「北海道スケール」でフィールドを考えてみる:「関東道」

2023/05/01

首都圏を中心に生活している私たちの場合、大都市の中にすっぽり収まる普段の生活範囲の中から物事を考えるため、どうしてもフィールドを大きいスケールで捉えることがイメージしづらく、「行って帰ってくる」感覚も手伝って、生物分布よりも何県のどの漁協へ行くか、といったことの方を意識してしまうことが多いと思います。しかし日本列島と魚たちはそんなこととは関係なく古の時代から営みを続けてきたわけで、もっと広い視野で物事を見ることで、素晴らしいフィールドが待っている地図が見えてくると気づきました。

そこで行政区分を無視してみて、北海道以外の地域も「道」であるという観点で地形図を捉えて、北海道をベンチマークに使ってフィールドの豊かさを検証してみようと思います。

「関東道」を北海道スケールでベンチマーキング

まずはTFFCCメンバーが多く住む地域である「関東道」から。

本来の関東とは律令国制における美濃国(現在の岐阜県)にある関所から東側全てを意味する言葉でした。大和朝廷から見れば巨大な山脈の向こうに広がるワイルドな世界だったわけで、北海道スケールを当ててみるのにぴったり!全く違和感が無いと思います。

しかしながら、情報が集まる首都圏がある南関東(東京・埼玉・神奈川・千葉)だけを見ても、自家用車の利用状況を統計で見ると、全国でも最低レベルです。もちろんこれは釣りやアウトドア利用目的ではありませんが、普段から精神的に移動距離へブレーキをかけている可能性が大きいと言えます。反面、フィールドにほど近い北関東(群馬・栃木・茨城)は全国レベルでもトップ集団、したがって関東道を北海道スケールに置き換えるための中心点は北方へ調整することにします。

それではGoogle Mapから同じ縮尺で日本地形図をキャプチャして、目安の同心円を置いてどんなターゲットが釣れるかを見ていきます。同心円は、ざっくり空いている時の車の移動で1時間ごとに区切ってあります

ここでは前橋起点の関東道と旭川起点の北海道を「トラウト」で比較してみました。

区分関東道-前橋起点北海道-旭川起点
ニジマス群養殖ニジマス、野生化ニジマス、ハコスチなどの改良品種天然ニジマス、スティールヘッド、養殖ニジマス、野生化ニジマス
サクラマス群ヤマメ、サクラマス、ホンマス(ビワマス)、アマゴ、サツキマス
ヤマメ、サクラマス(海と漁協河川)
その他タイヘイヨウサケ属サケ(海と漁協河川)、ヒメマスサケ(海と漁協河川)、カラフトマス(海と漁協河川)、ヒメマス
アメマス群ニッコウイワナ、ヤマトイワナアメマス、エゾイワナ
その他イワナ属ブルックトラウト、レイクトラウト オショロコマ、ミヤべイワナ、ブルックトラウト
イトウ属養殖イトウイトウ
ブラウントラウト群ブラウントラウトブラウントラウト、シートラウト

驚いたことに、北海道スケールでの移動さえ厭わなければ、これだけ豊富な種類の魚たちをフライフィッシングで狙うことができます!スポーツフィッシングのための漁協が少ない北海道と比較して遜色が無いのは、水産試験場と漁協の方たちが積み重ねてきた努力も大きいですが、越後山脈から南アルプスへ広がる広大な森林地帯が作り出す豊かな水と栄養豊富な川という恵まれた環境も大きいと言えます。

関東道だけの魚

全国レベルで見た時に、関東動にしかいない魚たちがいます。どちらのイワナ属の魚ですが、「ニッコウイワナ」と「レイクトラウト」です。

鮭の王国=サーモンタウンもある

もう少し位置をずらすと、北海道にサーモンタウンの標津町があるように、関東道にもサーモンタウンの村上市があります。太古の時代には縄文人がサケをとって暮らしていた関東道ですので、和人とアイヌの差はあれど同じような文化が継承されています。当然、ベアカントリーなので現地情報は確実に取ることが大事です。

魚種の横幅を広げると北海道以上!

さらにベンチマークの基準を広げていくと、ソルトとバスで圧倒的に関東道が有利です。

区分関東道-前橋起点北海道-旭川起点
バスラージマウスバス、スモールマウスバス※大人の事情で対象外
コイ科ウグイ、マルタウグイ
外来種増加中
ウグイ、エゾウグイ
ロックフィッシュメバル、カサゴ、ムラソイ、ハタの仲間たちアイナメ、ムラソイ、ハタの仲間たち・・・ストック量やばし
シーバススズキ、ヒラスズキなし
青物シイラ、カツオ、ブリ、ヒラマサ、カンパチ、サワラなどブリ(大ブレイク中)、クロマグロ(知床沖が熱い)
クロダイクロダイ、キビレなし

魚のストック量と人口の関係

といいことばかり書いてきましたが、関東道は日本でも最大の人口を擁する地域!当然、魚の数に対してアングラーの数が多いので魚が減りやすかったり、プレッシャーがかかりやすいことが顕著です。もちろん北海道でも人気フィールドは同様ですが、毎日休みなしに魚たちが叩かれているフィールドがゴロゴロしているので、腕前を試すのにとてもいいエリアと言えるのでは無いでしょうか?

釣るしかない?それだけじゃない魅力もいっぱい

腕前といっても、落とし穴や曲がり角だらけのフライフィッシングです。自然との相性やタイミングによっては痛い目に会いますので、フライフィッシングの大切な要素であるポイントへのアプローチを景色の中で楽しんだり、キャスティングやプレゼンテーションをスポーツとして楽しむゆとりも大事です。関東道にも日本アルプスはじめ雄大な景色が待っています。

ベアカントリーでもある関東道

北海道のヒグマ遭遇率ほどでは無いですが、関東道にもツキノワグマが生息しており、起点となった前橋も赤城山から川沿いに市内に出没しています。豊かな森が形成されている山岳地帯には相当数いますので、深い森や源流へ入る際にはクマ対策を怠らないよう注意が必要です。

じゃあ東京起点のメリットって?

ちなみに起点にしてみた前橋は昔は厩橋と呼んで、その周囲には広大な耕作地や馬場が広がっており、中世を通じて関東武士団最大の本拠地となっており、関東・北陸・東北に動乱があればすぐに出兵できる要所でした。比較対象とした旭川が北海道防衛のための屯田兵を主体にした第七師団の本拠地となっていたことと非常に条件が似ているので、四方八方へ飛び出す釣り仲間にとっても、うってつけの起点だと言えます。

そんな利点が大きく、釣りのノウハウは関東道の広大なフィールドに散らばって眠っていますが、東京にはそこから持ち帰られた情報やテクニックがフライショップへ集まってくるので、そこが最大のメリットだと言えるでしょう。

さらに新幹線の停まる駅や国際空港があります。羽田空港から北海道の帯広空港まではフライトタイム1時間あるか無いか!下手すると新潟まで釣りに行くよりも、北海道へ釣りに行くほうが「速い」という恐ろしい裏技があります。海外へも行けるし、海外からの情報もたくさん入ってきます。うまく活用すればメリットは大きいと言えるでしょう。

まとめ

起点をずらす。スケールを拡大する。この2つを行うためには、どうしても車を運転することや新幹線を使いこなすこと、連泊が必要になってしまうと思います。でもそれを行うことが確実にフライフィッシングの世界を広げることになりますので、ぜひ検討してみてください。

限られた時間と予算の中でどう折り合いをつけるのか?バックパック旅行時代の経験や車中泊ノウハウなども今後紹介できればと思います。

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