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フライフィッシングについて -フライを使ったプレゼンテーション

2022/12/21フィールド,フライ,フライフィッシング,プレゼンテーション,リーダー,ロッド,入門,初心者,対象魚,,毛針,毛鉤,,道具

魚食性のレイクトラウトを誘うために、ストリーマー をテンションフォールさせながら沈めて、リトリーブしている段取りの最中(中禅寺湖)
フライフィッシングには様々な道具があったり、キャスティングを覚えなければならなかったり、仕組みやハードスキルの部分が目立ってしまいがちですが、実際に「釣り」として成立する部分は「フライ=毛鉤」を魚の目の前にどう演技して見せられるのか、「プレゼンテーション」と呼ばれるソフトスキルが重要となります。 水中に住んでいる魚の事情に合わせてフライをどう選び・どう魅せるのか。それがこの釣りの本当の面白さであり、手品師が観客を騙すためのトレーニングに似たものがあります。ここではそれを解説していきます。

フライ:全ては魚に口を使わせるため

フライフィッシングを含むスポーツフィッシング全般では、大前提のルールとしてあくまでも口に針がかりさせることを目指します。そのために「魚に口を使わせる」なんて言い方をしたりしますが、魚には人間のような手が無いため、餌だと思って口でくわえる=バイト(またはナチュラルバイト)をしたり、何だろうと反射的に口を使って確かめようとする=リアクションバイトのどちらかの行為を誘発させる必要があります。 フライは小さなものは5mm未満の昆虫や甲殻類の幼生から、大きいものは20cmを超える魚を真似たものまで様々なサイズに作ることができます。餌となる生物を「ハッチ」や「ベイト」と呼びますが、それぞれのフライにはハッチやベイトの「シルエット」、「生命感」、「浮き沈み」の3つの要素が表現されています。これに動きの要素を加えることで、100%餌だと思わせてバイトを誘発させる「イミテーション」と好奇心や攻撃心を刺激して魚にリアクションバイトさせる「アトラクター」を使い分けてプレゼンテーションが成立します。

イミテーションとして使うフライ

イミテーションの中で一番多いのがトラウトが好む昆虫に似せた「ドライフライ」や「ニンフ」です。さらに小魚を真似た「ストリーマー」と呼ばれるものから甲殻類や多毛類に似せたもの、カエルなどの両生類に似せたものから二枚貝や野ネズミを真似たものまで、実に様々なパターンが無数に存在します。「ソフトハックル」と呼ばれる伝統的なフライでは最小限の量の動きの良い羽毛を使い、特定の虫ではなく印象操作でアピールできるため、フライフィシングでもテンカラでも多用されます。

アトラクターとして使うフライ

アトラクターは積極的にアクションや目立つ素材を使い、魚の攻撃性を誘い出す工夫がなされています。伝統的なデザインを踏襲した「クラシック・ウェットフライ」や「サーモンフライ」は、色鮮やかな鳥の羽毛や金・銀のティンセル(光を反射する糸状の素材)を駆使して作られ、魚の好奇心だけでなく人間が見ても美しい工芸品となっています。さらにルアーと同じ効果を狙った、水面をわざと騒がせて誘う「ポッパー」や、魚のナワバリ意識を刺激して攻撃させる「イントルーダー」などもあります。 [table id=23 /]

プレゼンテーション:魚を魅了するための演技

伝統的にはたくさんのフライフィッシャーがトラウト向けに長い時間をかけて効果を立証してきたフライとプレゼンテーションが十分にあります。 しかしそれではカバーしきれないシチュエーションやより効果的に釣るため、さらには新しい魚種を釣るために次から次へと新しいフライと共にプレゼンテーションが生み出されています。

パッシブ(ナチュラル)・プレゼンテーション

ハッチのタイミングを見計らいながら、ナチュラルドリフトでアマゴを狙う(狩野川支流)
餌を探している魚が自然に捕食できるようにするには、イミテーション・フライをできる限り自然に見せる必要があります。フライからラインを通じたテンションがある方がストライクが分かるのですが、それでは魚がフライをすぐに離してしまうこともあるので、フリーの状態と使い分けます。 [table id=22 /]

アクティブ・プレゼンテーション

対岸へキャストしてフライを沈めてからスイングさせてニジマスを狙う(十勝川)
ただフライをキャストして置いて自然に任せておいたり、自然に演出するだけで無く、ロッドハンドとラインハンドを駆使することで「変化」を積極的に演出することができます。イミテーション、アトラクター両方を使います。 [table id=24 /]

セット/段取り=フライ選択とプレゼンテーションの組み合わせ

これらのフライ選択とプレゼンテーションを組み合わせることで、個別の魚へフライをアピールする効果を最大限にすることができます。これについては球技に倣って「セット」とも呼ばれます。ここでは一般的に段取りと呼びましょう。それぞれの魚種の捕食タイプに適した段取りがあって、さらに同じヤマメを釣る時でさえ個体の状況に応じて異なる段取りを使い分けることもあります。

渓流ヤマメのマッチザハッチにおけるドライフライの段取り例

例えば渓流のヤマメの場合は動体視力が良くてカゲロウが空中を飛んでいる時から意識しています。同時に鳥から身を隠せるだけでなく餌の量が多い流れの速い場所の底に定位していることも多いので水面に浮き上がって捕食する時に失敗してしまうことがあります。こういうシチュエーションの魚に水面を流すドライフライを綺麗にフッキングさせて釣りたいのならば、魚を誘い出してから流れがやや遅めの場所で食わせる必要があります。 この場合、基本的な段取りとして、フライは「ダン」または「スピナー」を選びます。「フォルスキャスト」で水面上でフライを見せつけておいてから、「パラシュートドロップ」で水面へ落下させてやる気スイッチを入れさせて、「ナチュラルドリフト」で緩めの所を流速よりもゆっくりと流して浮かせて食わせる、という具合になります。この場合、キャストの一部となっているフォルスキャストはフライラインを狙った長さに調整するだけでなく、ドライフライの水気を飛ばし、空中を意識した魚へのプレゼンテーションの一部となっています。 しかし、そこを飛んでいる虫ではなく、もっと上流から流されて来る虫を意識している場合は、やる気のあるヤマメ個体が流れのレーンに分かれてライズしますので、余計なフォルスキャストやパラシュートでのアピールは省いて、魚よりも上流に十分にリードを置いてフライを落とします。また流れてくるカゲロウがハッチ直後のダン(亜成虫)の場合は生命感があるのでそれを表現したフライを選んでナチュラルドリフト、体力が尽きたスペント(羽を畳むこともできずに弱った成虫)の場合は羽が広がったフライを選んでデッドドリフト、と行った具合に使い分けます。

フライフィッシング的な「マッチザハッチ」の段取りとテンカラ的な「ショットガン」の段取り

元々がゆったりとした流れでマスを釣るスタイルに合わせてイギリスやアメリカで成立したフライフィッシングでは、伝統的にそこにいる魚へ合わせてフライを探してマッチさせる段取りをしますが、流れが速い山岳渓流を釣るスタイルの日本やイタリアで成立したテンカラはプレゼンテーション技術に重きを置いた段取りを行いながら、それに合った魚をテンポ良く探していきます。同じヤマメを釣るのにフライフィッシングではいくつかの毛針を使い分けていきますが、テンカラでは同じ毛針を流し方を変えて使い分けます。 実はフライフィッシングでもテンカラ的な段取りを行えますが、これを「釣り上がり」や「ショットガン」と呼び、渓流でも湖岸でも数を釣る時には有効な手段となります。さらに車やボートを駆使して大きく移動しながらショットガンすることを「ランガン」と呼びます。

アティキュレーション=臨機応変

待ち伏せのマッチザハッチか攻めのショットガンだけでなく、どちらの要素も取り入れて答えを引き出す方法もあります。 アウェイの釣り場ではハッチも分からなければ、ショットガンするべきかも分かりません。また、さっきまで一つの段取りで釣れていた魚が突然釣れなくなることは頻繁に起こります。慎重に目の前の釣り場の魚を攻略するためには、フライの種類をとっかえひっかえする前にプレゼンテーションを変えて探ってみるのも有効です。渓流の釣りではソフトハックルを流し分けたり、湖の釣りではリトリーブの種類を変えてみたり、秘密の小道具やリグを組んだり・・・引き出しの数が試される瞬間です。
ベンが根気強く一つのソフトハックルを流し方を何度も変えて、何に反応しているのか読み解きながらキャッチしたヤマメ(秋川)

ウェットフライ&ストリーマーのスイングの釣りの段取り

ストリーマーを対岸のかけあがりへ沈めこんでから、底近くをゆっくりとスイングさせてヒットした直後
自分よりも下流に位置する魚を水面下へ惹きつけたり水深のあるポイントで誘い出して釣るウェットフライやストリーマーを使った釣りでは、狙った場所へフライラインの一部ごとフライを沈めて流し入れていくため、「釣り下り」を進めていくことになります。伝統的にはサーモンを手際良く探り釣りする時に、魚止めとなる滝の直下から下流へ釣り進めていくことから生まれた段取りですが、エラ呼吸で生きる生物である魚は、本能的に流れに対して上流を向いて泳ぐ性質がありますので、上流から下流へ流す方が太く長いフライラインよりも先にフライを流せるので、魚を驚かせづらい理にかなった段取りであるとも言えます。 ウェットフライを狙った筋へ沈み込ませながら流し込んで魚へナチュラルにアピールしてから、比較的に狭い範囲をスイングさせる「縦のスイング」と、ウェットフライやストリーマーを対岸や狙った筋の奥へ配置して、決まった範囲の魚を誘いだすために同じ深さを定速で大きく横切らせる「スイング(定速スイング)」に大きく分けられますが、他のテクニックと組み合わせることで様々な魚へ対応させます。

ドロッパーやトレーラーなどのリグ

また狙ったプレゼンテーションを行うためには一つのフライを結んだだけでは出せない動きが出てきます。このためにドロッパーと呼ばれるリグ(仕掛け)では、リーダーに対して2本目、3本目のドロッパー(枝ティペットとフライ)を追加する事で、流し方や流す水深を調整する事ができます。 トレーラーはドライフライとニンフ、大型のドライフライと小型のドライフライ、大型のニンフと小型のニンフをタンデムに結んだ物になります。これもトレーラーとなるフライを流速よりも遅く動きを持たせながら流せるように計算して使います。 さらにルアーでも使われるドロップショットやテキサスなどのリグもあり、レギュレーションが許す中でプレゼンテーションを成立させるために、ヨリモドシなども積極的に使うことができます。

まとめと続き

フライ&プレゼンテーションは奥深く、とても全てを紹介することはできませんが、伝統的に作り上がった「トラウトのフライフィッシング 」だけでも十分に面白いフライフィッシングを楽しめると思います。 100年前は「サーモンへのウェットフライのスイング」や「トラウトへのドライフライのナチュラルドリフト」だけで足りていたシンプルなフライ&プレゼンテーションはフライフィッシャーの創意工夫が重なり今も進化を続けています。とてもカバーし切れないのでここでは割愛しますが、釣る魚の種類や捕食タイプの数だけ組み立てて行くことが出来るので、フライフィッシングは「釣りの総合デパート」と言えると思います。 その中でシンプルな釣りを組み立てていくのか?みんなと一緒に楽しむことを優先するか?一つの世界を極めて行く「スペシャリスト」になるのか?成立している魚種の大物をクリアーして行く「エキスパート」になるのか?トーナメントを勝ち上がって行く「トーナメンター」になるのか?それともフライで釣られていない魚を一つずつ攻略して「パイオニア」となるのか? どれも正解はありませんが、今目の前の1匹1匹を大事に釣って行くフライフィッシングだからこそ、リリースするまでの一期一会がどの釣りよりも貴重なものとなるのだと思います。また、フライタックルでは実行不可能なプレゼンテーションも見つかるでしょう。その時はルアーや餌づりを含むスポーツフィッシングの深さを知ることになると思います。

次回

  • 未定・・・フライタインング、糸の結び方、リグづくり、釣りの段取りなど

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