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フライタイング(フライタイイング)について – 基本編

2026/02/05

フライフィッシングは「フライ」と「フィッシング」という言葉が合体してできているように、フライの効果がフィッシングの成功を大きく左右することから自作することが多く、同時にホビーとしての楽しみにもなっています。フライを自作することを「フライタイング」または「フライタイイング※」と呼びます。

200年以上も前にアメリカ東海岸で考案されて今でも釣れるイミテーション・ドライフライ「クイルゴードン」

様々な魚たちを釣る為のフライ=毛鉤は、小さなものは5mm未満の昆虫やエビ・カニの幼生から、大きいものは20cmを超える魚を真似たものまで様々なサイズに作ることができます。フライは伝統的には対象魚の「自然な食わせ」を狙い、対象魚の餌となる生物を「ハッチ」や「ベイト」と呼んで、それらのイミテーションを表現しますが、ルアーと同じく対象魚の興味を惹きつけて「反射食い」を狙うためのアトラクターとしても作ることができます。

ヨーロッパと日本の最新のマテリアルで作られたアトラクタージグフライ「ネオンもっふぃー」

イミテーションの場合、それぞれのフライにはハッチやベイトの「シルエット」、「生命感」、「浮き沈み」の3つの要素が表現されています。

アトラクターの場合、「カラー」、「誘い」、「咥え」の3つの要素を表現します。

魚の食性や行動に合わせて数あるフライからベストなものを選んで用意することで、フィッシングの知識と技術を向上させることにもなります。

なぜ自作するのか

その川特有の昆虫のイミテーションをアレンジ

市販されている代表的なフライパターンでも十分に楽しむことはできますが、シーズン毎に変化している現場に合わせたフライは市販されていないことも多く、その時その場所のイミテーションを正確に用意したい場合は自作する必要があります。フライを自作することを、マテリアル(素材)をスレッド(糸)で巻き留める様子から、フライを巻き留める(タイング)ことで「フライタイング」と呼んだり、フライフックへマテリアルという洋服を着せていく(ドレッシング)様子を指して「フライドレッシング」とも呼びます。フライショップにはフライタイングに必要なツール類や「マテリアル」と呼ばれる多様なフライフックや鳥の羽根などの素材が売られています。

経済性と欲しいフライ表現、創造性の広がり

源流からオフショア(沖合)まで様々なフライを買っていたらお金がいくらあっても足りない!

市販されているフライパターンも含めて自作することで、基本的かつシンプルなものであれば経済的かつ忙しい時間の合間や旅先でもフライを購入するよりも遥かに経済的に用意することができます。年に2、3回くらいしかフライフィッシングをしない人ならまだしも、毎月頻繁に釣りをする場合は大きなコスト節約となります。

北海道・知床の遠征先で新しいパターンを考えて巻く

反対にフライを用意する人とフィッシングを楽しむ人に完全に分割されていたサーモンフィッシング全盛期に使われていたクラシック・サーモンフライなどは名匠が腕を競いコレクター価値を高める努力の中で、デザインの美しさや希少素材などで独自のアートとして成立しています。

1895年の文献で初登場するサーモンフライ「グリーンハイランダー」、アトランティックサーモンやスティールヘッド相手に今でも現役

フライフックとフライの作り

サイズや用途にあったフライフックを選び、マテリアルをスレッドで巻き止めていくことでフライは作られています。マテリアルはフライの機能性を満たすだけでなく、シルエットや生命感を表現するように考えられて選ばれています。

ドライフライ、ウェットフライ、ストリーマーを問わず基本的なことだけ覚えておくと、フライの巻き方ビデオやレシピを見た時に理解しやすいのでまとめました。ここではドライフライを例にしていますが、基本構成はウェットフライやストリーマーも同じです。

フライフック

ポイント・・・フックが刺さる重要な部分。かえしがついている「バーブド」とかえしがついていない「バーブレス」があります。
ベンド・・・曲がりの部分でポイントの位置や全体の重量バランス、魚へのフッキング性能を考えてデザインされています。
シャンク・・・軸の部分で主にここへマテリアルを巻き留めることでフライは表現されます。
アイ・・・ティペットを結ぶ接続部分です。ここが塞がってしまうと釣りに使えないので通常マテリアルはここへ使いません。

テール

パターンによってテールのある・なし、長い・短いが異なる。一般的なカゲロウの場合はシルエットの表現とバランスを兼ねて、シャンクと同じ長さのテールを取り付けることが多くなっています。

ボディ

表現される生物によってボディだけの場合とアブドメン・ソラックスに分離している場合があります。

アブドメン

生物の「腹」の部分です。魚が離れた所フライに気づく時、ここを中心とした全体の「シルエット(形状や色)」で判断することが多いので重要なパーツです。

ソラックス

生物の「胸」の部分です。多くの昆虫や甲殻類はここから足や羽根が伸びているだけでなく、どの生物も生存機能が集中しているため、近づいてきた魚はここへ狙いを定めることが多くなっています。またフライに大事な「生命感」を表現する必要があるパーツです。

ハックル

ソラックスにおいて生物の足・ヒレ・エラを表現できるだけでなく、水面へ浮くだけの浮力を与えたり、水流を受けることで細かい動きを与え、生命感を表現することができます。

ウイング

ソラックスにおいて生物の羽根や抜け殻を表現できるだけでなく、風や水流を受けることで生命感を演出できたり、光を反射することで魚に気づかせることができるパーツです。

ヘッド

生物の「頭」の部分です。小魚を模したフライではここへ目をつけることで魚が狙いを定める「ホットスポット」となりやすくなっています。また、フライを巻く時にフィニッシュする場所なので、できる限り小さく頑丈に巻き留める場所でもあります。

タイングに必要なもの

タイングバイス(画面中央)

大きいサイズから小さいサイズまで、様々なフライフックをしっかりとホールドするためのタイング専用バイス(万力)。
初心者向けを謳う価格の安いものはたくさんありますが、フックのホールド機能が甘かったり、作業効率が悪かったりして、むしろ初心者の方には使いづらく、下手すると上達の妨げになってしまいます。これに関しては長く使うものなので、初めからフライショップでアドバイスを受けながら良い物を買うのがオススメです。

選ぶポイント

  • バイスのベースがペデスタル(重量のある台座の上に固定)式かトライポッド(三脚)式かクランプ式(机へ挟んで固定)か
  • フックをホールドする「ジョー」の部分が、小さいフックも大きいフックもホールドできるか
  • 手軽に素早く、ぐらつかずにフックをホールド/リリースできるようになっているか(レバー式やダイヤル式など)
  • 各種アクセサリーを後から付け足して使いやすく拡張できるか
  • ホールドするヘッドそのものを回転させるロータリー機能が付いているかどうか

これら全てを満たすバイスを製造しているブランドとしては、「ストンフォ」「コッタレッリ」「ダイナキング」「リーガル」「ピーク」「レンゼッティ」などが、性能が申し分ありません。これらのブランドに関しては、買い替えする時にオークションで売る時になっても良い中古価格で出せるということがメリットです。

フック(画面中央)

様々な用途に応じてワイヤーを加工して作られた釣り針。フライの製作には主にフライフックと呼ばれる、浮いた時の姿勢や魚に対する強度などを考慮して作られたフックが使われます。

針と釣り糸を結ぶ部分が「アイ」と呼ばれる輪っかになっており、手軽にフライを結び換えることができるようにできています。フライフックは浮かせるために軽量化された「ファインワイヤー」と呼ばれる細い軸の針から、大物の口で破壊されないように太い軸で作られた「ヘビーワイヤー」まで幅広く揃っており、サイズもユスリカのような極小の虫を再現するための#30という幅3mm程度のものから、沖合の肉食魚に捕食されるトビウオなどを再現するための4/0という大きなものまであります。

一般的なトラウトが対象のフライフィッシングの場合、まずは標準的なドライフライ・ウェットフライ・ニンフ向けフックの#16, #14, #12の3種類があれば十分です。

様々なスレッドツール(画面中央下)

針に様々なマテリアルを巻き止めるために必要な糸「タイングスレッド」。スレッドに適度なテンションをかけてホールドしておく重要なツールが「タイングボビン」です。フライパターンや部位に応じて3/0という太いスレッドから24/0という極細のスレッドを使い分けるだけでなく、作業の効率化のためにボビンも様々なものを選んで使います。また、スレッドを通すために「スレッダー」があると便利です。

スレッドやマテリアルを切るための専用ハサミ「シザース」、フライを最後にアイでしっかりとフィニッシュするために必要な「ハーフヒッチャー」や「ウィップフィニッシャー」、フィニッシュした部分に接着剤をつけたり・塞がったアイを掃除するための「ボドキン」の4つのスレッドツールは必須となります。

針へマテリアルを巻き止めるのに必要なツールなので、ここを妥協してしまうと上達のスピードも落ちれば、快適さや仕上がりの綺麗さが変わってきます。細めのスレッドと太めのスレッドを使い分けることが多く、滑り止めのためのワックスやハケ付き接着剤もあると少ない手数でフライを耐久性高く仕上げられるので必須となります

選ぶポイント

  • 巻いている途中で切れてしまわないスレッドを選んで使うこと、スレッダーがあると便利
  • スレッドにテンションがかけられるボビンを使うのも上達の秘訣、先端がスムースに加工されているものは全てのスレッドに使える
  • シザースはスレッドや細かい場所を切るための小さい刃のものが必要
  • フライをフィニッシュするためのハーフヒッチャー、ウィップフィニッシャー、ボドキンも必要

マテリアルツール(画面右)

鳥の羽根を巻き止めるのに便利なハックルプライヤーや、獣毛の毛先を揃えるだけのためにつかわれるヘアスタッカーまで、タイング作業を効率良く進めるためのツールが揃っています。

選ぶポイント

  • マテリアルを切るための大きめの刃のシザースもあると便利
  • ダビング材やCDCを巻き付けるために「ダビングワックス」と「ダビングツイスター」があると便利
  • 鳥の羽を巻き留めるためのフェザーツールと獣毛を扱うためのヘアーツールがあるので、巻きたいフライに必要なものだけを選ぶ

タイング・マテリアル(画面左)

ただのフックを魚を釣るためのフライへと仕上げるために、鳥の羽や獣毛、化学繊維や金属のワイヤーなど、多種多様な素材=マテリアルが使われます。「フライパターン」と呼ばれるフライを巻くためのレシピに従って、マテリアルを過不足なく用意します。

選ぶポイント

  • ドライフライやウェットフライの場合:「テール」「アブドメン」「ソラックス」「ウイング」「ハックル」のためのマテリアルが必要
  • ニンフの場合:「テール」「アブドメン」「ソラックス」「レッグ」のためのマテリアルが必要

一番最初に揃えるもの

最低限必要となるもの:バイスとスレッドツール

  • タイングバイス(クランプ式・ペデスタル式・トラベルバイスのどれか)
  • スレッドツール: タイングスレッド、タイングボビン、スレッドを通すためのスレッダー、シザース、ハーフヒッチャー、ウィップフィニッシャー、ボドキン
  • マテリアルツール: ハックルプライヤー、ダビングツイスター
  • 接着剤: ハケ付き瞬間接着剤またはヘッドセメント

フライパターンで使うマテリアルに応じて必要となるツール

ディアヘアやエルクヘアなどの鹿の毛を使うパターン、CDCのファイバーだけ切り出して使うパターンには下記のツールが必要となります。

  • ヘアツール: ヘアスタッカー、ヘアパッカー
  • フェザーツール: フェザークリップ、フェザーブロック

マテリアル

続編記事の「フライタイングについて・・・初心者におすすめのフライパターン」でカバーします。

まとめと続き

みんなと同じフライを使うと魚に警戒されてしまったり、飽きられてしまうことも多いので、フライフィッシングへ入門してからしばらく経ってからフライタイングも始めることで、フライの機能を理解することで、もっと釣れるフライ、魚の目先を変えることができるフライを用意することができます。

フライタイングの場合、ある程度の技術は独学でも身につきますので本やビデオでも学べますが、実際の手の動きが見えたり、わからないことを質問できた方が上達が速いので、できればフライショップで教わったり、先輩を見つけることをおすすめします。目には見えない「テンション」「マテリアルの位置調整」「質感」などはきちんと理解している人から学ばないと見た目だけ良くてもマテリアルが抜けてしまったり、編集の都合で細かいところは教えてくれなかったりするので注意が必要です。