フライタックルとシステム:高感度遊動式インジケーターニンフィング

2024/03/04

日本では「エリア」と呼ばれる止水タイプの管理釣り場が数多く存在することや、湖でも止水のニンフィングが盛んに行われています。止水におけるニンフィングではフライが水面にタッチした時点からプレゼンテーションが始まりますが、リーダーシステムにマーカーなどの浮力体がついていない場合はフローティングラインの先端が支点となって、リーダーを引っ張りながらフライがカーブフォールしていき、リーダーシステムが伸び切ったところでサスペンドします。

またトラウトたちがゆっくりとした水流の止水の水中で何かを捕食する時はいきなり捕食するよりも、いくつかのステップを経ることが多くあります。すぐ近くを泳ぐ「近づき」や口先だけで突く「ツツキ」、一瞬口の中に入れて舌で物体を質感を確かめる「サワリ」、そして口を閉じてテンションがかかる「アタリ」となります。

この「近づき」状態の中から食う個体が出てくることが多い

たくさんのアングラーが釣りを行うエリアでは魚たちへプレッシャーがかかっているため、これらのステップの中からストライク=本アタリを読み取れないとフックセットが決められないだけでなく、フライを丸呑みされてしまって丁寧なリリースの難易度が上がってしまったり、せっかく大物をセットしたのに飲まれたフライから伸びたティペットが歯に当たって切れてしまったりも多発することになります。これはキャッチ&リリースがルールになっているスポーツフィッシングでは非常に不都合なことです。

トラウトの「サワリ」の瞬間、このまま口を閉じないことも多い

これに対応してストライク感知&積極的なフックセットのためには、常にテンションを残したままで釣るインジケーターリーダーのみを使用するシンプルなユーロニンフのスタイルもありますが、フォールはできてもサスペンドには適さないため、高感度遊動式マーカーを使ったシステムが必要となります。

遊動式インジケーターニンフィング:ベーシック版

ビーズヘッドを使ったフライが着水したらそのままフォールさせ、サスペンドまで一連の動きをスムースに実現することができる、遊動式のマーカーシステムを使います。

フォール中はマーカーが寝た状態、サスペンドになるとマーカーが立ちます

マーカーが遊動式であるため、キャスト時にはフライに近い方へマーカーが移動してターンオーバーさせやすくなり、フォール&サスペンドで狙ったレンジを自由に調節できるメリットが生まれます。

  • フライタックル:シングルハンド9-10フィート、4−6番
  • フライライン:通常のWFフローティングライン
  • リーダー: フロロカーボン1-2号
  • 遊動式マーカーとストッパー:フライキャンパーズ「ぴくもん」
  • ティペット: フロロカーボン0.5~1号

ティペットの役割は自然にレンジまでフライをフォールさせ、サスペンドで警戒させないこと。リーダーの役割はレンジ調節のための遊動セクションとなります。上ストッパーの位置を調節することで、どのレンジまで沈めるのかのコントロール。下ストッパーの位置を変更することで、ターンオーバーしやすさを調整できます。

  • 上マーカーストッパー・・・フォール終点&サスペンドさせるレンジに合わせます
  • 下マーカーストッパー・・・ターンオーバーしやすさの調整に使います(早く沈めたい場合はマーカーすぐ下へセット)

ティペットとインジケーターリーダーはダブルエイトノットで結びます。

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止水のバンクフィッシングで発展したシステムですが、リバーフィッシングにも使うことができます。

遊動式インジケーターニンフィング:エキスパート版

魚が上層から底層までバランス良く群れている場合にはベーシック版で十分に効果的なプレゼンテーションをすることができますが、人が多いエリアや低活性の時には特定の狭いレンジに魚が偏ってしまうことがあります。

エリアにおいて「水面下2m〜2.5m」や「ボトムから30cm以内」といったシビアな狭いレンジ、湖のボートの釣りで「水面下3m以下4m以上に魚探反応」などといったディープレンジに偏っている場合には、より正確にフライのフォールのスタート位置とサスペンド位置を設定する必要があります。

  • フライタックル:シングルハンド10フィート4-6番またはスイッチロッド11フィート3−5番
  • フライライン:通常のWFフローティングラインまたはオーバーヘッド・スペイ兼用ライン
  • リーダー: フロロカーボン1-2号
  • 遊動式マーカーとストッパー:フライキャンパーズ「ぴくもん」
  • 遊動式ショット:タングステン ラウンドビーズ 2.8mm-4.0mm
  • スイベル:10号などのマイクロサイズ
  • ティペット: フロロカーボン0.5~1号

遊動式マーカーシステムに加えて、狙ったレンジまで一気に落とすためにタングステンビーズを遊動式シンカーとして使います。またより正確な調節のためにストッパーを2つ追加します。

  • トップ追加ストッパー・・・そのフィールドの最も深い位置である底を検測して「底から〇〇cm」にマーカーを調整するための目安とします
  • 上マーカーストッパー・・・フォール終点&サスペンドさせるレンジに合わせます
  • 下マーカーストッパー・・・ターンオーバーしやすさの調整に使います
  • ボトム追加ストッパー・・・下マーカーストッパーの滑り止め、かつビーズが動き過ぎないように調整に使います
  • マイクロスイベル・・・タングステンビーズのフォール終点かつティペット交換しやすくします

また魚を警戒させないスローシンキングのビーズヘッドニンフや小型のピューパなどを迅速に狙ったレンジに沈めてしまって、そこから先を静かにフォール&サスペンドさせることができる利便性もあります。

湖において水深5.8mのポイントで、水深3-4mに魚が群れているケース:3mからフォールがスタートしないとフライを効果的に見てもらえない

フライラインには長いラインシステムをターンオーバーさせつつ、飛距離を担保できるパワーが求められます。アグレッシブなテーパーデザインかつAFTTA指定の1.5倍くらいの設定のWFラインが使いやすいです。

フライロッドには日本のエリアフィッシング大会規定である「11フィート以内」を守りつつ、全体をコントロールしやすい長さが必要となります。

湖のボートフィッシングの場合、フライリールは同じタックルでニンフィングだけでなくドライフライやインタミなどシンキングラインを使った釣りへ対応したい場合が多くなりがちなので、カセット式や交換スプール付きのフライリールが便利です。

  • フライライン: WF5-7番フローティングライン、アグレッシブテーパー(デルタ、ジャベリン、タイタンなど)
  • フライロッド:10フィート~11フィート 5番~7番
  • フライリール:ディスクドラグ・フライリール・・・カセット式や交換スプール付き

プレゼンテーション

水中で見えない部分でのストライクを感知するため、魚にアタックさせる間を与えるため、テンションを維持したままのフォールを基本とした使い方になります。

カーブフォール

主に上層~中層にいる魚へのプレゼンテーションとして行います。また岸際を探る時にもこのプレゼンテーションを行います。

フライをしっかりとターンオーバーさせてフォール中にテンションがかかりやすくします。フライはマーカー(エキスパート版の場合はビーズ)が支点となってカーブフォールします。カーブフォールが終了するまでの間に上層からターゲットレンジの魚たちへアピールします。

サスペンド

所定のレンジにフライを沈めて水中でサスペンドさせて狙います。警戒させないようにしつつ、誘いも加えます。

プレフォール(エキスパート版)

フライよりもタングステンビーズが先に沈んでいく最中に行うプレゼンテーションです。タングステンビーズとフライの沈降速度に差が少ない場合はナチュラルに、差が大きい場合はドラグがかかった状態で誘いをかけられます。

オフセットフォール(エキスパート版)

タングステンビーズの沈降が終わり、フライ本体のフォールが行われる状態。ティペットの長さを変えることでビーズ位置を「水深2m」フォール完了位置を「水深3m」などと設定できます。

オフセットサスペンド(エキスパート版)

オフセットフォールが終了して狙ったレンジでサスペンドさせて誘います。警戒させないようにしつつ、狙ったレンジの範囲で誘いも加えます。

フライパターン

フォールをメインにする場合は、ロングテールのフライがアピールが強く、サスペンドをメインにする場合はフッキング性能を優先して「丸物」と呼ばれるボール型のフライを使います。また活性が低い場合や警戒されている時はよりナチュラルに食わせるためにユスリカのイミテーションであるピューパを使います。

湖の場合はハッチする水棲昆虫やベイトフィッシュに合わせます。

まとめと続き

このシステムは、ATFC代表の山本さんがシステムやフライを開発する中で伝授いただきながら、TFFCCエド吉田が湖でのボートフィッシングで試しながらまとめてあります。

いかにレンジを正確に捉えて釣るかに特化されたシステムですので、レンジ探しが最重要!
フライの使い分けで幅広い応用ができるので、今後様々なフィールドでフライフィッシングが苦手としていたレンジを狙うこともできます。ぜひ皆さんもチャレンジして新しい世界を一緒に開拓してください。

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