TFFCCフライスコアリング・ペアラウンド検証&ニンフィング練習: リバーフィッシング編
ニュージーランドの国内選手権やTeam JapanとしてFIPS-Mouche 世界選手権にも出場されてきて、実績No. 1のTFFCC小松澤さんと予定が合わせられたので、午前中しか時間が取れない中ではありますが自然渓流にキャッチ&リリース区間が設定されている、奥日光の湯川でタイトライン・ニンフィングの実技講習とフライスコアリングを検証してきました。同時に「勝手流」でやっている自分のニンフィングをコーチングしていただくのが狙いです。
赤沼駐車場に前夜入りして軽く飲み始めたら、フライフィッシングに対する熱い想いにお酒は進み、あっという間に深夜越え・・・。ちゃんと起きれるかなーと心配したら、トレッキング族の皆様の大いなる気配でちゃんと5:30amに起きることができました。
現地の気温は朝の段階で19℃! 猛暑の関東平野からやってきた我々に取っては天国です!
セッション方式:ツインセッション
今回初めて試す、セッションを2人で交互に行うツインセッションでは、1人がスコアリングを行う間、もう1人はコントローラーを努めます。登録するスコアはきちんと「シングル」となります。もちろん独立した第三者のコントローラーが居ないので信憑性は低くなりますが、あくまでも自己研鑽およびペアチームの強化目的かつフィールドの状況調査を優先します。
またラウンドの合計スコアを「ダブルス、セルフコントロール」で申告できます。今後のチーム対抗戦の準備のためです。
コントローラーの役割:スコアマスター&クロックマスター
今回は「時短スコア」を行うので、コントローラーはスコアラーと一緒にファーストチェックをして検測した2匹の平均サイズをチェックしてアベレージを設定します。アベレージはフィールドが放流している標準サイズでも良いです。
60分セッションを「スタート、フィッシング」で開始させ、10分ごとに経過を知らせ、終了20秒前にはカウントダウンを行なってから終了時に「ストップ、フィッシング」をコールします。
また、記録用紙やカウントアプリを使って魚種別にチェック数を記録することと、検測したサイズを記録する必要があります。
トラウトの場合は20cm以上を検測対象として、アベレージサイズを超えるチェックができそうな場合は「チェックインしますか?アベレージで続投しますか?」とスコアラーに計測希望するかアベレージとしてチェックして手返し良く釣りを進めるか素早く選択させます。検測した魚種、サイズ、チェック数を記録しておきます。
フィールド:湯川キャッチ&リリース区間
奥日光の湯川は湯ノ湖から流れて出て中禅寺湖へ合流するまでの全長11.2kmの中で、湯滝の下から竜頭の滝の上を跨ぐ「温泉パイプ」までがキャッチ&リリースのみの解禁区間となっています。上流セクションは北海道を彷彿とさせる森の中を流れる砂利底の渓流、中流セクションは湿原の中をゆったりと流れる砂利&粘土底の湧水河川、下流セクションは岩盤と落ち込みが続く岩盤河川となっています。
森の渓流は最も魚影が濃く、湯滝レストハウスや駐車場完備で大人気のセクション。湿原河川は魚は小さいですが魚影も良く、まるでイギリスの湧水河川のような雰囲気が漂いドライフライ愛好家から聖地と呼ばれる特別なセクション。岩盤渓流はヨーロッパの山岳河川のような険しい表情で魚影も微妙ですが、開放的な空間であるのと、型の良い魚がいることもあるのでマニアには愛されています。
今回は岩盤セクションでスコアリングしてきます。
「サビキ」や「連針仕掛け」が禁止されているので、トレーラーやドロッパー禁止なので、シングルフライとなります。
初めての「ハイスティック」:ショートライン・ニンフィング実技講習
スコアリングを始める前の1時間は、ウォームアップを兼ねて小松澤さんにちゃんとした形のショートライン・ニンフィングを教えていただきました。10フィート4番タックルを使い、正確かつ美しいフリップキャストで毎回狙ったところにフライが落ちるだけでなく、絶妙なコントロールとテクニックで見た目は全くリーダーがたるんでいないのに「スッ」と水中へニンフが吸い込まれていきます!
クルッとピックアップしたらそのままキャスト、クルッとパッ。
私も真似してみますが、不安定なフリップキャストで全くもって同じところへリピートキャストできません・・・。
クルッとパッ、に対して、ボヨーン、ポトンくらい違います・・・。
さらに着水後のラインさばきがとても大事で、私の場合は一旦リーダーをフニャっと緩ませないとフライが沈んでいかない気がして、小松澤さんに「テンション抜かなくても沈むのがジグフライですからー」と耳には入ってきても、なかなか体得できず焦ります。
小松澤さんはキャスト直後のラインコントロールが完成されていて、私の目には動きがとらえられません!
頭の中でこの運動を理解するために整理すると:
- テンションを維持したままフォーリングさせてセットする
- 川の流れに同調・減速・加速という「スピード」のコントロール
- 水中の流れの構造やボトム地形を理解した上で底から中層までの「レンジ」のコントロール
- 流し終わる場所を決めて、プラスアルファ何かをやる「誘い」や「待ち」
これをロッドハンドで「ハイスティック」と呼ばれる繊細なティップ操作で行いつつ、ラインハンドはテンションや送り出しをコントロールしています。この一連のプレゼンテーション動作から逆算してどこにフライを入れないとならないか、という課題もありますのでキャストがやはりとても重要になってきます。
これを1時間で学習するのは無理!
この後はスコアリングが始まるので、下手くそなフリップキャストではなく慣れているピッチング(バスフィッシングのテクニック)でやってみますが、プレゼンテーション部分も同じようにやるのはほぼ不可能・・・。
新型コロナウイルスの影響で、2020年シーズンから大会へ出れず、ほとんどトラウトフィッシングもやられていないブランクが大きいとはいえ、アスリート小松澤と遊び人エドの差は歴然のはず。なのでニンフィングのスキルやテクニックでは対抗できるわけがないので、私の方は実戦フィールドで培ったスキルでなんとか形になるようにしようという作戦です。
第一セッション:Komatsuzawa選手、シングル、制限時間60分・釣り上がり
8:00AMを回ったので、そろそろアベレージ検測と同時にスタートしないといけない時間です。、ガーミン腕時計は60分タイマー、iPhoneはカウンターアプリに「ブルック」「ニジマス」「ホンマス」と3つ登録してスタンバイOK!
初コントローラーとして「スタート、フィッシング!」の掛け声でスタートします。
その瞬間、さっきまで和気藹々としていた小松澤さんが「世界のKomatsuzawa」に豹変します!身体から何か見えないオーラが立ち上り、「クルッとパッ」の動きも何か金属音が混ざったような鋭い切れ味にアップグレード!2年近く全くやっていなかった動きとは思えません!
開始から3分もせずに複雑な筋の中から検測サイズのブルックトラウトが出てきました。ファーストチェックは「24cm」。その瞬間は普通の人に戻ってしまいました。
コントローラーを務めながら、私はその動きに注視しっぱなし!ショートライン・ニンフィングもサイドからきっちりコントロールしていく動きもあれば、超近距離でピンポイントを狙う動きもあります。
1ポケットずつ釣り残しが無いように、狙える時は上流側からも打つ念の入れよう。
この日の岩盤セクションは雨の後で水量が多いこともありますが、かなりの部分が砂で埋まってしまっているのでブルックの付き場所が想定外かつナーバスになっています。ピンポイントでは制限時間内での効率が悪いと判断した小松澤選手。
レーンを流し切る作戦に変更。この日はロングライン・ニンフィング見れないのかなーと心配していましたが、ロッド2本分弱のロングラインも見れました!ラッキー!
その精度とコントロール性たるや、私のロングライン・ニンフィングとは別格・・・。ここでも完成された技が見れました。
実は開始15分経過あたりでトラブル発生。2年間のブランクでフィールドとの間合いがやりづらくなっている中で、周囲の樹木へフライが引っかかることも多発。その中でフライを外そうとした瞬間にスコットRadianのティップが折れてしまいました!
側から見ていると軽く動いているロッドですが、一瞬で折れてしまうくらいパワフルなロッドアクションが行われているのです。しかし折れたロッドとはいえ、放たれるフリップキャストやロブキャストの精度は健全な私のロッドの10倍は正確なのですが、完成された正確な技の一角が壊れてしまったので、私としては大きなハンデをいただく形になってしまいました。
タックル破損自体は安全管理と関係ないのでストップ・ザ・クロックは行わず、移動のために危険が伴う場面では安全のために私がコールして2回ストップしましたが、どちらも1分少々で再開です。
セッション結果:102pt
- トータル:4チェック
- アベレージ: 3チェック (ホンマス1、ブルック2)
- メジャーイン:ブルックトラウト27cm x 1チェック
- スコア: 25 x 3 + 27 = 102pt
正確かつサイクルの早い動きで、あっという間にスコアが伸びていってしまうと思いましたが、岩盤独自の条件やブルックの着き方がニンフ向きでなかったこと、タックル破損でのタイムロスが響いた結果でした。
ちなみに使われたフライのローテーションは3個のみ。ロストは1個だけでした。
第二セッション:エド選手、シングル、60分・釣り上がり
セッション運用の振り返りやフィールドコンディションの会話で10分ほど休憩を入れてから、いよいよ私のセッションです!
セッションをやりながら小松澤さんがコーチングを入れていただけるという、超ありがたい時間が過ぎて行きますが、あっという間に10分経過!
とても同じクオリティのショートライン・ニンフィングはできないので、ストーキングしてピッチングしてからのショートラインでとれたファーストチェックはホンマス「26cm」でした。二人のファーストチェックの平均でアベレージが「25cm」に確定します。
スコアリングがかかっているので、未熟なニンフィングでは数が狙えないと判断。ウェットフライのテクニックを使って良いサイズを誘い出す戦略です。
続けて、届かない場所をアップストリームへロングラインでとれたのはメジャーイン・サイズの尺ブルック「34cm」。普段なら「デカい!」と一期一会を喜ぶ場面ですが、アベレージx2の方がこの1チェックよりもスコアが伸びるのでさっさとリリース。
しかし、ほとんどニンフィングらしい流し方をせずに通用したのはここまで。何もおこならい時間が淡々と過ぎていきます。出るべきところで出ない。ウェット的な釣り方だと出てはくるけどストライクに至らない・・・。
同時にスコア計算だとアベレージを1チェックできれば85pt ->110pt で単独セッションでは勝ててしまう!
しかし僅差で勝つのは微妙だ・・・。そんな皮算用とは別に冷酷に時間が流れていきます。
途中、大きく巻く必要があったので、小松澤さんがストップ・ザ・クロックしてくれて、大きく上流へ移動しましたが、この時点で残り時間はあと5分を切っています・・・。そこは倒木が岩盤の深いスリットへ沈む恐怖の難所・・・。しかし警戒心が薄れるので、魚を見つけやすく、ここで第六感が働きます。急いでフライをワンサイズ上にチェンジしてウェットフライ的に流し込みます。
倒木が作る流れのよれの中でヒットしたのは・・・目測35-40cmサイズのニジマス!反射的に体重移動をしながらロッドを立てて踏ん張りますが、ネットインしたくても3番ロッドが曲がってしまって寄ってきません!太い流れなので空気を吸わせて弱らせようにも、むしろ豊富な酸素で元気づく始末・・・。最後はファイト負けして倒木にティペットが巻かれてラインブレイク・・・。
この後すぐにタイムアップで終了でした。
セッション結果:84pt
トータル:3チェック
アベレージ: 1チェック
メジャーイン:ブルックトラウト34cm x 1チェック、ホンマス26cm x 1チェック
スコア: 25 x 1 + 26 + 34 = 85pt
勝手流で割と通用したように見えますが、実際はハンディキャップをもらえている中で、アベレージサイズを着実にチェックできていません。スコアリング競技では、40cmのニジマスx1よりもアベレージ25cmのブルックx2の方が大事なのです。
使ったフライのローテーションは6個、ロストはニジマスにぶっちぎられたものも入れて3個でした・・・。
スコア結果
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シングルセッションは102 vs 84で小松澤選手が1チェック差で勝利しました!
これは「惜しい」ではなく、3時間ラウンドに換算すると54pt差、アベレージ3チェック差となります。
自然渓流C&Rとしては厳しいスコアだと思いますが、これをベンチマークとして魚影が濃いところでラウンドをやりに行くことにします。
ラウンド換算して比較:森の渓流と岩盤河川
私は今シーズン湯川を数回やっているので、森の渓流区間と岩盤区間を比較してみました。フィールド条件が変わるとセッション同士の純粋比較ができないので、後ほど従量平均するために使います。
湯滝下区間 | 岩盤区間(3倍換算) | |
ラウンド・ポイント数 | 837 | 252 |
アベレージ | 23cm | 25cm |
チェック数 | 36 | 9 |
ブルックトラウト | 31 | 6 |
ホンマス | 1 | 3 |
ニジマス | 4 | 0 |
ベストチェック | ブルック32cm | ブルック34cm |
ラウンド距離 | 200m | 900m |
CPM(チェック効率) | 0.18チェック/m | 0.01チェック/m |
フィールド特性 | 砂利底の渓流、障害物 | 岩盤の渓流、障害物 |
2つの区間のチェック効率はCPM比較でなんと18倍になりました。5mごとに1チェックできるセクションと100mごとに1チェックなので雲泥の差とはこのことです。スコアの差は3.3倍となります。
もし、ビートが別々に設定されてしまうと、あまりにもビートの差が出てしまうので、湯川でラウンドを行う場合は、3つのセクション全てを1セッションずつやるのがベストだと思います。
湯川のラウンドPAR: シングル 281pt、ダブルス 561pt
平均サイズ25cmであれば12チェックでクリアーできますので、ご参考までにお試しください。
まとめと続き
小松澤さんが2年間のブランク&ロッド破損というハンディキャップを物ともせず安定しているのはさすがだと思いました。
「フライフィッシングはスポーツである」という小松澤さんの持論も、実際にペアで一緒にセッションを体験してその集中力・運動性・問題解決のレベルは他のフィールドスポーツに匹敵すると理解しました。
私の方は、これまで積み重ねてきた、魚の状況を推理して1匹を引き出す「マッチザハッチ」のノウハウと、付き場所から推理して良いサイズの魚を誘いだす「トロフィーフィッシング」のノウハウのおかげで格好はついていますが、今回これだけのハンデをもらっていたら、セッションでは勝っていないといけない場面です。
勝手流の中から出てきた34cmの尺ブルックやバラした40cm弱のニジマスは、エピソードとしては楽しいけれど、本来はニンフィングで確実にスコアを出す中でボーナスとしているべき魚たちなので、頭の中を「やることからやる」スタイルに切り替える必要性を感じました。そのためには、ショートライン・ニンフィングの技を完成させることが必要不可欠なので、今後の練習の課題です。
ファーストフィッシュの平均値でアベレージを決める方法も、人と魚に優しく時短できるだけでなく、ビギナーズラックでありがちな「一発大物」でスコアが決まってしまうことを抑制する効果があるので、実力を磨くプラクティスでは良い方法だと思いました。
またペアでセッションをやる場合、スコアラーとコントローラーに分かれることで、それぞれのシングルセッションへ集中しやすくなると同時に、相手に自分の動きを見てもらえることでクリニークできる機会ともなります。もちろん学びが多い私と比べて、経験者の小松澤さんは見るものがないので退屈してしまうわけですが・・・。
今回はスコア最優先なのでリバーフィッシングでは最強のニンフィングでセッションしましたが、レッスン優先であれば同じことをドライフライやウェットフライでやるのも実力をベンチマークできるのでアリじゃないでしょうか。
次回は小松澤さんに貴重な時間をいただけるチャンスがいつか分からないので、まずは湖で行う「バンクフィッシング」の3時間フルラウンド、または「ボートフィッシング」で4時間フルラウンドを試してみたいと思います。
ルール
タックル情報
どちらもタイトライン・ニンフィング用のタックルとなります。
シングルハンド10フィート4番(小松澤)
フライ:ビーズヘッドニンフ 3.3mm、3.8mm
ティペット:シーガーエース0.8号
リーダー:サンヨーナイロン 黒鯛イズム 落とし込み マークウィン 100m 2.25号
フライライン:Airflo Nymph
リール:Waterworks Lamson Lightspeed LS2
ロッド:Scott Radian 10’0" 4番
シングルハンド11フィート3番(エド)
- フライ:ビーズヘッドニンフ 3.3mm、3.8mm
- ティペット:シーガーエース 1.5号
- リーダー:サンヨーナイロン 黒鯛イズム 落とし込み マークウィン 100m 2.25号
- フライライン:Dohiku Level Racing Line AFTMA L3F
- リール:Hardy Ultralite UDLA 6000 (195g)
- ロッド:Echo Shadow X 11’0″ 3番 (g)