ブラウントラウトのフライフィッシング
和名:ブラウントラウト
英名:Brown Trout/Sea Trout
仏名: Truite fario
学名:Salmo trutta (Linnaeus,1758)

ヨーロッパ原産のタイセイヨウサケ科の魚で、ヨーロッパではトラウトというとこの魚を意味し、シューベルトの名曲「鱒」もこの魚のことです。ブラウントラウトとサーモンと呼ばれるアトランティックサーモンは、日本におけるアメマスとサクラマスのような双璧をなしており、陸封型をブラウントラウトと呼び、降海型をシートラウトと呼びます。
アトランティックサーモンやニジマス、ヤマメのような広い回遊性を持たず、イワナの仲間と非常に良く似て張り出した木の枝の影や水中の岩陰などに縄張りを作り、厳冬期や産卵行動の時のみ群れを作って一定の場所を回遊します。また移植先の北米を生き抜いたブラウントラウトはヨーロッパの種魚よりも繁殖力が強く、かつイワナ属よりも高い水温へ耐えられるために、生息が重複する河川ではブラウントラウトが優位となります。
フランス最南端ピレネー山脈では放流なしで生き残ってきた大西洋ブラウントラウト原種の一つ「ファリオ」の難易度の高さからフレンチニンフ(Nymphe au fil)やフレンチスタイル・ドライフライを生み出す原動力ともなり、イギリス南部に代表されるマッチ・ザ・ハッチのドライフライの釣りの重要な対象魚でも有名な、フライフィッシングにとって重要種としての存在でもあります。
大西洋ブラウントラウトと地中海ブラウントラウト
大西洋側に河口を持つ西ヨーロッパの河川には、降海型のシートラウトを持つ大西洋型ブラウントラウトが生息しており、本流から渓流まで、それぞれの地形に適合した地域個体群を形成しています。

対して地中海側には別名「ゼブラトラウト」と呼ばれる、独自の縞模様を持つ地中海型ブラウントラウトが生息しています。
世界に拡がったブラウントラウトたち
主にイギリスや東欧において釣り味と食味の両方のために養殖技術が進んだブラウントラウトは、19世紀から北米・南米・オセアニア・アジアへ移入されて、逃げ出した個体や放流魚が定着して自然産卵を行いながら幅広く生息地を拡げています。日本へはブルックトラウトの発眼卵の移入と同時期に初めて北米から移入された後、東ヨーロッパから卵を移入したりと様々な系統が入り込み、長野県から新潟県に流れる信濃川水系はじめ、北海道では広範囲へ入り込んでいます。

特に北海道では野生の降海型=シートラウトが沿岸を移動して生息域を広げて問題視されており、本州でも長野県の梓川をはじめ松本周辺の本来イワナの生息域で野生繁殖しているだけでなく、同じく沿岸を北上して生息域を広げています。
中禅寺湖や芦ノ湖でも放流された魚が再生産しています。ただし、繁殖活動を行うシーズンが11月〜2月であり、生まれた稚魚が成熟するまでに3、4年かかるので、競合する種が住む川や水位変動が大きい河川などでは湧水の小川や水路が無い場合は繁殖しづらくなっています。

管理釣り場ではニジマスに次ぐ人気の魚で全国で釣ることができます。
ブラウントラウトの特長

浅い河川や湖のかけあがりに住む魚はドライフライへの反応が良く、付き場所はイワナと同じ岩陰や倒木の周りなどの流れが他よりも緩くなり、餌も取りやすく隠れ家になりやすい場所となっています。イワナよりも貪欲な性格で昼夜を問わず餌をとるのでイブニングハッチは非常に派手で大型のフライで楽しむことができる場合もありますが、他のマスよりも口が硬く一回のアタックではなく数回に分けたアタックを行うこともあるので、フッキングの良いパターンやゆっくりとフライを咥えられるようなサイズ選びやプレゼンテーションが大事です。
2年魚になると餌の選別に慣れてくるので、しっかりとフライをセレクトしないと釣果が伸びなくなります。また、インジケーターやフライラインの先端に間違って出てしまうこともあるくらい、狙いを定めると底からだろうが巣からだろうが躊躇せずに浮き上がってアタックする個体も多いので、状況によってフライラインとフライがしっかり区別できるような長いラインシステムを組んだり、プレゼンテーションで工夫したり重めのパターンを使うなど、しっかりとフライだけをアピールすることが大事です。
また動きの良いものや光るものを積極的に狙ってくるので、ナチュラルドリフトさせるためのパターンだけでなく、ビーズヘッドのニンフをジギングやボトムバンプさせたり、水中ハッチのカゲロウのウェトフライには金属色を使ったり、フラッタリングカディスのパターン、ユスリカでさえも動きをアピールできるソフトハックルや、アピール力を増すためにマラブーテールをつける、きらめく泡を表現するためにフラッシャブーを使うなど、状況によってその個体にアピールできるフライを使い分ける必要があります。
モンカゲロウやハルゼミのような大型のドライフライは究極のブラウントラウト・ドライフライの釣りが楽しめます。アピールがうまく行けば、諦めずに何度もアタックしてくる様はプレデターの風格があります。
ドライフライ
ドライフライを捕食するタイプのブラウンは縄張を持っている個体が多く、その場において特定の昆虫に偏食することが非常に多くなっています。モンカゲロウが大量に流れていても無視して、カディスのイマージャーだけを食べることもあるので、その地域のハッチを調べてマッチさせたドライフライを使う必要があります。
ウェットフライ
ドライフライと同じく水中のハッチに大きく左右されるので、その川に合わせたウェットフライと動きを意識する必要があります。光るパートがある方が反射的なバイトを期待できるため、マーチブラウンでもシルバーマーチブラウンと組み合わせるなど、アトラクターとイミテーションを使い分けることが効果的です。
ニンフィング
ビーズヘッドのニンフが効果的ですが、光るビーズによっては一瞬アタックして離してしまうので、反射が少ないカラーを使い分けたり、シュッとしたペルディゴンとふわっとしたヘアーズイアやフェザントテールを使い分けたり
また、日中はボトムやシェードに張り付いてしまうことが多いので、しっかりとボトムが取れるリードフライを使う必要があります。
ストリーマー
20cmくらいの魚から動きの良い小動物を捕食する傾向が強くなり、他の魚の稚魚や小魚、スイミングニンフやを積極的に襲うようになり、状況によっては共食いまでもします。居つく場所によってハゼ科やコイ科、ワカサギなどのキュウリウオ科の稚魚、幼魚、成魚に合わせた大小サイズのストリーマーが必要です。水中ではじっくりと判別できるため魚の方が圧倒的に有利です。居つく場所をめがけてフライ先行でスイングさせたり、ベイトフィッシュのシルエットと動きをリアルに演出する必要があります。またフックの位置も大事なので、同じパターンをロングシャンクフックやトレーラーフックに巻き分けるなど、工夫を重ねることで釣果を伸ばすことができます。
ペンシルフライのトップウォーターゲーム
ベイトフィッシュが豊富な水域では大胆に水面や浅瀬へ小魚を追い詰めて捕食するため、フローティングワカサギのような、弱って浮いたベイトフィッシュを真似たペンシルタイプのドライフライの釣りが非常に面白い場面となります。浮かせたままにできるタイプ、ゆっくりと沈むタイプなどの使い分けで状況に対応できます。
ムーンライトゲーム
日本では安全のために釣り場は日中と定められている場所が多いですが、そうでないアメリカなどの海外では夜に捕食する大型のブラウンに狙いを定めたムーンライトゲームが楽しめます。川の水面を泳いで渡るカワネズミが生息する河川ではマウスフライ、カエルが多い水域ではフロッグフライやバスバグなど、夜ならではのマッチザベイトと言う特殊なゲームが楽しめます。
筆者はアメリカ東部のムーンライトゲームで間違えて小さなコウモリをロッドで叩き落としてしまったら、大きなブラウンがグワッと出てきてあっという間に咥え去るところに遭遇したことがあります。トラウマになってしまい、それ以降はデイゲームしかしなくなってしまいました・・・。反面、自信を持って「でかいブラウンはでかいフライ」と断言できます。フッキングできるかどうかは別の問題ですが・・・。
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