シングルハンド・スカジットという選択肢 – パート1 | OPST Commando Head コマンドヘッド
OPSTから発売されている、シングルハンド/ツーハンド向けの超ショートのスカジットヘッド「Commando Head | コマンドヘッド」を買って使ってみました。そこにはツーハンド・スペイとシングルハンド・スペイの間の失われた輪をつなぐ「マイクロスカジット」という設計思想と、体に無理せず、手軽で楽しいフライフィッシングが待っていました。
ツーハンド&スカンジナビアンで不便な時って?
8番以上のシングルハンドを使う釣りとなると、合わせるフライラインも太く重たく、フライリールも大きく・・・運動量が増えることで長い時間釣りを行う体への負担は大きくなってきます。それでも疲れずにキャストし続けたい。そんな時には両手で持って投げるツーハンドロッドやスイッチロッドがあります。
私の場合も12フィート6インチ6番のツーハンドロッド「Beulah Platinum Spey 12’6" 6wt 」 にスカンジナビアン・ヘッド「Rio Scandi」 (ヘッド長が38フィートなので、ロッドの3倍)をセットしたタックルを組んで、シングルハンド8番の領域である海や湖、本流や河口などの釣りを幅広くカバーしています。ほぼ左腕の力だけで楽にアンダーハンドでロングキャストすることができることはもちろん、オーバヘッドキャストも投げやすく、6番なのでツーハンドとしては着水も静かな方です。
しかし、以前と比べてコンパクトになったとは言え、ツーハンド&スカンジナビアンではアンダーハンドでも10〜20フィート相当のバックスペース、オーバーヘッドキャストにいたっては最低44フィートものバックスペースが必要になります。この「大きさ」が手返しの悪さにつながることがあります。
止水の釣りとなる中禅寺湖を例にとると、朝の静かな湖面で小さなドリフターをついばんだり、回遊しながらハッチ&イマージャーに反応するマス達を狙う時には、右へ左へライズする神出鬼没の動きについていかないとならないため、ツーハンド&スカンジナビアンでは充分に素早いとは言えません。また、ツーハンドの射程距離内よりもさらに岸よりに入ってくる魚たちを狙う場合は、無駄な動きやキャストをせずに静けさを保つ必要があります。こういった場面では中禅寺湖を長く釣ってきた先輩たちと同じく、コントロール性も良く丁寧にプレゼンテーションできるシングルハンドを使う必要があると気づきました。
低番手シングルハンド&スカジット
シングルハンドの最大の利点は、コンパクトなので小回りやコントロールが効くという点と、ツーハンドと比較してはるかに水面へのインパクトが小さいラインを選べることです。バックスペースも含めて考えれば、そのコンパクトさはツーハンドとは比較になりません。さらに近・中距離を静かに釣るとさえ決めてしまえば、低番手のショートロッドはバックスペースもわずかロッド半分程度で釣りができるのが最大の利点です。
しかし市販のシングルハンド向けスペイヘッドの中には、右肩が故障して9フィート4番でさえロクに取り回しができない自分に使えるものがない・・・。また、狭い場所でドライフライをオーバーヘッドで投げたい時に長すぎて使いづらい・・・。そう悩んでいたら、以前ガイドをさせていただいたアメリカ人のスティールヘッダーがスカジットスタイルの様々な製品を展開する「OPST」というブランドが低番手シングルハンドでも使える超ショートのスカジットヘッドを作っていることを教えてくれました。なんと、Beulahロッドの愛用者でスカジットの先駆者であるエド・ワードとジェリー・フレンチのコンビが、「いかに楽にキャスト出来て実釣に役立つか」を突き詰めてデザインしたシューティングヘッド・システムだというじゃ無いですか!
これは神様の思し召しに違いないと、早速ホームページをチェック。いけそうなシューティングヘッドの候補が見つかりました。「でもスカジットってスティールヘッド釣るシステムだよな・・・」なんて不安を持ちつつ、適合ラインを教えてもらうために、OPSTのBen Paul(当時)にメールで質問。商品は渋谷サンスイに全部揃っているので、面識ある佐藤さん(当時の店長)に突撃して、一通り買ってきました。
OPST Commando Headで組むシングルハンド・スカジット
エド・ワードが提唱する「Micro Skagit / Pure Skagit」とは、スカジットのシステムをツーハンドロッドによるスティールヘッドの釣りだけでなく、シングルハンドロッドを使った小さい河川やバス&ソルトウォーターまで視野に入れてコンパクト化し、いかに楽にフライフィッシングができるかを考えて開発されています。そんな彼がデザインしたシューティングヘッドなだけあり、Commando Headは低番手シングルハンドで使えるMicro Skagitの150グレインから、ツーハンドで使うPure Skagitの475グレインまで幅広く揃っています。
私が買った150グレイン(シングルハンドの場合、9フィート以下、3番適合)は12フィートのショートベリー。8フィート台のロッドに対して1.5倍もありません・・・。心配ですが、OPSTを信じて10フィートのポリリーダーを繋ぎ、その先へ長いティペットを結べば、きちんとアンカーが効いて、9フィート未満のロッドでも問題なく取り回しできるはずです。
また、スカジットボディはターンオーバーに必要なパワーをティップもしくはリーダーシステムへ伝達しやすくできています。重たいフライやティップをターンオーバーさせるためのパワーを、長いティペットと空気抵抗の強い大きいドライフライにも活用することができるはずです。
フィールドでテスト
この日は特に調子が悪かった右肩の痛みのため、きっちりとしたフォームでアンカーをセットしたり、力を込めてロッドストップ&ホールを加えられない状態で、ダブルスペイもどきの変なサークルCキャストでも安定して実釣に必要な50-60フィートが楽勝で投げられます。ほとんどウェーディングしていない状態かつ、うまく回せない右肩でこれです。すごい・・・。右肩が疲れたあとは左で投げてみましたが、これも思った以上に簡単。
慣れてきたあとは、右肩が動かせる範囲で頑張って取り回して、ティペットを長くしてちゃんとアンカーを打ってシングルホールを加えたスカジットキャスト(ペリーポーク)をしたら楽に70フィート以上出ました。健康な肩の人で9フィートロッドを使い、アンカーをセットして、ダブルホールを加えてラインスピードを上げたら文句なしにロングキャスト出来るでしょう。ラインバスケットは使った方が楽に距離が出せます。
3番のような低番手タックルを投入する場面で飛距離はそんなに重視しないと思いますが、それだけのシュート性能があることでターンオーバーは間違いなくできるし、体調が悪い時や疲れている時、さらには向かい風の時や横風の時にも助かると思います。
OPST Commando Head & Commando Tip ライン適合表
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中禅寺湖に実戦投入
このシステムを携えて中禅寺湖へ戻りました。ソフトハックルの場合はフライが濡れていても問題ないのでスカジットキャスト。ドライフライの場合、フライを濡らさないようにバックキャスト1回だけのオーバーヘッドキャストか、フライの濡れ状態を確認してから投げられるサークルCキャストです。ドライフライのターンオーバーも楽だし、着水も思った以上に静かです
気になるオーバーヘッドですが、ガイドの先から出ているヘッド部分の重量しか右肩は仕事しなくていいので、ロッドストップした時もフルラインと比べて遥かに楽。ガイドの中を通るラインの重量もロッドと一緒に握り込んでいるんだから、その部分が細いシューティングラインに変わるだけで大きな違いになります。
さて、肝心な釣りの結果はこちらをご覧ください
ナーバスに回遊するホンマス、ミッジをついばむニジマス、物陰に潜むブラウン。どれにも効果的でした。
ターンオーバーとプレゼンテーションをコントロールする
システムとしてはパワーのある太いショートヘッドなので、そのままフロートティップを接続するとフライが水面を激しく叩いてしまいます。そこでポリリーダー(RIOならバーサリーダー)を使ってターンオーバー性能を落とさず、さらにロングティペットを使うことでマスの視界内にはフライだけが見えるようにしてあります。
OPST Micro Skagit ロッド4番のケース
OPSTから2019年に発売されたCommando Headとの相性も考えたマイクロスカジットのためのロッドを使うことにしました。ツーハンドでキャストできて、シングルハンドの使い易さも実現した「スイッチハンド」という新しい釣り感覚です。スペイキャストもオーバーヘッドキャストも50:50でできるアクションなので、ウェットフライやニンフ、小型ストリーマーやドライフライが活躍する中くらいの川や渓流はもちろん、大きな川の岸そばまで使い勝手の良いタックルです。
シングルハンド・スカジット6番、8番、10番のケース
汎用性の高いシングルハンド6番に225グレインをセットしたレポートはこちら:
風に強いシングルハンド8番に300グレイン、重たいフライに強い10番に450グレインをセットしたレポートはこちら:
スイッチハンド10番「プレデター・スカジット」のテストケース
OPSTではなくRIOのラインをベースで組んでいますが、シングルハンド・スカジットとマイクロ・スカジットで培ったコンセプトを、ソルトフライやパイク、ツーハンドの釣りで培った大物釣りの経験をベースに試行しているシステムです。主にソルトの釣りを念頭にテストしていますが、ボートからのイトウやアメマス、手返し良く狙うサーモンの釣りなどへも応用できると思います。
まとめ
「で、結局どうなの?」という方のために
- 釣ることを優先に考えて現場目線で開発されているので投げやすい
- ターンオーバー性能が良く、空気抵抗のある大型ドライフライでも楽にターンオーバーする
- しかもシングル低番手のパックロッドでもできる! ← これ大きいです
- フローティングティップやシンクティップも揃っている
- フライロッド全長に対して比較的に短い長さのシューティングヘッドを使いスペイキャストする「マイクロ・スペイ」や「マイクロ・スカジット」理論の延長線上に、シングルハンドロッドがきちんと繋がった ← このラインで得た学習は他にも生きる
- 低番手シングルハンドからツーハンドまでラインナップも充実していて、自分の釣りに合ったものが選べる
- ツーハンド中番手とシングルハンド低番手パックロッドの組み合わせはお互いを補完しつつ機動力がいい
いざという時に持っていて損のない一本だと思います。
アイテム情報
欲しいアイテムが店頭に合ったら、買いだと思います。(私の分も残しておいてください・・・)
タックル情報
私の場合、ロッドは手持ちのR.L.Winston LTの8フィート9インチ3番がありましたので、これをベースに条件を書き出しました:
- シューティングヘッド – フォルスキャストの回数を最小限に抑えるだけのウェイトはありつつも、強すぎてドライフライが派手にオーバーターンしないこと
- ショートベリー – 8フィートロッドでも無理なくアンカー調節やしっかりと水面をスイープできるもの、狭いスペースでも取り回しが楽な長さであること
- ティップ交換対応 – このセットアップでいろいろな釣りへ対応したいので、ロングリーダーやシンクティップなど使い分けられること
OPSTのBen Paulからもアドバイスをもらいました。釣りたい気持ちがはやり、「水面への反応がシビアなホンマスがメイン」だからとか、「充分な長さのリーダーシステムで視界の外からドライフライだけをふわっと落とす必要がある」、など面倒臭い事まで書いてしまったのですが、さすがフィールドでの実践を重んじるリーダーの一人、すぐに的確なアドバイスを与えてくれました:
- OPST Commando Headの150グレインで釣りに応じてティップを使い分けるのがベストシナリオ
- 想定しているドライフライのゲームにはAirfloのTroutポリリーダーの10ft(当時はOPST Floating Tipがまだ発売されていませんでした)
- その先へ好きな長さのティペットを結ぶ
シングルハンド・スカジット3番タックル:
- シューティングヘッド: OPST Commando Head – 150グレイン (12フィート)
- ティップ/リーダー: Airflo Trout Polyleader 10フィート Floating
- ティペット: シーガーエース フロロカーボン1号 を4〜6フィート
- シューティングライン: Ken Cube EX シューティングライン – フローティング 0.22
- フライロッド: R.L. Winston LT 893-5 – 8フィート9インチ3番
- フライリール: Bauer Superlite M2