北海道ツアー10日目:釧路 – カヤックとフライフィッシング、釧路川の盛り沢山な出来事
この日は土曜日でリモートワークもないし、妻と観光しようと予定を空けていたら、「一人で誰にも邪魔されない絶景ドライブ行きたいからダメ!」と私一人ホテルに置いて根室ロングドライブへ行かれてしまったので(涙)、今日は魚と戯れるのはお休みして釧路川がどんな流れか、カヌーポートなどの視察に行き、良さそうであればインフレータブルカヤックの進水式と練習をすることにしました。
岩保木水門カヌーポート
屈斜路湖から流れ出して釧路市内で太平洋へ注ぐ釧路川には高低差がわずか121mしかないため、総延長154kmの流域には一切のダムが存在せず、岩保木水門で直線の新釧路川と旧釧路川に分かれています。日本最大の釧路湿原の景観を作り出していて、自然保護区域と隣接しているため、エンジンボートの運用が禁止されています。
カヤック愛好家の人気リバーであり、その気になれば、屈斜路湖のカヌーポートから、ここ岩保木水門のカヌーポートポートまでツーリングすることもできます(一部区間は水上通行できず)。運営されている一般的なカヌーツアーでは、上流の塘路湖(とうろこ)のカヌーポートから出発することが多いようで、ここはロングコースの終点のようです。
以前アメリカでは川でのドリフトボートやポンツーンの釣りはやったことがありますが、いつか湿原の川もカヤックで釣ってみたいと思っていたので、具体的にどういう運用が可能か、流れの強さやリスク検証なども含めて見ます。
タイミング良く、1艘の観光カヌーがお客さんを乗せてドリフトしてきたので運用を観察すると、車はカヌー運搬用の1台で運用されていて、上流でカヌー担当がスタートしたら、運搬担当は到着時間を見計ってゴールへ車でメンバーとカヌーをピックアップしに行きます。
この辺りの流れは非常に押しが強くて流速もあって、とてもカヌーやカヤックで漕いで上ることは考えられません。エレキでも厳しいですし、効率を考えると素直に上流から下るのが王道だと思いました。
岩保木水門スペイキャスト練習会
水門の内側の池になっている場所にフライフィッシングの装備の方達が何人も集まっているので、フェスでもやるのか気になっていたのですが、日曜日に開催されるスペイキャスト競技会の練習日でした。今日はフライフィッシングはお休みなのですが、フライフィッシングの方からやってくるとは・・・。釧路恐るべし!
スペイキャスターの方達の練習を間近で見るのは初めてでしたので、邪魔にならないように見学させていただきました。ロングベリーのラインシステムをみなさん風が吹く中でもオンショルダー、オフショルダーで40m以上安定してキャストしています!
お話を伺った方いわく、北海道各地だけでなく関東からもトーナメント参加者がやってきており、みんなキャストが楽しいのでそちらがメインであまり実釣しなくなってしまった方までいるそうです。私はオーバーヘッド、スカンジナビアンとスカジットがほとんどで、ロングベリーのトラディショナルはかじった程度しかやってませんので、深い話は残念ながらできませんでしたが、前から面白そうだなーと思いつつも「フライで100魚種」の残り5種が終わるまでは我慢します。
この景色の中で思い切りキャストすると気持ち良さそう!
細岡カヌーポートでNEWカヤック進水式
釧路湿原の中間点である細岡のカヌーポートも見に行きました。ここは塘路湖からのカヌーツアーの標準コースのゴールになっていると同時に、ショートコースのスタート地点にもなっています。下流の岩保木と比べると流れはゆったりしているように見えるので、いよいよ練習を兼ねて装備をセットしたシットオン・タイプのインフレータブルカヤック「Aqua Marine Betta VT-312」の進水式を行うことにしました。
細岡でインフレータブルカヤックの進水式と演習を行っておいて、イトウやアメマスの気配や情報があるようであれば実施に移そうと思っていたプランは:
- ゴール地点に折りたたみ自転車を駐輪しておいて、車とカヤックはスタート地点へ移動
- 車は駐車しておき、カヤックでゴール地点まで川下り
- カヤックごと大きく流すドリフトの釣り、岸につけて上陸せずに反対側の岸を狙うスイングの釣り、流れの緩い場所では障害物に隠れる魚をリアクションさせるシェードの釣りを実施
- ゴールした後は引き揚げたカヤックと装備をロックしておいて、自転車でスタート地点まで戻る
- 車でカヤックを回収して完了
という段取りです。2人以上のチームでのアタックであれば、手っ取り早いのは2台の車を使って1台ずつスタートとゴールに置いておけばいいのですが、ソロの場合はカヤックがスタート地点へ戻れない場合は、車自体に移動手段を用意しておく必要があります。
後で知ったのですが、この場所の場合はスタート地点を塘路カヌーポートにしてカヤックを置いてきてから、車でゴール地点の細岡カヌーポートに移動しておいて、徒歩5分ほどの「細岡駅」から釧網本線でわずか一駅の「塘路駅」で降りたら、徒歩13分ほどで塘路カヌーポートへ行けるのでした・・・。
カヤック自体に最低限の艤装はしてあるので、船体の左右2箇所、フロアボード、キールへエア入れすればカヤックの形になります。付属シートのエア入れ(今後は気に入った使いやすいシートを選びます)&セット、パドルを組み立てたら船は準備OK。スタビライザー・フィンは地面が硬い場所だと曲がって痛んでしまうので水に浮かべてから取り付けます。
前日組んでおいたシングルハンド6番スカジットタックルとランガンボックス(ロッドスタンドへランディングネットとロッドを挿しておける)だけ積んだら、フローティングベストとウェーダーを着て乗り込み進水準備完了です。
進水後の具合
運転があるのでお酒はNGですから、ペットボトルのお茶を船体へかけて進水式。出船は非常にスムースで、FRPのカヤックやカヌーなどと比較しても大差なく、ものすごく軽量なのでむしろ快適でした。Betta VTには船底にキールがあるのでそれだけでも直進性は悪くありませんが、さらにスタビライザー・フィンが2つセットできるので真っ直ぐ漕いでスピードは出しやすいカヤックです。
全長312cmは短すぎるかと思いましたが、使うフライロッドは主に9フィート(270cm)のシングルハンドであることを考えると取り回しには丁度良いサイズです。狭すぎず広すぎず、快適に動けるプラットフォームです。
流れが緩い場所での取り回しテスト
ただし軽量なシットオンなので、風の影響は受けやすく川の流れと一緒に動く空気にも船体と上半身が押されて、スタビライザーがあっても回転せずに止まっているためにはパドリングが必要です。これだとドリフトしながらの釣りはほぼ不可能なので、ふと思いついて両足をカヤックのサイドに出して跨がるような座り方に変えてみたらかなり解消されました。流れが緩い所であればこれで十分スタビライザーやブレーキとして機能します。
上流方向の移動テスト
疲れないうちにポートそばの流れが緩い場所から、流心へ出て上流へパドリングしてみます。初めのうちはスムースに漕ぎ登っていましたが、直線に流れる場所へ入った途端にパワーバランスが変わり負荷が重たくなってとても流心を漕ぎ続けるのは辛くなり、岸そばを一生懸命漕いでもジリジリとしか進みません・・・。30分頑張ってジグザグに漕いだり、あらゆる手を使っても最初の曲がり角まで行けません・・・。これで上流へ行こうとするならば、流速はここの半分以下でないと無理です。
下流方向の移動テスト
それも行けるところまで上ってから、180度回頭してドリフトテストです。今までとはうって変わり、船体が軽くて流線型なので一気にスピードが出てしまいます。カヌーと比べるとヤクルトの自転車とロードレーサーの違い。カヤックを回転させて流れに対して横にして流して減速してみましたが、焼け石に水。流速よりも遅くする手段がないとドリフトどころではありません・・・。パドリングでブレーキをかけると丁度良いのですが、これでは両手が空かずフライロッドが操作できませんので、ドラグアンカーなどハンズフリーでブレーキがかけられる手段を講じないとダメです。川の流速に合わせて1本、2本とドラグアンカーを用意する必要があります。
テストも終わり、このまま「塘路→細岡」間の釣りの本番に突入するか考えましたが、カヤックをスローダウンさせる装備が足りない状態で、止めながら釣って行こうにも、どこに魚が着いているか勘所が無い・・・。せっかく段取りしても釣りが成立しないとカヤックだけになってしまいます。どうするか悩んで、この日は釧路川の勉強に徹することにしました。カヤックを車の屋根にテンションベルトで固定して、上流を目指します。
塘路キャンプ場カヌーポート
写真を撮り忘れましたが、一つ上の塘路湖のカヌーポートを探しに行きました。塘路湖には季節が合えばアメマスがいるのですが、外すとウグイのみ。遊漁料も必要なのですが念のために水温チェックと様子を見に行きます。カヌーポートの場所を確かめてから湖畔を散歩すると、同じく釣りたそうな顔をしたアングラーと出会って挨拶すると、「水温高くてダメですね・・・これだと流れ込みでも小さいアメマスがいるかも怪しいです」とのことなので、塘路湖はあきらめてさらに上流を目指します。
五十石カヌーポート付近でチョイ釣り
標茶町の外れの五十石という面白い名前のところに橋があって、そこがカヌーポートになっているそうですが、残念ながら見つけることができませんでした。一頭のエゾジカが不思議そうにガン見する横でカヤックの空気を抜いて片付けてから、椅子とサイドテーブルを出して冷たい飲み物と手抜きパスタで一息入れていると夕方になっていましたが、流れの向こう側でライズが出たのと、ボイルのような水音が聞こえた気がするので慌ててウェーダーもベストも着ず、短パンにサンダルのままツーハンド6番に、本来はシングルハンド8番に使うためにスカジットを組んでおいたリールを急ぎセットして足場が狭い川縁に降りてみました。
水は今までの細岡や塘路とは比べ物にならないくらい冷たく、ここならトラウトがいるかもしれません。しかし川の反対側の浅瀬は30m以上離れているのでしっかりアンカーをかけられないと厳しい場所です。とりあえずボイルした場所を確かめるためにスイングリーチを結んで、まずは近い場所の下流方向の茂みにイトウでも隠れていないか流してみましたが、全く無反応。
すると100mくらい上流で「ドパン!」という音が聞こえるので見てみると、手前川のブッシュになっているところに波紋が見えました。なんだろうと思って見つめていても何事も起きないで再び静まり返るので、多分水鳥だろうと思い、対岸のライズを狙うためにスイングリーチからフェザントテール&パートリッジ10番にチェンジしてうまく入って少し沈めてからスイングすると流れの中で小さいけどアタリます。水面で暴れるとパーマークが見えました。30m離れた場所の小さいトラウトなのでヤマメかニジマスか判別はつきませんでしたが、手前へ寄せる前にオートリリース。
気が済んだので上がろうと思ったら、今度は50mくらい上流のやはり手前側のブッシュの中でボイル!魚かどうか確信が無かったのでもうしばらく様子を見ていたら再び同じ場所でボイル!今度は大きな魚の体が完全に見えました。50cmはある魚で黒点が散らばっていたので恐らくイトウだと思いますが、完全にカバーの下に入り込んでいる場所で、陸からもアプローチできないし、どうしようか考えて、どうせ短パンやTシャツなんか濡れたって最悪泳げば良いのでなんとか25mくらい上流へ水中を平行移動して距離を詰めてオーバーヘッドでスイングリーチをキャストします。着水後すぐにリトリーブしますが、流れがそこそこあるのでモノフィラの滑るランニングラインは厳しいです。
何度か試して魚がボイルするブッシュのギリギリを通すコツを掴みましたが、ブッシュの外のフライには一切無反応で、再びボイルします。何度試しても一切無視。そのうち全くボイルしなくなってしまいました・・・。まるで夏場の気難ししいシェードへ隠れるバス・・・。
これは釧路川を準備不足なままでカヤックで釣らないで正解かもしれません。海サクラの不毛さと比較すれば遥かにゲームとして成立すると思いますが、心が折れる釣りはそう繰り返しやってられません!
気になる場所なのでドローンで周囲を偵察しておくことにしました。五十石橋からもう少し下ると放牧場を挟んで2つの川が合流しています。適度に濁りもあって身を隠すブッシュも川へ迫り出しています。小さいニジマスだかヤマメもいるし用水路からウグイやドジョウだって流れてくるでしょうから餌にも困らないはずです。嫁さんに連絡を取らないとならないので五十石を去りましたが、再び攻めてみたいポイントでした。
シラルトロ沼の夕日でディナー
妻が根室方面から戻ってくるならば、厚岸で合流して牡蠣を食べようと思ったのですが、野付半島まで一気に走った後に根室市内を見てみようとそちらのお寿司屋さんで夕食を取ってから風蓮湖畔のバンガローに泊まるそうなので牡蠣は翌日に取っておくことにしました。
冷蔵庫に入れっぱなしの十勝で買ったステーキを食べてしまわないといけないので、夕日をみながらディナーにしようとシラルトロ沼の辺の駐車場でご飯を湯煎しながら、ステーキを焼いて食べました。
それにしても美しい釧路の夕焼け。北海道は食事も美味しいけど景色も御馳走です。
二本松橋
このまま明日の予定のために一気に厚岸へ向かおうと思いましたが、通行止めだけど橋の近くまでは車で入れる、釧路湿原の展望が見える二本松橋まで行ってみました。川の感じはなかなか良さそうですが、夕暮れでもボイル一つなく静まり返っていました。
周囲にはエゾジカの群れがいて、彼らが見張ってくれていればヒグマの接近は気づけそうですが、イトウらしき魚とも遭遇したんだし、エゾジカと少し遊んでいくことにしました。
私が近づいても逃げないので、割とこのへんは安全なシカの楽園なのかもしれません。湿地側と小高い丘の斜面にはあちこちにエゾジカが草をはみ、小鹿を育てています。先ほどきた砂利道をキタキツネのお母さんが可愛い子ギツネ2匹を連れてテケテケと歩き去っていきます。
完全に暗くなる前に切り上げて、厚岸の道の駅へ向かうのでした。