GoToマテリアル!EP3「ローパスバチックでハックルを好きな色に染める」

ウェットフライ,フライタイング,フライフィッシング

最近マテリアル・マエストロの方達から色々と深いお話を聞く機会があり、お約束のJCこと「ジャングルコックが高くって」の話が必ず出るわけですが、JCに限らず貴重なマテリアルは大体皆さん10年前くらいにこうなることを見越してストックされているわけです。

耳年増な私も当時「買わなきゃダメだよ!」って3人くらいの方達から忠告していただいたにも関わらず、ソルトフライやウォームウォーターフライのラギッドな雰囲気に酔っていたためか、愚かにも「ウェットの大事なマテリアルなんだから、どうせ誰かが作ってくれるっしょ!」なんて言い放ち、代わりに値崩れしていた(これも今じゃあり得ない)メッツやホワイティングのサドルハックル・ケープの無地の白とかをセールで買い漁っては自分で染めて、自分のドライフライやストリーマーで使いたい分だけとっておいて残りをオークションで売ってたりしたのでした。

しかし・・・サドルハックル・ケープのストックもいよいよラスト1個・・・今や高騰したため無地の白を買って染めるよりも初めから染めてあるものを買った方が効率が良い時代です。どうしようか悩んで悩んでケープを切り分けて一番使う「ブラック」と「ブラウン」に染めることにしました。

自染めのメリット・デメリット?

結論から言えば、二度と戻ってこない「時間」という貴重な資産とクオリティを考慮すると有名ブランドの完成品から選んで買った方が早いです。しかし物持ちが非常に良くて25年前に買ったマテリアルを今でも全てしっかりとってある私に言わせてもらうと、大事に大事に生産されたマテリアルたちは買っておしまいじゃありません!野山の鳥や獣たちは商品→消耗品としてポイされるために死んだんじゃ無い!その毛の一本一本が私たちの労働対価であり、魚を魅了する魔法の種です!

ちなみに何年か立つと安いマテリアルは経年劣化で「色抜け」することがあります。まずこれを補正することができます。

さらに手持ちのストックされた羽毛・獣毛の色をチェンジしたい、人が使っている色は嫌だ!(ストリーマー使いに多い)という場合にも、自染めは知っておいて損はありません。さらに腕に自信がある方の場合は、オリジナル商品を作り出しても良いでしょう。

心の準備と作業環境

まず染め物をする時に知っておいた方がいいのは、染料が飛び散った時に発生する被害は相当なものである、ということです。賃貸住宅の洗面所、カビキラーでピカピカにしたお風呂場の床、大切な洋服、真っ白な絨毯、思い出の品の数々・・・。後戻りできない「染料被害」を食い止めるためには、「混ぜる」「染める」「洗う」「干す」「捨てる」を予め計画しておく必要があります。新型コロナウイルスの時代、このスキルは防疫にも生きるのでマスターしましょう!

いざトラブルが発生したら「水に流せる」ように、キッチンシンク、洗面所、お風呂場といった水場で行うのがベストです。変な異物が混入しないように、トイレは絶対にダメ!(トラウマが消えるまで5年くらいかかります)

必要なもの

  • 皮染め用の染料「SEIWA ローパスバチック」の好みのカラー
  • 染料用プラスチック・ビーカー200ml程度まで計量できるもの(使う分量の取分け、カラーのミックス、水で薄めるため)x 1
  • 手つきプラスチックビーカー3Lもしくは5L(洗う時と排水時に必須)x1
  • 蓋付きの大きく深いタッパー(染める・洗うの工程に必要、蓋は必須!) x2
  • 割り箸とピンセット(作業するだけでなく、染まり具合をチェックします)
  • 調理場や白髪染めなどで使う薄い使い捨て手袋
  • エプロン(もしくは上半身裸でも・・・)
  • キッチンペーパーと新聞紙(干す、吸い込ませる、拭き取る、置いておく)
  • 畳んだ段ボール
  • ハンガークリップ(染まったマテリアルを陰干しする時や染まり具合のチェックに必要)
  • 防衛装備(エプロン、キッチン洗剤&スポンジ、ティッシュ)

染め液を準備する

皮染め用に作られているバチックは浸透性に優れていますので、濃い原液のままだと(特に黒)染まり具合をコントロールすることが不可能になります。またオリジナルの色やトーンにしたい場合はここでカラーをブレンドすることになります。今回はすでにブレンド済みの「マロン」を使って「赤みがかったブラウン」、「ブラック」はそのままです。

25mlの原液に25mlの水道水を足して染め液にします。マテリアルの分量が多い場合は増量してください。

マリネの時間

染料が飛び跳ねるリスクを無くすためにタッパー容器にマテリアルを先に入れておいて、低い位置からビーカーで染め液を振りかけていきます。肉をマリネ液に浸すごとく、飛び散らないように注意してひっくり返しながら、染め液の中にマテリアルをズブ漬けにしていきます。満遍なく染め液が行き渡るまでマリネ、マリネ。

ズブ漬けの時間

染め液にマテリアルが沈み始めたらズブ漬けの時間の始まりです。事件が発生しないように必ずフタをしっかりと閉じて、必要であればマスキングテープなどで目張りをしてもいいくらいです。マテリアルが浸かったままになるようにどちらか片側に寄せておきます。

染まり具合はどれだけ時間をかけるかで決まります。しっかりと色をつける場合は12時間、グラデーションが残る程度であれば6時間くらい漬け込みます。染まり具合をチェックする時は割り箸で押さえつけながらピンセットで一本引き抜いて、たっぷりの水で洗浄して水切り・乾燥させて明るいライトの下で色チェックします。

洗浄の時間

染め終わったら一番恐怖の洗浄タイム。漏れたり跳ねたりすることが発生するので水場で行います。シンクの場合は予めキッチン用洗剤をスプレーしておいて皮膜を作っておいてください。キッチン用洗剤をたっぷり染み込ませたスポンジが「防衛出動」できるようにスタンバイさせておきます。

大きいタッパーを使う理由はこれで、マテリアルを洗うための手付きビーカーへ水道水を溜めたらタッパーの中に置いて少しだけ蛇口を緩めて出す流水をそこでうけるようにします。溢れた汚水はタッパーへ溢れますがビーカーの中は洗濯機状態を維持できます。タッパーから汚水が溢れるまでに洗い終わるのがコツ。溢れたり跳ねてシンクへ付着する場合は、防衛出動です!すぐに泡だてて除去しないと時間との戦いです。

マテリアルを割り箸で掴んでビーカーの中でしっかりと洗い、ビーカーから漏れ出す水が透明になるまですすぎます。水切りをしても安全な状態になったら何枚も厚く重ねた見開きの新聞紙の片側に載せて、キッチンペーパーを被せたら新聞紙を閉じてしまいます。この状態で安全に水抜きできるところへ移動してください。

脱水の時間

水気が切れるまで新聞紙とキッチンペーパーの「脱水ステーション」から絶対に出してはなりません。染料が染み出すようであればキッチンペーパーを交換して最後まで脱水します。

ツール洗浄と排水の儀式

マテリアルが脱水されている間に片付けへ。一番恐ろしい時間です。タッパーにたまった汚水を排水溝へ捨てる作業。一旦水を全部捨てた手付きビーカー3L(もしくは5L)の外側を綺麗に拭き取り、安定した場所へ置きます。タッパーを傾けて手付きビーカーへ移しかえたら排水溝へゆっくりと捨てていきます。焦りは禁物なので好きな音楽をかけておいた方がいいです。

これらのツールに残った染料は事故の原因となるので、キッチン洗浄液とスポンジで丹念に洗って干しておきます。

陰干しの時間

マテリアルの水気が無くなったら「陰干しステーション」へ。安全のために下に新聞紙を敷いたら、畳んだ段ボールを壁に立てかけておいてハンガーフックで固定したマテリアルを陰干しします。

クリーニングの時間

干し上がったら最後の工程へ。染めた時に剥がれたりしたカスや染料の塊などが起こす悲惨な事故を無くすために、マテリアルを新聞紙の上に広げてピンセットと小さく切ったキッチンペーパーでゴミチェック。ゴミは直接触らずキッチンペーパーで触ってみて危険な物から排除、カスを取り除いたら新聞紙の上でマテリアルをキッチンペーパーで拭いて、染料がつかないかチェックします。問題が無ければ新聞紙の上でパタパターとはたきのように叩いてゴミを出し切って別の綺麗な新聞紙の上へ引越し。

作業に浸かった新聞紙はカスごと丸めてポイ。

出来上がり

最後まで油断せずに新聞紙の上で検品。危険が無いと判断したものはマテリアル保管庫へ移動しておしまい。

ちなみにここまで作業が終わってから、「あ!早めにブラックから抜きとるダンを作り忘れた・・・」と気づいても後の祭り・・・。ブラック液から染まり具合を見切るのは難しいので、初めからグレー液を作ってやることをお勧めします。

まとめ

ということで染料が引き起こす大事故だけ注意して作業すれば簡単なのですが、これだけの作業をするために時間やツールを用意するくらいならば買った方が早いでしょう?でも欲しい色を手に入れるためには必要な作業なので覚えておくことは無駄じゃ無いと思います。

ツール情報

ブレンダーの方へ

好みの色にブレンドしたい場合は「赤」「青」「黄」を混ぜて色を作り出します。ただし「白」が無いので、マテリアルで白を選んで、染める時間でトーン調整するしかありません。

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