GoToマテリアル!EP4「32/0時間」= 究極の32/0スレッドで何か巻いてみる
2024/08/27GSPスレッド,フライフィッシング,ミッジ
楽しいトークやマテリアルワークの素晴らしい手際の良さに気を取られる中で、ミッジで有名なタイヤーさんのスレッドワークをじーっと観察していたら、なんと32/0スレッドはウェットだろうがドライだろうがハックルの隙間に「スッ」と幽霊のように入っていくような気がしました。「!」と思い、これはスゴ技の一つだと思っていたら、若手の方の手元でも「スッ」と入っていきます・・・。
同じタイヤーさんはイベント後のSNSで「米ミッジ」なる驚異の30番サイズを巻かれていて、実際にどういう具合なんだろうと、「実弾サバイバルタイヤー」の自分が試してみました。
テックストリーム GSPパワースレッド 32/0 | 10D
「産業革命」を起こして、繊維産業で世界を制覇したイギリスよりも前に「ルネッサンス」ですでに製糸の機械化を行った国イタリア。テックストリームは元々スレッド製品のOEM生産を行っていた親会社フィルテックスの技術を受け継いで独立して、世界三大毛織物産地の一つである、イタリア ビエッラに2005年に創業されました。イタリア伝統のノウハウとハイテク繊維業の技術を融合した稀有な存在として、フライフィッシング向けの製品を開発して送り出しています。「カクタスシェニール」を初めて製造したのもこのグループ。その威信を示すがのごとく、繊維から開発されている「GSPパワースレッド 」は同じ太さだとケブラー(防弾チョッキとかに使われているあれ)よりも強度が高く、同じ直径の鋼鉄の10倍の強度!
素材が違う
GSPスレッドというのは普通のスレッドが釣り糸に例えると「ナイロン糸」だとしたら、「PEライン」に相当するスレッドで、すごい強度と細さを両立させているだけでなく、ノン・ストレッチなので力がダイレクトにフライフックへ伝わります。微細な繊維から作られているので、薄さまで兼ね備えている次第です。これもルアーで使うPEラインに例えると「Power Pro」みたいなものかもしれません。
スレッドの特長
スレッドとしてはどうなの?というと、ゆるめの縒りが入っているのでそのまま巻いても良いですが、時計回りに回転させて「絞り込む」とより細くなり、繊維も絡み合うので強度もUPします。その強さフライフックが曲がるどころか折れるレベル!
反時計周りに「開放」するとより薄くなり、厚みが出なくなります。
質感は他社のGSPスレッドは「すべすべのツルツル」なのですが、テックストリームはOEM製品を手掛けてきた経験と親会社が繊維会社である強みで、テクスチャー加工が施されていて滑りにくくなっています。さらに繊維が微細なのでしっかりテンションをかけて巻きつけるとしっかりとフライフック に止まります。このスレッドに究極の細さの「32/0」が出たということです。ちなみに測定器で計測したら直径「0.010mm」と出ました。
スレッド | 直径 | 特性 |
GSPパワースレッド 32/0 | 0.010mm | 破断強度440g、ノンストレッチ |
GSPパワースレッド 22/0 | 0.018mm | 破断強度1.1kg、ノンストレッチ |
GSPパワースレッド 16/0 | 0.024mm | 破断強度2.1g、ノンストレッチ |
縒りの状態にもよると思いますが22/0と比較するとおよそ半分の細さです。
ボビンホルダー選び
スレッドの性能の確かさとは別に、使う時には相性の良いボビンホルダーが大事です。
このスレッドを使い慣れた方からアドバイスをいただき、「テンションMAXで使えるボビンホルダーのファインがいいですよ」とのことなので、「TMC アジャスタブルマグネット ボビン ファイン」か使い慣れた「C&F デザイン ミッジボビンホルダー」のどちらか迷いましたが、初めてのスレッドなので安全牌でC&Fにセット。すでにセットしてある他のスレッドと並べてみました。
膨張色であるホワイトのGSPパワースレッド320を同じ他社製のラウンドスレッド18/0やGSPパワースレッド22/0と並べてみると一目瞭然の細さ・・・。これで破断強度440グラムもあるんだから、さすが繊維産業で鳴らしたイタリア人の創意工夫スピリッツのすごさ・・・。日本人も負けていられません。
がまかつC12-BM 30番フックに試してみる
製品同士を対決させる「ほこたて」って番組がありましたが、最強スレッドには究極のフライフック を対決させてみたいと思い、日本が世界に誇る播州釣り針であり手持ちの中で最も小さい「がまかつC12-BM #30」をチョイス。全長わずか3mmのフライフックは18/0スレッドでも巻きスペースが狭くて手を焼きます。
2年前に右手の指先を骨折して曲がりづらくなった私はあまり小さいものがつまめないので道具に頼ります。ICテストフックを使ってフックのアイ付近をつかんだら・・・
バイスのジョーにセット。こんな感じになります。
続けてボビンハンドとスレッドの端をつかんだフリーハンドのテンションをMAXで32/0スレッドを巻きつけます。
テンションをしっかりかければ微細な繊維が噛み合うので滑ったりしませんが、握力が弱い方や倹約家の方はハケ塗り瞬間接着剤をつける方が無難だと思います。ちなみにコブラーワックスは成分ロンジンのせいで溶けてしまうのでNG。
パーツの取り付け
あまりに小さいフックなので慣れないパターンなんか見辛くて無理。今回は#18や#22では巻き慣れた「CDCスペントミッジ」に巻いてみます。後でCDCファイバーをハックリングする時にスレッドを割かないとならないのですが、32/0を割く自信は0%なので、幅が広めで絶対に割くことのできるGSPパワースレッド16/0をボディ材兼セカンドボビンのスレッドとして使います。
ワイヤーで補強するので、「0.1mmワイヤー」を取り付けたら16/0スレッドでテーパーボディを作ります。
ここで改めてGSPパワースレッド32/0の細さをチェック。あり得ない細さです・・・。
ちなみにセカンドボビンを使う場合は、ボビンハンガー付きのバイスを使いながら、マテリアルクリップで左側へひっかけておくと作業が楽です。
CDCファイバーの茂みの中へ・・・
ボディが出来たらCDCファイバーを毟り取っておいてから、スレッドを割いてそこへ挟む「スレッドループ」を使いますが・・・。32/0を割けたのは1回目だけ・・・。保険で16/0を使っているのでスキルの足りない私でも楽勝。CDCファイバーでハックリングしてから再び32/0の出番です。
そしていよいよ運命の時が・・・。「スッ!」
なんとモジャモジャのCDCファイバーの「茂み」をGSPパワースレッド32/0は楽に通り抜けていきます!マジかよ!
CDCウイングを上へ引っ張り上げてスレッドで整形してからスペントウイングの形にしていきますが、ファイバーの隙間へスッと入っていくのでスレッドワークが快適!何これ?
CDCファイバーをスレッドワークで好きなようにコントロールできる快適さ・・・。ヤバイ・・・。
ヘッド処理もさっさと終わります。
ワックスを切らしていたので今回はウィップフィニッシュではなくハーフヒッチャーでフィニッシュ。
人生初の「32/0時間」の結果は・・・?
視力0.1なんて余裕で切っている私の眼力とイマイチ動かない指先のムダ毛処理と私のスレッドワークのレベルでは仕上がりは美しいとは言えませんが、はい、出来ました!
調子に乗ってアントロンヤーンでインジケーター兼ウイングケースを付けた方はウイングがだらしなくてイケていませんが、実弾としては問題ないでしょう!え?ダメ・・・? 修行します。
まとめ
丁寧に美しいフライを巻くアートタイヤーや量産巻きできるプロタイヤーの方達と違い、3本巻くと寝てしまう「実弾サバイバルタイヤー」の私が無謀にも32/0時間に挑戦してみましたがいかがだったでしょうか?
一言でいうと・・・ヤバイ!!
このスレッド持ってないと・・・アカン!
今年の早春のミッジングには必須じゃないでしょうか。
後輩には絶対に教えたくない(ここで書いたから手遅れだ!)。
活用シナリオ
30番ミッジは極端だとして、私が使ってみたいものを並べてみると:
- 26-18番サイズのユスリカパターン
- 22-18番サイズの早春の小型カゲロウ、ヒメカゲロウなど
- 26-22番サイズのオイカワ用のCDCミッジ
- とにかくCDCの処理が必要なフライ全般
- ソルトミッジ(ナノシュリンプ)へのハックリング(前からやりたかった)
- 一旦巻いておいたフライの細かい補修・・・隙間にスッと巻けるから直したのがバレない
製品情報
GSPスレッドについて
GSPパワースレッドはGSPスレッドの一つですが、VeevusやラガータンなどさまざまなブランドからGSPスレッドが製造されて販売されていますので、こちらを参考にしてみてください。
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タイングツール&マテリアルGSPスレッド,フライフィッシング,ミッジ
Posted by Neversink
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