「フライフィッシングで100魚種」振り返りパート1
2022年11-12月の西表島ツアーの最中に、やっと100魚種達成できました。100魚種達成したらレポート記事を書こうと思っていたのですが、ニューヨーク在住時代の1995年に始めたことなので、なかなか総括しづらく・・・丸っと1年以上だっての振り返りになります。
この記録はフライフィッシングで釣った魚種別に、必要であれば「Native 天然」「Wild 野生化」「Stocked 放流」の3つの区分に分けて、その中の最大サイズを更新して記録してきました。フラれた魚やバラした魚、直接計測・間接計測できなかった魚(暴れるホワイトチップシャークやメジャーイン前に逃げられたライギョなど)は一才記録されていませんので、「思い出」とは区別した実データのみです。
今回のレポートのための集計は亜種や区分と関係なく「魚種」単位でのみ集計しています。パート1ではデータ的なことを出してから、パート2で「あれが好き、これが楽しい」的な私観を述べさせて貰えばと思います。
フィールド別魚種数:沖縄>神奈川>東京
「沖縄県」で採捕できた魚種が最も多く、続いて「神奈川県」、そして在住している「東京都」の順になっています。
沖縄はいくつもの島でできているだけでなく、フライフィッシングが得意とする「岸釣」フィールドである珊瑚礁やマングローブ河川が多いため、アプローチさえ確立すれば必然的に釣ることができる魚種が多くなります。魚を飼育したいけど諦めている自分なので、自分自身が「沖縄水族館」の中に入り込んでフライフィッシングしている感覚になれます。
神奈川は一時帰国してた時代から「管理釣り場」が多いこと、こちらも岩礁や汽水域、漁港が多いことでフライフィッシングに有利なフィールドが多いことが理由になります。東京湾西岸でもあるので、通いやすさもその理由。
東京は23区内で初めて釣ることができる魚種はあまり多くないのですが、島嶼部の存在が大きく、伊豆諸島や小笠原諸島が大きく寄与しています。
その他ですが、「出会わない魚は釣れない」ので、アングラーの住んでいる場所や旅行先によって釣れる魚種は決まってしまいますが、やはり海水魚の方が内水面の魚よりも種類が圧倒的に多いので、海洋県である沖縄や太平洋岸といった海のあるフィールドへ出向く機会が非常に多く、また長く住んでいたニューヨークや長く住んでいる東京近辺に偏っています。魚種が多いフィールドやリピートしやすいフィールドに集中してフライフィッシングを行なってきていることは、同時に釣りが成功する確率にも影響するので、ホームゲームを持っていることでアウェーゲームにも強くなるということだと思います。
科別の魚種数:サケ科・アジ科・コイ科の3強
私みたいな移り気な人間がバラエティを追求したフライフィッシングを行ってきた中でも、やはりSalmonidae = サケ科の魚種は大きな割合を占めています。フライフィッシングにおける教科書的な魚たちであること、幅広いゲームで楽しめる対象であること、釣って美味しく食べられる魚であることなど、高い嗜好性と実用性を兼ねる素晴らしさは海水魚が最も好んで食べられている日本でも特筆すべきことだと思います。
それに非常に近いと思いますが、アジ科の魚は回遊狙いと居着き狙いができるなど、完全に海水魚にも関わらずトラウトフィッシングと通じる要素が非常に多く、フライの大きさやレンジのシビアさもよく似ているのでGT=ロウニンアジを狙って釣るような場合を除けば、沿岸魚でアプローチしやすく全国どこでも狙えるおすすめの魚科となります。
コイ科も幅広い分布をしているので、北はエゾウグイから南は香港のニジイロカワムツ(仮名)まで幅広く狙うことができる上にトラウトのフライフィッシングと9割は同じタクティクスが通用する貴重なターゲットです。ウェットフライのスイングでマルタウグイが釣れたり、ボーンフィッシュと同じクラブフライ(ザリガニアレンジ)でコイが釣れるわけで、マルチなフライフィッシングの道へ進む場合、必ずメニューに入れておくべき魚たちだと思います。
フライタックル別:シングルハンド一強
色々なフィールドを釣り歩いた中で、「シングルハンド8番」が最も結果に貢献してくれているのは、「海が多い」というフィールド特性もありますが、この番手は風にも強く扱うことができるラインシステムが非常豊富で、最も初歩的なフローティングラインからスカジットまで用意されています。
同じく「シングルハンド6番」もフローティングラインのみならず水面下や3m・6mといったレンジに届かせるためにシンキングラインを使うことも多くなるので、ラインシステムの選択肢が多いシングルハンド中盤手である6番と8番が最も貢献しています。
続いて「シングルハンド5番」ですが、これはアメリカ時代に「エントリータックルとしてスタンダード」とされていたことが大きいですが、汎用性が高い4番と6番の間の番手でドライ&ウェットの釣りに使いやすい番手であるということも大きいです。
約4/5の魚種はシングルハンドロッドの低番手〜中番手が貢献しています。内水面においては源流や渓流といった狭いフィールドだけでなく、本流や湖岸でも繊細な釣りを要求されることが多いため、低番手タックルが多く使われています。
反面、ツーハンドタックルを使う場面は「狙って釣るスタイル」や「システムとしての面白さ」が大きいので、そこまで魚種を拡大することには貢献していません。シングルハンドタックルが20m台、ツーハンドタックルがさらに30m台まで快適な実釣距離を伸ばしてくれたとしても、結果として行うプレゼンテーションはほとんど同じということかもしれません。
ラインシステム別
圧倒的にフライフィッシングにとって有利なシチュエーションは魚がトップウォーターや表層、またはシャローで捕食するタイミング。「フル・フローティングライン」は全体の半数近くまで寄与しています。
続いて「フル・インターミディエイト」。フライフィッシングではライズしない魚を相手にしたりフライをサスペンドさせる必要が無い釣りも多く、波を回避して水面直下へラインを入れる、水深1.5m以内の魚を誘う、などが多いと言えます。フライフィッシングの特性として深いレンジから誘い上げるよりも、表層からフォール&ドリフトの釣りが多いことも、ここへ集中する理由でしょう。ストリーマーを使う釣りもこのラインの結果が多いです。
反面3番目にファーストシンキングラインである「フル・タイプ4」が寄与しているのは、ボートや湖岸・漁港などの水深3mくらいまでのレンジの釣りにおいて非常にコントロールしやすいシンクレートだということ。またフルラインであることでフライが浮き上がらずに同じレンジをしっかりとトレースできることも大きいです。ボートシーバスに限らず、デイアジングでもお世話になっているシンクレートです。
プレゼンテーション別
ソルト・湖・本流の比率が大きくなるに従って、広い水中から誘いをかけるルアー的な釣りを行う必要が増えるため、「ストリッピング」が半数の魚種に寄与しました。ストリッピングの釣りの最大サイズはシイラであり、最小サイズはトウゴロウイワシやイシダイ幼魚などであることも、海など広いフィールドへ行くほど大きな生物が小さな生物を追って食べる「弱肉強食」の傾向が強くなっている故だと思います。
続いて「ナチュラルドリフト」。これはサケ科だけに限ったことではなく、コイ科も同様な捕食をすることが多いことが理由です。ソルトではメジナ系やウミタナゴなどフカセ釣りの常連がやはりこのプレゼンテーションが効く相手でした。
さらに「ナチュラルフォール」。意外なことにソルトでさえも「落ちてくる餌」に対する反応を強くもつ魚が多く、できる限り無理なエネルギーを使わずに捕食したい生物の理にかなった結果だと言えます。
ゲーム別
いろんなプレゼンテーションを駆使する中でも「サイトによるバンクフィッシング」(目視による岸釣)が最も多く、これは水面にドライフライを浮かべているだけでなく、水中で見える「食うのか・食わないのか」捕食行動を確認しながら釣ることで、初めて出会う魚種や異なるタイプの魚種に対応させやすいということで、ナチュラルパターンを使うフライフィッシングの最大の利点とも言えると思います。
続いて「ブラインドによるバンクフィッシング」。これはフライを魚に合わせる釣りではなく、そのフライタックルやラインシステムに合う魚を探していく釣りを行うことが多いことが理由ですが、ウェットフライやストリーマーの釣りはポイントの地形や経験則、その場の雰囲気などから推測してアングラー主体のフィッシング、渓流でいうところの「釣り上がり」に近い段取りを行うことで結果がついてくるのだと思います。
「サイトによるリバーフィッシング」は伝統的なフライフィッシングであるドライフライやウェットフライの釣りがその組み立てに大きく頼ることが理由なのですが、これもせっかく入ったポイントを無駄にせず魚にフライを合わせる釣りを行うことから比重が高くなっていると思います。
フライリール別
続いてフライリールですが、走り出しの瞬間のティペット負荷を吸収したり、ラインシステムの無用な緩みや無駄に魚を走らせないために使いやすいコルクディスクのフライリールが大きく存在感を残しています。これは海や湖・本流においてTiborとBauerのフライリールを愛用してきたということでもありますが、コルクのドラグのかかり方は徐々に摩擦を高めてくれて一定に達すると摩擦を少しだけ弱める働きを持っています。これがシイラからサクラマスまで良い魚とのファイトを助けてくれるということだと思います。
続いて金属ディスクとカーボンファイバー・ディスク混合のコンシールドディスクのフライリール。これはコルクディスク一強だった90年代から2020年代へ向けてドラグ機能が大きく進化を遂げたことが大きいです。最近ではオーバーヒートしたり内部機能の問題でトラブルを起こすフライリールが珍しくなりました。ただオフショア・フライフィッシングではトラブルを何度か経験していますので、今後試すチャンスが待たれるところです。
クリックドラグのフライリールはアメリカ時代のバスギルといった走らない魚や源流・渓流ではこれで間に合う魚が多いこともあって一応存在感を保っています。ただ、今は軽量化テクノロジーが進化して小型リールにもしっかりとしたディスクドラグが搭載できる時代ですし、源流の場合は大きなイワナなどが突然現れたりするのでクリックドラグで後悔した事も多く、今後は極力使わないと思います。
フライタイプ別
プレデターと呼ばれる小魚や甲殻類を捕食するターゲットが多いこともあり、アクションさせて使う「ストリーマー」と「ウェットフライ」が同順位で最も多くの魚種を確保してくれていますが、一時帰国の際に木曽の山奥で釣った白泡に隠れるヤマトイワナや朝霞ガーデンで工夫して釣ったイトウなども日中ストリーマーでなんとか引きずり出せたこともあり、栄養価が高い餌を意識している魚が多いと言えます。
続いて「ニンフ」であるのは、圧倒的な魚種は水中で餌を食べたいことによるものからです。
まとめと続き
統計だけ見ると、「シングルハンドロッド6番または8番」に「ディスクドラグリール」を取り付けたものに「フル・フローティングラインまたはフル・インターミディエイトライン」をセットして、魚種を選ばず「ウェット&ストリーマー」を豊富に用意して「南の島」や「海岸」へ向かえばフライフィッシングの横幅は最大化できるという結論になると思います。私の場合、フライフィッシングを始めたきっかけがストライプドバスのボートフィッシングやボーンフィッシュのバンクフィッシングを目撃したことだったのにも関わらず、実際に自分が始めた時は安近短であるスモールマウスバスのリバーフィッシングとブルーギルのバンクフィッシングだったため、幸運にもトラウトフィッシングのバイアスを持たず、かつ一番好きな釣りだけやれなかったことが経験を積むことにつながったと思います。(私見についてはパート2でじっくりと)
また、私が長くフライフィッシングに飽きずに取り組んでこれた秘訣でもありますが、1995年から100魚種目に到達した2022年まで27年間を振り返ると、まず私が学生時代からデータベースや統計データ作りの仕事をやっていたこともあって、クラリスワークスやロータス123、Excel、Googleスプレッドシートといった歴代のスプレッドシートに記録を取っているのも感慨深いものがあります。
数を釣るフライフィッシングも大事ですが、種類を釣るフライフィッシングも毛鉤の可能性を大きく広げるだけでなく、まだフライフィッシングを始めていないアングラーとの接触を増やし、「へえ!フライフィッシングって色々釣れて楽しそう!お得だし!」にも繋がるので、ぜひ皆様も手持ちのフライタックルで始められる魚種からチャレンジしてみてはいかがでしょうか?