ガイドボートで狙うオアフ島のボーンフィッシュ
ロクな飛距離も投げられなかった2001年夏、仲間から借りたタックルで飛び入りしてガイドの言う通りに素直にやったら、初日に6lbサイズが釣れてしまったので「なーんだ楽勝じゃんか」と恐ろしい勘違いでスタートした私のボーンフィッシュのフライフィッシング。そして2009年冬に仲間と一緒に3日間も費やしてボウズをくらうという痛い目にあって理解したのは、「南国のおおらかさ」や「楽勝」という言葉はこの魚には当てはまらないこと。
相手が動き続けている状況でフライへ反応する個体が全てでは無い、成功と失敗の分岐点が多い相手である以上、魚を驚かさないようにストーキング出来て、強風の中でもフライをターンオーバーさせられて、魚の目の前にフライを置いておくことができるかどうか。タックルのセットアップも状況に応じて最適なものにしておく必要もあります。
前回の反省は季節も厳しく己を過信をしたせいか、プレゼンテーションへ持ち込める魚を満足に見つけられなかったこと。そこで面識のあるマイク・ヘネシーのお誘いに甘えて、とにかくたくさんのボーンフィッシュと遭遇できるように、彼のガイドボートでやってみることにしました。マイクは娘さんのサーフィン大会のためにオアフを離れていたので、代わりにアシスタントのコリンが2001年に釣ったことのあるトライアングル・フラットを2日間ガイドしてくれることになりました。
1日目:ガイドボート&シングルハンド8番インタミ、ベイトフィネス
朝早く、家族と滞在していたワイキキ・ヒルトンの車止めにピックアップトラックでボートを牽引して現れたコリンを見て、武者震いがしました。フライタックルとベイトフィネスタックルを積み込んで乗り込んでから、出船場所までの道中にの自分自身のボーンフィッシュ歴を伝えます。でもマイクほど接客慣れしていないからでしょう、ローカルのフライフィッシャー的に良かれと思って「トライアングル・フラットってのは、見えるボーンフィッシュはたくさんいるけど、ボーンフィッシュ界でも最高峰の難しさなんだぜ。俺たちだって6番でやってるし、4番でやる奴もいる。そんだけの経験だけじゃ厳しいな。」と忠告してきます。ここでよせばいいのに、つい1回目で6lbを釣っていた私は、いらぬ見栄を張り「ふーん、そうなんだ。でも10lbを釣りたいんだ」と答えてしまいました・・・。この一言で「大物狙い」を体験することができましたが、同時に痛い目に会うことになるのでした。
ケーヒの小型ボート用の波止場から出船して、目の前のフラット群をボートならではのフットワークを活かして、潮の動きがいい時間に大型のボーンフィッシュが上がってくる、空港そばの深めのポイントを釣って行きます。
到着する前から、ボートが通りすぎる脇のトライアングル・フラットの上では、今までに見たこともないくらいの数のボーンフィッシュがテイリングしています。足場が高いだけで魚が見易くなるだけでなく、視界が広がるので様子も良くわかります。コリンに「あそこ、テイリングだよね?」と聞くと、「そう、でも小さいよ。この時間帯はデカいのが上がってくるポイントまで残り時間が無いから急ごう!」と直行することに。
到着したポイントは沖からの波が次々と入ってくるポイントで、水深は2mくらいで所々にテーブルサンゴが入っていて浅瀬を作っています。使うフライはダンベルアイの重たいフライ。意識するベイトはシャコと小魚だそうです。しかし潮が効いているだけでなく、流れに沿って強い風が吹いています。
コリンのアドバイスでは、「ここの魚はとにかくデカくて8lb以下を見たことがない。ボートが見える状態でフライが着水すると100%逃げるから、毎回20、できれば25ヤードは投げて魚の上流へフライを入れて欲しい」。ここでやっと大物のゲームの厳しさを理解しました。沖からの波と一緒に風も吹き込んでくるので完全にアゲンストの中を重たいジグフライをロングキャストで決めないとなりません・・・。だから魚も大きく育つわけだ。私の不安な表情を読んだコリンが「キャストできる状態になるか分からない。いざとなったらルアータックルにチェンジできるように準備しておこう!」とベイトフィネス・タックルで使えるフェザージグを出してくれました。
タックルのセットが終わるのを待ってコリンがボートをつけてくれた直後、1巡目のボーンフィッシュがボートの方へ泳いできます。いきなり8lbサイズのつがいがやってきました。ゲーム開始です。
フライタックルで苦戦
出鼻から己のキャスティング力の弱さを後悔しました。向かい風の20m先に満足にフライを入れることが出来ず。スプークする以前にキャストが決まりません。フライを見ることもなく1巡目の魚たちは通り過ぎて行ってしまいました。
次に来たのは4匹以上の6lbサイズの群れで、これなら1匹くらいはボート近くまで来てくれるだろうと甘く見ていたら、確かにボートまで10m少しまで近づきましたが、フライが着水して沈んでいく半径1mに入った途端に稲妻のような速さでスプーク!
次もその次も同じような状態が続く中で、15mくらいの場所の浅瀬でストップする8lbサイズを見つけたので、上手くフライを入れられましたが狙った通りに沈んでいきません。流れと深さに対してウェイトが十分では無いようです。2回投げてボートが近づいた途端にスプークしてしまいました。
後ろで見ているコリンもストレスを感じているのが伝わってきます。無言になってしばらく経ってから、突然コリンが身を低くしろと指示を出しました。「20mくらい先にすごいサイズのが上がってきている!ボートを寄せるぞ」
ベイトタックルへチェンジ
そっと斜め前20mくらいのところを見ると、テーブルサンゴかフラットな岩か見分けがつかない浅瀬の上に確かに大きいボーンフィッシュがステイしています!見たことの無い大きさというか太さです!前から話には聞いていましたが、完全に10lbオーバーの魚です。
私のキャスティング・スキルとフライタックルではゲームが成立しないと判断して、ベイトフィネスへチェンジしました。
一発勝負で風上へキャスト、上手く魚の居場所の1.5mくらい潮上にフェザージグが入りました。大きな魚の影にもう1匹いました。判断に困っているとコリンが「ジグヘッドが上下するギリギリのスローさでノンストップに巻いて!」とアドバイス。
フェザージグが魚の1m横を通り過ぎた直後、これまでフライフィッシングでは見たことの無いようなアグレッシブさで2匹でフェザージグを追いかけてきます!どちらの魚かは判別できませんでしたがフェザージグを咥えた瞬間・・・一気に沖へ突っ走りました。ラインを出されてドラグ調整しようとリールを見た瞬間、目を疑う事態が・・・。なんとスプールを間違えて、糸巻き量が80mのスプールにPEライン&20lbリーダーの方ではなく、糸巻き量50mのスプールにフロロカーボン12lbを25mしか巻いていないシャロー・スプールをセットしていました・・・。ファーストランで少し耐えたあと、セカンドランでラインブレイクしてしまいました。
キャッチに備えてネットを持っていたコリンが怪しんで、「あれ?フックアウトしたのか?」と聞いてきましたが、大切なボーンフィッシュにフロロカーボン・ラインがくっついたまま泳ぎ去った事を伝えることが出来ず、「そんなところかな・・・」とだけ答えてシートへ座りこんで納竿しました。というか巨大な魚へのショックの方が大きくて、呆然としてしまったのです。10番ロッドで狙うこともあるって言っていましたが、納得しました。
Nervous Waterへ立ち寄り
翌日は別の釣りをするからフローティングラインがあった方がいいとのことで、午後にNervous Waterへ寄って8番タックル用にRIOのボーンフィッシュラインをお土産も兼ねて買っていきます。珍しくショーンの機嫌がいいので聞いてみたら、「最近、日本人がすごい良い釣りしてんだよ」。話を聞くとどうやら杉坂ケンジさんのご一行のことらしかったです。日系人もアメリカ東海岸から来る人間も多いハワイですから、難易度が高い釣りをリスペクトする気風があります。スキルが高いフライフィッシャーが日本からやってきて口コミでニュースになる。嬉しいものです。自分も頑張らなくちゃ・・・。
2日目前半:フラットでのウェーディング&シングルハンド6番フローティング
翌日は潮がゆっくりになるタイミング、トライアングル・フラットへ上陸して時間の許す限りフラットの釣りをすることになりました。これならシングルハンド8番でも楽できると思ったのは束の間。
コリンからはシングルハンド6番を使うよう指示です。サンゴが多い場所じゃ無いのでフライリールのドラグはそんなに気にしなくていい、使うフライも「大きすぎる」とのことで、コリンが用意してきた小さいチェーンボールのシュリンプフライです。いわゆるオアフ・ローカルが好む、フィネス的ボーンフィッシュの釣りのスタートです。ちなみに今回使っている6番はバス釣り用の7フィート11インチのショートロッドです。
ボートと違って足場が低いので魚は見えづらいですが、テイリングしている尾鰭の先は行先で単発的にチロチロっと水面に見えてきます。コリンが指示するのも15m以内の場所なので十分にフライが届きますが、コリンが教えてくれたようなワイドループを風がある中で投げるのがなかなか難しく、またフライの置き方が悪いせいか魚が警戒して全く食わせることができないままあっという間に3時間経過。自分でも魚を探してトライしますが、7mくらい近づかないと魚が見つけられない私では魚に気づかれているようで、フライを置いてあげても無視か着水と同時にスプークが続きます。前半が終了してコリンから「フロリダ・スタイルで、ボートでドリフトしながら狙っていこう」と提案があって、ゲームを切り替えます。
2日目後半:フラットでのドリフトボート&シングルハンド8番フローティング
フラットでは船底を擦らないためもありますが、ウェーディングでは攻めきれない深めのポイントへ船をドリフトさせたり、浅い場所はプッシュポールでゆっくり進みながら狙っていきます。タックルは再びシングルハンド8番でフローティングライン、9フィートテーパーリーダーに12lbティペットを継ぎ足します。ダンベルアイのフライも私が巻いてきたものは沈みが遅く動いてしまうので、コリンのフライを分けてもらいます。
じっくりと取り組んでいる中で少しずつこの釣りが分かってきましたが、やる気のある魚を見つけてから魚の目の前にフライを置いていかねばならず、そこから餌として気づかせるプレゼンテーションをしなければなりません。さらに向こうが疑わずにフライまで近寄ってくれるか、少し底を引きずってアピールして近寄せるかしないとなりませんが、ドラグがかかってフライが変な沈み方や動きをするとフライを食いに来ないし、オアフの激戦区ではキャッチ&リリースを繰り返されている個体が多いので、角度を意識してフライ先行で置いておかないと、魚の体にリーダーが触った瞬間に猛スピードで逃げてしまうことも多いです。
ドリフトボートのサイトフィッシング
さてはて、ドリフトボートでボーンフィッシュをサイトフィッシングで狙って行きましたが、お昼を回っていたせいか見える魚は多くても狙える魚はそうでなく、重たいフライを長いリーダーシステムできっちり入れていくのが難しく、3時間やってまともにプレゼンテーションできたのは6回くらい。1回だけボーンフィッシュがフライを咥えてくれましたが、きちんとフッキングしていなくてファーストランで外れてしまいました。
ウェーディングと違って魚がしっかり見えるので自分が何をやっているのかはっきりとわかり勉強になります。スキルが足りていないことに気づかされもしますが・・・。
マングローブ脇のブラインドフィッシング
ボーンフィッシュが隠れているマングローブ脇をブラインドで狙うフロリダっぽい釣りも今回初めてやってみました。根がかりするリスクはありますが、魚の警戒心が薄れるだけでなく、魚が動き続ける「線」ではなく、定位してくれている「点」を狙えばいいので、こちらの方がやりやすいと感じました。
コリン曰く、このフラットへ上がってくるボーンフィッシュの中でやる気がある魚は、一旦逃げた後でもマングローブに着くことが多いそうで、一回ドリフトさせた後に同じコースの側のマングローブを攻めるということで今回はこの釣りが成立しました。通常は餌を探してクルージングしている魚の方が効率が良いとのことです。
そうこうしているうちに、フラットから引き上げる時間が迫ってきましたが、潮の動きがあるマングローブの根元に6lbサイズのボーンフィッシュがテイリングしているのが見えたので潮上からフライを流し込んで置いておいたら・・・ヒット!しかし、何本か生えているマングローブの芽にフライラインが絡んでしまい、外そうともがいているうちにフライが外れてしまいました・・・。
結局、終了間際に同じ釣り方で釣れたのはオジサン|Goat Fish!ガイド費用を考えると、超高級魚なオジサンなのでした。
今回のまとめ
この後、近くの運河沿いで船が付けられるレストランへ立ち寄って、コリンとコリンの釣り仲間たちが合流してビールで労ってくれました。
これが3回目のボーンフィッシュの釣り、10lbどころか6lbの魚もキャッチすることはかないませんでしたが、足場が高い有利なプラットフォームから、コンサルタントのサポートを受けながらボーンフィッシュを狙っていく釣りをできたのは貴重な体験でした。
ボーンフィッシュとコイが似ているというアングラーもいますが、ボトムフィーダーであるだけでなく、大きな体を維持するために食べ続けなければならない点、その中で安全に餌を取るルーチンを学習していく点も非常に良く似ていると思います。どの魚が食わせやすいかを考えて狙う必要があるので、ざっくりとまとめると80%は魚探しと個体選びで決まり、15%はキャストとフライの置き方、5%がプレゼンテーションだと思います。
ハワイの場合は風が強いので求められるキャスティング・スキルは最高レベル!無風で30mフルライン投げられる状態にまでタックルに慣れておくことは必須だと思います。自分のスキル不足を思い知りました。
とはいえ場数が少ないのも敗因ではあるので、浜名湖のクロダイの釣りが非常に似ているらしいので、そのうちやってみようと思います。
タックル
シングルハンド8番
- フライロッド:R.L. Winston Boron II-MX 9フィート
- フライリール:Tibor Everglades (30lbダクロン バッキング)
- フライライン:SA Striper インターミディエイト / Rio Bonefish WF8F
- リーダーシステム:3/0X 9フィート + 12lbティペット
- フライ:ガイドが用意したシャコのイミテーション
シングルハンド6番
- フライロッド: Ross Flystik Light 7フィート11インチ
- フライリール: Daiwa ロッホモワLA 7/8 (30lbダクロン バッキング)
- フライライン:SA Saltwater WF6F
- リーダーシステム:3/0X 9フィート + 12lbティペット
- フライ:ガイドが用意したシャコのイミテーション
ガイドサービス
Hawaii on the Fly
オアフ島には経験豊富なガイドもいれば、若いガイドやガイド見習い。ひどい時はアングラーと同じレベルのなんちゃってガイドまで幅広い層がいらっしゃいます。マイク・ヘネシーのHawaii on the Flyはフロリダで鍛えた確かな目と豊富な知識でアングラーをサポートしてくれます。