことができるようになります。
チューブフライのつくり
チューブフライは「チューブ(インナーチューブ)」と呼ばれるプラスチックチューブに「ジャンクションチューブ」と呼ばれるシリコンチューブをストッパーとして被せてグループ化したものを、チューブフライツールを装備したバイスにセットして、さまざまなフライパターンをドレッシングして表現します。

さらに各種のアタッチメントを使い分けることで、表層で漂わせる軽いストリーマーから素早く沈めて使う重たいストリーマー、水面へ浮かせて使うドライフライからボトムをずる引きするウェットフライまで作り分けることができます。
フライパターンのドレッシングの最後には、チューブ先端をライターで炙って末広がりに丸めてフィニッシュします。
完成したチューブフライ本体にティペットを通し、目的に合ったフックを選びノットで結合してから、結び目をジャンクションチューブに摩擦で止めて固定します。
チューブフライのボディ部
プラチューブ(プラスチックチューブ)
北欧とPNWを中心にスタンダードになっているのがPVCやポリカーボネイトを素材としたプラスチックチューブ(以下、プラチューブ)を使う方法。チューブ後端にはジャンクションチューブを刺してフックの固定に使います。
チューブには何もアタッチメントをつけなかったり、直径にあったアタッチメントを使い分けることで泳ぐ姿勢やウェイト調整を行います。
チューブの規格は2mm(1.7-1.9mm)弱と2.5mm弱(2.4-2.6mm)が最も互換性が高く、各種ヘッドなどを使うことができます。
コーンヘッドとフラットヘッド
プラチューブの泳ぐ姿勢やウェイト調整のために使うアタッチメント。
コーンヘッドは小型や素早く沈めたいマテリアルの少ないシュッとしたチューブフライに使います。
フラットヘッドはアピールを強めるために放射状にオーストリッチなどのマテリアルが広がるバルキーなチューブフライに使います。ヘッドに当たった水流が広く広がるのでマテリアルの動きが良くなります。またボディ中間でショルダーとして使うことでマテリアルを広く広げることにも使えます。
トーピードヘッド
水流の抵抗を減らして素早く沈める時に使います。
メタルチューブ
アルミニウムとブラス(真鍮)でできており、プラチューブの上へジャケットとして被せて使います。さらにエクステンダーと組み合わせることで好みの長さに延長できます。
チューブフライの設計とドレッシングするパターン
現在チューブフライには、サーモンフライやストリーマー、ウェットフライやドライフライなど原型があってチューブ化されるものだけでなく、初めからチューブフライとして成立したパターンもあれば、異なるチューブフライを組み合わせて表現するコンビネーションやリグまで多様な使われ方をしています。
最長の部類に入るものは、アトランティックサーモンやシートラウトの大好物のイカナゴ科やキュウリウオ科のイミテーションである「サンレイシャドウ」で、ノルウェーやロシアでは25cmサイズにタイングすることもあります。

最短の部類に入るものもサンレイシャドーのマイクロ版で、小魚を表現するためにチューブ本体が1cmもありません。
同じく純正チューブフライ型サーモンフライである「テンプルドッグ」も、アトランティックサーモン向けのフルサイズもあれば、トラウトを狙うマイクロサイズまでバリエーションが多くあります。

ここではカバー仕切れないので、「チューブフライ:設計とドレッシング編」をお待ちください。
手軽に巻けてベイトフィッシュにも甲殻類にも使える「テンプルドッグ」の改造版:
大型ウェットフライのフックサイズを小さくするために現場でチューブフライ化した例:
チューブフライのフック(トレーラーフック)
意図して使う場合を除き、キール状態が不安定になるダウンアイフックや刺さり感度が落ちるヘビーワイヤーのフックは使わず、ストレートアイまたはアップアイのスタンダードワイヤーのフックを使います。また、フライにセットする時に、フックポイントの反対側からアイにティペットを通すので安全に結ぶことができるメリットもあります。
ここでは一般的なトラウトに使われる8lb (1X、フロロカーボン2号)を使う前提で紹介します。
ストレートアイ
軸線の角度がフック - ティペット - ヘッドまでが一直線で感度が最大化できるために、釣果にこだわるアングラーやガイドに使われています。
ストレートアイかつリアルバーブレスで使いやすいのが「ドヒーク HDG645」の8番と10番。
曲がったり折れたりしづらい定評ある競技用フックかつ25本入でお得です。
バスやシーバスなど口が大きい魚にベストは「ドヒーク HDS」の2番と4番。
トレバリーや大型シーバスなど向けに、ヘビーワイヤーかつサイズアップしたい時は「がまかつ B10S」。ワイドゲイプで大きい口のどこかへ確実に刺さりますが、感度は落ちるヘビーワイヤーとなります。ストリーマーにも多用されていて定番です。
アップアイ
伝統的なアップアイ。ダブルノットにしなくてもアイの角度でジャンクションチューブに引っかかりやすくなっていますが、同時に感度はストレートアイよりも少し落ちます。
アップアイのフックで定番なのは、「オーナー SSW」。
タフコンディションの時に限り、刺さり感度が高いこちら。ルアー用フックなのでアイが大きめで通しやすいのが助かります。
さらにタフコンディションの時に、北関東で使われているのがこちら。アイが小さいのでノットの種類が限定されるため、自己責任で使ってください。
フックのセット方法・・・ダブル・サージョンズループとダブル・タールノットの使い分け
チューブフライのフックは、フライ後端のジャンクションチューブの部分にフックに結んだノットの一部を滑り止めに引っ掛けて固定します。

大型の魚を狙ってゾンカーのような長いウイングを持つフライの場合、フック接合部分がダブルラインにできる上に、フックから離れた位置に結び目が作れるダブル・サージョンズループを使います。

通常サイズの魚が相手で短めの長さのウイングのフライを使う時は、結び目がフックのアイの部分にできるダブル・タールノットを使います。

実際のフィールドでのノット作業に便利なのがこのツール。

実はハックルプライヤーなのですが、ループの向こう側からタグエンドを掴んで抜く作業がとてもやりやすいので、マイクロサイズまたはスタンダードサイズをピンオンリールにつけておくと便利です。
チューブフライのタイングに使う各種ツール
バイス
専用バイスまたは専用アタッチメントのついたバイスがあると、ニードルもマンドレルも揃っており、様々なサイズのチューブを使ったタイング作業が非常にやりやすいです。
上記2タイプのチューブフライ対応バイスで使えるテーパーピン5本セット、0.6mmから4mmまでほとんどのチューブを刺して固定することができます。
バイスアダプターやチューブ用ニードル
対応バイスを持ってなくてもバイスジョーに固定して使うアダプターやニードルを使ってチューブフライを巻くことができます。
マンドレルにチューブを通して挟み込んで固定するタイプのアダプター
1.8mmチューブでも固定できるニードル
GSPスレッドの50D以下とテンションがかけられるボビンホルダー
チューブフライのタイプによっては狭いスペースが巻き太ってしまったり、特にヘッド部分を薄く作らないとコーンヘッドやフラットヘッドなどのアタッチメントがセットできなくなることもあるため、巻き太りせず薄いまま強度が保てるGSPスレッドの50D以下が非常に便利です。
ドラグ機能が付いているボビンホルダーだとテンションのコントロールもできるので、スレッドワークが非常に快適になります。
カッター
回転させながら刃を当てることで、普通のカッターでも切ることはできますが、プラチューブを綺麗にカットするのに便利なパイプカッターは仕上がりが綺麗です。
チューブフライの起源
第二次大戦が終わった1940年代後半ごろに、スコットランドのサーモンリバーである、ディー川とテイ川に通うアングラーたちが考え出したと言われていて、金属のチューブにドレッシングしたフライとチューブの中を通して後端にセットするフックを分離することで、キャッチ&リリース派のサーモンアングラーたちに好んで使われてきました。スコットランドのアレキサンダー・ワンレスが元祖とされていますが、同時期にディー川に通っていたビル・マクファーソンなどと競って、既存のサーモンフライからチューブフライへパターンを移植する流れが活発になりました。

その後、60-70年代に入るとサーモンフィッシングが盛んな北欧デンマークとノルウェーでプラスチックチューブを使った小型かつ細いティペットでも使える繊細なチューブフライが発展して、アトンランティックサーモンよりも小型のシートラウトなどにも使われるようになりました。
北米でも70年代からアラスカ・カナダ・アメリカ46州にまたがるPNW (Pacific North West)のアングラーやガイドたちにスティールヘッドやパシフィックサーモンの釣りで使われ始めていて、北欧系の移民が多いこともあり、互換性のあるパターンから使われるようになり、流れの速い川で素早く沈めるためにコーンヘッドなどの錘が使われるようになり、さらに小型のサーモンやドリーバーデンなどを狙うためのより小さいサイズのチューブフライまで使われるようになって現在に至ります。
まとめと続き
筆者自身は河口のシートラウトやシーバスのストリーマーといった標準的な使い方や、大きく軽く作る必要があるソルトポッパーやパイクフライなどでもチューブフライを使い、既存のストリーマーやウェットフライの設計やフックサイズに問題がある時のソリューションとしても「チューブフライ化」して使ってきました。
シンプルにたくさんの魚を釣れるシチュエーションは普通のフライで十分だったり、頻繁に交換しながらヒットパターンを見つける忙しない釣りには不向きですが、すでにパターンが分かっていて結果を改善したい時や、その場所の狙っている魚をどうしても出したい場面、最大限のアピールをしたい場面ではシャンクフライと並ぶ必須の一手となります。
また続編や新しい発見で更新します。
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