ラビットゾンカー改 (3つのバリエーション)
カタクチイワシやキビナゴ、ワカサギといった体が半透明で一直線に泳ぐ5cm前後の小さなベイトフィッシュのイミテーションに求められるのは、プレデターが気づいた時に見破られることの無い真っ直ぐなプロフィールと、くわえるまで諦めさせない水中で揺らめくマテリアルが作り出す生命感です。このサイズのベイトフィッシュは目立つ波動を出さないので(弱って水面に浮いた状態では無いので)、余計な波動を出すルアーよりも静かなフライの独壇場とも言えます。
ストリップ・ファー素材の妙
マラブーを使う場合、最高の生命感を表現できますが水流によって形が崩れやすく、プレゼンテーションに慣れが必要となります。バックテールやクラフトファーを使う場合、水流の中でのプロフィールの安定感は最高ですが、生命感は比べようもありません。長くストリーマーフィッシングをしてきたイギリスやアメリカのフライフィッシャーたちはいろいろなマテリアルを試してきて、ストリップ状(短冊型)にカットされた兎の長い冬毛がマラブーのような動きもするし、1枚の皮でつながっているのでプロフィール崩れも防げることを発見して、これがベストなマテリアルであるということで素材の名前そのままで「ラビット」、ドラッグのようにプレデターへ効くことから「ゾンカー」、合わせて「ラビットゾンカー」というフライ名になりました。
今ではウサギだけでなく、リスやオポッサムなどの柔らかいファーからもゾンカーストリップ(ゾンカーテープとも呼ぶ)がカットされて売られています。マニアの中にはオリジナルゾンカーを作るために服飾素材から染めて自作する人もいます。
魚の捕食スタイル&フックセットに合わせる
プレデターへのアピールは鉄板のラビットゾンカーですが、どのようなフックスタイルを選ぶかは対象魚の捕食方法や口の形によって異なってきます。オリジナルパターンはロングシャンクでゲイプの狭いストリーマーフックに巻かれていますが、サケ科やアジ科の魚は後ろや斜め下からフライをくわえると口を閉じて反転するのでこれで十分フックセットします。
しかしそれ以外の多くの水面直下を意識しているプレデターの場合、斜め下からマテリアルを観察してから吸い込むように捕食したまま泳ぎ違和感を感じるとすぐに吐き出します。このため魚の唇よりも幅の広いフックを使わないとマテリアルごと吐き出されてしまってフックセットができません。
さらに口全体を袋のように大きく広げるラージマウスバスやシーバスのような魚の場合、フライと周囲の水を塊としてバキューム効果で吸い込むので吐き出す力も非常に強く、より幅の広いフックが必要となります。
バリエーション1:横浜カスタム
シーバスのバキューム捕食スタイルに合わせてワイドゲイプの「スティンガーフック」や「丸せいご針」(がまかつB10-SやTMC9394)にアレンジされた横浜バージョン。これをさらにスリム化するために、マイラーチューブをシャンクに被せるのではなく、シャンク下にフラットに固定したアレンジです(大物ハンターで有名な秋津さんのパターンからヒントをいただいています)。口が大きいシーバスに合わせつつフライの全長を5cm前後に抑えるためにフックは#2以上の大きいものを使います。
サイズを変える時はゾンカーテープの長さはシャンクの2倍を目安にします。
バリエーション2:Neversinkトレーラースタイル
下から観察して吸い込む捕食に合わつつも5cm前後のサイズを維持するために改良された、25mmシャンクを使ったトレーラーフックかつダンベルアイでキールに巻いたバージョンです。沖縄のトレバリーの釣りではしっかりとフライをアタックするのにフックセットが決まらないことが多く、良く観察するとゾンカーの後ろだけ咥えようとして失敗していました。陸っぱりシーバスの釣りやヒラスズキでも同じような吸い込み失敗が多く、トレーラーフックにすることでベイトフィッシュだけでなくバチ抜けでも有効なアレンジになっています。
ダンベルアイをヘッドにつけることで水面下へ素早く馴染ませるだけでなく泳ぐ時に縦にうねりの動きを追加できます。またヘッドが支点となるので、テールへのストライクが伝わりやすくなっています。キール状態のトレーラーフックが遊動するので、一度フックセットが上顎に決まればノーマルフックよりも外れづらいのも利点です。フックサイズは#6-2くらいが目安です。
バリエーション3:チャーリースタイル
これよりもサイズダウンする場合は、トレーラースタイルに巻けないので、フックサイズとゾンカーテープの長さを小さくするボールチェーンアイを使ったチャーリースタイルに巻いています。トレバリーやヒラスズキ 、メバルといった魚には適していますが、シーバスのバキューム捕食の場合はフックが小さすぎるので使いません。
さらなる発展系:クラフトゾンカー
ゾンカーテープの皮の部分は塩水で傷むとガビガビになって固くなってしまいますが、「クラフトゾンカー」を使うことで、これを回避することもできます。
皮がないので水中での動きの制約が無くなり、バチ抜けや普通のフライでは反応しないプレデターへ効果的です。
マテリアル:ゾンカー横浜スタイル
フック:ドヒークHDS#2(リアルバーブレス)またはがまかつB10S #2
スレッド:テックストリーム GSPパワースレッド 8/0
テール&ウイング:ラビットゾンカーストリップM、クラフトゾンカー
ボディ:マイラーチューブ・シルバーをフックシャンクの下側へ押して固定
マテリアル:ゾンカートレーラースタイル
シャンク: 20mm、25mm、30mmシャンク
スレッド:テックストリーム GSPパワースレッド 8/0フック:ドヒークHDS#6(リアルバーブレス)またはがまかつB10S #6
アイ: ダンベルアイ 4.0mm
トレーラー: ファイヤーライン
テール&ウイング:ラビットゾンカーストリップM、クラフトゾンカー
ボディ:マイラーチューブ・シルバーをフックシャンクの下側へ押して固定
戦績
- シーバス、ヒラスズキ
- ラージマウスバス、スモールマウスバス
- ニジマス、ブラウントラウト、イワナ、レイクトラウト
- マアジ、メアジ、ギンガメアジ、ロウニンアジ
- メバル
- カンモンハタ
タイヤー
この記事のディスカッションに参加する | Join the Discussion
東京フライフィッシング&カントリークラブのFacebook グループ「Friends Lobby」ではメンバー以外の方とのディスカッションも行っています。気になる情報や質問などはこちらまで!