Tokyo Fly Fishing & Country Club について

1.「東京」という素晴らしいフィールド、新しいフライフィッシングの楽しみ方を国内外へ紹介

東京在住の外国人や海外生活経験者、外資系企業に勤めるビジネスマンを中心に、東京都をホームグラウンドとするフライフィッシングとアウトドア遊びの部活「Tokyo Fly Fishing & Country Club」をはじめたのが2006年ごろ。また、国内在住者や旅行者向けに、英語で釣り場や日本の対象魚に関するため、ホームページを開設しました。その後のクラブメンバーとの釣行や、120カ国以上の国のユーザーからよせられてくる質問や、色々な国で行われている異なる対象魚に対するフライフィッシングの情報交換を通して、目を開く良い機会になっているとともに、まだ知られていないフライフィッシングの楽しみ方の幅広さをもっと広めたいと考えております。 http://www.youtube.com/watch?v=aBv0IRG4VoY また、「東京」というくくりの記事作成にあたっては、各地へフライロッドを抱えて足を運んでまいりました。北の秩父多摩甲斐国立公園から初め、東の房総半島、西の富士箱根伊豆国立公園、ついに2013年には念願がかない、はるか南の小笠原国立公園まで釣行を行い、どのような釣りが可能かをリサーチしてきました。源流域からの水の流れに沿って、渓流のヤマメやイワナ、ダム湖のニジマス、山上湖のブラックバスやブルーギル、中流のコイ科の魚たち、下流~汽水域のマルタやボラ、スズキが釣り人を楽しませます。海から先へ目を向けると、東京湾のスズキやクロダイ、浦賀水道のアジやサバ、相模湾のシイラやカツオ、伊豆諸島のカンパチやヒラアジ、小笠原諸島のハタの仲間たちやGT、マグロ、そしてタマンやボーンフィッシュまで。同じ行政でくくられた地域でこれだけ多様な魚が釣れる場所は、世界でも類を見ないと思います。今後も都心の23区だけの「東京」だけじゃなく、山地を抱える「東京・多摩部」や太平洋の島々を網羅する「東京・島嶼部」を含めた、「大東京」の中の素晴らしい自然を紹介していこうと思います。

2.フライフィッシングというソリューションの可能性を探る

さて、フライフィッシングという疑似餌を使った釣りでは、重みのあるラインを竿の反発力で飛ばすことによって、その先端へ結ばれた毛鉤をキャストします。着水後からのプレゼンテーションで魚を騙して口を使わせ、最終的にファイトを制して釣り上げます。本来は小川の表層にいる魚を慎重に釣るための釣りとしてスタートしていますので、一般的にはキャストする距離は10-15mくらいが大半で、開けた場所で遠投してもせいぜい30mくらいです。水深のあるポイントでは、シンキングラインを使うことである程度まで釣ることができますが、流れがありますので、深くても5m位までが有効な探査範囲。この中で魚に口を使わせて、釣りを成立させるスポーツです。 ここだけをみると、ルアー釣りと変わりませんが、フライラインのその先にあるリーダーの端っこへ結ばれたフライを狙った通りにコントロールするのはなかなか難しく、また太いフライラインは素早く沈まないために、深いポイントではかなりスローに釣っていくことになります。似たような範囲を釣るワームの釣りと比較してみると、1回ごとのプレゼンテーションに必要な時間は3倍から10倍にもなるでしょう。この手返しの遅さを、推理力や想像力という「読み」の力で補う必要があります。 このような条件の中で釣りをする事は不自由かと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、反面フライという疑似餌は、使う針や素材を工夫することで、20cm程度の魚から5mm未満の昆虫や甲殻類の幼生まで様々なサイズの餌に対応します。釣りの条件さえ成立させてしまえば、釣りをするポイントは山岳渓流から沖合までと幅広く、対象魚も選びません。さらに至近距離の魚を静かに狙うテンカラの釣りもあれば、40m先の魚を狙う17フィート・ツーハンドロッドを使ったディスタンスの釣りもあります。他の釣りと比べても、まずまずの広い範囲を釣ることはできます。 また、複数の毛鉤をつけたり、餌釣りのようにインジケーターをつけたり、ワームのようにショットをつけたり、キャストできる範囲の中であれば、仕掛けを色々と工夫することもできます。このように道具を使いこなしてゆく達成感や創意工夫、魚とのやりとりへの没頭、プランニングを含めたトータルな釣りのソリューションを考えていくことがフライフィッシングの醍醐味だといえます。

3.自然科学やものつくりへの造詣

フライフィッシングでは、釣ろうとする魚の推理を求められるが故に、その種の魚の習性や周囲の環境への観察眼が磨かれます。ただ水場へ行って魚を釣るだけならば、決められたパターンを持って都内や近郊の釣り堀へ行って糸をたらせば事は足りるのですが、野生の魚を相手にしたり、あまり情報が無い釣り場や研究の進んでいない魚を相手にする場合は、毛鉤そのものだけではなく、いかに自然な捕食を演出するか、リアクションバイトでだます方法はないか、魚の研究や捕食対象の演技の成果が試されます。 さらに、毛鉤のシルエットや動きは、光線の加減や水流の条件に大きく影響を受けますし、魚個体ごとに条件も違います。人が使っていて結果を出したパターンだからと言って、自分が同じ効果を再現できるとは限りません。より釣ろうとすると、各自の釣る状況に合わせてフライをカスタマイズしたり、一から巻いていく。フライタイイングの技術が重要になります。

4.伝統

対象魚の研究や釣り道具の試行錯誤を長年重ねた結果、フライフィッシングには「自然科学と工芸品」という大事な伝統があります。水棲動物を通した自然科学に対する嗜みを、自らの釣りの世界や、フライの製作すなわち「フライ・タイイング」へそれを反映することを喜びとする人たちが大勢います。 これは、19世紀に最盛期を迎えた、大英帝国で発展した「サービス文化」や「ハンティング」の影響が大きいのですが、日本の毛鉤釣りの伝統の中にも存在する、「道具や毛鉤づくり」という工芸品の美学や「一匹釣るまで」という哲学を含め、さらに広い枠の中にさまざまな文化的要素がつまっています。例えば、世界中の珍しい鳥の羽根を合わせて製作される「サーモンフライ」を例にとると、その背景には「世界貿易」が存在し、オーナーは「どうだい、こんなに珍しい鳥の羽根を世界中から調達して使えるのは俺のコレクションだけだ」という美術品収集の欲求、製作者にとっては「彼のためにつくる、私にしか作れないたった一つのアート作品」という表現欲求が結びついています。さらに「狩猟」の影響も色濃く、季節や条件ごとに代わるサーモンの居場所を特定するため、釣り場の管理担当者が大学教授に調査を依頼したり、元来は食糧生産を行う養殖業者へ釣りのための魚を注文したりなど、こだわりのエピソードは限りがありません。映画「砂漠でサーモンフィッシング」を見ていただくと、その感覚が理解いただけると思います。 http://www.youtube.com/watch?v=HK5x_Q1pi3Q その後、大英帝国の衰退とともに、フライフィッシングはアメリカやヨーロッパが主な舞台となり、「個人主義」や「アスリート」の感覚が強くなっていく中で、「スポーツフィッシング」という言葉が生まれました。ひとつの流れはプロのガイドを雇い、その後、このスタイルへの反発か、山地や森林などの僻地へ入っていくバックパッカー達やトラベラー達が、こだわりの強いフライフィッシングを選んだことが手伝い、フライフィッシングはアウトドア文化としての位置を占めるようになりました。この感覚を体現する代表的な人物の一人に、パタゴニア創業者のイヴォン・シュイナードがいますが、この彼が日本古来の毛鉤釣りである「テンカラ」に着目して、会社をあげてバックアップしています。 http://www.youtube.com/watch?v=wlaYJhLylzw

TFFAC_screenshot5. 英語でつながる仲間たちとの交流・スキルアップ

クラブでは各国の仲間とやり取りしながら、掲載されたコンテンツを更新していく必要があるため、英語がメインの言語となっています。日本人は英語と聞いただけで「苦手だ!」という先入観を持つことが多いかもしれません。しかし、これはもったいない。道具的には恵まれた環境でありつつも厳しいフィールドで鍛えられている日本のアングラーの技術は世界レベルで見てもかなり高いといえます。どんどん世界へ飛び出していって、面白い魚たちと出会っていくべきです。 ちなみに英語という言葉は、その名の通りイングランドが発祥であることは間違いないのですが、世界へ広がっていく過程で様々な進化を遂げていく中、「方言」や「訛り」が生まれてきました。これに対して大英帝国時代に「Responsive Pronunciation=標準語」というものが人工的に造成され(日本もこのやり方を真似しました)ました。しかし、イギリスだけ見ても標準語で話す人なんてロンドンの近く、それも知識人くらいしかいない中、30分も車を走らせば、みんなそれぞれ好き勝手な英語でしゃべっています。むしろアメリカの一部の地域で話されている英語の発音の方が18世紀時代の英語に近かったりします。 何をもって「正しい」とすればいいのか?「話が伝わればそれで十分正しい」ということです。 つまり英語を難しく考える必要はありません! ユーザーみんなが釣り人のTokyo Fly Fishing & Country Clubの英語ブログFacebook ページでは、英語が母国語のメンバーだけではありません。片言だってブロークン・イングリッシュだって全然構いませんので、ぜんぜん気負わずにトライしてみてください。ぜひTFFCC掲示板も活用して練習していただければと思います。 2014年5月 吉田英人